左に翠
凶るは歪曲
それは逃げていた。転びそうになるほど体勢を崩しながら走るその姿はそれがいつも人間にさせていたことに似ていた。
それは怪異と呼ばれ、恐れられる者であった。古来では鬼と呼ばれ、時に信仰され抑えられている者でもあった。
それは強者で
やがてそれは
それ自らが歩いた道──コンクリート製──が走った道に沿って壊れているのは分かる。それは自身の体重を、歩いた痕跡が残ることを知っていた。しかし、あくまで一方向の外荷重の話だ。
二方向からの外荷重でないと壊れないような、歪な壊れ方。
それは、この攻撃を
それは、この攻撃を
それは、この攻撃を
故に逃げた。故に走った。故にたどり着いてしまった。
それは泣いた。初めてのことだった。泣かせることの楽しさと煩わしさは知っていたが、なぜ泣くのかをようやく理解できた。
やがて、それが恐れていた者が来る。濁った瞳を持つ、科学的なアルコール臭のするパジャマを纏った青年は、恐怖の源である瞳を怪異に向けていた。
「いや、だ……!」
漏れた一言、自身が人に言わせてきた一言。怪異はその筋骨隆々とした姿からは想像もできないほどのかすれた声を絞り出した。青年は聞こえなかったかのように、ただ一言を放った。
「──■れ」
怪異は、考えることが出来なくなった。
怪異とは心から生じる隣人である。俺の師匠はそう語った。
すべての生物にある、現在の柱では証明できない旧き時代の柱にて説明される『魂』。そこに付属する心が原因であると。
連絡を終えた俺は近くの公園のベンチに座り込む。夏も終わりな時期だが、熱帯夜はまだしばらく終わりそうもない。そんな中走ったからであろう、袖と丈が長い入院服は汗で濡れていた。
「ったく、なんで俺を指名したんだか」
「近かった君が悪いんだよ」
「へーへー。そりゃあ悪うございましたねぇ」
──焦ってはいけない、いつものことではないか。俺は自身にそう言い聞かせる。独り言を会話にした張本人は隣に座っていた。音もなく、気配もなく、そこにいた。
スーツ姿の■性。夏用であろうそれは薄く、■色の肌を覗かせる。顔は整った■■■■人のようで、同時にそれら全てが本質ではないと感じさせるナニかがあった。
1d100≧70 → 48
「へぇ……」
1d10=1 SUN70→69
それは俺をじっと見つめると、運がいいねと呟いた。
「良くはない。あんたと出会ったのが証拠だ」
「言うねぇ。なら
■のような、■性らしい声でそれは笑った。
それは手を一回叩くと、俺の服は重みと不快感を失う。乾いた──ただそれだけの現実を受け入れるのに多くの時間はいらなかった。どうやら今日は虫の居所がいいらしい。
俺は眼鏡を外す。瞬時に広がる、
「お前は──」
鈴虫の声に車の走行音が混じるようになったのに気づく。それと同時に、隣の■性はいなくなっていた。
走行音は近づき、公園の表に停まる。降りてきたスーツの男性は無表情のままこう言った。
「お疲れさまでした、比企谷 八幡様」
俺は眼鏡をかけ、ベンチから立ち上がった。
クリア報酬 SUN+1D3
1D3=2 SUN69→71
クリア報酬 技能値+1D10
1d10=2 技能[歪曲の魔眼]58→60