いつも見守る万能メガネ、笠原匡。
彼から見た大喜たちは、こんな感じ。
幼馴染みを少し離れて見守る姿をどうぞ。

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万能見守り役、みんなのメガネメインのお話です。
いつにもまして低カロリーです、お気軽におつまみください。


アオく広がる、その先に

 端から見ると、どう考えてもお似合いだと思う。と言うか、これがお似合いじゃなかったら世の中にカップルなんてものは存在しないんじゃないかとさえ思う。猪股大喜と蝶野雛、陰では「早く結婚しろ似た者バカップル」と言われ続けていたりする。知らないのは当の二人だけで、周りとしてはほほえましく見守っていた。……のだが。

 最近、どうも風向きが変わりつつある。当人同士というより、ある先輩のせいで。

 

「匡、大喜見なかった!?」

「……もうとっくに帰ったぞ」

 先輩と一緒だった、と言い足しかけてぐっと堪える。面倒は御免だ。ただでさえ面倒事ばかり持ってくる幼馴染み相手に、余計な事はしたくない。雛はちょっとガッカリした顔をしたものの、すぐいつものように立ち直った、いや立ち直った……フリをする。こうやって見てると、大喜絡みでは本当に勘定がクルクル動くのが分かってそこそこ面白い。

 蝶野雛。新体操エリートで顔の印刷と営業スマイルは一級品。俺と大喜の幼馴染みで、ずっとずっと大喜しか見てない一途過ぎる女だ。……つい最近、自分の恋愛感情に気付いてしまったらしく、目に見えて大喜への態度が変わってきた。まあ、やっとかと言う感じだ。大喜も大喜でそういうのに鈍いが、雛が押しまくればすぐにでもモノにされてゴールインすると思われる。色恋の感情かはともかく、雛とはスゴく仲が良いわけだし。上手く行っても行かなくても、結局こいつらは末長く爆発する事になるんだろうなーと同期の連中はみんな思っていた。

 ただ、ただ。そこにとんでもないのが割って入ってきた。

 鹿野千夏先輩。高等部女子バスケ部のホープにして、我らの英明学園が誇る超有名人。万事が万事完璧なこの人に、御多分に漏れず大喜も熱を上げていた。とは言え相手は雲上人だ、憧れが部活のモチベーションに繋がりはすれども絶対に気持ちが届いたりはしない。一世一代の度胸でなんとか告白したとしても、すげなくフラれるんだろう。そう思うから、俺どころか雛でさえ、大喜が千夏先輩にモーションかけようとするのをニヤニヤしながら見守っていた訳だが――。

 

「帰った、か……。じゃあ先輩と一緒かぁ……」

 立ち直ったフリが僅かに緩み、雛は不満げな声を漏らす。色々と複雑な経緯を辿り、現在千夏先輩は大喜の家に居候しているのだ。ついこの間雛はそれを知ってしまい、電話で物凄く俺に愚痴ってきた。勘弁してほしい。まあ大喜に愚痴れないなら、俺しかいないんだろうけど。雛は外面ばかり良いから、本音を話せる友達と言うとなかなかに少ない。

 正直、現時点で雛に勝ち目はないだろう。先輩は謂わば雛のアップグレード版、総合力では遥かに上だ。そして、同居というアドバンテージ。下世話な話だが、もし先輩がその気になれば一晩で勝負は終わる。雛がリングに上がる前に、大喜が性的に食われてお仕舞いだ。そうなってないのは一重に、先輩が大喜への感情を保留しているから。でもそれも時間の問題だろう。

「……やっぱり先輩も、…………なのかな……」

「さあな。俺はそこまで知らん」

 雛はまだ気づいていないようだし、口ではそう言っておく。俺としては、波風が立たない方に持っていきたいのだけど難しいか。先輩は、恐らく多分絶対――大喜に気がある。先輩がどう出るかで、雛と大喜の過ごしてきた…俺が見守ってきた…年月がひっくり返ることになるだろう。まったく、とんでもない話だ。

「でも、雛はさ。大喜と先輩を引き離してくれ、とは言わないんだな」

 こういう事態が見えてきてから、それはずっと考えてきた。自発的にする気はないが、雛が言うなら実行しても良い。勿論、長年の友人として。友人の笑顔を護るのは当然で、大喜にとってもその方が良いと思えなくもないし。憧れは憧れのままで、長い付き合いの雛を恋人として選ぶという道もあるだろう。

 自慢じゃないが俺と大喜も長い付き合いだ、俺から聞かせるからこそ信じる話もあるだろう。上手くすれば、距離を離させる事くらいすぐにでも――

「いや、んー……それは嫌、かな。私は正面から闘いたい人だからさ、搦め手は向かないし」

「あー……ごもっともか」

「闘って闘って、真っ白な灰になるまで闘って、それで最後に私が勝つの。勝つから楽しいのよ」

「……そんなZマンのマゼンダみたいな事言うやつ、初めて見たぞ……」

 まったく、この戦闘民族め。まぁ、こんなだから見てて退屈はしないんだがな。

「骨は拾ってやる、挑んでこい」

 雛の小さな背中をペシンと叩き、押し出してやる。このバカな幼馴染みが、走り出せるように。

 

 さて、どうなる事やら。先輩は一筋縄じゃいかない相手だが、雛だってそうやすやすと捻られるタマじゃない。大喜もどう出るか、出ないのか。

 ――俺は、どうしたものかな。俺としては、大喜も雛も大切だ。でも、先輩だって悪い人じゃない。誰かに味方する気は起きないが、このまま中立でいさせてくれるだろうか。なりふり構わなくなった雛が泣きついてくるかもしれないし、大喜に近付こうと先輩がこっちに来る可能性もある。いやいや、パニックになった大喜が助けを求めてきてもおかしくない。

 波風ばかり、平穏とは程遠い。でも――こういうのも、悪くはない。面倒ではあるが、巻き込まれておこう。

 あいつらを見守る立場として、ここにいてやろうじゃないか。




……マゼンダはこのセリフの後、真っ白な灰も残らないくらいに完全燃焼しますけどね。
あと「闘い」でなく「戦い」だった筈です。


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