Asyl perspective
ひゅるるるる
冷たい風が木々の間をするりするりと駆け巡り、木々に付いた
枝にくっ付いた
よくよく見てみれば、木々には総じて葉はあまり付いていない様子で、なるほど、どうりで寒そうに見える訳である。
足元がガサリと音を立てるので、ふと見てみれば黄色、赤色、緑色の色鮮やかな落ち葉の絨毯が作られている。
落ち葉には所々に霜が降りてきており、儚くも見える霜の白色が、ただでさえ色鮮やかな絨毯のコントラストをより1層際立たせてくれているようだ。
そんな辺り一面、色鮮やかで美しい光景を見て思わず、ほぅ、と感嘆の息が漏れる。
「・・・。」
漏れた息は薄白い蒸気となって、いつの間にか宙へと消えていく。
きっと、この森は季節の変遷による模様替えが行われたんだなぁ、としみじみ感じていると今度は私の身体にも冷たい風が当たり始めた。
冷たい風がさわりさわりと肌に触れ、あまりの寒さとくすぐったさに思わずビクッと身体が飛び上がる。
森を模様替えさせてしまう程の冷たい風は意外と
・・・長年、吸血鬼の身体には縁の無かった〖寒くて身体が凍える〗という感覚。
前世・・・つまり人間としての〖私〗を思い出させてくれるような・・・そんな懐かしい感覚だ。
そんな感覚を思い出させてくれたのだから、私の力を封じて人間の少女程度の身体にまで弱体化させた夢月さんと幻月さんには感謝するべきなのかもしれない。
私を監禁して拷問まがいの事をしてきたり、弱体化しちゃったおかげで射命丸さん達に軽く誘拐されちゃったり、化け物に追いかけまわされたりしちゃったけれど・・・。
・・・。
・・・うん。
思い返せば大変な目にあってばかりですね・・・
・・・やっぱり怖いのは嫌ですし、そう思えば吸血鬼のチートスペックで無双して手に入れる平和が1番ですよね!
なんたってさっきは人喰いの怪物に食べられちゃいそうになりましたし・・・帰ったら少しばかり夢幻姉妹に文句を言っても良いはずです!
プンプン!
・・・まぁあの姉妹の事ですし文句をいってもなんだかんだで丸め込まれそうですが・・・
・・・ぐぬぬ。
我ながらちょろい・・・。
・・・というか、あれ?
・・・そう言えば私を追いかけてきていた人喰いの怪物はどうなったんでしたっけ?
「(ニコニコ)」
「・・・あ。」
少し離れた所から凄く良い笑顔で頬杖をついてこちらを見つめてきていた青蛾さんを見た私は何があったかを正確に思い出した。
・・・とりあえず全力で青蛾さんから目を逸らし、そっと目を閉じて吸血鬼の超速思考で現実逃避を始めてみる。
・・・さ、さて!
この世界に吸血鬼として生まれてから今に至るまで、私は季節の変遷なんてものを感じた事がありませんでした。
季節を感じる事ができなかった理由としては色々と考える事ができますが、1番は吸血鬼のチートスペックによるものだと考えられます。
吸血鬼は基本的には人間と同じ様な身体構造をしており、その生活様式は人間と似通ったようなものと言われています。
昔に妖怪研究家のリヴェリーさんに聞いたところによると、吸血鬼に限らず力を持った妖怪は例外なく人間に似通った身体構造と生活様式を持つとされているようです。
では、何故人間の時とは違い吸血鬼の身体で季節を感じる事ができなかったのか・・・
リヴェリーさんの妖怪研究による結論では、妖怪の身体能力の以下の2つの理由によるものであるとされている。
1つ目は妖怪だけが持つとされる力、〖妖力〗による心身機能、身体構造の保護・強化作用によるもの。
これは例えを簡単に言うなれば人間の身体の循環器系による血液の流れを妖力が保護・強化する事によって人間にとってありえない速度による血液循環を可能とし、それによって代謝などの心身機能が大幅に向上させる事ができるといったものである。
これは、初めて吸血鬼としての自分の脈を橈骨動脈を触って確かめてみた際にまるでマシンガンの如く脈打っていて驚いた事があったのでなんとなく理解できた。
というか、妖力による身体の保護・強化作用は何も血液循環だけに限定した事でもなく、さらに言えば吸血鬼はそれとは別に血液操作や超再生能力等のチート能力も持っている。
よって吸血鬼に限らず、妖怪と呼ばれる存在の身体の秘密はその莫大なまでに多岐にわたる〖妖力〗の作用や妖怪独自の〖基礎能力〗によって解明不可能であると結論付けられている。
2つ目の理由は妖怪の魂が性質の変化に耐えうる特殊な性能を持っているから。
〖魂〗というものは〖存在〗が持つ〖核〗であり、その〖存在〗の性質などを保存し記録している、言わば〖存在のタイトル〗のようなものだ。
簡単に言うと、例えば吸血鬼の魂は〖凄まじい妖力を持ち、超再生能力、不死性などの恐るべき能力を持った存在〗という〖存在のタイトル〗を持つ。
他にも狼男は〖満月を経る度に力を増していく狼の姿で二足歩行する存在〗。
悪魔は〖魔法に関する原初の知識を持ち、契約を司る存在〗といったように様々な〖存在のタイトル〗を持っている。
まぁこれはあくまで私自身が推測しているタイトルであって本当にそんなタイトルが〖魂〗に記録されているとは限らない。
よって〖妖怪〗は妖力の作用による身体構造や機能の変化によっても〖存在のタイトル〗は柔軟に変化しているとされている。
ところが〖人間〗は〖妖怪〗とは違い〖存在のタイトル〗が〖普通の人間〗で統一され、基本的に例外なくその記録を書き換える事が出来ないとされている。
つまり、人間の魂だけが妖怪と違い唯一不変であり、妖怪のような身体構造・身体機能などの存在の大きな変化を記録する事が出来ないとされている。
それでも、〖人間〗が産まれてから成長し生活していく上での発達に伴う小さな変化(子供の身体から大人の身体に成長する事)は〖存在〗に記録する事は可能である。
ただし、〖人間〗の身体構造・身体機能の変化の記録には明確な限界点がある。
赤子として産まれ、成長し、人生を謳歌していく中で、魂の閾値に到達するまでの期間を〖寿命〗と言い、この〖寿命〗という概念が人間を初めとした妖怪以外の生物を短命にしている要因とされている。
この魂の閾値を〖秘術〗によって底上げし不死性を得ている人間が〖仙人〗であり、魂を総括する地獄の住人に追われていると言われている。
その他にも前世で言うところの〖偉人〗と呼ばれる人間も妖怪でいう〖畏れ〗と同義の一種の〖信仰〗にも似たような畏敬の念を集めると、その〖偉人〗の魂を人外たらしめるとかなんとか・・・
そもそも人間やその他の生物と違って妖怪という存在は核となる物語に人間やその他の生物が畏れを持つ事によって生まれる、言わば創作物だ。
妖怪の私が言うのも変だけど・・・
・・・とにかく、そんな創作物とされる妖怪はその創作の過程からか、柔軟で加工しやすい魂を持つのだろう。
とはいえ妖怪の〖魂〗の出自に関してはリヴェリーさんでさえもよく分かっておらず、表向き全ての〖魂〗を総括しているとされている地獄の住人でさえもあまり良く分かってないんじゃないかとも言われている。
ただ、〖魂〗の違いが人間と妖怪との大きな違いとされていて人間を人間たらしめ、妖怪を妖怪たらしめている理由であるとされている。
私の場合、〖妖怪〗である事に付け加え、〖真祖の吸血鬼〗という、言わば〖世界〗が創作した莫大な存在値を持つ〖大妖怪〗であるらしく、その莫大な存在値によって大抵の事は何でもできちゃうらしい。
そんな〖大妖怪〗達は基本的には〖〇〇者〗と呼称されていて、伯爵や夫人は〖真祖の吸血鬼〗である〖調停者〗と呼ばれている。
まぁ伯爵の場合は〖調停者〗というよりも、面倒事を押し付けられる苦労人的な感じだし〖保護者〗とも言えるかもですね笑
夫人は間違いなく〖調停者〗ではなく〖変質者〗です。
〖変質者〗で間違いありません。
大事な事なので2回言いました!
・・・っと、かなり長々と思考を続けちゃいました・・・。
つまりは、そんな訳で妖怪の身体的特徴として、私には寒いとか暑いとかいった一般的に人間が〖不快〗と感じるような感覚が分からなかった、という訳です!
・・・そもそも月光館の外に出るなんて数十年単位であるかないか、というような有様でしたし・・・
・・・で、でも仕方がないんです!
だって魔法の研究や開発が楽しかったんですもん!
楽しすぎて2、3年食事もとらずに地下に籠っても許されると思うのですよ。
・・・その時はヴァルターにめちゃくちゃ心配されて怒られましたが・・・
・・・こほん。
また思考が脱線しかけました・・・。
そんな訳で吸血鬼のチートスペックのおかげで今世の私は〖暑い〗とか〖寒い〗とかいった人間として当たり前の感覚を感じる事ができませんでした。
まぁ、正直に言うと、前世で日本に居た身としては、はっきりとした四季の変化を楽しむ事ができず残念だなぁ、とは思っていました。
だから、封印による影響で、人間と同程度まで身体機能が低下していて、誘拐されている今、冷たい風に震える私の身体や、落ち葉の絨毯、寒そうな木々を見て、感じて、季節の変遷というものに少し感動しているのかもしれませんね。
元日本人としての遠い記憶から、今の景色を考えると今の季節は恐らく晩秋の季節・・・
天気予報のお兄さんお姉さん的に言うと
『冬将軍が見え隠れし始め本格的に肌寒くなってくる今日この頃、皆さんどうお過ごしでしょうか?』
『お出かけの際には厚着をして寒さ対策を万全にしてからお出かけしましょうね!』
と言われ始める季節でしょうか・・・
しゅるしゅるしゅる
静かな森に響く、布が擦れる音。
そんな時に、再度冷たい風が身体に当たり、何故か先程よりも1層と寒く感じる風に身体がガタガタぶるぶると震える。
人間の身体は寒さから身を守る為の機能として、筋肉を小刻みに収縮させ、震えさせる事で熱を生み出す機能が備わっている。
これは、医学用語では〖シバリング〗と呼ばれる機能であり、体温の変化がそのまま生命維持に関わる、恒温動物にはなくてはならない大切な生命維持機能だ。
でも、一般的には体温が31℃以下になってしまうと、その生命維持機能が動かなくなり、死に至ってしまうと言われている。
とはいえ、全身バラバラにされても綺麗さっぱり再生する事ができる吸血鬼にそんな生命維持機能がちゃんと備わってるとはおもえませんが、実際に震えている今の私は例え弱体化して人間のようにもろくなっていたとしても低体温で死んじゃう事はないでしょう・・・多分。
・・・まぁ、間違いなく風邪は引きそうですが。
・・・。
・・・と、まるで自分の知識のように医学的な講釈を垂れてみましたが、何故私はこんな知識を持っているのでしょうか・・・
医学に関しては前世ではそんなに詳しく知りませんでしたし、そもそも私は史実の歴史以外の分野の学問は専門外だったのに・・・
もしかしたら、この知識は前世で誰かに教えてもらった知識・・・なのかもしれませんね。
まぁ、誰に教わったかは全然覚えていませんが。
・・・そもそも私が前世の事で思い出せている事は〖私が大学教授でレトロスペクティブという懐古趣味、歴史に基づくサブカルチャーを研究していた事〗、〖そんな研究を兼ねた大学の講義で出会った学生の宇佐見蓮子さん、マエリベリー・ハーンさんと、よく行動を共にしていた事〗、〖前の世界における私という存在の出自〗くらいです。
何度かは夢で前世の事を思い出せているみたいですけど、起きたら全て忘れちゃってるんですよね・・・。
それでも、何故か夢幻世界に居た時には夢で見た前世の記憶を思い出せましたが、未だに理由は分かっていません。
特に〖宇佐見蓮子さんとマエリベリー・ハーンさんとの記憶〗は全然思い出せそうにありません・・・。
というより、私の前世の記憶の一部まで奪っていった〖紫〗さんに会って話を聞かない事には、記憶については進展はなさそうですけどね・・・。
・・・まぁ、それはさておき、恐らく、今の外気温は5~10℃といった所だろうか。
そんな外気に曝されてしまっている人間と同程度まで身体機能が低下している身からしたら、風邪でもひきそうなくらい寒さでシバリングしてしまっている状態です。
・・・ましてや、纏っていた外套まで急に脱がされたりしたものだから余計に寒いので、震えが止まらない訳なのです・・・。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・外套を・・・脱がされた?
考え事をしている間に、いつの間にか外套を脱がされていたことに今更ながら気付いた私は、困惑しながら外套を脱がしてきた張本人である青蛾さんに疑問の視線を送ってみる。
すると、振り向いた私に青蛾さんは表情1つ変えずニコニコ笑顔で言った。
「それじゃあ、さっそくだけれど・・・隅々まで身体を見させてもらえるかしら♪」
「・・・・・・・・・・え?」
言われた言葉を上手く理解出来ずに固まる。
さっそく?
私の身体を隅々まで見る?
な、何を言って・・・?
困惑して固まった私に構いもせずに、青蛾さんは慣れた手つきで、続けて私の上着を脱がそうとボタンやホックをすらすらと外していく。
「ちょ、ちょ、ちょっとまって!!待ってくらひゃい!!!」
あっという間に上半身を下着1枚にされた所で、ようやく変な声を出して、腕で身体を隠し、青蛾さんの手から離れる事に成功する。
「あら?どうしたの?なんでもするって約束でしたよね?」
「・・・あ。」
・・・そう言えば、怪物から助けてくれる代わりになんでもすると約束してしまっていた事を思い出した。
・・・と、言うよりも思い返せば今までのシバリングとかの思考は、そんなとんでも約束を勢いでしちゃった事の現実逃避の為にしていただけなのであるが・・・。
服を脱がされて没収されて半裸になった上半身を必死で腕で隠しながら、青い顔で青蛾さんを見る。
青蛾さんはニコニコしながらも、ハイライトの無い怖い瞳でじっと私の事を見つめている。
・・・た、確かにそんな約束をしてしまった私も悪いし、できる限りの事はしてあげたいとは思っていたが、い、いきなり、そ、そんな・・・え、えっちな事だなんて。
・・・わ、私はそんなえっちな知識なんかないし、ち、ちっちゃくて、ひ、貧相な身体だし、な、なんの魅力も無い訳で・・・
・・・。
・・・・・・自分で考えておきながら泣きそうになってきた。
「あ、あぅ、い、いぇ、いや、あ、あの。・・・さ、さすがに、こ、ここではぁ・・・」
言葉尻を小さくしながらも、変な妄想で真っ赤になった顔を伏せて、再度下着まで脱がそうと手を伸ばしてくる青蛾さんの服の袖を弱々しく掴んで必死で抵抗しながら、涙目で訴えてみる。
・・・誤解の無い様に言っておきますが、青蛾さんに変に媚びて涙目になっているのではなく、ガチで怖くて涙目になってます。
「くちゅんっ。」
涙だけじゃなくて鼻水まで出てきた・・・
頭も痛いし、なんだかめまいも・・・
「あら?・・・あぁ、なるほど。確かに
そう言って私の服からひとまず手を放してくれた青蛾さん。
やけに「人間の」と言った時に含みのある言い方をしているのが気になりましたが・・・まぁ、それはともかく!
や、やった!
やりました!
えっちな事回避です!!
拍子抜けする程に上手くいった貞操の守護に諸手を挙げて喜びたいところを我慢しながら、それでも嬉しくてニマニマしていると、いきなり青蛾さんにガバりと抱き寄せられた。
「ひゃ、ひゃい!?せ、せいがひゃん!?にゃ、にゃにを!?」
「ガタガタ震えていて寒そうだったのでぎゅっと抱き締めてるだけですよー。どうですか?アズールちゃん。暖かい?」
青蛾さんの柔らかくて暖かい身体に包まれて凄く暖かい・・・けど、は、恥ずかしい・・・
「あ、暖かい・・・です。」
「うん♪それなら良かったわ!とりあえず今すぐ東の島国にある私のもう1つの隠れ家に向かいましょうか!そこでこの続きをする事にしましょう♪」
私の返答に少し嬉しそうに微笑んだ青蛾さんは、なんだか不思議な力を感じる
すると、そこに妙な力の渦が出来上がり、簪を振り終えた青蛾さんが最後に霊力の様な力を込めると、渦が消滅し、宙に真っ黒な丸い穴が現れた。
「さぁ、すぐに着くからしっかり掴まっていてね。離れ離れになったりしたら大変だから、気を付けてね。」
そう言って青蛾さんは抱き寄せた私をさらに優しく抱き締めてきた。
「え!?あ、ひ、ひゃい!?」
さらにぎゅっと抱き締められて全身に青蛾さんの柔らかな身体の温もりを感じて思わず上擦った声が出る。
「あら?・・・アズールちゃんはなんだかお花のような良い香りがするわね。」
抱き寄せられた際に、青蛾さんにクンクンと匂いを嗅がれる。
一応、風呂上がりに誘拐されたままですし、館の皆の美容の為に私が魔法で開発・製造した、リラックス効果のある花の香りがする石鹸や美容液を使用しているので、その匂いでしょうか。
もし青娥さんが欲しいのでしたら空間倉庫に在庫がありますし、助けて貰ったお礼に・・・もとい、私の保身の為に取引してみましょうか・・・。
「ふふふ。この匂い・・・余計に楽しみが増えたわね♪色々教えてもらいますからね?」
お、教えてもらうって・・・
そ、そういうえっちな事は私はまったくもって分からないんですけどっ!?
ど、どっちかというと、多分教えてもらう側なんですが!?
・・・って教えてもらうにしても、こ、心の準備がぁ。
そんなピンク色の思考が頭の中をぐるぐると回って、頭から湯気が出る程に困惑している私をギュッと抱き寄せたまま、宙に開いた穴に青蛾さんが飛び込んだ。
謎の暗い穴に入った時に感じたのは転移魔法を使用した際に感じる感覚と似たような軽くふわりと浮く様な感覚。
仙人は、仙術によって自らの世界〖仙界〗を創造する力を持つと言われている。
つまり、この吸血鬼の目でも見通せない暗い闇深い空間は恐らく青蛾さんが創り出した〖仙界〗。
話の内容からして、ある意味世界から独立している〖仙界〗を通って長距離転移をしているのだと、長年培ってきた魔法知識と吸血鬼の超速思考によって結論付ける。
そんな思考も半ば、しばらく暗い空間を青蛾さんにくっ付いて進んでいると、何故か途中で身体から力が抜け始め、へなへなと座り込みそうになった。
あ、あれぇ、ち、力が抜ける?
「おっと。大丈夫ですか?アズールちゃん。・・・この空間は
脱力して崩れ落ちそうになる私の身体を青蛾さんがギュッと抱き締めて、倒れないようにしてくれる。
青蛾さんの身体の柔らかさを全身に感じながら不思議と落ち着く青蛾さんの香りが鼻腔をくすぐる。
なんだか、どこかで嗅いだことがあるような、お線香のようなこの香りを嗅いでると頭がボーッとして青蛾さんに無警戒に身体全身を預けてしまう。
「・・・ふふふ。もう少しですよー♪」
そんな事を言いながら優しい声音で頭を撫でてくる青蛾さん。
そんな青蛾さんの言葉に更に警戒心が薄れ、どんどんと身を預けていってしまう。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・あ。
お、思い出した。
こ、この香りは以前に夫人が私に盛った媚薬と同じ香りだ・・・
確か、夫人は「この薬は飲んで服用するものじゃなくて、この独特な香りを意中の相手に嗅がせて、対象の警戒心を薄れさせて、強制的に身体を発情させ服用中触れ合ってる相手を好きになっちゃう薬よ!だから、アズちゃん!私と1つになりましょうね♥」
って言っていましたね・・・私の恐怖体験ベスト5にランクインしている出来事です。
って、そんな昔話を思い出してる場合じゃない!
や、やばい。
は、肌がピリピリ痺れて、ち、力が抜けてきた・・・
し、しっかりするのですよ、私!
ジンジンと疼いて熱くなってきた身体にムチを打ち、なんとか顔を挙げて青蛾さんの方を向いてみる。
すると、ハイライトが消えた目で笑う青蛾さんがじっと私を見ていた。
そ、そうでした・・・。
怪物から助けてもらった事で無警戒になってしまっていましたが、そ、そもそも青蛾さんは私を誘拐した悪い仙人さんな訳で・・・
「よしよし♥順調ですね♥身体が切なくなったらいつでも、私で良ければ存分に甘えてもらって良いですからねぇ♪」
さらに青蛾さんは優しい声音で優しく私の頭を撫でてくる。
頭を撫でられる感覚がなんだかすごく気持ち良くて、身体の底から頭のてっぺんまでピリピリとこそばゆい感覚が登ってくる。
はぅわぁ・・・せいがしゃん、しゅきぃ・・・・・・・・じゃなくてっ!!
ま、まずい、まずいまずいまずい。
な、なんだか思考も痺れて、乱れてきました・・・
た、確か夫人の時は魔法で解毒して事なきを得たはずなので、魔法を使えば媚薬の効果は消えるはずです。
とりあえず、今ある霊力を魔力に変換して解毒魔法を・・・その後は息を止めるしか・・・。
「〖解毒魔法《エントギフト》〗」
解毒魔法を発動し私の身体の中に溜まっていた媚薬の効果が排除されていく。
どうにか解毒は上手くいってくれたみたいで、徐々に痺れが解かれていった。
よし!
後は息を止めて、匂いを嗅がないようにするだけです!
「あら?それは魔法かしら?アズールちゃんは魔法も扱えるのね♪とっても博識で偉いわ♪・・・それに、どうやらこのお香の効果も知っていたみたいだし。またまた楽しみが増えたわ♪」
一生懸命息を止めて耐えていると青蛾さんがくすくすと笑って怖い事を言ってきた。
た、楽しみって・・・
わ、私はどんなエッチな事をされたとしても、心までは堕とされませんからね!
・・・で、でも、エッチな事って、一体、な、何されちゃうんだろう・・・
・・・と、先程の媚薬の効果なのか、こんな場面でも吸血鬼の超速思考は真っピンクの妄想が止まらず、妄想の中の私が割とえげつなく辱められ、頭がおかしくなりそうになる。
うぅ……/////
わ、私ってこんなにエッチだったっけ・・・
・・・い、いや、これはこのお香のせいですから!
わ、私はエッチなんかじゃないですもん!!
と、誰に言い訳してるか分からないような意味不明な事を考えながら息を止めて30秒程経った頃、突然明るい光が目に入ってきて、思わず目を閉じた。
「着きましたよ、アズールちゃん。」
そんな青蛾さんの声に恐る恐る目を開けてみる。
目を開けた先は綺麗に整えられた石室の様な場所だった。
その石室はかなり広く、前世で幾度か野球観戦の為に訪れた〖何とかドーム〗と同じくらいの広さだ。
そんな石室には数え切れない程の数の蝋燭が綺麗に並び、石室を煌びやかに明るく照らしている。
それぞれの蝋燭は何らかの術によって永久的に明るさを保てる様に燃えているようだ。
そして石室の中心には、蝋燭の明かりに照らされて一際目立つ茶色の木造の塔が建っており、見上げる程に高いその塔は、お寺の塔の様に八角形の形をしていた。
外壁は、鶴の飛ぶ姿が模様に入った、黄色い和紙のようなもので彩られていて、所々に窓があり、窓には木で出来た格子がはめられている。
「美しい場所でしょう?ここは。」
そんな美しくも厳かな塔を見て惚けていると青蛾さんが私の頭を撫でながら誇らしげに、愛おしそうに言ってきた。
「ぷはぁ!!」
ちょうど限界を迎えた止めていた息を吐いて深く息を吸う。
・・・どうやら、先程の媚薬の効果のあるお香の匂いはしていないようだ。
・・・というか、正直目の前の荘厳な景色に圧倒されて息をするのを忘れていた。
「す、凄く・・・綺麗です。」
本心から、美しい景色に感動して零れた私の言葉に、嬉しそうに笑った青蛾さんが指を鳴らすと、更に空中にも蝋燭が現れ、頂上が見えないくらいに高い塔の全貌が照らされた。
更に美しい塔の全貌を見て、感動を通り越して唖然となった私に幻想的な景色をバックにした青蛾さんが左手の拳を右手で包んで、いわゆる〖
「ようこそ〖夢殿大祀廟〗へ。」
【後書き】
どうも、唐揚げにはマヨネーズ派、目玉焼きにもマヨネーズ派、なんなら白ご飯にもマヨネーズ派のマヨラーことまほろばです。
最近は食べるラー油とマヨネーズを調合してご飯にかけるラーマヨご飯が、自分の中で大流行りして、美味しすぎて、美味しすぎて・・・・・食べすぎた結果、健康診断の結果がえげつない事になってました。
簡単に言うと肝臓がお亡くなりになっていました。
・・・(^ཫ^)
それはそうと・・・
更新が1ヶ月も遅れてしまい
申し訳ございませんでしたぁぁあm(_ _)m(既視感)
と、いうのも年末年始は毎年プライベートが忙しくなるので、執筆時間が本当に無くなってしまうのです(。⊿°」∠)
それも2月いっぱいまで続きそうなので、次話も遅くなるかもです(´;ω;`)
楽しみに待って頂けている方には本当に申し訳ないですm(_ _)mm(_ _)m
それはそうと56話です!
今話ではアズールの現実逃避と妄想が暴走してしまうお話です。
アズールは知識や技能がずば抜けて有能なくせに意外とアホの子の気質があるのでパニックになったり、1度勘違いしたりしちゃうとなかなか大変な事になっちゃう困ったちゃんです。
今話ではそういった描写が多く、分かりづらい事もあったと思います( ॑ཫ ॑ )
私もアズールの行動を一生懸命描写してるつもりですが、常人からすると頭のネジが1つ外れたような思考や行動をしてくるので、かなり大変です(;´Д`)
なので描写や語彙に関しては常々見やすいように修正はしていくつもりです!
さて、ここで今話の行間のお話を少々。
今話で、邪仙こと青蛾さんが自身の仙界を通って長距離移動をしていましたが、仙界で離れ離れになってしまうと、人間程度まで弱体化しているアズールちゃんは死んでしまうので、離れ離れになれない状況で、ここぞとばかりに媚薬効果のあるお香を焚いてアズールちゃんを自分のものにしようとしていました。
さすが、邪仙、ズルい!!
でも、そこにシビれる憧れるぅ!!(作者は青蛾さん大好きです)
といった所で今回の後書きはおしまいです!
次回も少し遅れた投稿になってしまうと思いますが楽しみに待っていただけると幸いですm(__)m