目が覚めたらIF世界ドイツ総統(美女)になってたので、少しでもマシな戦後を目指す   作:夜叉烏

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遅れて申し訳ございません。夜叉烏です。
新社会人になり、これから時間が取りにくくなってくると思うので、不定期更新と遅筆に拍車がかかります。ご了承下さい。


最終防衛線崩壊①

 バスク州エルコリリョの街は、物々しい雰囲気に包まれていた。

 これまでの反政府軍による空爆によって崩れた建物が並ぶ街のあちこちには、そぞろ歩きするカップルや親子連れの代わりに、武装した人民戦線政府軍や国際旅団の将兵が街路を埋め、主だった道路はバリケードで封鎖されている。

 

 未だ健在な姿を保っている商店やビルの入り口には、19-K 45ミリ対戦車砲が身を潜めるように配置され、見晴らしの良い広場にはM1931 76ミリ高射砲が、建物の屋上にはDK 12.7ミリ重機関銃、PM1910 7.62ミリ重機関銃を4連装銃架に搭載した各種対空機銃が設置され、天を睨んでいる。

 街の外殻には、BT-5やT-26といったソ連製戦車が展開し、その後方ではこれまたソ連からの援助兵器であるM1902 30口径76.2ミリ野砲、M1910/30 12.6口径122ミリ榴弾砲が砲身に仰角を掛けていた。

 

 住人はとっくの昔に避難・一部は徴兵され、迫りくる反政府軍を迎え撃たんとしている。

 ビルバオを県都とするビスカヤ県は、スペイン国内でも有数の工業地帯であり、ビスケー湾と面していることで造船業も発展している。この地が奪われれば、人民戦線政府軍の装備生産に大きな支障を来すだけではない。工業地帯を接収されるものなら、そこで生産される膨大な装備が反乱軍に渡り、ソ連からの援助物資を陸揚げする港がなくなってしまう。

 それだけは何としても避けたいという、防衛側の意思が強く感じられる様相だった。

 

 ――1937年2月1日の朝10時頃、街全体に空襲警報が鳴り響いた。

 突然の警報に顔を強張らせる兵士たちが空を見上げる中、重々しい爆音が聞こえ、やがてその正体を表す。

 

 それは勿論、反乱軍の大編隊。徹底的に事前空爆してくるため、彼らの航空部隊には"定期便"という渾名が付けられていた。

 ここ最近は、近代的な単発機2機種(Fw159とG.50)見慣れた複葉機2機種(He51とCR.32)、大量の爆弾を降らせてくる双発機と三発機(Ju88とSM.79)ばかりだったが、今日の空襲では陣容が微妙に異なる。

 Fw159AとG.50、CR.32に加え、初見参の単発機が合計凡そ60機。小型爆弾を用いて専ら対空砲・野砲潰しを行ってくるHe51の姿はない。

 

 すると、また別の爆音が新たに聞こえてきた。

 スペイン人民戦線政府軍の空軍部隊に配備されている、ソ連製I-16とI-15の2機種が、迫りくる敵編隊の要撃に当たったのだ。

 

「よし!全部墜としちまえ!」

 

 兵たちが味方機へ声援を送るものの、ソ連製戦闘機の数は20機程度。相手も半数程…つまり約30機が戦闘機で固められているらしく、爆撃隊に手を出せずに空戦へ引き込まれていく。

 

 正面からFw159へ挑みかかったI-16が、13.2ミリ弾の奔流に呑み込まれて木っ端微塵に砕け散り、G.50へ格闘戦を挑んだI-16があっさりと背後を取られて射弾を浴びる。

 I-15も隙を見て挑みかかるが、そこは反乱軍へ供与されたCR.32が抑えにかかる。複葉機としてかなり高水準な性能を持つ両機種は、何度も旋回を繰り返し、爆撃隊から遠ざかっていく。

 

 黒煙を拭きながらアパートにI-16が突っ込み、そこへ設置されていた対戦車砲陣地が崩落した瓦礫に押し潰される。

 機体全てを炎に包まれたI-15が錐揉み状態のまま落下し、運悪く墜落地点の近くにいた国際旅団の兵士が火炎に包まれて絶叫を上げる。

 I-15の射弾を浴びて黒煙を噴き出したCR.32が、高度を下げつつ来た道を引き返していく。

 

「逃げろッ!!」

 

 迫撃砲陣地に落下してくる機体もある。

 指揮官の怒声に全員が陣地を飛び出して地に伏せた途端、火を噴いたI-16が真っ逆さまに墜落した。

 弾薬箱が誘爆を起こし、一際巨大な火炎が沸き上がり、爆発の衝撃波が付近の建物の窓ガラスを振動させる。

 

 明らかに、反乱軍側の優勢だ。

 列強に数えられるドイツ・イタリアの正規軍から派遣された優秀なパイロットと機体、そして彼らから厳しい指導を受け、祖国奪還のスローガンを掲げて戦う反乱軍兵士の勢いは止められない。

 結果、新型単発機には一切手が出せず、街の上空への侵入を許してしまった。

 

 広場に設置されたM1931 76ミリ高射砲が火を噴き、敵機を迎え撃つ。

 時限信管が作動し、高空で無数の爆炎が沸き、夥しい数の弾片が撒き散らされるが、精度も発射弾数も話にならない。

 ただでさえ、高射砲の命中率は低いのだ。大きく鈍重な重爆ならまだしも、比較的軽快で的の小さい単発機相手に命中させるのは至難である。

 

「弾幕が薄いぞ!何をやっている!?」

 

「駄目です!第8対空中隊、応答せず!」

 

「第3対空中隊、勝手に撤退してますッ!!」

 

「ええい、役立たず共がッ!!やむを得ん、各個で応戦させろ!!」

 

 人民戦線政府軍は様々な党派の構成員から成る組織であり、謂わば『烏合の衆』。命令系統が異なるため円滑な行動に著しい制限が課せられるだけでなく、命令不服従や内ゲバなども起きる始末だ。

 また、『国際旅団』の多国籍兵たちもそれに加わるお陰で、更なる混沌(カオス)を極めている。彼らは人民戦線政府軍からすれば『同じ思想を謳う頼れる同志』どころか、『味方の足を引っ張る役立たず』の烙印を押されていた。

 

 お陰で、エルコリリョ全域の高射砲部隊に『砲撃開始』の命令が行き渡らず、各砲がバラバラに射撃、中には味方機が蹴散らされた様を見て腰を抜かし、敵前逃亡する部隊さえいる有様だ。

 命令系統も練度も士気も話にならない状態で、空襲を防げる道理がなかった。

 

 時折、76ミリ弾を至近距離で受けたように見える機体が確認でき、思わず撃墜を期待するが、直ぐに体勢を立て直す。

 ドイツ・イタリア機は頑丈に造られているといわれるが、この新型機もその特徴を持っているらしい。

 

 新型機は1機も喪われることなく、隊長機らしい先頭の機体が機首を下向けた。陽光が下腹で反射し、殺し屋が振り下ろすナイフのように白く光る。

 それに続く形で、残りの機体が急角度で街へと降下していく。He51などよりも遥か高速で降下していく様は、獲物を見つけた肉食獣を思わせた。

 

 ダイブ・ブレーキの神経を掻き毟られる音が周囲を満たす中、遂に投弾が開始された。

 単発機は胴体に大型爆弾、主翼下に小型爆弾を同時に搭載しているようで、まずは対空砲を黙らせようと考えたのか、発射炎を目標に突っ込む。

 慌てて降下に移った敵機を追随するが、急降下する機体を追いきれない。高射砲弾は、敵機が通過した空域で炸裂している。

 

 距離が近くなり、対空砲火にPM1910、DK重機関銃が加わり、7.62ミリ弾、12.7ミリ弾の火箭を打ち上げ、周りの兵士も小銃を敵機に向けて発砲する。

 だが、そんなヤケクソ染みに振り回すような銃撃は、敵機に掠りもしない。対空機銃は兎も角、曳光弾のない小銃弾が猛速で三次元機動する航空機を捉えるなど、万に一つもない。

 時折、機銃弾が複数命中したように見える機体もあったが、やはり頑丈に造られているのだろう、ぐらつきもしない。

 

 両翼下から分離した小型爆弾が高射砲の至近に落下して炸裂するや、爆風で砲が横転し、砲員たちが衝撃波で吹き飛ばされる。弾薬箱を直撃された陣地は、文字通り消し飛び、マッシュルーム型の爆炎が沸き立った。

 PM1910 4連装対空機銃のすぐ近くで炸裂した小型爆弾は、射手を物言わぬ肉片へと変え、銃架から機銃本体が外れて地面に転がり、銃身冷却用の水が入ったタンクを弾片が切り裂く。

 DK重機関銃が設置された建物の屋上で炸裂した爆弾は、機銃や射手を吹き飛ばすのみならず、即席の避難所として多くの兵士が詰めていた建造物を倒壊させ、生き埋めにしてしまった。

 

 ただでさえ墜とせる気配のない対空砲を粗方黙らせ、発砲すら封じた反乱軍の爆撃は過熱する。

 

 胴体下から分離した本命の大型爆弾が風切り音を立てながら野砲陣地へ落下し、複数の野砲が爆炎に呑まれ、残骸と化して宙を舞う。

 迫撃砲陣地に落下した一弾が弾薬箱を誘爆させ、砲員が煉獄の中に姿を消し、飛び散った砲弾が被害を広げる。

 

 T-26やBT-5といった戦車の真上からも爆弾は降り注ぐ。

 避退しようと右往左往した挙句衝突し、けたたましい音を立てて絡み合った2両の至近へ爆弾が落下するや、何トンもの車体が軽々と宙を舞い、地面を二転三転し、曲がりくねった履帯や折れた砲身、外れた転輪が撒き散らされた。

 運悪く砲塔天蓋に直撃を食らったT-26が、まるで陶器の上から力任せにハンマーを振り下ろしたかの如く、紅蓮の炎を上げて爆砕された。

 自慢の快速で避退を図るBT-5の前方へ爆弾が落下し、穿たれた孔に速度を落とさずに嵌ってしまい、擱座する。

 陸戦では凄まじい火力と防御力を発揮する戦車も、空からの攻撃にはどうしようもない。主砲も機銃も仰角が足りないし、そもそも当たらないだろう。

 

 爆弾を捨てて身軽になった機体の中には、機銃掃射をかける戦意旺盛なものもいた。機首に発射炎を閃かせ、物資の山や車両に対して機銃弾を浴びせる。

 糧食や実包の入った木箱が穴だらけになって木屑が撒き散らされ、ソ連から供与されたZIS-5トラックのボンネットを貫通した一弾がエンジンを破壊し、炎上させる。

 

「あ!?おいこら、逃げるんじゃないッ!!」

 

 腰が抜けてしまったのか、戦車を乗り捨て、身一つで逃げだす者さえいる有様だ。

 士官が戦闘へ戻るよう怒鳴るも、効果は全くない。ヒンヒンと情けない声を上げながら、何度も転びつつ逃げていく。

 

 ――空襲が終わって反乱軍の機体が姿を消した時、空襲を辛くも切り抜けた将兵たちは、呆然とした様子で空を見上げていた。

 直撃弾や至近弾を受けた陣地から負傷者が引きずり出されるが、軍医も医薬品も到底足りない。大雑把に包帯を巻きつけて止血し、健在な建物の地下室に運び込むことしかできない。

 

 街の数十か所からはどす黒い火災煙が立ち上り、市全体を覆っていく光景は、エルコリリョの運命を暗示しているかのようだ。

 しかし、彼らに絶望している暇はない。

 

「反乱軍だ!!」

 

 街の西部から絶叫が上がり、その砲声に複数の砲声が重なった。

 

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「戦況は一方的に推移…というところか」

 

 イムカー戦闘団を率いるヴィルヘルム・フォン・トーマ中佐は指揮車であるホルヒ901の後席から身を乗り出し、後方から聞こえる砲声を聞きながら独り言ちた。

 双眼鏡を向けている場所――エルコリリョの街が位置する方角からは、無数の黒煙が沸き上がっている。空爆と現在行っている準備砲撃によるものだ。

 

 コンドル軍団が配備している火砲は、32口径15センチ榴弾砲sFH36。

 最大射程15675メートルの性能を持ち、口径も大きい。

 また、反乱軍側に供与されている31.5口径10.5センチ軽榴弾砲leFH18 Mも威力を発揮しており、配備数は15センチ榴弾砲よりも多い。

 

 双方共、射程で人民戦線政府軍の主力火砲である76ミリ、122ミリ榴弾砲を圧倒していた。

完全なアウトレンジ砲撃によって一方的に敵を叩いている。

 それに加え、人民戦線政府軍はただでさえ統制が利かない状態だったにもかかわらず、空爆によってより拍車が掛かっていた。

 一応、敵も撃ち返しては来たが散発的であり、そもそも全く届いておらず、反乱軍側の被害は皆無である。強いて言うなら、弾薬箱を足の上に落として骨折し、後送された兵が若干一名いた程度だ。

 

「空爆の影響もありましょう。恐らく、救助活動を優先して行っていたはずです」

 

 副官が言った。

 確かに、反撃するべき砲兵部隊も逃亡するか、人手が足りないあまり負傷兵の救助に駆り出されるかで、即応能力が完全に終わっていた。

 

「いや、あの新型機の威力は凄まじかったな。爆弾は多く積めないと聞いたが」

 

「その分、正確性では随一ですから。いつもの水平爆撃では無駄弾が多く、投下量の割に撃破数が少ない…という非効率な結果になっていたかと」

 

 今回用いられた新兵器の1つ…ユンカースJu87"スツーカ"による急降下爆撃を、トーマは素直にそう評価した。

 …そう、某あの人のイメージが定着しているであろうJu87なのだが、この世界においては、史実とは大分異なる外観・開発経緯を持つ機体となっている。

 

 というのもこの機体、実は日本が関係しているのだ。

 1936年、日本陸軍は九三式双発軽爆撃機の後継機開発――後の九七式軽爆・九八式軽爆――を各企業に指示するのだが、この世界でのイレギュラーが本機の開発に影響を与えた。

 1935年のリリア訪日後に天皇の勅命で行われた、陸軍への大規模な内部監査である。

 

 この影響で、軍民双方からの信頼が著しく失墜し、金も発言力も海軍に取られてしまったのだ。よって、新兵器の開発も予算を止められ難航することに。

 九三式双軽の後継機開発についてもその影響から逃れることはできず、どうしたものかと悩んでいたとき、声をかけてきたのがドイツである。

 Hs123の後継機足り得る、近代的な単発爆撃機を求めていた時期であり、駐日大使館付武官を通して本機の開発を知ったドイツがこの計画に興味を持ち、技術と予算を提供した…という経緯だ。

 ドイツ軍への配備も考えられているため、同国の希望も多数設計に盛り込まれている。

 

 兎も角、今回が初陣のIF世界版Ju87は、大量の爆弾を降らすJu88やSM.79程の派手さはなかったものの、ベテランの外科医が振るうメスのような正確さで敵の火砲や地上車両を多数撃破し、大混乱に陥らせたのであった。

 ここに地上部隊を突っ込ませれば、エルコリリョの制圧にはそれほど時間はかからないように思えた。

 

「さぁ、空の連中がいい仕事をしてくれたんだ。俺たちもそれに応えねばな」

 

 トーマはそう呟き、無線手を呼びつけて受話器を受け取る。

 

「各隊に告ぐ。速やかに前進を開始せよ」

 

 彼の一声が部隊に行き渡ると同時に、履帯を軋らせながらⅡ号戦車が、歩兵を満載したSd.Kfz.251が前進を開始した。

 




・Ju87A-1"スツーカ"
 某大佐でお馴染みの機体。なお、1937年2月時点では彼はまだ空軍学校にいる。
 予算を削られて難航していた日本陸軍の九三式双発軽爆撃機の後継機開発計画を聞いたドイツ空軍が、技術と資金を提供した結果誕生。
 外観は史実とは別物であり、一式戦『隼』のような低翼配置の前縁直線翼、引き込み脚を採用し、搭載エンジンは離床出力1175馬力のBMW134Aエンジンである。
 設計についてはドイツからの要望が多数盛り込まれ、なんと急降下爆撃・水平爆撃・雷撃が可能な多用途攻撃機となった。リリアがユンカース社を視察した際、『急降下爆撃機と雷撃機に求められる性能ってほぼ一緒じゃね?(要約)』と口に出した結果。
 Ju87の雷爆同時仕様とか史実で考案されてたし違和感ないよね?()
 それに加え、艦上機として採用したいという海軍からの『急降下爆撃機・雷撃機は活躍できる状況が異なり、空母の限られた搭載機数を活用できない。ただでさえ我が軍の空母は搭載機数が少ないのだ』という意見も手伝い、実現した。
 爆弾倉は廃され、搭載兵装は胴体・及び主翼懸架方式。搭乗員は2人にまとめられ、人的資源の喪失をできる限り少なくしている。運動性能も高く、爆弾非搭載時ならある程度敵戦闘機相手に自衛戦闘も可能。
 機体構造はFw159同様堅牢で、コクピットとエンジン周りに装甲板を、燃料タンクも防漏仕様。
 外観はJu87D以降のコクピット形状を採用したSu-6(M-71)…みたいな感じ。

全長:9.31メートル
全幅:12.25メートル
全備重量:2.98トン
エンジン:BMW134A 空冷14気筒(1175馬力)
最高時速:403キロ
航続距離:1130キロ
武装:MG131 13.2ミリ機銃×2(機首)、MG81Z 7.92ミリ連装機銃×1(後席)
爆装:
 SC250 250キロ爆弾×1+SC50 50キロ爆弾×4
 SC500 500キロ爆弾×1+SC50 50キロ爆弾×2
 F5W 航空魚雷×1

フランスにどうやって攻め込む?

  • 史実ルート:アルデンヌの森を通る
  • マジノ線ルート:マジノ線を正面突破
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