…そういえば、最近アルビスさん大丈夫っすかね?
朱菜:「リードさん、今晩の夕食はどうしますか?」
リード:「シュナが作る料理なら何でも良いよ」
朱菜:「それが一番困ってしまうですよ」
リード:「でも事実だろ?シュナの手料理は美味しいから」
朱菜:「リードさんったら、ミリムみたいな事言いますね」
リード:「そうか?」
店が並ぶ区画で俺とシュナは今晩の夕食の買い物をしていた。
あの後、一週間稽古を体験してもらったレナード達は稽古を継続することを決め、聖騎士達の
今週からは、
俺は今日の仕事を終え、シュナと買い物を楽しんでいる。
夕食の献立は何でも良いが一番困ると文句を言われるが、俺にとってシュナの手料理は全て美味しいから一つに選ぶ事が出来ないから仕方ないだろう。
今のところバックの中に入っている材料から、今日は豚カツになるかもな。
そんな事を話していると、なにやら凄まじい暗いオーラを感じ、感じた方向に顔を向ける。
リード:「‥‥‥」
朱菜:「リードさん?」
見たものに絶句した俺をシュナは何事かと見てみると、シュナも絶句した。
それは他の通行人がいるのにも関わらず、その全員が道を譲ってしまう程を落ち込んでいるアルビスだった。
この落ち込み具合は、リムルが口を開けばあの
リード:「あ、アルビス?」
アルビス:「…あっ!これはリード様、シュナ様御機嫌よう」
リード:「あ、ああ…」
朱菜:「…アルビスさん」
アルビス:「何でしょう?」
朱菜:「コウホウと何かありました?」
リード:(シュナ!?)
アルビス:「‥‥‥」
シュナのこの言葉に、アルビスの瞳から涙が溜まり、ついには溢れた。
アルビス:「わ…私、コウホウ様にとって魅力が無いのでしょうか?」
俺は泣きながら言うアルビスをどうすれば良いのかわからず戸惑ったが、シュナがアルビスの手を引いていった。
リード:「…流石シュナ」
俺はそう呟いて、シュナとアルビスの後ろについていった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
俺とシュナの家にアルビスも入れ、シュナはちょうど良い温度のお茶を三人分出した。
アルビスは一口飲んで少し落ち着いたか、ここ一週間のコウホウとのやり取りを話し始めた。
しかし、最初の言葉に俺は耳を疑った。
リード:「コウホウに避けられてる?」
アルビス:「はい…」
朱菜:「具体的にはどのような?」
あのコウホウが誰かを避けるなんて信じられなかったが、シュナはアルビスに内容を話すように言った。
丁度一週間前は、仕事の後食事に誘ってみたらしいが、
アルビス:「コウホウ様、この後一緒に…」
アルビス:「…そうですか」
あっさり撃沈。
六日前は、アルビスの手料理を振る舞おうとしていたらしいが、
アルビス:「コウホウ様、今晩…」
黄奉:「スマンが、ハクロウと稽古の約束があるので今日はもう失礼する」
アルビス:「わ、わかりました…」
武器携え、ドライバーを腰に巻いていたため本当であるとわかり諦めたそうだ。
五日前は、弁当を作り、それを渡そうとしたが、
アルビス:「コウホウ様…」
黄奉:「ベニマルと飲みに行く約束があるから失礼する」
アルビス:「‥‥‥」
親友との先約をして断られたらしい。
四日前は、再びお弁当を作って、昼食を一緒にと狙っていたらしいが、
紅丸:「アイツなら今日は休みで一日帰ってこないぞ」
有給を使って一日森を散歩していたようだ。
三日前は、休みでない事を確認し、ベニマルとハクロウ、そして赤兎との約束が無いことも確認して食事に誘うとしたそうだが、
アルビス:「コウホウ…」
黄奉:「今日はコハクとリュウエイに稽古をつけて欲しいと頼まれているから失礼する」
同僚の妹であるコハクとその恋人であるリュウエイの稽古があることを理由に要件を伝えようとする前に遮られたらしい。
二日前は、コウホウの知り合い全員に約束はしていないか確認して、再び手料理を振る舞おうとしたそうだが、
アルビス:「コウ…」
黄奉:「スマンがこれから自主稽古があるから失礼する」
名前を呼びきる前に、遮られたらしい。ここまで来るともうそれほどの不運か避けられているかのどちらかではと流石のアルビスも疑いだしたそうだ。
そして昨日、避けられていると確信したそうだ。
その日は、コウホウが好きだと聞いていた酒を持って、誘うとしたそうだが、
アルビス:「コ…」
黄奉:「じゃあまたな!」
アルビス:「…え」
姿を見ただけで凄まじい勢いで走って帰ったそうだ。
そして今日は、なんと
リード:(…弁護できない…)
一週間分のコウホウの行動を聞き、俺は言葉を失った。
あのコウホウがこんな事をするとは思っておらず、何を言っても火に油を注ぐ事になるから無理だとすぐわかる程だった。
しかし、今最も恐ろしいのは笑みを浮かべて怒りの炎が燃えているシュナだと俺は思う。
朱菜:「そうですか、コウホウったら一体何を考えているのでしょうか?」
リード:「あ、あのさ~、ここはコウホウの事をよく知ってるあの二人に頼まない?」
アルビス:「あの二人?」
リード:「そう、今呼んでくるから少し待ってて」
俺は、助っ人を呼ぶために転移魔法でその助っ人がいるところに飛んだ。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
助っ人としてベニマルとハクロウを呼び、経緯を説明するとベニマルは呆れており、ハクロウも申し訳なさそうな表情で協力してくれると言ってくれたので、すぐに家に連れてきた。
紅丸:「しかし、なんでアイツがそんな事を…」
朱菜:「お兄様でもわからないのですか?」
紅丸:「ああ、避けられる事には慣れてると思うが、自分から避けるなんて事はしなかったからな」
ベニマルでも理由まではわからないという事だが、ハクロウは既に見当かついているようだ。
白老:「おそらく、どう接すれば良いのかわからんのでしょう」
アルビス:「えっ…」
白老:「三獣士アルビスとの接し方はわかるが、女性のアルビスとの接し方が分からず、どこかで傷つけてしまわないように逆に避けている。理由なんぞこれだけでしょうな」
紅丸:「詳しいな」
白老:「親子二代同じ事が起きればそうなるものですじゃ」
リード:「親子二代ってどういうこと?」
ハクロウの言葉が気になり、詳しく話してくれるた。
かつての
その時の候補が里一番の武力と戦闘センスを持ち合わせたコウホウの父と、武力は劣るが統率力とカリスマ性があったベニマルの父の二人だったそうだ。
その時の二人の関係は、今のコウホウとベニマルと同じ親友同士だったそうだ。
紅丸:「ちょっと待て父上が婿養子なのは知っていたが、コウホウの父と親友だったなんて初耳だ!」
朱菜:「わたくしもです」
白老:「大殿はわざと若にあんな態度をとり、コウホウとの仲を強くしようとしたのです。故に黙っておくように言われたのですじゃ」
しかし、コウホウの父はベニマルの父と母が両片想いなのを気づいており、自分から候補に外れると宣言、その後二人は結ばれたそうだ。
しばらくして、コウホウの父に想いを寄せていた女性が猛アピールをするが、ほとんど同じような事をコウホウの父もやり、見かねたベニマルの父が仲を取り持ったようだ。
この話を知っているのは今ではハクロウだけらしい。
紅丸:「しかし、ハクロウの言う事が全て当たってるとしても、なんでアイツはアルビスを避けるんだ?」
白老:「確かに…父親の時は相手からの好意がはっきりしているか分からなかったから起きた件であり、アルビス殿の好意は既に知っているはず」
ベニマルとハクロウでさえ解決策が見つからず、シュナも原因が何か考える中、俺はコウホウの性格からある可能性があることに気付いた。
リード:「まさか…」
朱菜:「リードさん?」
リード:「明日コウホウに直接聞き出してみる!」
アルビス:「よろしいのですか?」
リード:「構わない。もしかしたら原因は俺にあるかもしれないからな」
紅丸:「どういうことです?」
朱菜:「…ひょっとして」
リード:「あり得るだろう?」
朱菜:「はい!」
俺の考えにシュナも気付いて今晩は、俺が直接聞き出すという事でベニマルとハクロウを送り、アルビスはシュナが送った。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
翌日、コウホウを昼食に誘い、食堂で頼んだものを机に置き、食べる前に昨夜の事を事細かく伝えた。
リード:「───という話をしたんだが、理由を言わないと怒りのシュナが来るから話す事をオススメする」
黄奉:「誠に申し訳ありません。半分はハクロウの言う通りでございます」
詳細を詳しく伝えると、コウホウは頭を机につくほど深く下げ白状してくれた。
しかもアルビスを避けてた理由の半分はハクロウの言ってくれた通りだった。
しかし、残りの半分はもしかして…
リード:「
黄奉:「‥‥‥はい」
やっぱり、荒っぽい言動があるコウホウだが、根は真面目な男だ。
もしアルビスと結ばれ、子供ができたら、コウホウは自身の力を失い、俺がオーマジオウになった際に止められないのではと考えていたんだろう。
シュナも
なんだが、前の俺と似てるな。そう思ったら口が開いた。
リード:「
黄奉:「えっ…何を…」
リード:「お前一人抜けたら
黄奉:「そんな事は…」
リード:「ならみんなを信じろ」
黄奉:「‥‥‥」
リード:「それにアルビスなら喜んでコウホウに協力すると思うよ」
黄奉:「はい?」
リード:「強い女性っていうのは、自分が思っていないような行動をとるもんだよ。好きな人のためなら尚更ね」
魔王に進化した時、みんなから距離をおこうと考えていたのに、シュナはそんな俺を強引に引き止めた。シュナや姉さんみたいに強い女性は、俺が思ってみない事や尊敬することをやる。
アルビスも今は落ち込んでいるが立ち直って、コウホウの事情を知れば、きっと協力するだろうな。
黄奉:「それはリード様の経験談では?」
リード:「じゃあアルビスに聞いてみたら?」
黄奉:「‥‥‥」
リード:「もしアルビスが協力を申し出たら俺達は喜んで受け入れるよ」
黄奉:「…仕事終わりに話します」
リード:「ああ」
俺達は、運んできたより冷めているが、温かい食事を食べ始めた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
それから二日が経ち、俺とシュナは休日が重なり(おそらくみんながそうなるよう調整してるだろう)、町を散歩しながら、コウホウとアルビスの事を話していた。
朱菜:「あの二人は、どうなったのでしょう?」
リード:「一応、アルビスと話すとは言っていたから、何かしらの進展はあると思うけど」
朱菜:「そうですね…あら?」
リード:「どうしたシュナ…ってあれは…」
シュナが曲がり角の先にあるものに気づいて、俺も目線を向けれると、そこには見覚えのある後ろ姿をした者達がいた。
リード:「シオン、クロベエなにやってるんだ?」
朱菜:「お兄様にハクロウも、それにソウエイまで」
紅丸達:『シーーー!』
ベニマル達が静かにするようジェスチャーで伝え、俺とシュナは顔を見合せる。
ソウエイが見ていたものがある方向を指差し、俺とシュナは顔だけ出して見てみると、そこにはいつもとは違う落ち着いた服装をしたコウホウがいた。
リード:「コウホウがどうかしたの?」
紅丸:「見ていて下さい」
ベニマルがそう言って俺達は少し間待っていると、アルビスがやって来た。
何やら話しているようだが、ここからじゃもちろん聞こえない。
そして少し話すと、二人は歩き出した。
ここまで見て気づかない程、俺は鈍くないし、シュナも当然気づいていている。
リード:「ひょっとしてひょっとしなくても、あの二人の出歯亀してるの?」
紅丸達:『はい!』
リード:「行こうシュナ」
紅丸:「待ってください、これにはもちろん理由があるのです!」
リード:「親友のデートをのぞき見してる奴が何を言う…」
紫苑:「誘ったのはコウホウの方からのようです!!」
リード:「‥‥‥はい?」
朱菜:「それは本当ですかシオン!?」
紫苑:「本当です!」
蒼影:「正確には、先日コウホウがアルビス殿と何やら話しており、後日再び話すために誘ったようです」
リード:「それよりソウエイ、仕事は?ミューゼの監視はどうした?」
蒼影:「ゲリオン達に頼みました」
リード:「ハクロウ!年長者なんだから止めるのが普通だろ!」
白老:「師としてアヤツが失礼をしないか確認するだけですじゃ」
リード:「クロベエ!」
黒兵衛:「あの浮いた話が若以上になかったコウホウなんだべよ!気になるべ!」
リード:「あのね~」
朱菜:「リードさんは気にならないのですか?あのコウホウが女性と二人きりでどこかに行くのですよ!」
リード:「確かに気になるけど…」
朱菜:「主として事の顛末を知るべきではないのですか?」
リード:「まあ、アイツの都合を把握しないといけなくなるかもな」
朱菜:「それに事の発端の一因はリードさんにもある筈です!」
リード:「うっ…」
シュナからの正論とベニマル達の視線という一対六で俺は完全に追い詰められた。そこからなんとか逆転は出来ないか考えたが何も出なかった。
しかし、せめてもの抵抗として妥協案を出す。
リード:「空気を読んで、帰るっていう意見が四人以上だったら帰るって事で良いなら、俺も協力するけど…」
朱菜:「ありがとうございます!」
紅丸:「まあ、それがいいですね」
蒼影:「気づかれたら色々と面倒ですしね」
紫苑:「了解しました!」
黒兵衛:「オラもそれでお願いするだ」
白老:「感謝しますリード様」
俺は自分を中心にシュナ達全員が入れる範囲の結界を展開して、コウホウとアルビスの後をつける事にした。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
二人が最近出来た居酒屋の個室に行くところまでを確認するとここで問題が発生した。それは個室に近づくと、二人が俺の結界の範囲に入ってしまう恐れがあるため、これ以上近づくことが出来ない事だ。
そこで完全に気配を断つことが出来る俺、シュナ、ソウエイ、ハクロウで行くことになったシオンは途中で暴走しそうだし、ベニマルは今回はシオンとは別方向に暴走する恐れがあり、クロベエはそんな事は出来ないので、向かいの休憩所で待機して貰う。
俺達はコウホウに気づかれない所に座り、ソウエイが糸を使って糸電話のようにして話を聞けるようにした。
そしてコウホウとアルビスの会話が聞こえ出した。
アルビス:『コウホウ様、先日はご自身の立場と心情を教えてくださりありがとうございます』
黄奉:『いや、我もやり過ぎたからな、礼を言われる程ではない』
アルビス:『‥‥‥申し訳ありませんでした』
黄奉:『アルビス!?』
アルビス:『
黄奉:『アルビス…』
アルビス:『つきましてはこのアルビス、微力ながらコウホウ様にお力をお貸します』
黄奉:『なっ!?』
蒼影:「っ!?」
白老:「ほう…」
朱菜:「流石ですアルビスさん!」
リード:「はっきりに言うな…」
俺が予想していたアルビスの協力宣言。予想はしていたけど、こんなはっきりいうなんて…本当に強い女性の覚悟は凄まじいな。
黄奉:『…言っている意味は分かっているのか?』
アルビス:『…はい』
黄奉:『三獣士アルビスとしての言葉か?』
アルビス:『あなたをお慕いする女性、アルビスとしての言葉です』
黄奉:『‥‥‥』
おそらく、コウホウは真剣な眼差しでアルビスを見ているんだろう。
けどコウホウ、ここで結論を出すのはまだ早いぞ。
黄奉:『…アルビス』
アルビス:『はい』
黄奉:『我は戦士としてのお前の事はよく知っているが、女性としてのお前はよく知らぬ』
アルビス:『ええ』
黄奉:『だから…今後の付き合いで色々と答えを決めて良いか?』
アルビス:『っ!…もちろんです!』
リード:「…良し、皆撤収するよ」
朱菜:「はい」
蒼影:「は」
白老:「そうですな」
目的が達成出来たら、これ以上の会話を聞くのは野暮だ。
俺達は、店を出てベニマル達のいる所に戻り内容を伝え解散となった。
その夜、コウホウとアルビスが今までより近くで歩いている姿が見られたようだ。
いいっすね~コウホウさん、オイラも何か出会いが欲しいっす!!
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
書類仕事を片付けていた
煉武:「そういえば、家族で旅行した最後はいつだったか?」
そう呟いた煉武は、兄弟の予定表を確認し始め、