あの後、やっぱり悩んだり悩まなかったり。
思春期ですものね。
そんなこんなな裏側を。

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公式で逆レ来たらどうしましょう、と悩んだりしましたとも。
だってそれじゃ、日夜ニフラム浴びて消えながらも再生して逆レ書いてる私がバカみたいじゃないですか。


アオのハコ#27 sideB

「そのまま、寝てなさい」

 冷えピタを貼り直し、空いた食器が乗るお盆を持って。私は大喜くんの部屋を出る。

 由起子さんたちが帰ってくるまで暫くありそうだけど、長居するのは良くない。

 台所に食器を下げて、そして。

「あー……」

 私は、膝から崩れ落ちてしまった。

 ――危なかった。あまりにも、危なかった。

 大喜くんを支えようとしたあの瞬間、私は明らかに……「期待」してしまっていた。

 あれは事故と言うには意図的すぎる。

 押し倒して、そのまま。

 そのまま私は。

 キス、しようとした。いやキスだけじゃなく、その先まで色々しようとしていた。

 もし正気に戻らなかったなら、二人でオトナの階段を昇っていただろう。事故に見せかけて、100%私の意思で。

 最悪だ、そうなったら。気まずいなんてものじゃない、追い出されるくらいじゃ済まない。

 大喜くんには蝶野さんがいるし、そうでなくても居候先の子に手を付けるなんて犯罪だ。

 欲求に負けてそんなことをするなんて、絶対に許されない。いくら手近にいるからって、弱った病人を襲うバカがいるか。どこまで欲求不満なんだ。

 こんな見下げ果てた先輩のまま、ここにいるわけにはいかない。

「落ち着け私。私は只の、同居人だ」

 床に突っ伏したまま、それを口に出して確認する。

 バスケの為だから。私がここにいる理由は、それだけでいい。

 でも、もしも。もしも大喜くんが私に、そういう感情を持っていたなら。私は悪くないわけで――。

 いや、考えるな。仮定の話はいらない。

 私は、あの二人の関係に割り込んだ異物なんだから。

 顔が火照るのは、きっと風邪が伝染ったんだ。

 片付けが終わったら私も風邪薬を飲んで、もう寝てしまおう。

 明日も部活だ。大事な事だ。だから、余計なことは考えるな。

 

 一夜明けても、頭の芯にはどこか熱が根を張っている。風邪が治りかけているだけだから、問題ない。

 問題ないから、早めに猪股家を出て部活に行く。それだけだ、決して気まずいからじゃない。

 だから、なにも問題はない。

 ……とは言え、だ。

「……プール掃除のあと入って良いったって、そんな事出来んの男子だけじゃんよー。あたしらにパン一で泳げってのかー」

 デッキブラシを携えた渚が、不満げに頬を膨らませて言う。

 今日はバレー部の練習試合が終わるまでプール掃除、となかなかにイレギュラーな案件が組み込まれていたのだ。

 個人的にはルーティンが狂うのはどうも……。

 まあ、こういう風に気分転換するのもたまになら悪くないけど。でも担任が体育主任なせいか、結構色々雑用をさせられるのがちと困る。

 インターハイ出場は決まったけど、そこで終わりじゃないのだから。もっと練習しないと。もっと、先へ行かないと。

 ……先へ。もっと、か。ふと昨日の事を思い返して、顔が火照ってしまう。あそこで止まらなかったら。私たちは――。

 いやいや、考えるな。

 煩悩を振り払おうとして、ふと思い出す。そう言えば渚、この前新しい彼氏が出来たと言っていたっけ。

 渚はあれこれ不思議なやつで、私と同じくレギュラーメンバーに名を連ねる身でありながら結構あちこちで浮き名を流している。単に飽きっぽいだけかもしれないけど。

 それでも、渚は私より断然経験値が高いわけだ。

 なら、と。

「渚ってさ、付き合ってて――触りたいなーとか思ったりするの?」

「おお? 千夏さんにも遂に春が来たんかい?」

 質問に質問を返すんじゃありません。まったくこの子は。

 渚には同居の事は話していないし、大喜くんの事も話したことはない。良いやつではあるけど、水素原子並みに口が軽い女だし。良いやつなんだけどねー……うん。

「そう言うんじゃなくてさ、一般論として。男子と一緒にいると、触りたい欲求とかって出てくるもんなの?」

 触りたいと言うか、まあそういう欲求なのだけど。近くにはそれこそ男子もいるから、声控えめで内容も控えめに。

 渚はホースの水で足下を流しながら、少しの間考えて。

「んー……好きな相手といればね。そう言うのが出てこないなら、そもそも付き合わないし」

 と、曖昧な答えを返してきた。ま、そうか。

 しかしそうなると、私は。私はもしかして。

 もしかして、というか多分。

 誰でも良い訳じゃなく、つまりは。

 私は、――になっている。

 もうかなり前から。

 致命的なレベルで。

「あー……あとさ、好きな人が被ったら、先に好きになった人が優先かな」

「無いね、そんなの無い無い。被ろうがなんだろうが、先に勝った方の勝ちザマス。人生負けてしまったら負けだ、って先輩言ってたし」

 今度はノータイムで、見も蓋もない答えが返ってきた。て言うか何処の先輩さんがそんなこと言ったんだろうか。

 ……でもそうなのか。後から行っても、勝てば良いのか。それは、そうかもしれない。

 さて、そうなると。私は、どうしようかな。

 このままの関係を維持するのか、それとも玉と砕けてみるか。

 見上げた空は、青く広く。

 私が選ぶ道も、この下にある。

「頑張らなきゃ、なー……」

 もっと、先へ。

 もっともっと、先へ。

 進んでみようか。私の意思で。




渚さんがややビッチ化してますが、まあ前に書いたR18話では大喜くんをNTRしてますから。
してますから、じゃないですね。

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