生産職になりたいのでDEXに極振りしたいと思います。   作:紙吹雪

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気持ちも新たに初投稿です


ミルフィーの誕生日会 前編

第4回イベントが終了して数日後。現在『楓の木』の拠点には、ミルフィーを除く9人のメンバーがメイプルの呼び出しで集まっていた。ギルドホーム内は第4回イベント前くらいの緊張感が漂っている。

 

「・・・で、メイプルちゃん?なんでみんなを集めたの?ミルフィーちゃんだけ居ないけど・・・」

「えへへ、それはね・・・」

 

メイプルが一旦間をおいてから発表する。

 

 

 

 

 

「明日、ミルフィーの誕生日だからです!」

 

 

 

 

 

ギルドメンバーの反応は好意的なものだ。

 

「ほぉ〜、そいつはめでたいな」

「プレゼントでも用意するのか?」

 

クロムがメイプルに尋ねる。

 

「うん!大体そんな感じ!それでね、ミルフィーには秘密にしてこっそり準備してサプライズみたいにしたいんだ!」

「へー、なんで?」

「えっとね、前にミルフィーが言ってたんだけどね———」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ふわぁ・・・」

「おはよう、めい・・・じゃないや、楓〜」

 

「なんだか眠そうだね」

「うん・・・昨日は遅くまでNWOにログインしてたから・・・」

 

「へ〜そうなんだ〜。ちなみに何していたの?」

「えっとね、最近また新しいケーキが発売されてたから、食べたいなぁと思って。でも、1人じゃ食べきれなさそうなほど多くって……現実だときっと太っちゃうなぁ。ゲーム内だから太らないけど」

 

「ちなみに、どんなケーキだったの?」

「えっと・・・私は見た事ないけど、多分バースデーケーキってやつかな?」

 

「え・・・(見た事ないの?)」

「うちは誕生日にはケーキじゃなくて普通に外食に行ったりするからね。美味しいから良いんだけど」

 

「・・・(話題変えよう)でも、麻里は現実でも一杯甘いもの食べてるよね?」

「現実で食べるのもまた美味しいからね!まあ、以前よりは食べる頻度は減ったけどね」

 

「その割には元から痩せてない?」

「そんな事ないよ、特に胸元とか・・・あれ、こんな流れ前にもあったような・・・」

 

「むぅ・・・えいっ!」

「ひゃわ!?ちょ・・・やめっ、急に触らないで!?」

 

「ねぇ・・・今この教室、誰も居ないよ?」

「う、うん。そ、それで?」

 

「誰も見ていないんだよ?」

「えっ、それ、どういう・・・」

 

 

 

「おーい、楓ー!麻里ー!もう来てるんでしょー!」

 

 

 

「あ、理沙だ。・・・もう少し遅かったら良かったのに・・・」

「ふぁ・・・恥ずかしい///」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「という事があってね!」

「妙にミルフィーの顔が赤いなぁと思ってたけど原因はそれか!」

「・・・俺はどう反応すればいいんだ・・・?」

「聞き流しなさい、クロム」

「あんまり気にすると酷い目に遭うぞ、勘だが」

 

1人クロムは話を聞いて動揺していたが、他の男性陣、ジェラートとカナデは特に無反応である。ジェラートにとって優先順位は異性<超えられない壁<甘いものだからだ。カナデは元々女性陣に違和感なく混ざり込んでいる。

 

「ごほん!それで、ミルフィーの為に誕生日会的なのを開きたいって事?」

「うん!多分、今までミルフィーは友達と誕生日を祝ったりした事ないと思うんだ!だから、ここは敢えて本人には秘密にしてビックリさせてあげようって思って!」

「なるほどね。みんなもそれでいい?」

 

サリーの問いかけにギルドメンバーの全員が賛成した。

 

「勿論だ。同じギルドだし、なによりミルフィーは同志でもある。料理に必要な食材は私が出そうじゃないか」

 

そう提案したのはジェラートだ。この男、実は自分で甘いものを食べたいからという理由で【料理】スキルを持っている。食材も大量に集めているが、全て甘い味のものばかりだ。甘党の執念とは恐ろしいものである。

 

「そ、そうなんだ。じゃあ、食材は任せてもいいかな?」

「任してくれ。そうだ、最近新しく発見された食材がという噂を聞いた。かなり美味いらしいから、今日中に入手したいから誰か採ってきてもらえないだろうか?」

 

ジェラートがそう提案し、話し合いの結果食材集めはサリー、カスミ、クロムが。そして、料理がイズと本日の【神界書庫(アカシックレコード)】で【料理】スキルを引き当てたカナデとジェラートが。ミルフィーを引きつけるのはメイプル、ユイ、マイが担当する事になった。

 

「じゃ、行ってくるねメイプル!」

「うん!お願い、サリー!」

 

サリー達が出発しようとした時・・・

 

「・・・ん?」

「む、どうしたのだサリー?」

「今・・・物音がしたような?」

「気の所為じゃないか?早く行こうぜ、その食材とやらが簡単に手に入るものでもないだろうしな」

「うーん・・・そうかなあ?」

 

サリーは不思議そうにしていたがクロムに促され、目的の食材があると言うフィールドに向かって行った。

 

「あ、ミルフィーにメールしよっと!えっと、『今何処に居る?』っと!」

 

メイプルがミルフィーに向けてメールを送信する。するとすぐに返信が来た。

 

「わ、もう来た!えっと、『3層で1番人気のダンジョン』?何処になるのかな?」

「えっと、たしか・・・」

 

メイプルの疑問にマイが答える。楓の木のギルドホームからはかなり遠い場所だ。

 

「よし!行こーう!」

「「おー!!」」

 

「行ってらっしゃ〜い」

「気をつけてね〜」

「頑張れー」

 

メイプル達が出発した後、拠点に残った3人はどんな料理を作るか話し合い始めた——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ギルドホームの中に1人、こそこそしながらその様子を伺っていた人物が居た。

 

「・・・どうしよう・・・」

 

それは話題の中心に居る人物。

 

「私の事を祝ってくれるのは、素直に嬉しいけど・・・うう・・・!」

 

ミルフィーであった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

どうしよう・・・みんなが祝ってくれるのはとても嬉しいけど・・・私は、当日どうすれば良いんだろう?しかも、ジェラートさんが言っていた食材って多分一昨日に私が見つけて掲示板に書いた奴のはず・・・

 

「・・・取り敢えず、ギルドホームから脱出しよう」

 

幸い、イズさん達は今は広間にいるから気付かれずに脱出するのは簡単だ。中では何やら会話をしているらしい。

 

「でも、ちょっと意外ね。まさか、ジェラートが【料理】スキルを持ってるなんてね」

「ああ。現実でもバイトで料理をするんだ」

「へ〜!ちなみに作る料理って?」

「甘いものだな」

「あはは・・・甘いものって言うとケーキとか?」

「大体は合っている。他にもパフェやクレープなんかも作っている。逆に普通のものは作ったことがないな」

 

ジェラートさん、バイトしてたんだ・・・知らなかったや。たまに一緒にお店でケーキを食べたりするけど、自分で作れるんだ・・・まあ、私もそうなんですけどね。店売りのも自作のもどちらも私は美味しいと思う。

 

「私は店売りのも自作のもどちらも美味いと思っている」

 

あ、同じ事考えてた。流石私と同じ甘党。

 

「で、どんなのを作る?取り敢えず、バースデーケーキは確定として」

「そうだな・・・甘いものは外せないとして、チキンとかどうだろうか?」

「それってクリスマスみたいだね」

 

やばっ、これ以上誕生日会のネタバレは聞きたくない。私は音を立てないようにそっと出口に向かう。

 

こういう時、頼れる人が居れば・・・誰か、相談に乗ってくれそうな人は・・・そもそも、ギルドメンバー以外の知り合いって言ったら『集う聖剣』の人達か『炎帝の国』くらいだし・・・ミィさん、相談に乗ってくれるかなぁ・・・ああ、甘いもの食べたい・・・

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「・・・あっ」

 

・・・適当に歩いていたら思わずいつも通ってるお店に来ちゃったよ。ま、ここなら今日はギルドメンバーのみんなは来ないだろうし、ここで甘いものを食べながら対策を考えるのも悪く無いかも!

 

からんからん

 

「いらっしゃいませー!」

 

もうここに来るのは何回目だろうか?数えてないから分かんないや。ウェイトレスさんの接客も慣れてきちゃった。

 

「——で、美味しい?」

「ああ、まるで零れ落ちた月の涙(ティアドロップ)が様々な色の花を咲かせるが如く・・・」

「・・・分かるように言って欲しい」

 

・・・この人達、まさか?

 

「あの・・・」

「む?なんだ、折角秘密のデート中なのに」

「で、デー・・・!?いや、たしかに2人っきりでしかもお忍びだけど・・・!」

 

・・・なんだか、この赤毛に眼鏡を掛けてる方の人、親近感が湧きます。何故でしょう?いや、多少変装しているみたいですけど、この人って、

 

「ミィさん、ですよね?」

「・・・み、ミルフィー!?」

「ほう、【首狩り姫(マーダープリンセス)】改め【首無し姫(ヘッドレスプリンセス)】のミルフィーではないか」

「変な風に呼ばないでくださいっ!」

「?何処か変なところがあったか?」

 

ぐぬぬ・・・

 

「それで、どうした?そんなしけた顔をして。何か悩みでもあるのか?」

「え?そ、そうなの?」

 

・・・あれ、ミィさんってこんな感じの人だっけ?

 

「・・・ミィ?」

「あ、いや、ごほん!それで、悩みがあるのだろう?言ってみるがいい」

「もう手遅れだと思うぞ」

「・・・そ、そんな・・・」

 

あ、ミィさんが机に蹲ってしまった。・・・私、どうすれば?

 

「あ〜・・・気にするな、うちのギルマスは大体いつもこんな感じだ。あまり、他人に言わないようにな?さもなくば闇の裁きが貴様を襲うだろう」

「は、はぁ・・・」

 

後半は全く意味がわからなかったけど・・・ま、いっか。

 

「たしかに、多少ミィさんに違和感は覚えていたけど・・・」

「えっ、嘘ぉ!?」

 

ガバッとミィさんが起き上がり、顔を物凄い勢いで私の方に向ける。ちょっと怖い。

 

「いつ!一体いつから!?」

「えっとたしか、第二回イベントが始まる前の演説だったかな?」

「えぇぇ・・・そんな前からぁ?」

 

あ、また項垂れた。

 

「・・・ふっ、やれやれだぜ。元気だしなよ、ミィ。よしよし・・・」

「うう・・・」

 

ニュクスさんが顔を埋めたミィさんの背中をさすっている。なんだか私とメイプルみたいな・・・というか、私すごーく居づらいんですけど。

 

「おっと、忘れるところだった。取り敢えず早く席に着いたらどうだ?・・・で、何に悩んでいるのだ?」

「あっはい。えっと——」

 

私は2人と同じテーブルに座ってから2人に今の私が置かれた状況を説明した。

 

「・・・むむ、中々難題だな」

「た、大変だね・・・」

「はい・・・当日、私は一体どうすればいいのか・・・」

「大人しく白状したらどうだ?」

「そ、そんな事したら折角張り切って計画したメイプルが可哀想ですっ!」

 

そんな事、絶対に出来ない。だって、メイプルは・・・メイプルは?あれ?私にとってメイプルは・・・大事な友達。だよね?妙に距離は近いけど・・・

 

「おーい、きーこーえーてーるー?」

「・・・あ、はい」

「ふむ、そうだな・・・後は、知らないふりをするくらいしか方法は無いのではないか?」

「私にはそんな演技だなんてできません・・・できたとしても、みんなを騙し続けるだなんて私にはとても・・・」

「・・・・・・」

「あ、ごめんなさい!ミィさんの事を否定するわけでは・・・!」

「・・・いや、いい。分かってる」

 

うう・・・怒らせてしまったでしょうか?

 

「私から言えるのは一つだ。・・・演技を続けるのは、結構きついぞ」

 

実感の籠った言葉ですね・・・

 

「・・・相談に乗ってくれて、ありがとうございます」

「あんまり助けにはなれなかったと思うけど・・・」

「いえ、お話を聞いてくださっただけでもありがたいです」

 

おかげで、少しだけ楽になれた気がします。

 

「それにしても、大きい・・・」

「ふぇ?えと、その、あまり見られると・・・」

「あ!ご、ごめんなさい」

「い、いや、構いませんが・・・私、そろそろ行きますね」

 

まだ何も注文してないけど・・・取り敢えず、他にも話を聞いてもらえる人を探しましょう。

 

「それでは」

「またね〜」

 

そう言って、私はお店を後にした。

 

 

 

 

 

 

「・・・ミィ、もしかして大きい方が好きなのかなぁ?」

 

 

 

・・・?今の声、誰だろう・・・?まあ、いいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったより長くなったので分割しますた。

9/30 誤字修正しました。指摘してくれた方ありがとうございます!

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