俺が率いる第十四艦隊は無事にイゼルローン要塞に帰ってきた。先に帰ってきていたヤンに帰還の挨拶(ムライ少将の監視の眼があるので真面目なもの)をして、速攻で自分の家に帰ってきた。
「ようやく帰ってきた感じだな」
「遠征が長かったですからね」
俺の言葉にカリンも嬉しそうに答える。戦争の最前線基地とは言え、トップが俺とヤンである。堅苦しい雰囲気はなく、ムライ少将の眼がなければそこら中で酒盛りが行われかねないのが今のイゼルローン要塞である。
そして俺は自分の部屋の扉を開ける。
「おかえりなさい♡ ごはんにする? お風呂にする? それともわ・し?」
そして速攻で俺は汚物を見ないように扉を閉めた。
俺は疲れたように眼がしらをもみながら口を開く。
「カリン、中に聞こえるくらいの声量であえて言うんだが、もし次開けた時にジジイの裸エプロン姿が見えたら俺は全力でパンチしてしまうかもしれない」
「私もあえて中に聞こえるように言いますけど『私の戸籍上の祖父がヘルベルトさんを迎えるために裸エプロンで扉の前にスタンバっていた』という事実を直視したくないんで私も止めないと思います」
そんな心温まる親子会話をした三十秒後、俺は再び家の扉を開ける。
「おかえりなさい♡ ごはんにする? お風呂にする? それともわ・し?」
「なんでめげないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「何を言うか。脅しに屈する儂だと思うなよ」
ジジイの裸エプロンというどこにも需要がないことをやっているフリードリヒ。殺してやりたいこの爺。
「あら、二人ともお帰りなさい」
そこに新妻とはかくやと言わんばかりの恰好のアンナが出迎えてくれる。
それに慌てたのはカリンだ。
「アンナさん! 赤ちゃんいるのに動いていいんですか?」
「あら。まだそこまで大きくなってないから大丈夫よ。それにお医者さんも適度な運動は必要だと言っていたし」
「ボテ腹セッ……キュイ!!」
不穏なことを口走ろうとしたジジイを俺は速やかに締め落とす。アンナも笑顔でカリンの両耳を塞いでいた。そしてそのまま俺はジジイを廊下に放り出す。
「あ! ダメですよヘルベルトさん!!」
「ゴミの心配をするなんてカリンは優しいな……」
「ゴミを廊下に捨てたら他の方に迷惑です!!」
「カリンは優しいな……?」
ナチュラルにカリンも元銀河皇帝で現戸籍上は自分の祖父をゴミ扱いした気がするが、まぁいいか。ジジイだし。
通話でジジイと同じ部屋に住んでいるオフレッサーに回収依頼を出すと後で取りにくるという返答をもらった。
元銀河皇帝とは思えない扱いだが、シュタイナー家ではこの程度である。
俺の軍服の上着を受け取りながらアンナは聞いてくる。
「ヤンさん達はどれくらいに来るのかしら?」
「聞いたかカリン。俺の奥さん、俺の悪友たちの行動までお見通しなんだが」
「何かと理由つけて部屋で飲み会やってたらそうなりますよ」
カリンは呆れたようにそう言うと自分の部屋に向かっていく。たぶん着替えに行ったのだろう。俺もアンナを連れて寝室に着替えに入る。
部屋着を俺に渡しながらアンナは微笑んでいる。
「お疲れ様でした」
アンナのその言葉で俺の中に張っていた緊張の糸が切れる。
俺は大きく溜息をつくと天井を見上げて呟いた。
「つかれたぁぁぁ」
その言葉をアンナは微笑みながら聞いて、俺が脱いだ軍服をハンガーにかけている。
その姿をみながら俺は声をかける。
「少しお腹大きくなったか?」
「ええ」
俺の言葉にアンナは愛おしそうにお腹を撫でる。俺もアンナのお腹に手を当ててみる。
「何か思うことはある?」
「わからん。たぶん産まれてきて初めて何か自覚できる気もする」
「ふふふ、子供が生まれてヘルベルトにもどんな変化が出るか楽しみね」
『シュタイナーく~ん!! あ~そ~ぼ~!!』
するとお互い家の鍵は渡し合っているヤンが家の入口を開けて叫んできた。その言葉にアンナは楽しそうに笑う。
「お友達が遊びに来たわね」
「あれは子供に悪影響だから子供が産まれたら半径1km以内に侵入禁止にしないと駄目だな」
そう会話しながら家の入口に戻ると、ヤンが笑顔で酒瓶を掲げていた。
「や! 帰還の挨拶に来たよ」
「安酒なら駄目だぞ。俺は銀河帝国随一のお貴族様だからな」
「安心しなよ。私達が士官学校時代から愛飲している一品さ」
「超安酒じゃねぇか!」
俺達が士官学校時代から飲んでいる品だと超安酒である。何せ金のない学生でも大量に飲める代物だ。
ちなみに味はクソである。
「いやぁ、シュタイナーのところに行くのにいいお酒ないか探してたらみつけちゃってさ。みてよ、この超安物包装」
「やべぇな。これみると逆にテンション上がるわ! あ、アンナ。つまみは適当に頼むわ」
「ええ、わかったわ」
「あ、アンナさん! おつまみの足しに少し持ってきました」
つまみの準備をするために台所に向かうアンナに声をかけると、ユリアンもアンナの後ろについていった。
俺とヤンはリビングのソファーに移動して懐かしの安酒の蓋を開ける。その瞬間に広がるどぎついアルコール臭。臭いだけでまずいとわかる。
それをお互いにグラスに入れると二人で掲げる。
「「無事を祝って、かんぱ~い!!」」
そして一気に飲み干す。
「うわ! まっず!! 俺達士官学校時代にこれ狂ったように飲んでたとか正気か!?」
「久しぶりに飲んだけどすっごいまずいね!! やっばい!! テンション上がってきた!! ラップとアッテンボローに追加の酒頼まなきゃ!!」
そう言って俺とヤンは懐かしの安酒掴みながら肩を組んでいる写真を撮って二人に送る。あの二人も慣れたものだ。この写真だけで今、シュタイナー家で何が行われているかを理解して追加の酒を持ってやってくるだろう。
「あ、そうだ。シュタイナー。記憶飛ばす前に真面目な話するけど」
「ヤンが真面目な話……? 明日は核の雨が降るのか……?」
「いや、帝国の内乱でそれ防いできた君が言うと洒落にならない」
お互いにそれなぁ、と指さし合うともう一杯一気に安酒を飲み干す。
そして真面目な表情になってヤンが口を開いた。
「君が帝国に降伏するんじゃないかって噂になってる」
「……やっぱそうなるよなぁ」
俺にその気はなくても俺の動きを見ていたら勘ぐってしまう気持ちもわかる。
「へい、ミラクルヤンよ。何かいいアイディアないか?」
「私も政治はなぁ……幸いなことにクブルスリー大将やビュコック大将達は冗談だと笑い飛ばしてくれているからいいけど……」
「レベロ議長かぁ」
俺の呟きにヤンは頷く。
原作において政治家として良識もあったし能力もあったレベロ議長ではあるが、ヤンが民主主義を脅かすという幻影に捕らわれた結果、同盟滅亡の引き金を引いてしまった人物である。
この世界ではまだ精神的余裕があるようだが、どう動くかわからない。
そう、いくら考えたってわからないのである。
「俺達で考えても無意味だから酒飲んで忘れようぜ! ヤン!!」
「ヒャッホー!! ナイス酒クズ!! 飲もう飲もう!!」
「ほんとこの酒カス二人は……」
俺とヤンの言葉を聞いたカリンの冷たい視線を無視して俺達は安酒を飲むのであった。
ヘルベルト・フォン・シュタイナー
帝国では英雄扱いされてる酒カス2号
ヤン・ウェンリー
同盟屈指の英雄で名将の酒カス1号
カーテローゼ・フォン・クロイツェル
酒カス二人をみる眼は冷たい
アンナローゼ・フォン・G・シュタイナー
お腹も少し大きくなってきた新妻
ジジイ
裸エプロンジジイとか誰得……
お久しぶりですお待たせしました!!(開幕土下座
約半年も更新なくて申し訳ありません。ですが言い訳をさせてもらうと自分の二次創作小説の執筆スタイルは『公募小説の息抜きに書く』なので定期更新に向いていないと言うか(手ろくろ
今後も更新は不定期になるかもしれませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。
それじゃあ自分はこれからイヴァリースを救いに行ったりデジタルワールドを救いに行ってきますので!!