それは、理解が追いつかない出来事だった。偶然に偶然が重なりでもしたのだろうか、トレーニング帰りのオレはそれぞれ赤い鬼らしき見た目のヒト、青い亀らしき見た目のヒト、黄色い熊らしき見た目のヒト、紫の龍らしき見た目のヒト達四人(見た目からして多分ヒトじゃない)と出会ってしまう。
そいつらと出会ったオレは最初、幽霊の類いかと思ったのだが、その四人にはちゃんと両足が存在していた。幽霊ではない事は確かだ。その上、何故かは知らないがオレについてくるようになった。ついてくるなと言ってもしつこくついてくる為、此方が折れて諦めたのは言うまでもない。
何故アイツらがオレにつきまとってくるのか、それについてあれこれ考えたが、幾ら考えても答えは出ない。ましてやルームメイトのスカーレットに『幽霊が見えるようになった』なんて幼稚な事を相談する訳にもいかなかった為、取り敢えずソイツらには部屋に入って来るなとキツく言っておいた。
(どうしてこうなったんだ…? ほんと、訳分かんねぇよ……)
それ以来、オレは謎の四人組(確実にヒトじゃない)に付きまとわれるようになる。四六時中つきまとってくる為、お陰様で寝不足である。こっちの気も知らないでギャーギャー騒いでるソイツらはある時、唐突にオレの身体を乗っ取った。
どういう原理なのかは分からないが、異形の姿から光の球に姿を変えて最初にオレの身体に乗り移ったのは赤鬼。本人曰く『モモタロス』というらしい。その名前を聞いた時、誰が名付けたのかは知らないがネーミングセンスがまるで無いなと思った。
「ふっ、ようやくだ……俺、参上っ!」
オレの身体を乗っ取り、強引に主導権を奪ったモモタロス。一体何をする気なのか、と思ったその時。やたらデカい声で『俺、参上!』と叫びつつ決めポーズを取った。それも
放課後というのも相まって周りに誰も居ない事が幸いしたが、仮に誰かに見られでもしたらもう生きていけない自信がある。
『なっ、ななな何してんだよお前はぁぁぁっ!? お前、確かモモタロスだったか!? さっさとオレの身体から出ていってくれねぇかなぁぁぁぁぁ?!』
「あぁ? チッ、うるせぇな……ギャーギャー騒ぐんじゃねぇよ。お前、確かウオッカだったか? 今すんげぇいい所なんだから邪魔すんじゃねぇ。いいな?」
『邪魔するも何もあるかぁぁぁ!! いいからオレの身体から出てけって言ってんだよコノヤロウ……!』
「お? やる気か? 上等だゴラ、かかってこいよ」
誰も居ない道のど真ん中で
『そうだよ、先輩? 女の子の言う事はちゃんと聞かなきゃ駄目じゃないか。退いて?』
「うぉっ!? おいコラ亀公、てめぇ何しやがる!!」
オレとモモタロスが身体の主導権云々でギャーギャー騒いでいると、モモタロスとは違う声がオレの身体からモモタロスを追い出した。目の前には先程までオレの身体の主導権を握っていたモモタロスが居る。
これでやっと終わったのか、と安心したのも束の間。オレの身体はまだ誰かが主導権を握っているらしく、オレ自身の身体なのに動かす事が出来ない。一体誰が主導権を、と思っていたその時。
「全く先輩は……嗚呼、ごめんねウオッカちゃん。何かあの人、
『……あー、うん。それは…いいんだけどよ? 一つ言わせてくれ。モモタロスの次はお前かよ!? しれっとオレの身体の主導権を握らないでくれるかなぁ!? この身体はオレのものなんだけど!?』
モモタロスを追い出す形でオレの身体に新しく乗り移ってきた奴が主導権を握っていた。声色からしてあの青亀の奴だと思われる。
「ふふっ、ウオッカちゃん。お前じゃなくてウラタロスだよ。よろしくね?」
『お、おう。よ、よろしく…じゃねぇよ!? 満足したんならいい加減オレの身体を返してくれよ……オレ、疲れちまったよ…』
「僕に……釣られてみる?」
『ご丁寧に決めゼリフまで言わなくていいっつーの! え、何。お前らの中では身体に乗り移ったら決めゼリフを言わなきゃならないルールでもあるのかよっ!?』
ウラタロスと名乗った奴はモモタロスより常識人(ヒトではない)かと思ったが、ヒトの身体を乗っ取る辺り此奴も同類だった。結局、解放されたのはそれから小一時間経った後。今日は走った訳でもないのに3000mを全力疾走したかのように酷い疲れが襲いかかってきていた。
疲れで立てなくなり、その場にへたり込んで動けないでいると黄色くて熊っぽい見た目の奴がオレの傍に来て介抱してくれていた。それに安心したのか、自然と涙と言葉が次々と零れる。
「もうなんなんだよお前らぁ……オレの事をなんだと思ってるんだよぉ……」
『あーあー……モモの字、カメの字。ホンマなにやっとんねんお前ら。こんないたいけな少女の身体を本人の意思関係なく無理矢理使うなんて、流石の俺でも引くわ』
『う"っ……な、何も泣くこたぁねぇだろっ!?』
『先輩、悪いのは僕らなんだから謝らなきゃ駄目だよ? ごめんね、ウオッカちゃん……』
『……チッ、謝まりゃいいんだろ謝りゃぁ! お前の身体、勝手に使って悪かったな。オラ、謝ったんだからこれでいいだろ』
流石に反省したのか、モモタロスとウラタロスの二人から謝る声が聞こえてきた。正直言うとオレの身体を使って好き勝手にやったこいつらを許せる訳が無いけど、色々な感情がごちゃ混ぜになった今のオレには怒る気力も無い。
散々泣いた後、熊っぽい奴の支えでなんとか立ち上がれた。熊っぽい見た目の奴は優しくしてくれたからいいとして、モモタロスとウラタロスの二人とは金輪際関わりたくないと思っていた矢先。今まで一言も話さなかった奴が口を開く。
『ねぇねぇ、あのさウオッカ』
「……んだよ。まだ何かあんのかよ」
『次はボクがウオッカに入るけど、いいよね?』
「───は? はぁぁぁぁぁ!?!? ちょ、待っ……お前、この状況でよく言えたなそんな事!? もっ、もう嫌だって言ってるだろ!?」
ここで口を開いたのは紫の龍っぽい見た目の奴。今の今まで一言も発さず黙っていたからえも言われぬ恐怖が全身を襲っていたのだ。その恐怖が今、現実になる。
「ほ、ほんと勘弁してくれ───『答えは聞いてないっ!』ひぃっ……!?」
今すぐここから逃げ出したいのに、恐怖が全身を凍りつかせているような感覚に襲われて身体が全く動かない。そうこうしてる内にジリジリと近づいてくる龍っぽい奴だったが、オレの傍に居た熊っぽい見た目の奴が龍っぽい奴から守るように盾となってくれていた。
熊っぽい奴の後ろから前を覗けば、ウラタロスとモモタロスの二人が身を挺して龍っぽい見た目の奴の進行を阻んでいるのが視界に入る。
『おいやめろはなたれ小僧! イカれてんのかてめぇは!?』
『リュウタ、ほんと空気読めなさすぎでしょ!? あーもう! キンちゃん、ウオッカちゃんをここから逃がしてあげて! 僕と先輩はリュウタを抑えてるから! お願い!』
『よっしゃ、分かったでぇ! ウオッカ、俺にしっかり掴まっとき!』
「え、え……? ちょ、待っ……うわぁぁぁっ!?」
ウラタロスにキンタロスと呼ばれた熊っぽい見た目の奴はオレを抱えるとその場から走り出した。その後の事は気絶でもしていたのだろうか、全く何も覚えていない。
暫くしてやっとの思いで目を覚ませば、見慣れた天井が。どうやら部屋のベッドに寝かされているらしい。横を見れば、心配した表情でオレの傍に居るスカーレットが。
「ん、あれ……スカーレット? それに、此処は…?」
「……あ。やっと目を覚ましたのね、このおたんこにんじん。寮の目の前でアンタが倒れているってフジ先輩から連絡があって、先輩と協力してアンタを部屋まで運んだのよ。ま、どうせ無茶な練習でもして倒れてたんでしょうけど」
「は……はぁ!? なんだよそれ、オレを心配してくれてたんじゃねぇのかよ!?」
「んなっ!? 誰がアンタの事なんか心配する訳っ!?」
そこからはいつもの喧嘩になったが、疲れが抜けきっていないせいで気づいた時には再び深い眠りへと落ちていた。
朝日に照らされて目を覚まし、時計を見やると翌日を迎えていた。その日は偶然にも休日だった為、あのやかましい四人組と出会った場所に向かう事に。
しかし、そこに行ったのは良いが、周りを見渡しても何故かあの四人組の姿は何処にも無かった。名前を呼んでも出てこない為、きっと悪い夢でも見ていたに違いないと思ったオレはその場を後にする。
悪い夢を見てた、とその時のオレは思っていたのだが…
『よう、ウオッカ。昨日は悪かったな』
『全く、先輩もそうだけどリュウタのせいで大変な事になる所だったよ。ウオッカちゃん、その後は何も無かったかい?』
『ねぇねぇウオッカ、今度こそボクが入っていいよね? 答えは聞いてないけど!』
『ま、そういう事らしいからな。何かあれば遠慮なく俺に任せとき。この身に変えても守ったるで』
「………えっ、嘘だろ?」
目の前にはモモタロス、ウラタロス、ウラタロスにキンちゃんと呼ばれた熊っぽい奴、ウラタロスにリュウタと呼ばれた龍っぽい奴の四人組が居た。コイツらが居るという事はどうやら夢では無かったらしい。
散々な目にあわせられて金輪際関わりたくないと思ったオレは目の前の四人組を見えてない、知らないと言い聞かせながらその場を逃げるように去っていった。
その後もあの四人組はしつこく声をかけてくるが、無視し続けた。さっさと何処かへ行ってほしい、その思いで無視を決め込んだ。
───それから数日後───
出走するレースによって勝負服は勿論、性格や作戦などを変えてくる、ウオッカと走る事になるウマ娘には或る意味脅威の存在となった予測不可能な戦術を取るウオッカの活躍がトゥインクル・シリーズに轟いた。
今までの脚質とは打って変わって、影で絶え間ない努力を重ねでもしたのかあらゆる戦法を取れるオールラウンダーとなり、今や時のウマ娘となったウオッカとウオッカを指導しているトレーナーに取材を申し込んだある記者は二人の話を聞く度に『素晴らしい』と叫んでいたとか。
ただ、その記者曰くウオッカの取材中に一つだけ気がかりな点があったという。それは、レースによってまるで別人のように口調が違っているという点だ。
ある時は普段の彼女よりワイルドさが増していたり、またある時は女性を口説くような口調だったりと、ウオッカの性格の変化は今までで五つほど確認されている。
それについて本人に聞きたかったのだが、上手くはぐらかされてしまって深く聞く事が出来なかった為、今後もウオッカの取材は続けていくとの事。
あらゆる戦法を使いこなす変幻自在の女帝。いつしかウオッカはそう呼ばれるようになっていた。
多分続かない……と思う。多分。はい。
というかキャラ崩壊ってレベルじゃないっすねコレ。何かあれば消します、はい。
という訳で、駄文ですが本小説をお読み下さりありがとうございました。他の小説の方もよろしくお願いいたします。それでは(・ω・)ノシ
どのウオッカが見たいとかあります?(参考までに)
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モモタロス×ウオッカ
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ウラタロス×ウオッカ
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キンタロス×ウオッカ
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リュウタロス×ウオッカ