相変わらずウルトラマンの日には間に合ってない人。
報告書という単語に、貴方はどういった印象を抱くだろうか。
面倒くさい、フォーマットも提出期限も面倒くさい、もうなんか全部面倒くさい。レポートの類に至っては『面倒くさい』がボスラッシュしてくる。推定方法と関連データや、参考文献の引用明記に関するミスはこの世界で最も生誕を望まれない存在の1つだ。そんなことをぼやきながら書いているならば、中々良い酒が飲めそうだ。ただし、あまりにも粗雑な出来栄えだったり、期限を全く守らない剛の者ならば、握手の機会が訪れることは難しくなるだろう。
読むのが楽しい、様々な次へ活かせる、宝に等しい。知的好奇心あるいは労働意欲旺盛など読者視点が強い、それもまた中々良い酒が飲めそうだ。ただし、管理を疎かにしていたり、思い込みから良くない読み飛ばしをしているならば、閲覧レベルが引き上げられる日は遠のくことだろう。
教育機関、研究機関、医療機関、行政機関、もちろん企業や秘密結社を含めた多くの組織は、この報告書からは逃げられない。
当然、宇宙人達も例外ではない。
「お、終わった……形だけは……」
死体を複数乱雑に詰め込んだ保管庫。そう表現されても仕方がない部屋で、死者の声が響いた。
正確には、死体は全員生きている。行き詰った研究で睡眠時間を削り、必要な資料を求めて食事時間を削り、気付きを元にハイになって寝食全てを忘れ、手に入れた記録と成果に全員喝采と絶叫でたたえ合ったまでは良かった。全て纏め上げなければならない現実に打ちのめされ、休めば良いものを、一日でも早く仕上げねばあらゆる期限に間に合わないと、残る気力を振り絞った結果がこれだ。生きてる死体もとい、
だが、その血色が悪いで済まされない顔には、皆、微かな喜びが伺えた。
そう、研究レポートが書きあがったのだ。やっと。どうにか。
「今は、今は寝ましょう……」
形はできたという言葉の通り、このまま出せるわけもない。
しかし、これならば間に合う。ようやく、積もりに積もった
「今更なんですが、リーダー……」
「なに……?」
意識の強制シャットダウンボタンが押される寸前、部下の1人が呻き声で話しかけてきた。
深淵の微睡に抗う、不躾な部下だ。無視したい気持ちを隠し、矜持を杖にして、己が声帯へ命令を飛ばす。出たのは似たような呻き声だった。リーダーといえどこんなものである。
返事を受け取った部下は、絞り切った気力の限界を用いて質問を吐き出す。
「こんな無茶苦茶なエネルギー方程式、よく研究対象にしましたよね……我々が、有する、数学美に、ここまで喧嘩を売ってる存在は初めてでしたよ……」
それな。
リーダーの想いは口には出なかった。しかし、周囲の死体達も同様の気持ちだったのだろう。同意の声を上げるためだけにエネルギーを消耗していく。
「わかるぜ……再現性無しで報告あげたいと何度思ったことか……」
「想像力でバリアの常識を破らないで……」
「だが、我々は成し遂げた……」
「そうだ、勝ったんだ我々は……」
「最後は結局、42に行き着くのだ……」
カラータイマーでもついていたら今頃高速警告音になっているだろう、愚かで優秀な部下達に涙腺が刺激される。ただの欠伸とか言ってはいけない。
達成感という活力を用いて、この研究室のリーダーは成果を口にすることで全員への返事とした。
「そうよ……でもこれで、これで作れる……! ニセニュージェネレーションシリーズ最新弾『ニセウルトラマンアーク』が……!!」
ここはオムニバースの防衛兵器開発兼研究エリア。サロメ星人ヘロディアを筆頭にしたマッドサイエンティスト達の巣窟である。
口にした成果はどう好意的に解釈しても『防衛』ではなさそうだが気にしてはいけない。
なお、既にウルトラマンオメガが世に出て、別世界のサロメ星人がオメガヴォイドなる人造ウルトラマンを製作済みだったり、ウルトラマンテオが別世界で放送開始しているので
◇
「この企画案を却下します」
「えー!?」
死の淵から蘇り、推敲を重ね仕上げたレポート。そこから補足資料も携え臨んだ開発企画のプレゼンの結果は非情であった。
ヘロディア達開発チームの顎が落ちる惨状を生み出した張本人、オムニバーシアンのNo.2であるメフィラス星人(元暗黒四天王)は、ホログラム表示された資料をノックするように叩く。
「まず、この研究レポート自体は高く評価しています。元々、人とウルトラマンの絆がもたらす唾棄すべき効能は……失礼、素晴らしき奇跡は因果関係のみ判明している段階不明の機序ではありました。これは『想像力を解き放つ変数』を高エネルギー作用方程式に組み込み、システムとしての再現性を生み出す画期的なものです。あのメビウスどもの絆を数字化してしまえる展望すら期待できる、最高の研究結果と言えるでしょう」
淡々と評価しているようで、その声ははっきり熱を帯びていた。メビウスとGUYSに対する私怨や悪質宇宙人としての本性が隠しきれていないが、そこはしょうがない。いつものことである。
「では何故、ニセウルトラマンアークの開発を却下されるのですか! データと実験室で結果が出せたのですから、次は試作機開発でしょう!」
「研究自体への追加予算は通します。もし、奴らの奇跡だの絆だのを陳腐化できるなら、私が奴らへ再挑戦する夢がいよいよ叶うというもの……しかし私情を混ぜたとしても、ニセアークは許可できません」
「なんでや! ギルアークは光みたいなもんやしニセいてええやろ!!」
「そうだそうだ! 我々の手でニセニュージェネレーションズを作り上げるんだ!! 先日完成したニセウルトラマンブレーザーを越える至高のロボット兵器を我が手に!!」
「
「私情を隠してないのどうかと思いますよ」
「「「「「お前が言うな」」」」」
コントのようなやり取りだが、ヘロディア達は必死だ。流石に無断で制作する程、勢いに呑まれてはいない。正式に許可がどうしても欲しい。研究許可がおりているからなんだというのか。我々は開発したいから研究してきたのだ!! そんな精神だ。マッドの鑑と言える。
「……却下した根拠は別にあるのですが、まず、そもそもですね? ウルトラ戦士達を模した兵器というものは扱いがとても面倒なのですよ。防衛とは書いていますが、運用方法は出向兵器でしょう?外の世界で用いるにはあまりに誤解を招きやすいのです」
「ウルトラマンシャドーは上手くいったじゃないですか」
「あれは非常時に政府主導で扱わせたから最低限の信頼が得られただけで、第一印象だと最悪なカラーリングですからね? 防衛向きと言えない兵装でしたし」
「はい、ニセウルトラマンZやニセウルトラマンブレーザーまで作らせておいてここにきて急に拒否はどうかと思います!」
「ニセZの運用目的はヤプールやレイブラッド星人への情報攪乱兼囮、ニセブレーザーは合体変形ロボット兵器研究の為に試作機のみ、でしたよね? ニセアークのコンセプト『これまでの研究集大成にして、拡張性と想像力を有する究極のロボット兵器』というのがですね」
「真っ当なものでは?」
いいから根拠を聞かせてみろ、跳ね除けてやる。ヘロディア達の気合がオーラとなって立ち昇る。メフィラスはひとつ息をこぼした。
結論から話しつつ、根拠をすぐに明示しなかったのは、ヘロディア達にある程度不満を口にする機会を設けるためだ。悪質宇宙人らしからぬ配慮でもあった。だが、もういいだろう。必殺技を放つ時だ。
「……桁単位でのコストオーバー、そして予想値時点で過剰戦力です。意味は、わかりますね?」
「「「「「……」」」」」
困った、ちょっと勝てない。
そんな空気が沈黙を生む。
メフィラスが放った技は、開発チームに立ちふさがるあまりも厳しい現実として君臨した。
超高コスト。そして予想値時点での過剰戦力となると、予想値未満でコストに見合わず、見合う成果は下手すれば
メフィラスはこう言っているのだ。
『ヤバいけど研究データは欲しいからそっちだけ進めて。開発までいくと絶対バレる。研究段階ならバレても最悪指導だけで済む』
結局、この日はすごすごと引き下がるしかなく、ヘロディア達はその晩、やけ酒に勤しむこととなる。
価値の高い報告書と自画自賛しようが、価値自体を認められようが、望む結果へ繋がらなければ、涙を拭うティッシュにもならない。
だが彼女達は諦めない。足りなかったのは予算と根回しと隠ぺい工作だと開き直り、案の定グリムド監視システムに引っ掛かり処罰を受けることになるのだが、それは別の話。
そして、メフィラスがちゃっかりらっきょうのエリクサー化という謎研究にとんでもない予算が回していたと発覚するのもまた別の話である。
出番なかったオレギアさん(大阪食べ歩き中)「お前ら本当に懲りろよ!?」
ウルトラマン記念に乗じて何か書きたいなーと思いつつ、ニュージェネレーションズの『ニセ』に対する願望をそのままオムニバーシアン(というかサロメ星人達)にやらせてみた話。ダークネスシリーズや、闇の化身も好きなのですが、そろそろまた出てきてほしいなぁウルトラマン模したロボット兵器。
追記
そういやオメガヴォイド出たウルトラヒーローtheLive2025、調べたらダークブレーザーやギルアークがロボット兵器扱いででとるやんけ!!
いや、私が見たいのは純正ロボット兵器ではあるのですが。やっぱりサロメ星人ってすごい
報告書ネタの方が厚い?その辺はちょっと筆が滑ったといいますかはい。
・ウルトラマンアーク
想像力を解き放て!帰ってきたウルトラマンを意識したような演出や構え方で放送直前はその辺が結構話題になっていた。まさかウルトラブレスレット並の自由度のオマージュだったとは(違う)。劇場版含めて好きな作品でした。
・オメガヴォイド
ウルトラヒーローズtheLive2025に登場した最新のニセウルトラマン。作者のアンテナ不足で執筆時点で失念してました。ロボットなのかは不明ですが、サロメ星人製なので、本作ヘロディア達が作中のような事やらかすことは間違いないと確信できましたありがとうございます。
・血を吐きながら続ける悲しいマラソン
ウルトラセブンにおける有名な金言。ウルトラシリーズにおける永遠のテーマの1つと言える。軍拡自体の否定ではなく、防衛や心構え、過剰戦力を有する意味まで考えていく『思考を止めるな』という意味合いが強いように個人的には解釈している。実際、足そのものを止めたら地球侵略されて終わるからね悲しい事に!侵略宇宙人多すぎるんじゃ!!あと光の国は軍事兵器盗難の意味をもっと重く受け止めて!セブン泣いてるぞ!
本文中のこいつらはハイになったせいか開発したい欲求が先に来てるので、『手段の為なら目的はどうでもいい』類に近く、余計タチ悪い。宇宙支配の野望が防衛という建前にすり替わっただけマシ……なのかなぁ?セブン兄さんが視察したら、第四惑星の軍事施設壊滅させた勢いで研究施設蹴り壊しにかかるかもしれない。
ニセアーク却下されたように、一応、手綱は握られています。一応。
・ニセウルトラマンシリーズ
サロメ星人たちが仕上げた傑作兵器にして、調子に乗る原因であり、だいたいの死因。よりにもよってウルトラマンベリアルがダークロプスゼロやダークロプス大軍団という上位互換やってるせいで、実は不遇の立場にある。ニセウルトラ兄弟は量産体制に入った瞬間、工場ラインごと壊滅してる。
オムニバーシアンとなったヘロディアは、ベリアル銀河帝国からレギオノイド盗み続ける現状を嫌がり、ニセニュージェネレーションズという野望を抱いていますが、アークの潜在力が高すぎてメフィラスに止められました。
・メフィラス
相変わらず一番美味しい空気吸ってる人。メビウスたちへ再挑戦したい想いを日々熟成している。オレギアから悪い影響受けてるかもしれない。ニセアーク計画を止めた理由に嘘はありませんが、らっきょうへ回す予算が食われてたまるものかという私情もしっかり混ぜている。