光る風を超えて   作:黒兎可

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苦戦しております……後のプロットはちゃんとあるのですが、上手く文章として出力できないといいましょうか(言い訳フェイズ)


ST236.あなたを守るあなたを探して:本線②

ST236.Yourself in [Current] :We step into tomorrow with hatred on our shoulders.

  

 

 

 

 

 自分が生まれた意味が何であるかなど、私にとっては大したことないです。

 いや、生まれつき風邪ひきやすいとか()()()()()()()だとかよく身体の色々な所に不具合が出るとか、小用が近いとか色々言いたいことはあるですが。そんなことより私にとっては、そもそもの生れからして望まれてたと言うか、物のついでという感じであったのです。

 育ての親が呆れながらそう言って笑うものですから、私としてはコメントに困るです。

 

 もとより、自分がまともな生き物でないと言う自覚はあるですし。スポンサーの意向というか、アマテル技研に出資と技術提携してた()()()の魔人側の都合というかですね。

 そう、私は本来なら生まれる予定はなかったのです。私の番号に本来なら「兄弟(きょうだい)」が来て、それでオシマイ。多少なりとも研究者たちも、自分たちがしているそれが倫理的にも「魔術的にも」禁忌の領域に足を踏みこんでいたという自覚はあったようで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う意味から、あえてソロモン72の悪魔にあやかって作られる予定だったらしいのです。

 ただそういう計画は往々にしてズレていくもの。私たち「英雄の子供達」は、「金星の黒」と「火星の白」を同時に使用させて安定させた個体を作ると言う当初の目的からはだいぶズレ込んだです。それはそう、私たちよりはるかに以前の、定着が上手くいかず戦場へ導入された兄弟姉妹たちだけでなく、兄弟を作るために必須として作られた私の上の姉妹たちを含めて。

 

 それでも72体を作った上で、なお「兄弟」を最終完成形として規定したからこそ、厄は祓われなかったのではないかと私は思うのです。

 いやそれを言い出したら、戦場によりにもよって金星の黒と火星の白の因子を内包した子供たちを放流していた時点で、すべて()()の手元に回収されると言う意味では最悪の最悪だったというか。このあたりは、かのフェイト・アーウェルンクスとていかに人間に寄り添おうとしたところで、元の生まれからは逃れられなかったということなのでしょう。

 つまりはヒトでなく、御方のための人形としての生まれから。

 

「で……、そんな明らかに厄ネタ極まりない話を老い先かなりみぢか~い気のするババァに話して何とすんの? ん? 何なの、このババアの胃袋ぶっ壊しにかかってるのかなあ子羊よ?」

 

 一応、懺悔室で懺悔を聞いてる相手は不明ということになっているのだから、もう少し黙るです。キャラが強すぎて個人の特定が容易過ぎるです。そんなんでよく教会のトップ務まったです。

 

「あたしゃ悪くねェ! 黙って勝手にぽっくり逝っちまったシスター・シャークティが悪い! ……本当、何で普通に逝っちゃったかねぇ。まだまだ教わる事いっぱいあったのにさ。百歳目前バリバリ現役シスターだったけど」

「大往生じゃない()()か?」

「子にも孫にも囲まれてさー」

「だから大往生だと思うでちよ。相当頑張ったでちよそれ絶対」

「何かさ~。『ココネ一人置いてミソラの世話を任せて逝くのはあまりに忍びないから……、この世の終わりヨ貴女』とかずっと言われててさ~。頑張って長生きするって言ってた、うん」

「どんだけでちかっ!? ちゃらんぽらんの極みでちかッ!!!」

「結局、このババアの在任期間中にぽっくり逝ったから世話ないけどね~!」

「軽すぎでちッ!? というか気安すぎてもう失礼とかそんな次元じゃないでちよ!? ちょっと常識と友達になってから出直すでちッ!!?」

「失敬なでち公だなー。……ま、ババァはだからひ孫の顔を見るまで往生する訳にはいかんのよ。マジでね? いや、最近急にぽっくり眠ってる時があったりして、ちょっと自分の寿命に危機感持ってるからとっととひ孫産め! ってせっついてるんだけど、恋愛結婚で」

「それ嫌われるから止めるでちよ。そんなに出会いない職場に放り込んでるなら言えた口じゃないでち。あと、絶対育て方間違ってそうでちからそういうのも難しいと思うでち。お子さんも大変だったと思うでちけど」

「だから失敬なでち公だなー。いやまあ私の場合はネギく……おっと危ねェ! 一体どこにエヴァちゃんの耳と目があるかわかったもんじゃねェからなァ!」

「だからキャラが強すぎでち……」

 

 これで匿名の一般通過シスターを名乗ろうと言うのはあまりにもおこがましくないです?

 そして今の口ぶりで納得したです。この女もまた若かりし頃に「ゼロ時代の母」────我々の遺伝子サンプルの一人になったということを。データ上だけでなく本人がしっかりと記憶しているのだから、これはもはや確定です。

 

 まあ、私と絶対血が繋がってる訳はないですけど。

 何か褐色の、母を名乗る不審者に命つけ狙われたことはあるですけど、まだあっちの方が実際血は繋がってそうです。

 

 アマノミハシラ学園都市のとある協会、その懺悔室。

 私はそこで、春日美空と言葉を交わしているです。「色々とレアケース極まりないから、今後の参考になると思うポヨ」と先達に言われたこともあり、私は御簾越しにあるシルエットをうすく睨む……既に額に顕現させている魔法具(アーティファクト)真実の目(テリティウス・オクゥス)」で。魔力を感知される訳にはいかないので、闇の魔法(マギア・エレベア)を使わない本来のこのアーティファクト、つまりは「刻印のように肌に刻まれ浮かび上がる魔法陣」の目をもって、眼前の相手を観察してたです。

 

「…………(何故、()()()()()()()()平然と活動出来ているのか。魂が無いから、「金星の黒」無しでは情報遡及が無理でちねこのお婆さん。おそらく外部から────)」

「でもさ? 何と言うか、この年になると何だかんだ明日菜のために長生き頑張ってるいいんちょがスゲー! ってなるけど、それ以上に自分の老いっぷりがねぇ。こりゃーアレだ。高校の頃は高畑先生に無理言って作ってもらったこってりラーメンマシマシとか、()()()()の結婚式の料理とかたらふく平らげても翌日じぇ~んじぇん平気だったのにさ! 今じゃもたれる所の騒ぎじゃないから、マジで。寝込むし」

「(────外部から供給されてる魔力と()を酷使したら、そりゃシャットダウンされるでちよ)自覚がないとは怖いでちね。というか話が身内話すぎてついていけな────」

「自覚無いって何さー、ババアはババアだって自覚ちゃんとあるよ? だーからこうして悩める若人の相談を面白おかしゲフンゲフンッ、真剣に乗ってあげてるってのに」

「そういうところでちよ!?」

 

 いや、とはいえどこの破天荒ぶりを前にすれば、いわゆる上流層の程度の低い悩みくらいなら簡単に吹き飛ばせるだろうし、需要と供給は釣り合ってるのかもしれないですが。

 というかもはや懺悔と言うか、相談の体を為してないです。完全に彼女の愚痴劇場です。

 

「まーたでちでち言って……。ゆえきちより大分幼い感じになってるな~」

「幼いとはどういうことでちかッ!」

「おぉ今日一番の食いつきだあ……、小さくて可愛いのに」

「ころすでちよッ!?」

「そういう所幼児だよな~。

 いやでもだって、そもそもアレでしょ? 刀太君より年上で、近衛姉妹より年下ってことは、せいぜい4、5歳くらいってことになるじゃんかー、ねぇ?」

「何でそんなことまで知ってるでちか……? 兄弟はともかく、上の姉共は…………」

 

 もしかして確信犯? 以前から知っていたということです? 色々な警戒を強める私に、かつてネギ・スプリングフィールドの受け持っていたクラスの生徒だった女は、老齢の春日美空はシルエットのままけらけらと笑う。

 

「いや~だって、刀太君のお母さんの野乃香ちゃんってアマノミハシラOG(卒業生)だし? つながりくらいはあるっしょー。……ま、聞いたのつい先週くらいだけどね!」

「雑でちッ!?」

「どーせ()()()()にも使ってる成長促進学習カプセルでも使って強制的にテロメアの成長速度を加速させた上で加速学習して実戦導入できるように仕立ててるんだろうし、情緒はまだまだお子様でしょお子様」

「雑な割にちゃんと全部聞いてるでち!? わけわかんないでちよこの人!!?」

「ま、大人なんてそんなもんだよ。夢見なさんな」

「こんな大人になりたくないでちよッ!?」

「まあまあ、ババアだって若い頃はもうちょっと真面目にやってたんだからさ~? 少しはリスペクトして欲しいところだねぇ、下町の聖女とか言われてたころもあったんだよ?

 孫生まれてフィーバーしてから、ちょっと私の内なる野生が解放されたけど」

「えぇ………」

「………………いやちょっと待ちなさいな、本気でドン引きするのは止めて、マジで。酒江(さかえ)もよくそんな顔してたからマジで、うん。

 あの子すっごいしっかりしてたからなあ……。そのあたりは父親の()()()が上手く作用したんかね? うん。孫産んでからも留学するとか言い出しててクッソ真面目すぎかッ!」

「さかえ…………?」

「娘よ娘。こう書くの」

「…………どんな字でち!? というかどんな母親でちかッ!?」

「いやー、実は結構魔法的な由来があったりなかったりはするんだけどね? こう、裏火星の地域的な」

  

 だからといって子供の名前に使う字じゃないです。

 胡乱な感じで「何だこのお婆さん」という感情を視線に乗せて見つめていると、シルエットの彼女が横を向いて、天井を見上げたです。天井というよりも、どこか()()を見ているということなのかもしれないですが。

 

 ただ、続けられた言葉にちょっと、いくら私でも一瞬言葉に詰まったです。

 

「ま、そんな自慢の娘も、()()()()()()()()()()()()のテロい戦闘に巻き込まれて死んじゃったけどね~。孫はまあ、運よく無事だったけど、本来引き継いでた魔術的リソースの大半を生命活動に回さざるをえなくなっちゃったーとか言ってたっけ、亜子。

 いや、何でわざわざアマノミハシラ近隣の方でドンパチしたかね~」

「…………」

「なつみっちも、あっこれ友達ね? 子供も孫も何人か亡くなってわんわん泣いてさ? 葬儀上げようにも、遺体も全部魔力還元されて爆発に巻き込まれたとかで大体()()()()ものだから悲惨で悲惨で。やっぱこう、技術の発展も人を救わないとこまで行っちゃオシマイよね。一人のワガママ一つで世界が滅びそうな状況なんざ恐い恐い!」

「……何でちか、同情を引きたいでち?」

「いや、ただの愚痴」

「棘が多い愚痴でちね……」

「他意はないさあ。でも…………、棘を感じてそんな顔が出来るなら、まだまだ大丈夫な方じゃないかねぇ?」

 

 御簾越しに、相手の目が私を射抜いているのがわかるです。顔も見えないだろうに、私の表情を。

 それにまるで、私の「第三の目」を向けられているような、姿も見えないだろうに私の何かをあらいざらい暴き立てるような、そんな気持ち悪い感覚を覚えるです。

 

「ま! その気がないならババアのおせっかいでしかないけど。仮にもネギ先生とアスナの血を引いてると思うと、ね」

「居ない誰かのことを勝手に重ねられても困るでちよ。……それにそもそも、恨みを向ける対象にそこまで気安いのもどうかと思うでち」

「いやー、ん? 別に君が直接やった訳じゃないし」

「けど、私はその戦闘とか、実験結果をもとに生まれているでち。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でちよ」

「んー、まあ何だかんだ言ってそう真面目に考えてるっぽい? のは、ゆえきちの血族っぽさあるかなー」

 

 私の言葉に、春日美空は肩をすくめて。

 

 

 

「でも刀太君相手に中々計画が上手くいかないで空回りしてるっていうのは、絶対相性悪いから諦めて、強く生きてください」

「もっと為になる解決策ないでちかッ!?」

 

 

 

 一番最初にここに来た相談事に対して、丸投げするような答えを前に私は絶叫したです。

 続けて「強く生きてクレメンス」とか返されて、もっと絶叫するしかないですが。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 春日美空と会うことは出来なかった。運が悪いのかタイミングが悪いのか、シスター・ココネいわく「充電中」とのことで、ちょうど眠っているタイミングにかち合ってしまったらしい。せっかくだからと同行した釘宮あたりは「まあ、それなりにお年だろうからね」と気遣う様な物言いをするが、そのココネの言葉に含まれる含意を正しく理解してる私からすれば、中々に微妙な表情にならざるを得ない。

 

 教会で私を見て「しぃ」と唇に人差し指を当て片目を瞑る仕草をして、見た目二十代くらいにしか見えない褐色な彼女は、やや片言に言った。

 

「ん。……今日は朝、懺悔しに来た子いたから。けっこう長く話し込んで、ばたんきゅー」

 

 最近頻度上がってて心配、という彼女の言葉も含めて、なおのこと心中穏やかではないのだ。

 そもそも水無瀬小夜子いわく……だったかちょっと最近色々ありすぎて記憶が定かではないが(震え声)、春日美空はこの時点において亡くなっている。脳裏に浮かぶ「UQ HOLDER!」第一巻第一話、エヴァちゃんがモノローグで語る「別れは来る」において、綾瀬夕映の後ろに目立たない程度に彼女のシルエットが存在していたりもするので、そこは間違いないのだろう。いや、それを思えば村上夏美が未だに存命であることの説明がつかないので必ずしも過信して良い話ではないだろうが。

 それでも現に私は一度、春日美空の遺体に()()()()()()を吹き込むココネ・ファティマ・ロザの姿を目の前で見ているのだ。しぃ、と今だって私に目を合わせて、そういったジェスチャーをとっていることからして、その行動ともたらされた結果はこちらの予想から大きく外れていないだろう。

 

 つまり、春日美空は無理やり生かされている──────保護者だった彼女を必要とする、ココネ個人の意思によって。

 だがそれとて、あくまでも仮初のものなのだろう。春日美空の()()頻度が上がっているというのは、すなわちココネが何かしらしている処置が、いずれは限界を迎えるだろうことを想起させる。

 

 いずれはあの、年齢を感じさせない異様に元気なババァ(※本人の自称)すらこの世から完全に退場するというのだ。

 

 自然の摂理として考えれば当然のことではある。あるのだが……。

 

「刀太君……?」

「…………いや、何でもねーよ」

 

 ちらりと、隣に立つ九郎丸が私の顔を覗き込む。間違いなく、今の私の表情は上手く「近衛刀太を装う」ことが出来ていないだろう。感覚的にはAI葉加瀬と初遭遇した時に一瞬、ちょっとだけ過ったかもしれない違和感であるが。あの時はそもそも本人が全然気にしてないし、半永久的に何かが残ってくれていそうだからと目を瞑れたが。

 それでも、()()()()()()()()()()自分の知る命が刻一刻と失われて行ってるのは……。上手く言えないが、たぶん、辛いのだろう。

 

「まっ、出来れば長生きして欲しいよな。スラムの方のシスターも落ち込みそうだし、夏凜ちゃん先輩の恩人でもある訳だし」

「そう、だね。……ルキくんたちも知ってるのかな? ここのシスターさんのこと」

 

 ふとスラムの子供達の話題を出す九郎丸だが、いや実際のところどうなのだろうか。原作では春日美空が出てこない以上当然言及は無い訳であって、彼女個人の性格から言っても「ババアもうそんな長距離移動したくないから、楽して子供揶揄って遊ぶのが老人の最高の楽しみだから」とか適当なこと宣ってサボってそうな印象がある(偏見)。

 そんなことを適当に話していると、燈子(※キリヱの別セーブデータな私)がシスター・ココネと何やら交渉している。水無瀬小夜子のこと、ダイダラボッチのことなどなど、そのあたりを中心に情報を聞きたいという話だ。もっともダイダラボッチについては「?」と首をかしげてるココネであったから大した成果は得られなさそうだが、水無瀬小夜子については多少は資料があるらしい。

 

「地味に気にしてた、美空。持ってた魔術書の写しと、亡くなった時の状況とか、ある。シャークティ、嫌そうな顔して調べてた」

「「「「シャークティ?」」」」

「ん。……ん? ん、上司。美空の先代。偉い」

 

 なんとなく要領を得ない説明ばかりが続くものの、まあとりあえず先輩か何かなのだろうと納得した面々(私と燈子を除く)。そしてココネが「こっち」と教会の奥の階段へと私たちを導く。特に何の疑問もなくそれに追従する私たちだったが────。

 

 

 

「──────ここが分岐点ね! 今そっち入ったらダメ! 全滅ヨ! ぜーんーめーつ!!」

 

「ひでブッ」

「うわあ!? き、キリヱちゃんッ!!?」

 

 

 

 特に何か悪いことはしていないはずの私の顔面に、スカートがめくれ上がるのをまったく気にしないキリヱ大明神の空中回転飛び蹴り(ライ〇ーキ〇ク)が決まった。

 

 ……釘宮、胃の当たりを押さえて微妙な顔をするなとは言わないが、せめて手を貸すくらいはしてもらえないだろうか。見慣れてるだろう、こういうの。私達友達なんだし。友達だろ?(圧)

 燈子に至っては「やはり神は死んだのでは?」とか呟いてるので、まあ、うん、人生って難しいね…………。

 

 

 

 というかキリヱ、お前さんまた…………。こちらとしてはどうしても事後にやり直しを知ることになるので、このところどうにか出来ないものだろうか本当に。心配するしかないのが歯がゆい。別に今のドロップキックで取れた奥歯が痛いとか、抜けた歯茎が痒いとかそういう物理的な意味ではないが(激ウマギャグ)。

 ……それはそれとして実際歯も抜けたし歯茎も痛いのでもうちょっと手加減してくれませんかねぇ!?(涙目)

 

 

 

 

 

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