待たせてしまい申し訳ないです。
これが今年最初の更新ですが、次回からようやくベリ銀編は最終局面になりそう。
自分でいうのもアレですが、ここまで来るのは長かった...
鏡の星へと繋がるゲートは本来、鏡の星本星からの許可が無ければ通過できない筈だ。
だが、まるでそんな事など関係ないかのように、ミラーナイトの目の前に有る物体――形状からして宇宙艦の一種だろう――は飛び出してきた。
数百メートルはあろうかという巨躯、芋虫と蛹を混ぜ合わせたかのような細長い有機的なフォルム、外板を覆う六角形の装甲板と硝子、漆黒に深紅のラインが入った艦体色。
今まで見たどの種類の宇宙艦とも異なる意匠ではあったが、一つだけミラーナイトが察知できた事実がある。
「ゼロっ!!」
先程、闇に侵された自分の身を救い出してくれた光……ウルトラマンゼロのエネルギーが、僅かだが艦の中から感じられたのだ。
「フッ!!」
ミラーナイトは咄嗟にミラーナイフを繰り出し、目の前の不明艦の足を止めようとした。
が、光線は艦に当たった途端に弾かれ、傷一つ付かない。
その艦はそのまま悠々と宇宙空間を進んで行き、アイアロンの搭乗している艦の横に並ぶ。
その光景を成すすべなく見守るだけしか出来なかったミラーナイトは、悔しさに臍を噛むのであった。
――――――――――
『“グロデーズ”異次元ゲートを突破いたしマシタ、アイアロン艦隊と合流いたしマス』
『位相変換装甲ハ正常稼働、ミラーナイトからノ攻撃にヨル損害、0パーセント』
アナライザーからの報告を聞きながら、俺は艦橋に設置された艦長席に腰かけつつ、手に持ったティーカップからレモングラスティーを味わう。
程良い酸味とハーブの爽やかさが鼻を抜け、仕事を完了した事によう解放感を盛り立てる。
「鏡の星……この文明圏では独自の技術を誇る星ではあったが、所詮は亜空間技術に毛が生えた程度か」
新型艦として建造したグロデーズの性能に満足した俺は、背後で水面のように揺らぐ鏡の星へのゲートをモニターで確認しつつ一人呟く。
鏡の星への出征で初めて使用したこの艦は、『ヤマトよ永遠に REBEL3199』に登場したグロデーズを再現したものだ。
各所に設置された強力なスラスターによる高機動、位相変換装甲による強固な防御機能。
あの地下神殿へと潜入し、脱出出来たのも、このグロデーズのキャプチャーフィールドが有ってこそだ。
「今回は舞台が亜空間という事でグロデーズにしたが、やはり正解だったな」
そして勿論、デザリアムの技術を再現しているという事もあって、亜空間技術に関してもかなり高度だ。
だからこそ鏡の星の有る次元空間へと易々と侵入できたのである。
俺はその結果に満足しつつ、悠々とアイアロン率いる艦隊と合流を果たす。
「アイアロン、任務は成功。カイザーベリアル様への“貢物”を確保した」
「ほう……まあ帝国軍の参謀であるなら、それぐらい成功してもらわねば困るからなぁ」
「私も幹部の端くれだ、この程度は造作もない」
相変わらずの憎まれ口を聞きながら、俺は嬉々として鏡の星を睥睨するアイアロンを眺める。
……ふむ、これは長くなるかもな。
アイアロンの目の奥に、加虐心に満ち溢れた欲求が爛々と悍ましく渦巻いている。
まあ、鏡の星のゲートが粉々になったところで修復可能なのは分かってはいるが、これからこんなのの相手をしないといけないミラーナイトは御愁傷様と言う他無い。
「ゼロを確保した以上、計画実行は近い。“楽しみ”は程々に本星へ戻りたまえ」
『
そんな倒錯した趣向を持つアイアロンは、こういった場面……特に相手が綺麗だったり整った物であったりする場合、時間を掛けてじっくりと嬲り痛めつけるのである。
例えるなら、一匹の蛇がじっくりと鶏卵を飲み込むかのように。
普段なら放っておくところだが、この後のタイムラインを考えると早めに切り上げて欲しいところだ。
「チッ……分かっておるわ」
俺からの忠告とも取れる発言に、アイアロンは忌々し気に舌打ちをした後に同意の言葉を吐く。
分かってはいるのだろう、カイザーベリアルの計画が最終段階へと差し掛かっている事に。
そして無駄に時間を浪費する事は、カイザーベリアルの不興を買うだろう事も。
「なんなら手伝ってやろうか、この艦の決戦兵器なら一発で……」
「無駄口を叩かず、貴様は貢物を持って早く帝都へ帰還しろ」
俺からの提案の言葉に被せるかのように否定の言葉を吐くアイアロン。
まあ半分冗談だし、別に咎める気も無い。
「貴官の健闘を期待するよ」
「心にも無い事を……さっさと行け」
「半分は本心なのだがね」
続く「お前が死ぬと手間が増えるし」という言葉を心中に留め、俺はアナライザーへとワープ航行を開始するよう指示を出した。
そこで俺はふと考える。
帝都へ戻り、ゼロが目覚めればいよいよ最終局面だ。
綱渡でやってきたこの劇場にも、ようやくピリオドが打たれるのである。
「願わくば、クシアに幸あらん事を」
背後で明滅するビーム砲の閃光を尻目に、グロデーズは静かに宙域から離脱するのであった。