横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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前回の続きです。


その44 下着を取り違うとろくなことが無い。

 

冬島隊との模擬戦は、隠れ潜む当真と冬島に対して、千佳の重量級対物ライフルアイビスと横島のグラスホッパー迫撃砲による正確な狙い撃ちによって撃破し勝利する。

 

しかも、只の狙撃ではない。

千佳はアイビスで建物に潜んでいた冬島を一軒家の壁や障害物を貫通させ、撃ち抜いた。

横島はグラスホッパー迫撃砲の連続発射によって、マンションの一室を潜む当真ごと、爆破させる。

潜む二人を目視で確認せずに、正確に位置を把握し、攻撃を当て撃破してみせたのだ。

 

 

この決着に、撃破された冬島隊のトラッパーの冬島慎次とスナイパーの当真勇の当人たちは、何が起きたのか?どうやって撃破されたのか?全く分からず当惑しっぱなしだ。

あの冷静沈着な冬島隊のオペレーター真木理佐でさえも、どうやって撃破されたのかも理解できず、うめき声のような驚きの声を上げながら、一瞬呆然とディスプレイを見ていた。

だが理佐は、直ぐに頭を切り替え、戦闘ログを確認し解析し、冬島と当真両人は建物や障害ごと、狙い撃たれ撃破された事を確認することが出来たのだが、直ぐに疑問が浮かぶ。

どうやって、正確な位置を把握されたのかと。

正確に位置を把握されなければ、障害物を貫通させて対象の人物をピンポイントに撃破することなど不可能だからだ。

理佐は、何か居場所が特定されるような痕跡を残すようなミスがあったのかと、二人の行動ログを再び確認するが、ミスらしいミスが見つけることが出来ない。

そもそもの作戦に穴があったのではないかとも自問自答しながら、解析を続けるが、答えが出ない。

 

 

リビングで見ていた玉狛支部の未成年組の面々も同じく、驚きの声を上げ、どうやって相手の位置が分かったのか、それぞれ意見を出し合って、考察にしばらく更けていた、

ただ、横島と千佳の練習に付き合っていた三雲修だけは、沈黙を守り、心の中でガッツポーズを決めていた。

 

 

なぜ、横島と千佳は、冬島と当真の正確な位置を把握することが出来たのか?

 

それは横島が千佳に訓練を付け、教え授けた【霊視】によるものだった。

 

 

 

時は遡り、約1週間前の玉狛支部の訓練施設。

「そんじゃ、千佳ちゃん練習しようか」

「よ、よろしくお願いします」

横島と千佳は第一訓練室に入り、その場にいた修と桐絵もそれについて行く。

訓練室はトリオンによる仮想空間を構築する前は、コンクリートで囲まれた広々とした空間があるだけの部屋となっている。

 

「ではでは横島さん、訓練所はどんな感じにする?」

訓練室前のオペレーション席から宇佐美栞が訓練所のスピーカーを通して、訓練用の仮想空間のシチュエーションについて聞く。

 

「栞ちゃん、仮想空間はまだ必要ないかな。今日はこのままで」

「了解~」

横島の返事を聞いた栞は、トリオンによる仮想空間生成をオフにし、オペレーション席からカメラを通して、訓練状況を見るつもりのようだ。

 

「はぁ?横島、仮想空間無しで、千佳に何を教えるつもりよ?」

桐絵は横島にこんな無粋な質問をするが、桐絵は桐絵で、横島の訓練に興味があるようだ。

 

「なんで、小南もいるの?」

「いちゃ悪い?」

「はぁ~、やりにくいんだけど」

「私は監視役よ!あんたが変なこと教えないようにね!」

「はぁ、保護者の修が居るし、小南は帰ったら?」

「いいじゃない!私がいたって!」

「じゃあ、大人しくしてくれよ」

「ふん!」

横島と千佳の訓練にはお目付け役として修が毎回同行することが決まっていた。

桐絵が言うような、横島が変なことを教えないようにではなく、千佳が無理しすぎない様にとの配慮のためだ。

これは林藤とレイジが決めた事でもある。

 

「じゃあ、まずは千佳ちゃんには霊気をコントロールする訓練をやって行こう」

「霊気ってトリオンの事ですよね。そのコントロールなんて私に出来るんですか?」

「千佳ちゃんは霊気を豊富に持ってるし、適性もあるみたいだから、いけるんじゃない?」

「そうなんですか、やってみます」

千佳はホッと息を吐きトリガーを起動しようとするが、横島から意外な言葉が出てくる。

「言い忘れたけど、トリガー無しでやるから」

「え?」

この横島の言葉に千佳は驚く。

少しはなれば場所で様子を覗っている修も同じく驚いていた。

 

「はぁ?トリガー無しでコントロール出来るわけないじゃない。そんな常識もわからないの?横島……はっ!また私を騙す気ね!!そうはいかないわ!」

桐絵はさっそく口出しをし、こんなことを言いだす。

 

「小南、ハウス!」

「うきーーっ!なによ!」

横島は桐絵を邪険に扱うが、小南の口出しは的を得ている。

ボーダー、いや、ネイバーの常識でも、人はトリガー無しでトリオンを操ることはできないとされているからだ。

 

「しかしな~、いきなりは難しいか、千佳ちゃんはシロんときと違って霊能力自体をイメージできないだろうし、どうするか……」

横島は少々考え込む。

平行世界の横島の弟子である人狼の少女、シロに霊力を高める訓練を施した事があるが、シロは元々霊力を扱えたため、何となく指導は出来たが、千佳は違う、霊力や霊気について全く知識がないのと、霊能力とはどういうものなのかという理解も全く無い状態であるため、同じことをやっても意味があるのかと、考えていた。

まあ、元々シロを指導した時も効果があったかは、はなはだ疑問ではあるが……。

 

「とりあえず、霊能力で何が出来るのか見せた方がいいか、……千佳ちゃん見てて」

「はい」

 

横島は右手を前に突き出し、そして気合を入れて叫ぶ。

「スペシャル・ファイヤー・サンダー・ヨコシマ・サイキック・ソーサー!!

 

「ぷふっ、横島、急に叫び出して、あんたもしかして中二病?……え?」

桐絵はそんな雄たけびを上げる横島を少々バカにしたように鼻で笑うが、横島の突き出した右手を見て、驚く。

 

横島の突き出した右手の前に六角形の半透明のシールドが出現したのだ。

そう、これは横島が最初に会得した霊能力、霊力を一点集中してシールドを形成させる術儀だ。

大きさは自由自在に変えられ、構えれば盾になり、投げつければ爆発し攻撃にも使える攻防一体の霊能力。

優秀な能力ではあるが、霊力をコントロールさえすれば、叫ぶ必要もないし、高度な術でもない上に、横島を冠した長ったらしい名前がついているが、別に横島専用の霊能力でも何でもない。

因みにあんな長ったらしい名前は忘れ去られ、ただ単にサイキック・ソーサーで名前が通っている。

 

「シールド……」

「トリガー発動していないのに、シールドが……」

千佳と修もその光景に驚く。

 

「よ、横島!!どうやってるのよ!!私にも教えなさい!!!!」

驚きながらも桐絵は勢いよく横島に迫って来た。

 

「……栞ちゃん、小南、抑えてて」

「はーい。小南は大人しくしておこうね。横島さん続きどうぞ」

「むーー!むぐむぐ!」

いつの間にか現れた栞は、小南の口を塞ぎ、にっこりとした笑顔で横島に訓練の続きを促す。

栞は間近で横島の霊能力が見たくて、訓練所まで来ていたのだ。

 

「す、すごい」

 

「今の術を千佳ちゃんに教えるわけじゃないんだけど、霊力を高めてコントロールすることで、いろんな術が使えるようになるから、まず、千佳ちゃんは体内にある霊気(トリオン)を発現させることから始めるから」

 

「はい」

 

「霊気は感情によって揺れ動くから、最初は感情を高めて自分の霊気を感じる訓練からか」

「感情ですか……」

 

「例えば、千佳ちゃんが好きなものや好きな事を思い浮かべながら、気合を入れてみて」

 

「はい、好きな事、好きなもの……うーーん」

千佳は横島にそう言われて、目を瞑って好きなことを浮かべ、可愛く気合を入れる。

栞はそんな千佳の姿をデレデレと眺めていた。

 

「霊能力者じゃなくてもちょっとは揺れ動くものだが……千佳ちゃん、何を思い浮かべた?」

横島は千佳の霊気が全く揺れなかったため、何を思い浮かべたかを聞く。

 

「白ご飯です」

千佳は元気よく答える。

 

「……なんで?」

 

「大好きです。白ご飯が!」

千佳は米大好き少女である。

焼肉店に行っても、肉よりもご飯を食べるのだ。

 

「違うんやーーー!そうじゃないんやーーー!!大好きとは!!血肉湧き溢れ、全身を駆け巡るようなものなんやーーー!!」

それを聞いた横島は突然身を震わせながら熱く語りだした。

 

「えっ、その、よくわからないです」

千佳はそんな横島の圧に、身じろぎながら応える。

 

「横島先輩、見本を見せてみては?」

そこで修が千佳に助け舟を出した。

 

「致し方がない、見本を見せる……ただ、これには対価と犠牲が必要だ」

さっきとうって変わって、何故か横島は珍しく真面目な顔でこんなことを言う。

 

修と千佳、桐絵と栞はそんな横島の真面目な雰囲気に息をのむ。

 

 

「陽太郎、例の物を……」

横島は指を鳴らして、ここに居ないハズの陽太郎の名を出した。

すると、雷神丸に乗った陽太郎がいつの間にか、横島の横に現れ、怪しげな紙袋を掲げる。

「ふっふっ、見返りは用意しているんだろうな?横島」

 

「もちろんだ。対価は用意している」

そう言って、横島はカードを2枚陽太郎に渡す。

 

「おおっ、確かに、お主も悪よのー」

陽太郎はカードを受け取り、芝居がかった言い方をしながら、怪しげな紙袋を渡す。

 

陽太郎は受け取ったカードを掲げ叫ぶ。

「ルチアとマリィ、ゲットだぜ!!」

どうやら、陽太郎が横島から受け取ったのはポケモンカード、しかも超レアな女子サポートカードだった。

陽太郎は満足気に、訓練室を去っていく。

 

 

横島は横島で……。

「ふはははははっ!!ついにゲットしたぞ!!ではっ、千佳ちゃん!!我が最大の霊力をお見せしよう!!」

怪しげな紙袋を握りしめ、高笑いをしてから、言葉の圧を上げていく。

 

そんな横島の様子に皆はゴクリと唾をのむ。

 

 

「行くぞ!!」

横島勢いよく、怪しげな紙袋の中身を取り出し、両手で持って頭上に掲げた!!

 

「はぁぁーーーーーん!!ゆりさんのパンティーーー!!妄想チャージ!!キタキターーーーー!!!煩悩全開!!!!」

横島が両手に持ち、眼球をひん剥いて興奮し、眺めていたものは、レース付きの純白の女性物のパンティー。

横島のトリオンが爆発的に増加し、霊力が一気に高まっていく。

トリオンが横島から漏れ出し、横島の周りはゆらゆらと空気が揺らめく程だ。

そう、陽太郎から受け取ったものは、ゆりのパンティーだったのだ。

横島は煩悩を高めることで、無尽蔵に霊気を生み出し、霊力を高めることが出来るのだ!!

要するに、横島の霊力の源はエロパワーそのものなのだ!!

 

修と千佳、桐絵は、あまりにもしょうもない横島の様子にガクッと、吉本新喜劇調に膝が折れる。

 

だが、栞だけは顔を真っ赤にして……。

「あっ!そ、そそそれ!わたしのパンティー!!!返して!!!!」

何処から取り出したか分からないが、フライパンを持って横島に殴りかかる。

 

「へ?栞ちゃんの?あべっ!ごほっ!ぐはっ、ちょちょ、待ってーー、誤解だ!ぐばっ!ごぼっ!」

横島は顔面をフライパンで殴られ続けられる。

思春期真っただ中の女子の下着が、同世代の男子の前でさらされたのだ。

当然の結果である。

 

「横島さんの変態――――っ!!」

栞は、顔面腫れ上がった横島から純白のパンティーを奪い返し、顔を真っ赤にしたまんま、練習場を走り去った。

 

「…………あの、大丈夫ですか?」

「自業自得ね。宇佐美もパンツぐらいで動揺するなんてまだまだお子ちゃまね」

「………」

千佳はぼこぼこの横島を心配し、桐絵はあきれ顔をしながらこんなことを言い放つ。

初心な修は冷静に勤めようと努力していたが、栞のパティーを見てしまい顔を真っ赤にしていた。

 

「き、気を取り直して……、まだだ!!まだ!!もう一枚ある!!」

横島は鼻血が少々垂れているが、あんなに腫れ上がって顔面は元に戻り、怪しげな紙袋からまた何やら取り出す。

まだ、やるつもりらしい。

 

「こっちはゆりさんのブラジャーーーーー!!ときめくぞ!!ときめくぞーーー!!ってあれ?……なんかカップサイズかなり小さくね?」

横島は真ん中にピンクのリボンが付いた真っ白なブラジャーを頭上に掲げ、最初こそはかなり興奮していたが、ブラジャーをじっと見て、冷静になり、こんなことを言う。

 

「あああああっ!!私のブラ!!!!!よーーーこーーーーしーーーーーーまーーーーーー!!!!小さくないわよ!!!!!!」

どうやら今度は桐絵のブラジャーだったようだ。

 

「ぐぼべっ!!」

桐絵の怒りの飛び蹴りが横島の顔面に入る。

 

「こここ小南!!やめっ!!ぐほっ!がべっ!や、やめ!!ああああーーーっ!!違うんや、誤解なんやーーーー!!」

横島は桐絵に馬乗りでぼこぼこにされる。

桐絵はブラだけでなく、気にしているバストカップまで、晒されたのだ。

当然の結果である。

本人は気にしているが、既に玉狛支部の面々にとっては、羞恥の事実ではある。

 

「横島の!!バカーーーーー!!小さくなんてないんだからね!!!!」

桐絵は一通り横島を殴った後、涙目で走って訓練所を去って行った。

ツンデレな捨て台詞付で……。

 

 

横島は陽太郎に、レアなポケモンカードを餌に林藤ゆりのパンティー&ブラジャーを拝借する(捕って来る)という裏取引を行っていたのだ。

陽太郎は雷神丸に、玉狛支部の女子風呂脱衣所の洗濯場からゆりの下着を取って来る事を命じ、それを成し遂げたのだが、いかんせんカピパラの雷神丸とお子ちゃまの陽太郎にはゆりの物なのか、栞と桐絵の物なのか、判別付かなかった様だ。

いや、雷神丸は、女性物の下着を取って来るだけでも有能だろうと思われる。

 

そして、栞と桐絵は後程、陽太郎に説教と制裁を加えたのは言うまでもない。

このことで二人は、しばらくは横島と千佳の訓練に顔を出すことはなかった。

 

 

 

「………だ、大丈夫ですか」

「………」

千佳は原形をとどめていない程ぼこぼこにされた横島を気遣う。

初心な修は、顔を赤くして、必死に鼻血を抑えていた。

 

「……へ、へーき、へーき、美神さんに比べれば、命の危険が無いだけマシ」

横島はフラフラと立ち上がると、同時に傷が治って行く。

この回復能力は、元々の横島の生まれ持ったデフォルト能力なのか、ギャグ補正によるものなのか、霊能力によるものなのか判別がつかないが、多少の怪我は直ぐに治ってしまうのだ。

 

「あの……その、私のパンツと、ブラはまだハーフトップですけど、要りますか?」

千佳は少々恥ずかしそうに横島にこんなことを言う。

 

「千佳ちゃんはエエ子や~、……ほ、ほんのジョークやから、それと霊力の高め方は人それぞれ、ということを教えたかっただけなんや~」

千佳の純粋さにあてられた横島は、しどろもどろで関西弁で言い訳じみたことを言ってしまう。

 

こんな下らない出来事から始まった訓練だが、修の監視の元、横島は千佳に懇切丁寧に霊力コントロールと霊視を教えていた。

時には千佳がよくお参りに来ていた神社で訓練したり、時には春休み中の学校だったりと、千佳の心情などを考慮しながらと……。

 

何時もの横島の言動や行動からは考えられない程、真面目に行っていたのだ。

 

横島は、本来実戦で霊能力を得て来た天才肌の人物だが、人魔大戦(大悪魔アシュタロスの侵略戦)以降、小竜姫の元で霊能力者、ゴーストスイーパーとして基礎からやり直し、真面目に取り組んでいた。

それは、人魔大戦で恋人ルシオラを失った影響が大きい。

もし、あの時、自分に力がもっとあれば恋人を失わずに済んだはずだという後悔が、横島をさらに成長させ続けていた。

 

それが功を奏し、霊力に関して全く知識のない千佳にもわかりやすく教える事が出来たのだ。

 

そして、千佳は僅か1週間という短期間で『霊視』を初歩ではあるが、会得することが出来たのだった。

 

 

 

 

 

話を戻す。

「勝ち筋は無い……」

理佐はそうぼやき、意外にも2試合目と3試合目を放棄し、冬島隊の完全敗北を認めたのだった。

 





早く、次の展開に行きたいのですが、長くなってしまってます。
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