アレイスターとか一方通行とかは純粋に忘れて、強くなる事に集中しよう。今では性別は女であるが、前世では男だったのだ。男として強くなる事に憧れるのは仕方のない事だろう。
さて、どうやって強くなろうかという事だが、まず1つは能力の強化。今のオレは大能力者相当の欠陥電気である。技のレパートリーを増やす前に能力の出力増加、つまりは超能力者への進化をやっておきたい。
方法は至ってシンプル。
まず、能力を次のレベルへとシフトするに必要なのは2つ。自分だけの現実とそれを可能にするだけの演算能力。自分だけの現実というのは小難しい言葉に聞こえるかもしれないが、その内実は簡単だ。要するに自分の妄想を完全に信じ切る生粋の厨二病になれという事である。誰しもが「こうなったらなぁ」と思う事があるだろうが、その思いが現実になると強く思い込む事が必要になってくる。
妹達が何故に低能力なのかというと自分だけの現実が弱過ぎるせいだと思っている。クローンであるが為に自我が小さく、そのせいで自分の妄想を全く持っていないからなのではないかと。オレ以外にも後に大能力者の能力を持つ番外個体という特殊な妹達が登場するのだが、アレは絶対に自我が強い。
そういう訳で自我の強さが大事なのである。オレの場合は前世というものがある為、自我は強い。あと能力など一般的でない前世に比べて、この世界は能力を身に付けるチャンスなど誰にでもある。能力への憧れと妄想は誰よりも強いと自信を持って言える。
次に演算能力について。
御坂美琴は作中において、一時的にだが超能力者の壁を壊し、絶対能力者へと至らんとした。したというより、させられたという表現の方が正しいだろうか。イカレた科学者がミサカネットワークの演算能力を利用する事で壁を壊したのだ。
超能力者と絶対能力者の間にある壁をぶっ壊せるというのなら、それよりも遥かに低い大能力者と超能力者の壁を壊せるのも普通ではないだろうか。どうやって、ミサカネットワークの演算能力をオレに付与するのかという事が1番の鬼門となるだろう。
だが、その点は全く問題ない。木原幻生がやっていたのと同じように、オレが演算能力を利用できるようなプログラムを作成し、ミサカネットワークを通じて、全妹達にインストール済みである。
ある出来事がきっかけで打ち止めよりは弱いが、妹達内においてそれなりの権限を保有している。ナンバーワンを打ち止めとするなら、オレはナンバーツーである。その権限のおかげで特に大した障害もなく、諸々と実行する事が出来た。
そういう訳で早速試してみようと思う。
先述したプログラムを起動し、ミサカネットワーク内の30%程度の演算能力をオレに付与する。100%の演算能力を使うと間違いなくオレの脳がぶっ壊れる。100%だとノートパソコン単体に世界最高峰のスパコン並みの性能を無理矢理与えているようなものになるだろう。間違いなく、ぶっ壊れるに決まってる。30%と言っても、ノートパソコンに数十万円もするデスクトップの性能を与えるようなものだが。
試しに放電してみる。試しとは言ったが、周囲の状況を考えていつもより手加減して放電してみる。その放電だけで分かった。きっと、オレは超能力者に至れたであろう事に。手加減してるつもりだったのだが、放電した威力は常時よりも数倍のものであった。
尤も大能力者であった時よりも桁が違う演算が脳内で行われ、頭が破裂しそうな程に痛いんだけど。
超能力者到達という結果も出たので放電を終了させ、付与していた演算能力を取り除く。
実験も終了し、元の状態には戻ったのだが、未だに反動が続いている。頭がハンマーで粉砕されたように痛み、視界は歪み、明滅する。鼻からは生暖かい赤い鼻血が流れだす。立つ事すら儘ならずにその場で腰を下ろしてしまった。
数分もすれば、痛みも収まってきた。試しに立ってみると未だに足が多少ふらつく。もう少し座っていよう。
それにしても、一瞬だけ超能力者になっただけでここまでの反動が襲ってくるとは思わなかった。まぁ、大能力者のオレがミサカネットワークの演算能力を利用して強制的に超能力者へと上がったのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。
一方通行との戦いが来るまでの間に何とかしてこれを実戦でも耐えれるようにしておかないと。
それにしても、30%だけで超能力者へと至れるとは。100%使用したら超能力者の壁を壊し、更にその先に行ける可能性がある。御坂美琴は全てを捨てる事で一瞬だけ絶対能力者へと到達する事が出来ると言われていた。
元が大能力者のオレが100%使えば、絶対能力者にはなれずとも、一瞬ぐらいはレベル5.5ぐらいにはなれるかもしれない。まぁ、その後は碌な事にならないだろうけど。
さて、超能力者進化の検証はこれぐらいにしておこう。
次にしたいのは装備の改造である。
御坂美琴の代表技である超電磁砲をオレなりに工夫できないだろうかという事である。
超電磁砲劣化版ならオレでも使用可能だ。お姉様は音速の3倍とかいうバカげた速度でコインを放つが、大能力者のオレなら音速1倍程度が限界であり、御坂美琴の3分の1のスピード。3分の1とは言え、速度は音速に等しい。多少の加減速はあるとしても、数字にして毎秒約340メートル。もうね、頭おかしい。
思い付いた事はこれをどうにかして連射出来ないだろうかという事だ。速度で勝てないのなら数の暴力でやってやろうという事である。一応、既に方法は考えてある。
御坂美琴はコインを指で弾いて超電磁砲を放つ。そして、オレには絶対能力者進化計画で支給された銃が数多くある。申請さえしてしまえば、銃の100丁や200丁程度入手するのは容易い。
ここまで言えば分かると思うが、銃器で超電磁砲を再現できないだろうかという事だ。超電磁砲と差別化する為に超電磁銃とでも名付けておこうか。
ローレンツ力による加速に加えて、火薬による加速。その2つの加速を使えば銃弾は秒速500メートル以上に達すると予測している。超能力者になれば、速度は3倍以上になり、銃弾の速度は更に上昇し、秒速1300メートルぐらいに到達すると思っている。その速度は御坂美琴の超電磁砲を凌駕する速度となる。
何故、そこまで速度に固執するのか。それには一応の訳がある。勿論、一方通行戦を想定しての事だ。
一方通行の身体の周囲には膜のようなものが張られている。これに触れる事で能力は発動し、対象のベクトルを自由自在に操る。そして、一方通行の能力を開発した木原数多曰く、膜に触れてからベクトルを操るまでの間には多少のラグが存在するという。御坂美琴の超電磁砲は毎秒1000メートル程。それを反射している時点でそのラグは恐ろしく短い。
木原数多という研究者は一方通行にパンチを放ち、そのラグの間に拳を引き戻す事でベクトルを逆転させて殴るという言葉にしても意味が分からない事をやっていた。初見の時は「なるほど」とか思ったが、よくよく考えると御坂美琴の超電磁砲を反射していたので木原数多の神業の速度はそれを上回るという事になる。
マジで意味分からな過ぎて「木原神拳」とか呼ばれてネタにもされているのだが。
オレにはそんな事は出来ないのでオレはオレでやれることをやるしかない。
それが超電磁砲の更なる加速である。そのラグを超える程の速度で射撃すれば、一方通行の反射を突破できるのではないかとオレは思っている。反射される前にその体を撃ち抜いてしまえという事である。
まぁ、一方通行のラグの具体的な時間が分からないので戦う事になったら運頼みという事になる。
もしも、一方通行のラグが文字通り桁違いの早さであった場合、反射された無数の弾でオレが蜂の巣になる未来しか見えないけど。そんな未来を気にした所でオレが一方通行と戦った時点で人生終了が確定するので気にしても意味は無い。
長々と語るのはこれぐらいにしておこう。
とりあえずは、超電磁銃を試しにやってみようという事で持って来ていた無数の銃の内の1つのハンドガンをバッグから取り出す。
よしやるぞと思ったが、流石に室内でやる訳にはいかない。超電磁砲を模した超電磁銃は強力な技になる予定であるが、周りへの被害も元の技と同じように凄まじいだろう。道路を融解させたり、衝撃波で周りの人を巻き込んだり。明らかに街中で放つような技でない事だけは確かである。
超電磁砲の被害額というのが動画にアップされるぐらいにその被害はあまりに大き過ぎる。室内でやればどうなるのか分かったもんじゃない。
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そういう事で廃ビルの屋上にやって来た。オレが作業場として選んだものとは少し離れた廃ビルの屋上である。屋上で撃つのは被害を抑える為。空に向けて撃ち出せば、被害は小さくなるだろう。オレの予測では銃弾は音速と同程度の速度で発射されるとなっている。
音速の数倍程度の速度で物体が飛ぶとソニックブームと呼ばれる衝撃波が発生してしまうが、オレの場合は音速と同程度なのでソニックブームは発生しないと思っている。だとしても、それだけの速度で銃弾を撃てば音が轟くだろうが。
ビルを移したのもこの為だったりする。
それだけの音が響けばどうなるのか。スキルアウトやらアンチスキルなどの面倒そうな奴らが寄ってくる確率はだいぶ高い。
オレが作業場として選んだ廃ビルは、オレが過ごしやすいようにこれから改造していく予定である。改造と言っても、過ごしやすいように家具やオレの電気を使える電化製品などを運び込む予定なだけだが。
人が入ってこないような対策も考えてはいる。実現出来るか分からないが。
さて、実験を始めるとしよう。
1丁のハンドガンを手に持ち、空に向けて狙いを澄ます。引き金に指を掛け、躊躇う事なく引き金を引いた。瞬時に銃身に能力を応用し、磁力を付与。前世にて中学生の時に習ったフレミングの法則などによって発生したローレンツ力が更なる加速を銃弾に付与する。
火薬と電気の2つの加速が加えられた銃弾は銃口を飛び出し、轟音と光の道筋を残しながら蒼い空に消えていった。
射程は凡そ100メートルから150メートルと言った所だろうか。やはり速度が落ちた分、空力加熱による温度上昇は抑えめであり、射程が伸びるようだ。耐熱性が優れた金属を用いた弾丸とかなら更に射程は伸びるだろう。
超電磁銃の実験は成功と思っていいだろう。ハンドガン以外にもアサルトライフルやショットガン、スナイパーライフルなどの他の銃器の実験もしておいた方がいいだろう。超能力者状態でスナイパーライフルの超電磁銃を行えば、マッハ5、つまり音速の5倍以上の速度に到達する事は間違いないだろう。
一方通行戦を抜きにしても、元男でこことは異なる異世界出身のオレからしたら異能である能力と科学である銃の複合技にはロマンを感じる。要するに何か楽しい。
さて、音も弾丸の軌跡も分かりやすすぎた為、ここから離れるとしようか。
面接やら能力の実験やらを行っていたせいでそれなりに良い時間になっており、水平線に陽が沈みかけている。今日の全ての実験は、20:00頃に終わるらしい。それまでに料理を準備しておかなければならない。今日の分の食費は、まだ足りると思うから大丈夫だろう。
数日分の食費は足りると思うのだが、それ以降となると足りなくなるだろう。それまでにバイトが始まってくれればいいのだが。まぁ、足りなくなったらそこら辺に転がっているスキルアウトからちょろっと強制的に貰い受ければいいだろう。