やれることは、やってみよう。
ライオンに笑われたくはないから。
いつだって、友達だから。
ある意味三部作。
確かにくれてやってほしい、とは言った。大喜のバカが見てて哀しくなるくらいに期待してたから、とりあえず形だけでもバレンタインやってあげてくれ、と。
ただ、なあ。いくら何でも良いからと言われたからって、市販品をそのまま普通にあげるなんて誰が思うだろうか。
歳上相手にこういう事は考えたくないが、雑だ。なんと言うか雑だ、千夏先輩は。
大喜も大喜でショックくらい受けるんじゃないかと思ったら、素直に喜んでるし。哀れすぎて腹も立たないわ。
しかし、どうしたものか。
「……そっか、先輩にも貰ったよね大喜……」
バレンタイン翌日の放課後、肩を落とす雛と屋上で向かい合う。現状は昼休みに聞いた大喜からの報告を、そのまま雛へと届けた所だ。まあそりゃ、凹むだろう。雛は一応手作りを渡したんだが、リアクションは薄かったらしいから。
あのバカは裏表無いから、こういう時は困る。せっかくなんだから派手に喜んでやってくれ、失敗作を押し付けられた俺の身にもなってほしい。会心の出来に至るまで、どんだけチョコを食わせられたと思っているんだ。もうしばらくチョコはいらない。
「千夏先輩はさ、やっぱり……そうなのかな……」
「さぁて、な」
まさか俺が切っ掛けだとは言えないな、無駄に恨まれてしまう。
しかし雛はあのバカの何処が良いんだか、選び放題の境遇だろうに。まあ「あの人のどこがいいかと尋ねる人に、どこが悪いと問い返す」なんて都々逸もあるし、本人的にはそんなもんかもしれない。
雛は中学三年間ずっと側にいたのに、そういう気持ちを自覚してなかったからな。傍から見ればバレバレなのに、必死で目を背けていた。競技の為に、そして今の関係を崩さない為に。
もし告白して断られたら、もう友達でさえいられなくなるだろう。そこまで無神経でも無いからな、あのバカ。
……しかし、だ。
「ま、当たって砕けてこい。骨くらいは拾ってやるから」
ここで気遣って進ませないままだと、それこそ後悔しか残るまい。背中を押してやるのも、友達としての務めだ。
人は誰でも傷付いて、大きくなるものだから。何度倒れても立ち上がる不屈のバカが挑み続けたら、いつか大喜だって屈するかもしれない。それが大喜にとって幸せかどうかは、それこそ分からないけどな。
「ホワイトデーなのに、こっちから行けっての?」
「押して押して押し倒せ、って言うだろ」
まあ言わないけどさ。こういう屁理屈つけてやれば、このバカはどうにか動こうとするだろう。
全く揃いも揃って、世話が焼けるったら。
毎度毎度振り回されっぱなしで、自分の浮いた話はそう言えば一つもない。バレンタインは雛に失敗作を押し付けられただけだし。
こうやってバカ共の御守りをしているだけで、良いんだろうか。
考えてどうなるもんでもないんだけど、さ。
俺がどうやったって、あのバカ共が自立してくれるわけでなし。中一以来の付き合いだ、きっとこの先も腐れ縁が続くだろうな。
とりあえず優先するべきは、大喜だな。雛にせよ先輩にせよ、大喜程のバカではないんだし。
どっちかとうまく行くように、というか両方を平等に近づけていこう。そうしないと俺が恨まれてしまう。
……でも日本は一夫一妻の国だからな……、将来的に良くないかもしれない。
さて、どうしてやろうかな。
せっかくのホワイトデーはこうして無駄に過ぎてしまうが、イベントはまだまだある。
波乱万丈な青春を送らせてやろうじゃないか、あのバカ共に。
よし、行こうか。やることは多いが、楽しんでいこう。