俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~ 作:三流二式
「この時期に未確認アラガミの出現か……」
自らが課せられている仕事からか、何か思うところがあったソーマはぽつりとつぶやいた。
「なんだなんだ? なんかあんの?」
ヘリから降りながらコウタは振り返ってソーマを見た。
「例のノヴァの残滓を取り込んだアラガミかもしれない、ですか。ソーマさん?」
神機の具合を確かめていたアリサが、ソーマが言うよりも先にコウタの疑問に答えた。
「あぁ、だが防衛班の報告によれば、その線はなさそうだ。もっとも、うれしい情報という訳でもないが」
「そりゃそうだ」
純白の神機を担ぎ上げながら言ったソーマに、コウタは同意した。
「情報によればあと数分で例のアラガミ『ハンニバル』でしたか? がD地点付近に出現するそうです。猶予はありません、皆さん急ぎましょう!」
言うや、アリサは勇み足でさっさと先へ行ってしまった。
「なんであいつはあんなにテンションが高いんだ?」
と、ソーマ。
「最近低難易度任務ばっかりだったから、久々に歯ごたえのある任務で勢い込んでんでしょ」
コウタは答えながら、すたすたと先行する露出過多な背中を呆れ眼で見つめていた。
「ていうか隊長はお前だろ。部下を先行なんかさせんな」
ソーマが眉間にしわを寄せながら後方へ振り返ると、遠ざかってゆくアリサの背中を呆けた表情で見つめている第一部隊の隊長がいるではないか。
「(·◇·)?」
「? じゃねーよ。部下よりも先にお前が動けってんだよ」
「おお」
「おお、じゃねーよ! さっさと行け!」
有事の際は鬼神の如き動きをするこの第一隊長だが、そうでない場合この男はとことんまで動きが鈍い。
ソーマはカカシのケツを蹴りとばして急かしながら、その落差に困惑の思いを禁じえなかった。
どこか遠くで風が鳴る音が聞こえる。草木がそよぎ、時折小石が転がる湿った地面の上を、第一部隊の面々はしめやかに移動する。目的地であるD地点は平原の中心部から十一時の方向に位置しており、今いる場所からはまだ少し距離がある。だが未確認アラガミの出現報告があった以上、ここで足踏みをしている暇はない。
とどのつまりアリサが急いているのは全く持って当然のことであり、そのことに今更ながら理解した自身の察しの悪さに、カカシは己の浅ましさに眩暈がする思いだった。
露出過多な背中に追いつき、改めてカカシを先頭にしてD地点を目指す一行。
『未確認アラガミの反応、徐々に近づいてきています。この分では一分以内にD地点へ到達する模様です。第一部隊の閣員の皆様は速やかに接敵の準備を』
D地点にたどり着いた第一部隊へヒバリはタイミングを見計らって報告を読み上げた。カカシはヒバリの報告に了解の旨を伝えると、各員に作戦通りの位置に付くように指示を出した。
アリサがカカシと短めの最終確認を行っていたその時だ。ヒバリの切羽詰まった声が第一部隊の鼓膜を震わせた。
『み、未確認アラガミの進行速度が急激に上昇! ま、まずいです、この速度、三十……十……ゼロ! 皆さん気を付けて―――』
ヒバリの警告が飛び込んでくるのと、白い大きなものがアリサの真上に影を落としたのはほとんど同時だった。アリサははじかれたように頭上を見た。無機質な橙色の瞳と目が合った。
それは純白の鱗に身を包んだ、竜人めいた存在だった。しなやかな体躯は動きの素早さを予感させてあまりあり、頭部より雄々しく伸びる二本角は悪魔を連想させるほどに禍々しい。
『ハンニバル(バアル神の寵愛を受けし者)』
その名を授けるにふさわしい、凄まじき存在感を放つアラガミであった。
「―――」
強烈な局面にアドレナリンが過剰分泌され、アリサの主観時間が鈍化し、世界が色を失った。
停止した雨粒を視界に、ゆっくりと振りかぶられる義手めいた装甲に包まれた右拳を、アリサは眼で追った。
避けなければならない。アリサは思ったが、敵の反応速度は、鍛え上げられた彼女の反応速度をもってしてもなお早かった。
無機質な銀色の光が一瞬だけ煌めき、アリサの横を通り過ぎた。
直後、地面に着弾した破裂音と共に大量の土砂が空高く舞い上がる。爆心地に立つアリサは突風に身をよろめかせながらも、そこに立ち続けた。
遠くでハンニバルが怒気を含んだ声を発する。威嚇行動だった。
明らかに回避不能な攻撃だったが、直前で黒い影が流星めいて飛び出すのを彼女はかろうじて視界の端に捉えていた。
だれが? 決まっている。
「カカシさん!」
アリサは刮目した。数秒間の空白に、決壊したダムめいて記憶が流入する。
ハンニバルの急襲に気が付いたカカシは瞬時に跳躍し、鉄槌めいて振り下ろされた右腕に自らの神機を叩きつけるようにフルスイング。
神機と拳がぶつかり合い衝撃は相殺消滅。両者ははじかれ、カカシはアリサの横へ、ハンニバルは前方5メートルほどで着地した。
「うわっなんだこのトカゲ!?」
コウタは唐突に出現したハンニバルに驚愕を漏らしつつも、さすがは百戦錬磨の第一部隊の一員というべきか。硬直も臆しもせずに神機の引き金を引き、様々な属性のオラクル弾をばら撒いた。
「ガアアッ!?」
「……氷か雷だな、よし!」
鬱陶しげにガードするハンニバルの反応からどの反応が一番嫌がるか瞬時に悟ったコウタは属性を氷に絞り、特に反応が良かった背部の『逆鱗』に向けてオラクルレーザーを放った。
「グオオオ!」
当然ただの的になるハンニバルではなく、そのしなやかな体躯に偽りのない運動性を発揮し、致命部を狙ったレーザーを軽々と回避し、コウタへ向けて突進を放った。
「うはっ怒ったか!?」
「上出来だ」
回避に備えたコウタの横を、純白の翼が横切る。
「オラあ!」
「グオッ!?」
怒りで目がくらんだハンニバルの横っ面に、ソーマの神機『イーブルワン』が喰らいついた。
顔面を抉られたハンニバルは憤怒に燃える眼光でソーマを睨むが、ソーマは鼻で笑い、神機を構えてさらに踏み込んだ。
「ゴオッ!」
ハンニバルはリング状の火炎を吐いてソーマの接近を阻むが、ソーマは小刻みなステップを踏んでかわし切って懐へと飛び込み神機を一線。
「ッ!」
ハンニバルは咄嗟に背後へと飛ぶことで致命斬撃を回避したが、その着地点にはアリサが構えていた。
「さっきのお返しです!」
「グオオッ!?」
赤い刀身が特徴の神機『アヴェンジャー』を、アリサは渾身の力でもって叩き込んだ。ハンニバルは咄嗟に左腕で防ぐが、アリサの研ぎ澄まされた斬撃はそんな生半なガードで防ぎきれるはずもなし。
「オオ!?」
弧を描いて飛んでゆく左腕。眼で追うハンニバルにコウタとアリサはありったけの氷属性オラクル弾を叩き込んだ。
「グワワーン!」
ハンニバルは残った右腕でガードするが、防ぎきれずその身は徐々に削れてゆく。その隙にソーマは力をため、チャージクラッシュを叩き込んだ。
吹っ飛ぶハンニバルに追撃のオラクル弾が突き刺さる。竜人は憤怒に叫び、灼熱を吐きまくった。
滅茶苦茶に吐き出される火炎に、ソーマたちは後退を強いられる。
「ガアアッ!」
怒りに燃えるハンニバルは残った右腕にオラクルを集中させ、灼熱の槍を形成。遠ざかる三人のうち、最も鬱陶しいと判断したコウタに向けて狙いを定め、跳躍の準備をした。
しかしそこで彼はふと気づく。交戦直後に自分の初撃を防いだ黒い人間は何処へ行った?
その思考の刹那。ハンニバルの頭上から甲高い音とともに、黒く禍々しきものが突っこんできた。
「グオオオオッ!?」
それは上空でオラクルを吹かして機を窺っていた名無之カカシのインターラプトであった。
カカシは狼の頭を彷彿とさせる天ノ咢でもって逆鱗に牙を突き立てた。
「GRRRRR!」
尋常ならざる苦痛を与えられたハンニバルは半狂乱になってカカシを振り落としにかかるが、カカシは微塵も力を緩めず驚異的なバランス感覚でもって耐えしのぎ、アリサとコウタは援護射撃を、ソーマはリーダーが注意を引いている間に接近し幾度も切り付けて敵を仕留めにかかった。
「ふんっ……がっっっ!」
「ARRRGH!?」
ついにカカシは『逆鱗』を引きちぎった。悶絶するハンニバルへここぞとばかりに氷属性オラクル弾が、チャージクラッシュが炸裂する。
「ガアアアアアアアアア!!!」
ここでハンニバルが奥の手を見せた。火炎の翼を展開し、広げたかと思えば浮き上がり、灼熱の竜巻を四方八方へとまき散らしたのだ。
「うわあ!?」
「きゃあ!」
「ヌウ―ッ!」
コウタ、アリサ、ソーマは咄嗟にシールドを張って防ぐことに成功したものの、その熱量たるや。防いでいるにもかかわらず、熱が肌を焦がし、三人は苦悶に顔をゆがめる。
灼熱の竜巻により雨粒はたちまちのうちの蒸発し、凄まじい靄が立ちこめる。視界が聞かない中、無限とも思えるほどに引き伸ばされた時間の中で、彼らはただひたすらに耐え続ける。
白と赤に染まる視界。その只中にあってなお染まらぬ黒が、世界を切り裂いた。
「グオオッ!?」
ハンニバルは目を剥いた。切り札たる炎の竜巻の嵐の中を生身のまま突っ切り、今まさに己の胸のど真ん中に刃を突き立てんとする大狼の姿に。
「GROWL!」
『牙』の隙間から焦げた血を吐きながら、大狼は突貫の勢いを緩めることなく呪刀を突き出し、ハンニバルの胸のど真ん中を貫いた。
「ARRRGH!?」
ハンニバルは口から血を吐きながら苦悶した。奥の手は中断され、ハンニバルは無様に地面に落下した。
「あの馬鹿!」
吐き捨てながら、ソーマはカカシが作り出した大きな隙を生かすべく突貫。アリサとコウタの援護射撃を受けながらソーマはなおもハンニバルを押さえつけるカカシを飛び越え、渾身のチャージクラッシュをハンニバルの頭部に叩き込んだ。
「アバーッ!?」
頭部爆発四散!
さらにカカシは踏み込んで胸を切り裂き、首を切り裂き、ハンニバルの開きを作り上げた。
『敵性アラガミの沈黙を確認……皆さんご無事ですか?!』
「全員無事で「重傷者一名です」……」
口を開きかけたカカシにかぶせたアリサがカカシを睨みつけた。カカシは露骨に目を逸らして下手糞な口笛を吹いた。
「しっかし強かったなこいつ」
くどくどとアリサに問い詰められるカカシを務めて無視し、コウタは首なし死体となったハンニバルの死骸を神機の先端でつつき、ぞっとしたように呟いた。
「お、レアものだ」
激しくなってきたアリサの詰問を端から頭に入れていないソーマは、淡々とハンニバルの死骸に神機の捕食器官を突き立ててコアを抜き取った。
「―――ともかく……はあ、一旦帰りますよ。「オハナシ」はまだまだたっっっくさんあるんですからね?」
「( ° X ° ; )??????????」
これ以上まだあるの!? とばかりに戦慄していたカカシを置いて、アリサはすたすたとヘリのあるほうへと歩いて行った。カカシは慌ててその後を追う。
「「……」」
コウタとソーマは顔を見合わせ、それからそろって苦笑いを浮かべた。
これで終わりだ。誰もがそう思った。この先を知っているカカシですら。そう思ってた。
コアを抜くだけではだめだと、彼は知っている。だからこそ無理をしてまで肉体を徹底的なまでに破壊したのだ。
いつか経験した帝王の様に復活できないように。同じ轍は踏まぬようにと思ってのことだった。
……だが。
「ほんっっっとにもう──────ッ!?」
ぼやきながら前を向いていたアリサの頬に、不意に熱い風が過った。アリサははじかれたように振り返った。そこには、頭部が破壊され、腹が開かれたにもかかわらず活動を再開した竜人の姿があった。
「コウタ後ろ!!!」
「ッ! うそぉ!?」
アリサの警告にはじかれたように振り向けば、今まさに竜人が残った腕を振りかぶっているではないか。
「―――」
アリサの警告が発せられた時にはカカシは動き出していた。弾丸めいた速さでコウタの間に割って入った彼は神機のシールドを展開。衝撃を受け流しにかかる。
が。
(
強いてあげるとするならば角度が悪かった。咄嗟だった。そしてこれが最も大きな原因だが、ごまかしごまかしでやっていた神機にかけられていた魔法が、ついに解けてしまったのだ。
カカシは見た。いやな軋み音とともに神機がひしゃげるさまを。己の右手がへし折れ、骨が突き破るさまを。
「グワーッ!?」
悲鳴とともにカカシは吹き飛んでゆく。
「どういうことだ!? コアは確かに抜き取ったはず……!」
困惑しつつも神機を構えるソーマ。
「あぁそんな……ッ考えるのは後にしましょう。まずはカカシさんを……コウタ!?」
「こんにゃろこんにゃろ! よくもカカシを!」
撤退を促すアリサだが、頭に血が上ったコウタには届かない。
友人が傷付けられ逆上したコウタはくたくたの体に鞭打ってオラクルを絞り出し、蘇った竜人をもう一度亡き者とするために躍起になった。
「ッ!?」
が、沸騰した思考も、引っ掛かった引き金が冷ます。
(
瞬間コウタの脳内をよぎるのは
その失敗の後にどうなったかは、彼は嫌になるほど思い知っている。ほうら、あの時と同じように、荒ぶる神が鉄槌を振り上げている。
「──────」
死の危険にフリーズする思考。硬直する体。友の悲鳴に近い叫び声が水中のようにくぐもって聞こえる。
代りに鮮明に聞こえるのは、誰かが力強く大地を踏みしめる音だった。
コウタは見た。自分と竜人との間に割り込んでくる黒い影を。相も変わらず頼もしくて、でも、いつもずっと悲しそうに縮こまる黒い背中を。
黒と金の電を見た。迸る絶叫を聞いた。左腕に凄まじく放電する黒と金のオラクルを纏ったカカシが、固く握った拳を竜人の拳に叩きつけるさまを、コウタは、ソーマは、アリサはただ茫然と見つめていた。
一瞬世界に音が消え、次の瞬間世界を揺るがさんばかりの破滅的な破砕音が吹き上がった。
右腕の破壊を単に欲する崩壊により、ハンニバルはついに沈黙し、大地に伏した。
時を同じくして、名無之カカシもまた力尽きて地に沈んでいた。へし折れた右腕。ほとんど崩壊した左腕からぼたぼたと血が止まらない。雨と泥で滲み、彼の周囲はたちまちのうちにどす黒い沼めいた。
「「――――――」」
薄れゆく意識の中で、カカシは誰かが叫んだのを聞いた。
そこで彼の意識は途絶えた。
次は例のアレっすね。俺に書けっかな。ほんへ以上の曇らせを。