最悪にはいつだって、更なる底があるから。
苦しいときこそ、笑うんだ。これ以上悪化させないために。
しかし裏側にあるのは、澱んでいく気持ち。
でもおばちゃん頑張りました。
弾かれたシュート。切れ落ちたミサンガ。それはまるで、私への通告。
もうこの先は、何もない。
もうこれ以上、進めない。
ここが貴女の、行き止まり。
何百回何千回何万回、シュート練習を繰り返してきた。ミスも不調も、慢心も気負いもなかった。
――掛け値なし、会心の一投だったのに。
それでも外れた、失敗した。つまりそれは、私が――
去年までのコンディションなら、絶対に外さなかった。昨日の私でも外さなかっただろう。でも、今はもう。
……インターハイに出られただけでも、御の字か。もっと早くその時が来てしまえば、どうにもならなかった。
試合が終わって、シャワーを浴びながら。頭の奥に燻る悔恨を、なんとか抑え込んでいく。
誰も暗い顔はしない、精一杯明るく振る舞うだけ。いっそ泣いてしまえば楽になれる、そんなのは皆分かっている。泣きたいけど、無理矢理笑うんだ。そうしなければ、自分を保てないから。
誰も私を責めはしない、私だって立場が逆ならそうするだろう。結果を見て
でも、でも――悔しい。
今のメンバーで試合をする事は、二度と無い。これでもう、御仕舞い。その最後の時を、こんな形で迎えたくはなかった。
嘆息しながら着替えを終えた私は、なんとなくスマホを手にしていた。
伝えなければならない、それは分かっている。でも、それが辛い。
意地を張るだけで何も出来ない私を応援してくれた、夢を追う勇気を与えてくれた、傷ついて尚闘い続ける意味をくれた。そんな人に言うのだ、力が及ばなかったと。支えてもらっておいて何も返せない、情けない先輩だと。
「……っ」
指先は私の迷いをそのまま映し、文面も何もかも変えてしまう。送信先は大喜くんではなく、由紀子さん。送られるのは、「明日、帰ります」という短い文面だけ。
程なく由紀子さんからは「分かった、気を付けてね」と、やっぱり短い文面が帰ってきた。何も聞かない、変に心配もしない、由紀子さんらしい反応だ。でも私が負けたことは、きっと伝わっている。あの人も同じ経験をしてきた筈だから。
一晩明けて、敗北を背負った帰還の途。さすがにポツポツと弱音は出るけれど、それでも努めて明るく振る舞う。泣きながら帰るなんて無様を晒すのは、絶対に嫌だから。
「あぁ、――疲れたね千夏さんや」
「そうだね」
電車の中でもたれ掛かってくる渚を押し返しながら、この先を考える。
学校で報告を終えたら、あとは各自帰るだけ。部活の予定はしばらく無し。残り少ない夏休み、どうしようかな。
そう言えば結局今年も、夏休みらしいことは出来なかったな。海もずっとご無沙汰だし、練習帰りに花火大会行ったくらいか。
――花火大会、か。大喜くんと蝶野さん、お似合いだったな。あんな風になれたら、な。
今からでも、出来ないだろうか。いやまあ奪い取るとかじゃなく、ごっこ程度で良いから。ちょっと大喜くんを借りて遊びに行くくらいなら、蝶野さんも怒らないだろうし。
二人は付き合ってるけど、友達的なスタンスで一緒にいるくらいは許されるかもしれない。
今日はバド部練習日だっただろうか、もしかしたら学校で逢えるかも。
「千夏さん千夏さん、なんか楽しそうだねぇー。……オトコ?」
「んなわけないでしょうが」
うっかり油断してしまったのが見つかったか、ニヤニヤする渚を軽く小突いてやる。
全く、そんな簡単なものじゃないんだ。
でももしかしたら、いつかなにかのきっかけで、そういう事はあるかもしれない。
ま、分からないけどさ。
「よしよし、告白の効果抜群のようだね!!」
「おまっ、……声でかいって!」
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……え?
ツライ。千夏先輩は総攻めでないとキツいんですよ。