やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。   作:ひよっこ召喚士

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見透かす目:File.8 Page.7


 

よっしゃ、今日は待ちに待ったアレが警察から届く日だ。昼間は学校があるから見に行けなかったが、ようやく博士の所に行けるぜ。

 

蘭に説明して事務所を飛び出すまでが少し面倒だったが勢いで出てくればこっちのもんだ。見えてきたオレの家の隣の阿笠博士の家に飛び込んだ。

 

「あら、来たのね。博士ならいま、届いたフロッピーを確かめる為にパソコンの準備をしてるわ」

 

「そうか、まだ見れねぇのか」

 

入って直ぐに投げられた言葉は一週間前に出会った帝丹小学校の同じクラスに転校してきた灰原哀…本名を宮野志穂、コードネームでシェリーと呼ばれていた元黒の組織の女からだ。

 

それにしてもあの日は忙しい一日だった。まさか本当に誘拐事件の相談の手紙が少年探偵団の所に届くとは思わなかったし、いざ偽金作りの連中を暴いてみれば黒の組織とはなんも関係が無かったし、そしてなにより…

 

「なによ」

 

「なんでもねーよ」

 

まさか転校生がオレと同じ様に幼児化した黒の組織の元幹部で、オレの飲んだ薬の製薬に関わってて、その薬のデータが入ったフロッピーを取りに行った先で密室殺人のトリックを解くことになるなんてな。

 

そして、彼女があの雅美さんの、いや明美さんの妹だったなんてな…詰め込み過ぎにも程がある一日だったのは確かだ。だが、その苦労だって今日で全てが報われると思えばどうでも良い。

 

「おーい、準備が出来たぞ哀くん、っと新一ももう来とったか」

 

パソコンの立ち上げが済んだようで揃ってパソコンの置かれている場所へ集まる、立ち上げはフロッピーをよく知っている灰原がやる事になった。

 

「しかしよく警察のチェックを通ったの〜」

 

「組織から配給されるフロッピーはパスワードを入力しなきゃただの文書ファイル…怪しまれるわけないわ…」

 

カタカタと打っているのはそのパスワードか…説明しながらも淡々と進んでいく作業に胸が高鳴る。ようやく元の姿に戻れるかもしれねぇんだからな。

 

「どうだ?出そうか?」

 

「ええ…それに入ってるデータは薬だけじゃないわ…私が入る前に携わった人の実名と住所が、コードネームと一緒に入ってるはずよ…この研究に出資した人物の名前もね…」

 

焦る気持ちからつい口から出た急かしてるのとそう変わらない確認の言葉に、嬉しい補足付きで返ってきやがった。

 

「なるほど…うまくすれば…奴らをまる裸に出来るかもしれねぇってわけか…」

 


〜Close〜

 

夜闇の中でも一際目立つ黒い車

 

「兄貴…例の広田ってジジイ…くたばったらしいですぜ…」

 

「ああ…(バラ)す手間が省けたな」

 

中の会話も黒色に染まっている

 

「けど…相変わらずガス室から消えたあの女の消息はわからねーまま…」

 

成果のない状況に冷や汗をかく

 

しかし兄貴分は余裕を崩さない

 

「今、組織の内部に奴の逃亡を手助けしたネズミがいなかったかどうか洗ってるところだ…それに…奴の立ち回りそうな場所はこれで全て潰れた…」

 

獅子身中の虫はいなかったがな

 

その様に呟きながら嗤っている

 

「その内奴の方からシッポを出すさ…」

 

「でも兄貴…例の薬のフロッピー、警察に押収されちまったて聞きやしたけど…」

 

組織でも取り扱い注意な代物だ

 

万が一の可能性から不安は残る

 

それすらも取っ払う鋭い視線は

 

「なーに心配するな…あのフロッピーにはちょっとした仕掛けがあってな…」

 


〜Open〜

 

「な、なんじゃこれは!?」

 

順調に進んでいた筈の作業が終わり、ついに薬のデータが画面に表示されたかと思うと画面の下部から全てが黒に塗り潰されていく。

 

まさかと頭に過ったが灰原の表情も驚きに染まっており、なんとか対処しようと指を必死に動かすがどうしようもないと悟るとそっと手を止めた。

 

「コンピューターウイルス闇の男爵(ナイトバロン)!!!」

 

「なに!?」

 

耳に馴染みのある単語が出てきたが、それとの関係性はないだろうと頭を振って灰原の説明に耳を傾ける。

 

「組織のコンピューター以外で立ち上げると、ウイルスが発生する様にフロッピー自体にプログラムされてたのよ…迂闊だったわ」

 

そんな面倒なプログラムを仕組んでいる理由なんて一つしかねぇよな…と言うことは…

 

「じゃあデータは…全部…」

 

「ええ…何もかも…全て消滅したわ…」

 

灰原はやる事は無いと席を立ってその場から離れようとする。博士はパソコン全てを侵食していくウイルスにあたふたしており、オレはただただ手から逃げていったソレに対する悔しさを噛み締める。

 

「あなたとは長い付き合いになりそーね……江戸川君…」

 

ああ…組織を追い詰めるその時まで…な。

 


 

あれからせめて灰原の知っている事だけでも教えてもらおうと組織に関する情報のやり取りと共に組織を追う上での方針を話した。

 

「組織の被害を受けている人達は大勢いるわ…ただ、それが組織のせいとは気づいてないだけ…」

 

オレ達は特殊な例だろうが、アイツラが関わった犯罪が誰にも気付かれて無いってのは許せねぇ。

 

「元の体に戻りたければ、今までどおりあの迷探偵を名探偵にし続けるのね…事件の依頼が増せば、いずれ彼らが関わっていた事件にぶつかるかもしれないわ…」

 

実際におっちゃんの所に雅美さん…いや、明美さんの件も転がってきた訳だし、遠回りだが効果が無い訳じゃねぇ。だが自分で動けねぇのはどうにももどかしい。

 

「あなたが今までどおり真実を求め続けるのならね…」

 

そんな事は言われなくても端から決まってんだよ。オレがオレである限り、諦めて止まることはねぇ。

 

「っとそうだ。何人か組織の連中のコードネームは知ってんだが一人気になってる奴がいてソイツについてなんか知らねぇか」

 

「名前も言わずに知らねぇかって言われてもなんとも言えないでしょ」

 

そりゃそうだ。この前からずっと焦る気持ちばっかで仕方がないな。でも、灰原からの聞くのが現状で一番の情報源だからな。

 

「わりぃ、ソイツなんだが()()()()って呼ばれてんだよ。オレが薬を飲まされた場所にもいたみてぇだし、それにお前の姉さんの現場にも…」

 

その名前を出した瞬間に灰原の雰囲気が変わったのが分かった。怒りもあるがそれ以上に強い感情がごちゃまぜになっているのが分かる。

 

「ねぇ…お姉ちゃんの時のこと全部教えてちょうだい」

 

組織に関する情報の交換条件かの様に言うが、ただただ家族の事を知りたいと願う姿、そしてフィーヌに対する何らかの想いからの言葉にオレは素直にあの時の事を細かく話した。

 

「そう…()()()()()()ってそういう事ね…それなのにあいつもお姉ちゃんも…」

 

何か思う所があったのか明美さんの最後を話した所で灰原はブツブツ呟きながら固まった。放っておいた方が正しいのかもしれないが、このままにしておくのもあれに思い、オレの目的の為にも話をもとに戻した。

 

「なぁ、フィーヌって奴はどんな奴なんだ。殺されたって言うのにお前のお姉さんは悪く言わねぇし、なんか知らねぇがオレのことを嫌いだって愚痴を言ってたとも聞いたぜ。少しでも良いから知っておきてぇんだ」

 

そう言うと少しボーッとしていた灰原は自分を取り戻した様でオレの方を向いて何かを考えてから一人頷いた。

 

「彼については活動場所も本名も大体の事は知ってるから教えられるわ。彼は組織からの憶えが良いから持ってる情報もかなり多いはずよ」

 

「おお、そんなら…!!」

 

そんなに知ってる情報があるとは思っても見なかった。しかし、それが本当ならフロッピーには劣るがかなりの成果になる。そんな風に期待をしていたがそれは脆く崩れていった。

 

「でも彼を捕まえた所で意味は無いわ。むしろ彼を捕まえる気なら私は何も話さないわよ」

 

「はあっ!?どうしてだよ!?」

 

灰原にとってもそいつは仇なんじゃ無いのかと意味不明な宣言に混乱しているとそれを更に助長させる言葉が吐き出された。

 

「彼も加害者なのは確かだけど私と同じで人質を取られて働かされてる被害者でもあるからよ。人質になってるのは私と違ってまだ中学生の妹らしいけどね」

 

その短く纏められた情報に、オレは頭が揺さぶられる様な感覚を覚えた。

 

「なんだよ!!それは…!!」

 

到底許される様な事じゃない。確かにそれならフィーヌって奴を捕まえたらその人質に被害が出る可能性があるから迂闊に動けねぇ。いや待てよ…

 

「でも灰原、ソイツは組織からの憶えが良いって話じゃ無かったのかよ?」

 

「そうね。彼の経歴も理由の一つだけど、一番の理由は彼を脅しているのが組織の幹部で、その事を今となっては当事者を除くと私しか知らないのだからね」

 

そのまま淡々とフィーヌって呼ばれていた奴が酷い虐待やイジメに合っていた事、そして組織からは裏で生きる事をフィーヌが望んでいると思われてる事を説明された。

 

確かにそんな状況で下手に接触すればフィーヌって奴の立場が悪くなり、人質の扱いが悪化するのは目に見えてる。でも、それなら人質を保護すれば…

 

「無理よ。そんな事が可能ならとっくに彼が手を回してるわ。組織の目が何処にあるか分からず、手が何処まで伸びるか分かんない状態でやれる事はないのよ」

 

全容が分からねぇ組織の恐ろしさか…これだけ分かっていて打つ手がねぇのかよ。何か…何か…

 

「あなたがその調子ならフィーヌについては教えられないわよ。彼があなたを嫌ってるのは探偵の中途半端で余計な手出しを警戒してるのが要因の一つよ」

 

それ以上に探偵と言う存在に対しての嫌悪も酷かったし、役立たずの警察に対しては一緒に愚痴をこぼしていたと続いた。警察が役立たずで探偵が余計な者か…

 

「その様子なら捕まえる気は無さそうね…で、どうする? 余計な腹芸や心労に蝕まれるくらいなら知らないでおくのも一つの手よ」

 

「いや、それくらいで止まってちゃ組織を追い詰めるなんて出来やしねぇ。組織を潰して、全てを白日に晒して、そのフィーヌって奴も人質もどうにかしてやる!!」

 

「それを彼は望んでないでしょうけど…まぁ知らずにやらかすより知ってた方が私もコントロールしやすいから教えてあげる」

 

ずっと立ったまま喋っていたから疲れたのか近くにあった椅子に腰掛けるとそのまま座面を回してオレの方へ向き直る。

 

「彼の…フィーヌの活動場所は千葉県、全域が彼の庭みたいなものと聞くわ。名前は一人も知らないけどあちこちに部下が居るとも噂されてる」

 

千葉か、東都からかなり近い位置に陣取ってるとなるとこっちも動く時は気を付けねぇとな。部下について何も情報が無いのも警戒がいるか。

 

「他にも彼自身も幾つか顔を持っていて、戸籍付きの偽名であちこちに影響力も持っている。けど裏ではフィーヌの名が、表では彼の本名自身が一番強い効力を発揮するはずよ」

 

本人も顔が複数あるってなると知らずの内に出会している可能性すらあるな。そんなもしもを想像していると灰原がもったいぶるかの様に一息入れた。

 

「表での彼の異名もたくさんあるわ。千葉が誇る超人、八幡神の遣わした勝利の使者、総武高校の麒麟児、なんてね」

 

「お、おい…まさか…!?」

 

「黒の組織の幹部フィーヌ、その正体は貴方も知ってる天才高校生と名高い()()()()()

 

その名前をはっきりと告げられた瞬間に目の前が真っ暗になったかのような錯覚を覚えた。ははっ、オレあいつに嫌われてたのか…

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