追記:日間ランキング14位ありがとうございます(5/3 25:00時点)
急にUA数が伸びたことに疑問を抱いていましたが、ランキングに載っていたようですね。ランクインしてると夢にも思っていなかったので、若干嬉しい反面、戸惑っておりました。
また、多くの方に読んでいただく機会に恵まれ、大変うれしく思います。お気に入り登録も徐々に増えており、読んでいただいている皆様には感謝してもしきれません。まだまだ序盤ですがこれからも精進して参りますので、なにとぞ当小説をよろしくお願いいたします。
廃墟の広場がバトルフィールドへと変更され、モンスターは一歩ずつ、こちらへと近づく。モンスターがその足を踏み出す度、苔むした瓦礫がゴロゴロと転がった。頭上では折れた柱が不気味に傾き、遠くの森からは霧が這うように流れてくる。モンスターの咆哮が石壁に反響し、ビリビリと耳を劈く。
俺達の前に現れた双頭巨人の灰色の肌は、岩のようにゴツゴツしており、左の頭は牙を剥き、右の頭は赤く光る目を俺に突き刺す。右手で振り回す鎖鉄球がジャリジャリと軋み、地面に火花を散らした。カーソルを睨むと、そこに表示された名前が浮かび上がる。
〈プロトタイプ:カプ・ドワ〉、HPバーは2本でありカプ・ドワ本体ではないことを確認する。
つまりこいつは、この特殊エリアにおけるフィールドボスで間違いない。
そう確信を持つと同時に、突如、プロトタイプは鎖鉄球を大きく一周させ、俺達に向かって巨大な鉄球を投げた。俺達を押しつぶすべく、それは近づいてくる。自分よりも何倍も大きい鉄球が凄いスピードで襲いかかるが、カプ・ドワのプロトタイプのモンスターを凝視していたこともあり、反応がやや遅れてしまった。
「避けて!」アスナが瞬時に攻撃と判断し声を上げるも、少女を抱えて逃げるにはその距離が開きすぎている。このままだと、少女に鉄球が当たってしまう。
俺一人で避けるのは簡単だ。しかし、そうすると何も防具をつけていないこの子は一発でやられてしまうだろう。
ソードスキルで軌道を逸らすか…いや、間に合わない。ならば、俺にできることは、少女を突き飛ばしてでも代わりにダメージを負うしかない。
「クソっ…!」
思考することを辞め、少女めがけて走り出す。俺の防具であれば一撃でやられることはないが、HPの半分、下手すれば三分の二は持っていかれるだろう。だが、その時はその時だ。まず第一優先は目の前の少女。
「守る」と約束したなら、俺がその約束を破ることだけは絶対にしてはならない。
少女に手を伸ばす。しかし、彼女の輪郭は鉄球の影で覆われ、見えなくなった。ギリッと歯ぎしりをする。己の判断力の遅さに、反応速度の遅さに、ただただ絶望した。
俺はまた、人を守ることができないのか。
成長したと思ったのに、誰も守ることができない情けない人間のままなのか。
自己嫌悪と負の感情が脳で埋め尽くされそうになったその瞬間、まるて遮るようにガチンと、重く鈍い音が鼓膜を揺らした。
「油断するな」
直後、鎖鉄球が少女のすぐ右側の地面にめり込んだ。鉄球が地を叩くと、ズドンと土煙が上がる。パラパラと煙が舞っている中で、鉄球ではないひとりの影が俺達を包み込んだ。
「――っ…悪いヒースクリフ、助かった」
どうやらヒースクリフは鉄球の軌道を見切り、盾を斜めに構えて受け流したようだ。その一瞬の判断と動きは、もはや変態級のプレイヤースキルである。
「受け止めるだけではなく、時には受け流すことも必要だ」
皮肉をたっぷり込められた、ヒースクリフからのありがたいアドバイスに軽くイラつきながらも、少女を抱きかかえアルゴの方に駆け出す。
「わーってるよ!デュエルでもそればっかだもんなッ!!」
むかつく背中に向かって軽口を叩いて強がる素振りを見せるが、内心ではヒースクリフとの実力差を再び突き付けられ、自身の唇を噛んだ。
馬鹿正直に正面から攻撃を受け止めず、そこ軌道をずらすことで俺と少女を巻き込む事態を防いだ。周りの状況を確認した上でのその判断力と、それを行動に移すための瞬発力、そして迷うことなく的確に攻撃を防いだ動体視力。
どれをとっても、俺より何枚も上手だ。
「このまま私に頼りきりでは、デュエルは当分お預けだな」
「なッ!?ふざけんな!これからだっつーの!!」
俺の背に向かってそんなことを抜かすヒースクリフの余裕面に、更に苛立ちを覚える。煽ることで感情を焚きつけて、俺の限界を引き出そうとするヒースクリフの意図を理解しているからこそ、余計に腹が立った。
俺の性格を理解しているからこそ可能なその発言が、まるで掌の上で転がされているみたいで気に食わない。
ぜってー勝つ。死んでも勝つ…一発お見舞いするまで俺は絶対に諦めねぇからな。
「負けねぇぞ、ヒースクリフ」
高く分厚い壁を乗り越えるために、俺は今一度、気合を入れなおす。そんな俺の様子を見ていた少女は、腕の中でどこか優しそうに微笑んだ。
「あなたの、その…心の揺れ動きが…私は…」
ボソッと、少女は小さく呟く。その言葉の意味をすぐにでも聞きたいところであるが、今は飲み込んで、目の前にいる敵を倒すことに集中力を注いだ。
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
モンスターが再び咆哮を上げた。木々が振動で揺れ、鳥が恐怖で飛び立つ。
「アルゴ、この子を頼む! ヒースクリフ、アスナ、援護だ!」そう叫ぶと、曲刀を握る手に力を込める。
「気をつけろヨ!」と言い残し、アルゴが少女の手を引いて瓦礫の陰に素早く隠れた。安全地帯へと避難したことを確認すると、モンスターに視線を戻し、再び駆け出す。モンスターに近づくにつれて自然と口角が吊り上がり、胸が熱くなった。
初めてのフィールドボス。初めて血盟騎士団としての共闘。
あぁ…これほどまでに、ワクワクする戦闘があるだろうか。
「はああああッ!!」
瓦礫を踏み台にして勢いよく跳ぶと、それに合わせるかのように、プロトタイプのモンスターは攻撃モーションに移行する。右手に持つ鎖鉄球を振り回す攻撃を間一髪で回避し、地面に着地するのと同時に曲刀のソードスキル《フェル・クレセント》を放つ。光を纏った赤い刃が、モンスターの腹を一文字に切り裂いた。
4メートルの距離を0.4秒で一気に詰める強力な斬撃は《リーバー》の上位互換スキルだ。
基本的に曲刀は予備動作に癖がある武器であるが、素早さと攻撃力のバランスの良さがウリであり、片手剣よりも攻撃範囲が広く、細剣よりも攻撃力が高い。
「ぐあああああああ!!!」
初撃をモンスターに喰らわせると、2本あるHPバーのうち両方のバーが数センチほど削れた。
「…」
攻撃が決まったのにも関わらずほんの数センチ、しかも2本同時にHPが削れたことに対して、もう少し手ごたえを感じていた俺は若干の違和感を覚えた。
普通であれば、HPバーは片方ずつ削れていくはずだ。しかし、削れたのは両方のHPバーであり、それぞれ同じくらいの量のダメージが与えられた判定になっているようである。
なんだ…この違和感は…?
「アスナ!スイッチ!!」
俺の硬直時間をカバーするべく、アスナがモンスターの左半身に突っ込むと、彼女の手にしているレイピアがキィンと光り出す。流れる星よりも速いその動きを殺さず、しなやかに腕を使って鋭い剣先を何度も打ち込む。赤いエフェクトが何度も弾ける度に、モンスターの身体には無数の赤い斑点が増えていった。少しずつ削れていくモンスターのHPだが、左側のHPバーだけが減少しており、右側のHPバーは嘲笑うように静止している。
モンスターはアスナを振り払うべく、弧を描くように鎖鉄球を振り回した。鉄球についていた土塊が飛び散り、頬を掠める。
「スイッチだ、アスナ君」
そして、今度はアスナと入れ替わるように、ヒースクリフが大きな盾を構えながらモンスターへと突進した。彼の進むところに道が開かれ、地面に這っている霧が消えていく。
硬直時間から解放された俺は、試したいことがあったため、ヒースクリフの背中を追うように走り出す。己の中で生まれた疑問が攻略のヒントになるのか否か、検証するべく駆け出したその瞬間、左の頭が胸を張り上げて息を吸い込むと、その大きな口を開き業火が吐き出された。
「ノーツくん!団長!」
アスナは間一髪でバックステップを取ることで、広範囲攻撃の炎を躱し、俺たちの名前を呼ぶ。しかし、それもむなしく、燃え上がる業火は盾ごと俺達を包み込んだ。熱風が髪を焦がし、HPバーがチラリと揺れる。
しかし、ヒースクリフの圧倒的な防御力はその程度では崩せない。
それは俺が一番、嫌というほどよくわかっていた。
空気を含んで勢いが加速する炎を絶ち、ヒースクリフは猪のごとく、モンスターの右半身に体当たり攻撃をかました。火傷による若干のダメージが入っているものの、彼からしてみればかすり傷レベルのダメージだ。攻撃を正面から喰らっても、進路を曲げることなく進んでいくその背中は誰よりも信頼できる。
死ぬほど憎たらしい余裕面は、残念ながら伊達じゃないってことだ。
内側からジリジリと燃える熱が、自分のものなのか、モンスターによる攻撃なのかわからない。
でも、この昂る鼓動が、全身から溢れる力が、あの背中が、なによりも俺を強くしてくれる、より高みを目指す指標となってくれるのだ。
あぁ…負けたくねぇな。追いつきたい。追い越したい。
そのデカい背中を超えるのは俺だ。いいや…俺じゃなきゃ嫌だ。
だから俺は、誰よりもアンタを倒したい…!!
ヒースクリフの盾によって炎を免れた俺は、その逞しい背を超えて、モンスターの左半身に詰め寄ると《リーバー》をぶち当てた。赤色を纏った曲刀の刃が、モンスターの左足に深くも、美しい線を描いた。ヒースクリフと俺の攻撃によるダメージで、それぞれ両方のHPバーが動くことを確認する。
他のソードスキルと比較して、硬直時間が短いこのスキルを使用することで、通常攻撃とソードスキルのコンボを途切れさせない。一撃は片手剣よりも低いし、細剣ほど早くもない曲刀だが、どの武器にも劣らないそのバランス力が最大の魅力であり、俺が曲刀を使い続けている理由だった。
「やっぱりな…!」
このモンスターは左右でダメージを与えられる特殊なモンスターだ。左半身を攻撃すると左のHPバーが、右半身なら右のHPバーがそれぞれ減少する仕組みらしい。
だからこそ、俺の中でもうひとつ疑問が生まれた。
もし、片方のHPバーが0になるとどうなるのか。
奴の身体は一つだが、頭は二つある。頭部ごとにHPが割り振りされているなら、片方だけを先に潰すと残った方の身体は動かなくなるのか。それとも、狂暴化するのか…はたまた分裂するのか。
その答えは、検証する以外に知る方法はないだろう。
「やるしかねぇか」
一度モンスターから距離を取って、スイッチの準備をしているアスナに視線を向けた。アスナもHPバーの規則性に気づいたのか、アイコンタクトを計ると静かに頷いて、ヒースクリフの方へと走り出した。
「ヒースクリフ、アスナ!危険を承知で頼むが、右側のHPだけ削りたい!」
「右側だけ…わかったわ!」
「情報を引き出すつもりか…ならばモンスターは私が引き付けよう」
意図をすぐに察して、アスナとヒースクリフは俺の要求に承諾した。
ヒースクリフは火の中を突進した時と同じように、大きな盾を構えモンスターの正面へ向かった。俊敏性は高くないものの、その盾自体がヒースクリフの最大の防御であり、最高の攻撃法だ。攻防一体の戦闘スタイルは、今後の攻略においてよりフロントプレイヤーを支える精神的支柱になるだろう。
再び襲いかかる鎖鉄球をヒースクリフが盾で弾いているその間に、俺とアスナはモンスターの右半身に回り込んだ。
「オオオオオォォオォオ!!!」
咆哮が終わると、モンスターの胸がはち切れんばかりに大きく膨らむ。空気を肺に吸い込むこの動作は、ブレス攻撃の予備動作で間違いないだろう。
「来るわよ!!」
アスナがレイピアを構えなから叫ぶ。
このモーションが入る前に、右側の頭部が俺達二人に視線を向けていたため、なんとなく攻撃が来ることは察していた。モンスターの口から凄まじい速度で飛び出したのは、針のような細長い氷の礫。鋭い先端は見るもの背筋を凍らせるほど尖っている。俺の身体を突き刺さんとばかりに襲い掛かる氷の塊を、俺は静かに見つめた。
あれがモロに当たればかなりの致命傷を負うだろう。だが焦りは禁物だ。息を吐き、集中力を極限に高める。ソードスキルは使わない、ただ純粋なプレイヤースキルで目の前に迫るコイツを切る。
左手で握る曲刀に力を籠め、身体にあたるギリギリまで引き付け、刃を振るった。
文句なしの完璧なタイミングで、礫を絶つ。
「少しはやるようだな」
音一つたてることなく氷が上下で真っ二つに割れ、ポリゴンとなる。その様子を見ていたのか、ヒースクリフが小さな声で何か言ったような気がした。
「はああああッ!!」
ポリゴンが溶けないうちに、アスナは瞬きよりも早くモンスターの背後まで距離を詰めると、思いっきり地面を蹴り上げる。視線をやや上の方に向けるもすぐに戻し、モンスターへとレイピアを何度も突き刺す。アスナの状況判断の速さと、その腕から繰り出される攻撃の速さは、まるで一筋の閃光のようだった。
俺も攻撃に加担することで、モンスターゲージはみるみるうちに減少していき、とうとうHPが0になった。
右半身の頭部がぐったりと垂れる。だが、左頭が異様に震え、全身が怒りの赤色で染まる。一際大きな咆哮と共に、広範囲の炎のブレスが吐き出された。燃え上がる炎の海に飲まれそうになるも、俺とアスナは後方にあった折れた柱を盾にすることで、炎によるダメージを回避した。
柱の陰に避難した俺とアスナは身を寄せ合い、情報交換するべく会話を交わす。
「片方のHPが0になると、もう一方が狂暴化するみたいだな」
「えぇ…もしこれが本物のカプ・ドワだったとしたら、かなり危なかったかも…」
「本物とやる前にこの情報を入手できたのは、わりとデカい収穫だな」
先程のブレスとは違い、狂暴化したことで燃え盛るようなブレス攻撃の時間が延びている。柱の陰からでも伝わる炎の熱は、防具をつけていてもじわじわと肌にその温度を伝えていた。
俺はポーションをオブジェクト化し、ブレス攻撃が止むまで体力の回復を図る。瓶に口をつけながらそっとフィールドに目をやると、ヒースクリフは業火の中でたったひとり、盾を構えて耐え続けていた。
「盾で凌いでんのかよ…やっぱりアイツ人間じゃねぇ…」
「さすが私たちの団長よね…どうして前線を走っていなかったのか不思議なくらいよ」
ヒースクリフの鬼のような耐久力に、もはや嫉妬を通り越して呆れていた。
モンスターですら持続ダメージ分しか体力を削れていないんだ、そりゃ、デュエルで歯が立たないのもある意味では納得できる。
「俺が倒すまで、誰にもその余裕面を崩すんじゃねぇぞ、ヒースクリフ…!」
ポーションを咥えてヒースクリフの様子を見ていると、肩をちょんちょんと叩かれた。
振り返るとアスナが困った顔を浮かべて、その細い指で瓶の底を軽く押し上げる。
「まったくキミって人は…ほら、もう少しでブレス攻撃が終わるわよ」
「んっ…」
やんわり「はやくと飲め」と遠回しに言われ、渋々ポーションを流し込んだ。俺が一通り飲み終えると、アスナは戦闘スイッチが入ったのか、キッとモンスターを睨む。先ほどまでの表情とは一変して、その眼差しは彼女の繰り出す鋭い剣技のようだった。
「あと、さっきモンスターの背後に回った時、うなじ付近に傷が見えたの」
「うなじ、かぁ…だとすると弱点の可能性が高いな」
アスナが見かけたうなじの傷跡、十中八九弱点で間違いないだろう。
双頭であることにより、それぞれ火と氷のブレス攻撃が可能であるなら、首の分かれ目が弱点に設定されていてもおかしくない、むしろ納得感すら持てる。
そう考えると、25層のカプ・ドワも、このプロトタイプと同じようなイメージでいいのかもしれない。
もし本物も同じような仕様であれば、大きくて軌道がある程度読める鎖鉄球は俺でも対処できる。しかし、モンスターのブレス攻撃の方がかなり厄介だ。予備動作があるとはいえ、氷の礫は標的が予測しにくく、広範囲かつ炎の持続ダメージを負わせるため、同時にブレス攻撃をされると被害は大きなものになるだろう。
とりあえず、今後戦うであろうボスを想定しつつ、今目の前にいる敵に集中しないとだな。
「急所の位置も高いし、ここは身軽で素早いアスナを軸にしてモンスターを倒すのが良さそうだ」
事実として、今の俺と盾を装備しているヒースクリフの機動力じゃ、モンスターの背後に回ってうなじに攻撃を当てるのは難しい。
ヒースクリフは盾を装備しているから除外するとして、俺の攻撃スタイルはいたってシンプルであり、敵の攻撃を相殺するパリィとカウンターを採用していた。手数よりも一撃の重さを基準に立ち回っているため、高所にある弱点を突くことは厳しい。
やろうと思えばできなくもないが、効率も悪し、俺を起用するくらいならばアスナに任せた方が絶対にうまく立ち回ってくれるため、ここはアスナに頼るのがベターであり、一番賢い選択なのだ。
俺がアスナに提案すると、彼女は力強く頷いた後に、小さく微笑んだ。
「うん、分かった。攻撃は私に任せて」
モンスターに臆すことなく果敢に立ち向かえるアスナをみていると、自然と力が湧いてくる。第1層の死に場所を探していた時と比べると、もはや別人と感じるほどには今の彼女は頼もしい。
ヒースクリフが俺の超えるべき壁であり、強さの指標であるならば、アスナは俺の隣で切磋琢磨して、共に高みを目指す戦友に近い。アスナとなら、どこまででも行ける。彼女が隣に居てくれるだけで、俺は慢心せず『強さ』を手に入れるために貪欲になれる。
そして、強くなれば俺はもう誰も失わずに、この手で大切な人を守れる。
だから俺は、アスナの相棒でありたいんだ。
喉元から出かけた言葉を飲み込み、代わりに拳をアスナに向ける。
「アスナの道は俺達が切り開く…だから安心してぶっ放せ」
「うんっ!」
コツンと、お互いの拳をぶつけた。触れたその手は俺よりも小さいが、誰よりも安心できる、そんな頼もしい手だった。
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