滑り込みです!ギリギリでごめん!

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私の大切なプレゼント。

「いろはちゃん、ごめんっ!」

「え、なんですかいきなり......」

 

今日も今日とて仕事を丸投...任せて、奉仕部に来たのだが、ドアを開けた瞬間に謎の謝罪が飛んできた。

よく見ると、雪乃先輩もセンパイも、驚くほど神妙ば顔つきだ。なにがなんだか全く分かず、固まってしまう。

そんな私の様子を見かねてか、雪乃先輩が補足を入れてくれる。

 

「一色さん、今日が誕生日でしょう?それをついさっき思い出したから、プレゼントが用意できそうに無いのよ......。本当にごめんなさい......」

「なんだ、そういうことですか。......まぁ、先輩たちも忙しいですもんね」

「いえ、これは完全に私たちの過失よ。忙しいとかそういうのは関係ないわ」

「正直死ぬほど忙しいかと言われると

そうでもないからな。だから、本当に悪かったと思ってる」

 

誕生日を忘れていたくらいでこんなお通夜みたいな雰囲気になるんだ、この人たち......。

正直、少し悲しかったりもするけど、先輩たちももう三年生。立派な受験生なのだ。

 

だから、あまり責め立てる気にはならない。

ならない――のだが、それでも何もないというのも寂しい。それに、センパイは「埋め合わせをする」と言っていた。

と、言うことで、ちょーっと提案でもしてみよう。

 

「あのー、じゃあ提案なんですけど」

「ええ、何でも言ってちょうだい」

 

私は一つ咳払いをして、はっきりと、分かりやすく、大きな声でこう言った――

 

「センパイを一日だけ貸してくださいっ♪」

 

× × ×

 

「二人っきりですね」

「ああ、お前の望み通りな」

 

今日は4月16日。一色いろはちゃんの記念すべき誕生日――なのだが、あろうことか、誕生日であることをセンパイたちが忘れてしまっていたのだ。

その結果、埋め合わせとして、センパイの生殺与奪の権利を握っているわけだ。

 

ちなみに、雪乃先輩たちには誕生日プレゼントを買いに行ってもらっている。二人っきりの方が遠慮なくセンパイにお願いができるから、と雪乃先輩たちが気を遣ってくれたのだ。

 

「まぁ、元はと言えば、センパイたちが誕生日を忘れてたのがいけないんですけどねー」

「......それは本当にすまん」

「うーん、誠意が伝わってきませんねぇ。『大変申し訳ございません、いろは様』でお願いします!」

「......た、大変、申し訳ございません、い、いろは様」

「んー、まぁ及第点ですかねー」

 

というわけで、先ほどからずっとこの調子なのである。

いつもは文句を言うセンパイが、こんなにも従順なのだ。こんなの楽しくない筈がない。なんなら新しい扉が開いちゃうレベル。

よし、普段センパイ絶対にしてくれないようなものと言ったら――

 

「じゃあ次は、私をいろはって呼んでください!」

「えぇ......」

 

予想通り、センパイは少し困ったような顔をしたが、一つ咳払いをすると、覚悟を決めたようにこちらを向いた。

 

「......じゃあ、いろは」

 

おお、良いなこれ......。センパイが女性のことを名前で呼ばないってのをしってるからか、なんだかセンパイの彼女になった気分だ。

ということで、勿論、次に私がお願いすべきことは――

 

「もう一回お願いします」

「お、おう......いろは」

「もう一回」

「い、いろは」

「もう一回」

「いろは......ちょっと多くない?」

 

ちっ、流石にここまでか。まぁ、これ以上彼女気分を味わっていると、雪乃先輩たちになんて言われるか分からない。まぁ少しは譲歩してあげますか......。

 

「じゃあ、今日一日は私のことはいろはでお願いします」

「えぇ......一日中かよ......」

「センパイはそのまま私のお願いを聞き続けていれば良いんですよ」

「まぁ、いっし...いろはが言うなら」

「あっ、今の感じ良いです!」

 

あぁ、なんならこれからずっととかにしとけばよかったかな。......それは流石にやり過ぎか。

まぁそんなことを考えつつも、際どいお願いもしちゃうんですけどね!

 

「じゃあ次はですね――」

 

次のお願いはもう決めている。

センパイが普段絶対にしてくれなくて、二人っきりじゃないとできないこと。それは――

 

「ハグ、してください!」

「いや、は、ハグってお前......」

「今日は私の、何でしたっけ?」

「......はぁ、分かったよ」

 

先輩は渋々といった感じで私を向かい入れる体勢になる。そこに正面から抱きつく私。なんか、ちょっと不思議な感じ。

いやー、罪の意識って便利だなー。

 

「えへへ、暖かいです」

「こ、こんなんで良いか?いまいち加減が分からんのだが......」

「大丈夫ですー。あ、じゃあこのまま頭も撫でて下さい」

「お、おう。こ、こうか......?」

「あー、良い......」

 

あー、これマジで良いな......。定期的にやってもらおう。

てかお米ちゃんっていっつもこんなのやって貰ってたってコト......!?今度オススメ教えてもらおうかな......。

 

「あー、その......いろは」

「なんですか?」

 

センパイが突然、撫でる手を止めて話しかけてきた。

 

「改めて――今日は本当に悪かった」

 

センパイは真剣な顔つきでそんなことを口にした。

だが、いまさらそんな、そんな......

 

「そんな......ふふっ。あっははは!」

「え、えぇ?いま笑うところあった?割りと真剣に謝ったつもりなんだけど......」

 

悲しくなかったと言ったら嘘になるし、なんならちょっと泣きそうになった。

それでも、ちゃんと最初に謝ってくれたし、遅れてでも埋め合わせをしてくれようとした。――それが、堪らなく嬉しかった。

あと、それだけじゃなくて――

 

「いや、そうじゃないんです。......なんか、やっぱりセンパイはセンパイなんだなって」

「どういうことだよ......」

 

センパイは分かんないと思うけど、やっぱりセンパイだなって改めて思った。

人のことを考えて、真剣に謝罪をしてくれる。頼みごとを聞いてくれる。そんな些細なことに、センパイらしさを感じるのだ。

そして、そんなセンパイが、好きだ。

だからこそ、そんなセンパイには頭を下げてほしくない。そんなものは、プレゼントにはならない。だから――

 

「とにかく、謝るより先に言うこと――ありますよね?」

 

いつだったか、センパイは「人との関わりは毒」だと言っていた。

――だが、それでも。

 

「そう、だな――おめでとう、いろは」

 

それでも、孤独に苦しみ蝕まれて朽ちていくよりは、人との関わりという甘美な毒に侵され、依存して果てていく方が、よっぽど幸せなのだろうと、私は思うのだ。

 

「はいっ!ありがとうございますっ!」

 

だから、それには最大限のかわいい笑顔で返すのだ。

貰ったら、お礼をする。

これが私の、私だけの――大切なプレゼントだから。

 




超ギリギリでしたが、間に合いました。いや、間に合ったのか?
まぁとにかく、いろはす、おめでとう!

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