禁書厨な俺氏、チート勘違い系オリキャラになる -とある科学の物質誘導- 作:村ショウ
実はこの小説、最初のプロットは大覇星祭編までが一区切りで考えてたんですが、入れたい設定が多すぎる…。(設定厨)
幻生が暗躍した置き去りを使った暴走能力者実験から、幻生との直接対決たる大覇星祭までとなれば、木原誘導としての一区切りはつけられるんですよね。
なので、初期に木原幻生が登場させてたんですが…。
俺の手当てよりも早く動いた存在がいた。
那由他ちゃんだ。土御門との敵対を想定し、退避するよう連絡を入れたはずだが、戻ってきてくれたようだ。
いや、円周や俺がここにいる以上、彼女だけが逃げるなどあり得ないか。
応急処置なら、俺より那由他ちゃんの方が得意だろう。それに、A.A.A. OSには高度な医療キット機能も備わっている。やろうと思えば、回復魔術だって使用可能だ。
だが、円周がやらかした後だ。再び敵対される可能性もあるし、この『御使堕し』の渦中で魔術を使うリスクは犯したくない。
とりあえず、土御門に止血などの最低限の処置を施す。これに彼の『
さて、どうしたものか。
俺は円周がしでかしたことから目を逸らしつつ、今後の対応策を思考する。
「那由他ちゃん。今、一人になっている上条が危ないかもしれない。悪いが、そちらの様子を見てきてくれないか。何かあっても交戦は避け、すぐに連絡をくれ」
一旦、那由他ちゃんを上条の元へ向かわせる。
「……誘導。なぜ、お前が魔術に関わる……?」
土御門が、息も絶え絶えに問いかけてくる。そこまで気になることか。
「今は無理をしない方がいい。だが、お詫びにその質問には答えよう」
円周の一件もあり、これ以上彼と敵対したくはない。できる限り、誠実に話すつもりだ。
「そうだな……『ある目的』のため、とだけ言っておこう」
「ある、目的……?」
「……みんなを守りたい、というだけじゃダメか?」
「今更、そんなことを…。具体的には、誰を守りたい…?」
土御門は、俺の顔をじっと見つめ、真剣な眼差しで聞いてきた。
「言っただろう。那由他ちゃんや、『置き去り』の子たちさ」
「あの件か…。だが、お前の行動は、かえってその子たちを危険に晒しているんじゃないか?」
「どうかな。土御門元春なら、分かってくれると思っていたんだが」
「……何を」
「いやなに、さっきは咄嗟に人質作戦なんて手を使ったが、俺が求めるのは彼女たちの安全だけだ。ただ、この転がり落ち続ける世界に適応しなければ、守るものも守れない。……大切なものを守りたいという気持ちは、君と同じはずだ。君が俺たちに敵対しないのなら、土御門舞夏に危害は加えない。逆に、君に協力したっていい」
「それを馬鹿正直に信じろと?」
「まぁ、そうだよな。……円周の暴走は本当に予想外だったんだ。だが、あちらは『誘導』通りのようだ。俺はそろそろ行く。協力の件はいつでも受け付けているから、気が変わったら連絡をくれると嬉しい」
俺は土御門にそう告げ、その場を後にした。
「上条、どういう状況か教えてもらえるか」
俺は、上条当麻の前に姿を現し、状況を問う。
「誘導…!? お前、入れ替わってたんじゃ……」
「あれは演技だ。この異常事態で、俺たちだけが入れ替わっていなかったら、逆に疑われるだろう? もちろん、犯人は俺じゃない。……それに、お前にはもう心当たりがあるんじゃないか?」
俺は思考を誘導するように、俺への嫌疑を逸らし、上条刀夜への疑念へと話を向ける。
「でも、俺は親父がそんなことするなんて、思えねぇ」
「あぁ、実際は偶発的に起きた事件だったらしい。土御門から聞いたよ。だから、彼は今、どうにかして術式を解除できないか動いてくれている」
まるで言い聞かせるように、解決策が既にあることを示す。土御門が何事もなかったかのように振る舞わせるためにも。
「解。あなたを処分することでこの事象を解決できる可能性がある以上、それが最適解であると判断しました」
「……はっ? マジか」
おっと、これは想定外だ。
術者が上条刀夜ではなく、俺だと判断されたのか?
「なんで誘導を狙うんだよ!?」
「解。対象:木原誘導が入れ替わっていないという事実。保有する物品の危険性。そして、解決できない場合においても、対象:木原誘導を排除することが最も有効であると判断しました」
神裂が相手でも辛いのに、彼女ですら時間稼ぎに徹していた、殺意マシマシの大天使が相手など、どうしようもない。
「これは、まずいな。だが、今の那由他ちゃんなら……もしかしたら……」
「水よ──」
目の前の大天使がその権能で水を操り、攻撃の準備を始める。
「──AIM拡散力場よ、集合し十の
俺はすぐさま、虚数学区との接続準備を開始する。
だが──
「
「くっ…!?」
AIM拡散力場の集合体を構築する前に、腕に一撃をもらってしまった。
俺は上条じゃないから、腕は生えてこないんだが。
魔術による水の操作が優先され、物質誘導で反らしきれなかったか。
「誘導お兄ちゃん……!?」
また、那由他ちゃんに心配をかけてしまった。腕がちぎれかけ、夥しい量の血が流れているのだから仕方ない。よく俺自身、冷静でいられるものだ。ドーパミンのおかげか?
腕の一本くらい、どうということはないのかもしれない。
那由他ちゃんやあの子たちが眠り続けた時間、現実的な絶望の痛みに比べたら。
それに、これは俺がいることで起きた物語だ。
「那由他ちゃん、前に話した『アレ』をやる。力を貸してくれ」
「……やるんだね。今、ここで」
那由他ちゃんが、決意を固めた顔で頷く。少し早いが、もうやるしかない。
「
A.A.A. OSに、光のようなエネルギーが集約されていくのが分かる。
AIM拡散力場で形作られた世界、虚数学区。その力を使えば、ヒューズ=カザキリやエイワスといった超常の存在を形作ることができる。ならば、同じ力を使えば、那由他ちゃんを同質の存在へと引き上げることすら不可能ではない。
エイワスや大悪魔といった存在は、人の体に降ろすことが可能だ。むしろ、肉体という『器』を得ることで、この現世でその力のすべてを発揮できる。アレイスターがエイワスを妻に降ろしたり、自身にコロンゾンを降ろそうとしたように。
だからこそ、俺は大悪魔や聖守護天使に比肩する存在を『作り上げ』、その力を那由他ちゃんに与える。これこそが、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』への、第一歩だ。まだ、彼女のAIM拡散力場への干渉力は足りないが、それでも……やるしかない。
「純粋なる物理の位相に下降せよ。即ち、天使の器に、科学の天使は現出する」
ヒューズ=カザキリのように意識のある存在では、那由他ちゃんの精神と反発しかねない。今回は、ほぼエネルギーのみを『
なぜ幻想御手を使ったのか。なぜ『妹達』を手に入れたのか。その時点では行き当たりばったりだった行動に、今、意味が生まれる。すべては、AIM拡散力場の制御値を、彼女の能力に根付かせるためだ。
『
九千体以上の能力者のAIM拡散力場の指向性を統一すれば、虚数学区・五行機関の制御すら、一部奪い取れる。
いずれはエイワスの製造ラインであるヒューズ=カザキリの現出、ひいてはその力自体の掌握も可能だろう。だが、今はその前段階、エネルギーの指向性を制御するだけでも、強力な武器になる。
それを、那由他ちゃんの中に取り込む。それが今回の『実験』だ。
肉体を得た超常の存在が、どれほど強大な力を持つか。
それはコロンゾンを見れば明らかだ。そしてここには、それを補う一〇万三〇〇〇冊の魔道書のデジタル写本まである。
即ち、これこそが簡易的ながら、肉体を持つ『科学の天使』の現界だ。
「木原……お前、何を……」
上条が、懐疑的な目を向けてくる。
そう思われても仕方ない。だが、こうするしかなかったんだ。
「ちょっとした……レベルアップ、かな?」
俺自身ではなく、那由他ちゃんを『天使化』させるのには理由がある。超常の存在を降ろすには、相性の良い『器』というものが存在するのだ。
男女の差異、実績、その存在との親和性……。なぜ、コロンゾンは女体なのか。なぜ、エイワスは女性の体に降りたのか。なぜ、『
そして何より、那由他ちゃんには、失敗したとはいえ『天使の涙』を取り込もうとした実験実績とデータがある。それを応用すれば、A.A.A. OS内の『天使の涙』と併せて、超常の力を制御することも可能なはずだ。
「誘導……よくわかんねぇけどお前がやろうとしてることが、その子を苦しめるようなことだっていうなら、たとえ相手が天使だろうがなんだろうが、俺がその幻想をぶち殺す!」
「……あぁ、分かってるさ。その時は、頼んだぞ、上条」
正直、言い訳のしようがあまりないので、上条に殴られるくらいの覚悟でやるしかない。
「見ておけ、上条、土御門。これが、学園都市統括理事長の
退避させたが見ているであろう土御門にも向けて、俺は宣言する。
那由他ちゃんの背中から生えた未元物質の翼が、虚数学区から抽出した物質と反応し、黄金色に輝きながら光の羽を舞わせた。
「那由他、大丈夫か?」
つい、呼び捨てで確認してしまった。彼女の精神に異常をきたしていないか、心配でたまらなかった。
「うん、大丈夫だよ。でも、制御は……かなり難しいや」
やはり、まだ少し早かったか。
彼女の能力では、AIM拡散力場の完全な制御には至っていない。出力も100%は出せないだろう。だが、時間稼ぎくらいならできるはずだ。
「それじゃあ、魔術の天使と科学の天使、力比べといこうか」
那由他ちゃんの駆るA.A.A. OSに、科学の力が集束していく。
大天使が放つ水翼に対し、白く輝く触手のような翼が迎え撃つ。
「天使か何か知らないけど、誘導お兄ちゃんからもらったこの力なら、負けない!」
さぁ、行ってこい、那由他ちゃん!
天使の翼を広げ、天へと飛び立つ彼女の姿を、俺は見送る。
「……那由他ちゃんだけ、ズルいなぁ」
背後で、円周がポツリと呟くのが聞こえた。ふと彼女の方を見ると、その手には俺が渡したEqu.DarkMatterが、再び白い刃の形を取って握りしめられていた。
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