結論はいつだって、裏切るから。
最悪にはいつだって、更なる底があるから。
苦しいときこそ、笑うんだ。これ以上悪化させないために。
しかし裏側にあるのは、澱んでいく気持ち。

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辛くて読み返すのが大変な回でしたわ…。
でもおばちゃん頑張りました。


アオのハコ#44 SideB

 弾かれたシュート。切れ落ちたミサンガ。それはまるで、私への通告。

 もうこの先は、何もない。

 もうこれ以上、進めない。

 ここが貴女の、行き止まり。

 何百回何千回何万回、シュート練習を繰り返してきた。ミスも不調も、慢心も気負いもなかった。

 ――掛け値なし、会心の一投だったのに。

 それでも外れた、失敗した。つまりそれは、私が――欠(・)け(・)始(・)め(・)た(・)と言うことだ。これから薄皮を剥ぐように、私は少しずつ落ちていく。最盛期を過ぎ、衰えていく。そうなっていく先輩たちを、ずっと見てきたから分かるんだ。

 去年までのコンディションなら、絶対に外さなかった。昨日の私でも外さなかっただろう。でも、今はもう。

 ……インターハイに出られただけでも、御の字か。もっと早くその時が来てしまえば、どうにもならなかった。

 

 試合が終わって、シャワーを浴びながら。頭の奥に燻る悔恨を、なんとか抑え込んでいく。

 誰も暗い顔はしない、精一杯明るく振る舞うだけ。いっそ泣いてしまえば楽になれる、そんなのは皆分かっている。泣きたいけど、無理矢理笑うんだ。そうしなければ、自分を保てないから。

 誰も私を責めはしない、私だって立場が逆ならそうするだろう。結果を見て犯(・)人(・)探しをしても、なんの意味もない。それより気持ちを切り替えなければならない。

 でも、でも――悔しい。

 今のメンバーで試合をする事は、二度と無い。これでもう、御仕舞い。その最後の時を、こんな形で迎えたくはなかった。

 嘆息しながら着替えを終えた私は、なんとなくスマホを手にしていた。

 伝えなければならない、それは分かっている。でも、それが辛い。

 意地を張るだけで何も出来ない私を応援してくれた、夢を追う勇気を与えてくれた、傷ついて尚闘い続ける意味をくれた。そんな人に言うのだ、力が及ばなかったと。支えてもらっておいて何も返せない、情けない先輩だと。

「……っ」

 指先は私の迷いをそのまま映し、文面も何もかも変えてしまう。送信先は大喜くんではなく、由紀子さん。送られるのは、「明日、帰ります」という短い文面だけ。

 程なく由紀子さんからは「分かった、気を付けてね」と、やっぱり短い文面が帰ってきた。何も聞かない、変に心配もしない、由紀子さんらしい反応だ。でも私が負けたことは、きっと伝わっている。あの人も同じ経験をしてきた筈だから。

 

 一晩明けて、敗北を背負った帰還の途。さすがにポツポツと弱音は出るけれど、それでも努めて明るく振る舞う。泣きながら帰るなんて無様を晒すのは、絶対に嫌だから。

「あぁ、――疲れたね千夏さんや」

「そうだね」

 電車の中でもたれ掛かってくる渚を押し返しながら、この先を考える。

 学校で報告を終えたら、あとは各自帰るだけ。部活の予定はしばらく無し。残り少ない夏休み、どうしようかな。

 そう言えば結局今年も、夏休みらしいことは出来なかったな。海もずっとご無沙汰だし、練習帰りに花火大会行ったくらいか。

 ――花火大会、か。大喜くんと蝶野さん、お似合いだったな。あんな風になれたら、な。

 今からでも、出来ないだろうか。いやまあ奪い取るとかじゃなく、ごっこ程度で良いから。ちょっと大喜くんを借りて遊びに行くくらいなら、蝶野さんも怒らないだろうし。

 二人は付き合ってるけど、友達的なスタンスで一緒にいるくらいは許されるかもしれない。

 今日はバド部練習日だっただろうか、もしかしたら学校で逢えるかも。

「千夏さん千夏さん、なんか楽しそうだねぇー。……オトコ?」

「んなわけないでしょうが」

 うっかり油断してしまったのが見つかったか、ニヤニヤする渚を軽く小突いてやる。 

 全く、そんな簡単なものじゃないんだ。

 でももしかしたら、いつかなにかのきっかけで、そういう事はあるかもしれない。

 ま、分からないけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしよし、告白の効果抜群のようだね!!」

「おまっ、……声でかいって!」

 

 

 

 

 

 

 

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 ――――――

 ――――

 ……え?

 




ツライ。千夏先輩は総攻めでないとキツいんですよ。

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