攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「とまあ、なんかいい感じに湿っぽくしたけどハッハッハー。実のところあともうちょっとだけ葵と行動をともにする必要はあるんだよねー、主に手続きとか書類等の関係で」
「はっはっはー! 嬉しさ半分面倒な事務処理なので嫌さ半分! そこは弟子への餞ってことでぜんぶお一人でやっといてくださいよ師匠ー」
「ハッハッハー、逃さないよ〜」
「えぇ……?」
結構、感傷的な空気だったはずなのが一転してのこれである。戻ってきた葵さんに向けてあっけらかんと話すエリスさんに、俺は困惑しつつもどこか安心する気持ちがあった。
弟子との別れ、葵さんの新たなる一歩を見送る姿はやはり寂しそうで。だからこそ多少空元気でもこうして、いつも通りの姿を見せてくれているのがなんだかホッとしちゃうんだね。
あるいは、エリスさんはそんな俺の気持ちさえ見抜いてあえて気を遣ってくださっているのかもしれない。そこは人生経験豊富な方だからね、何があっても不思議じゃないし。
ともかく、不思議な空気感のなかで彼女はもうちょっとだけ葵さんと過ごす時間はあると述べたのだ。書類とか事務的な手続きが諸々、残ってるんだね。
いわばロスタイムってところか。
「アンジェさんとランレイさんのほうにももうそろそろ、国際探査裁判所からの正式な辞令が届くと思うからつもり、しといてね。そんでもって今バカンス中でしょ? その間に葵を加えた三人で過ごすことに馴染んでいってもらいたいかな」
「急拵えで捜査なんてできませんしね。了解です」
「あ、葵ちゃんと一緒、えへへ……き、きっと仲良くなれる、よね?」
「私の見立てだと三人、戦闘面でも人格面でもそう相性は悪くなさそうだしすぐに仲良し三人組になるさ、ハッハッハー」
とはいえそれもすぐに片付くだろうし、そうなれば晴れて葵さんはアンジェさん、ランレイさんとの三人一組で活動していくことになる。
すごいトリオだよ。揃って凄腕の探査者達だし、特に葵さんは戦闘以外のところでもいろいろ器用な立ち回りができるお人だし。
これでますますアンジェさんとランレイさんは、能力者犯罪捜査官としての活動の幅を広げていけるだろうね。
……となると今度は逆に、一人残される形になるエリスさんの今後が気になってくる。こちらは捜査官そのものを引退されるってことだし、一体どうするつもりなんだろう?
香苗さんも同じことを気にしたみたいだった。
多少躊躇した様子を見せつつも、しかしエリスさんにその問いを投げかけていた。
「あの……そうなるとエリスさんはどうなさるのです、今後? 能力者犯罪捜査官もお辞めになるなら、完全にフリーな身の上になるのですが」
「ああ、うん。まあそこも考えてあってね実は。まあ言っちゃうと今後の私はソフィアさん、ヴァールさんのプライベートにおける専属ボディガードみたいな立ち位置になって行動をともにする。あの人が統括理事を引退した後でもずっと一緒だよ」
「ソフィアさんと、ヴァールの護衛ですか」
「特にヴァールさんが強く望んでくれたみたい。もうそろそろ腰を落ち着けて、ワタシやソフィアとともに生きようってさ。たしかに似たような不老存在同士、バラけてるよりかは傍にいたほうが寂しさはないもんねー」
ハッハッハー、とやはり笑う。エリスさんにそう言ったらしいヴァールの心情は到底推し量れるものではないものの、少しばかりでも心当たりはあって俺はそっと息を漏らした。
かねてよりヴァールは、この人が78年前に不老となったことを気にかけている節が見られたからね。聞けば第二次モンスターハザードに参戦したこと自体があの子との出会いがきっかけって言うし、それだったら気にしないわけもないんだろう。
すなわち、罪悪感。自分が巻き込んだせいでこの人を果てのない旅路に追いやってしまったという負い目は、以前から数度ばかりだが漏れていたことだ。
それを思えば、お互いにようやく落ち着ける段階となった今……ある意味では責任を取る意味合いもあって、傍でともに生きるという選択を取ったんだろうね。
なんだかヴァールらしいよ。不器用だけど、どこまでも優しい。
「そういうわけでエリスさんはあの人付きになるから、しばらくは付き添いであっちこっち世界を股にかけることになるね。何しろ引退ったってあと数年あるし、引き継ぎも始まってるけどてんやわんやみたいで海外を飛び回ることも今後、当然あり得るし」
「100年ものの引き継ぎですもんね……余波を受けたおばあちゃんもぼやいてましたよ。仕方ないけど老体に紙仕事ばっかりさせんじゃないよって」
「ハッハッハー、特別理事もつらいね! ……でまあ、そんでもって引退後にはあの人ってばこの町に、いや公平さんの近くに居を構えるつもりでいるから、当然私もそうなる。ハッハッハー、正式にご近所さんだね、公平さんや香苗さんの!」
「嬉しい話です、エリスさん」
「まだ先の話ですが、その折には改めてお祝い申させていただきます」
今後数年は、お付きになるソフィアさんの都合もあっていろいろ忙しそうだけど……それも過ぎれば途端に落ち着く。俺達のいるこの町にヴァールが住み着く予定なため、自動的にエリスさんも住むことになるんだ。
素敵な隣人さんがまた増えるね。数年後ったら結構先の話だけど、今から楽しみだよ。
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