心配ばかりかけてくれるけど、友達だし。
その辺はまあ、なんとかなる。
限度もあるけど、なんとかする。
そんな女の友情は、裏から見ても変わらない。

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今回は渚さん回です、例によって読んだばかりのところですが。


アオのハコ#55 SideB

「――あんたバカなの?!?」

 千夏の肩を掴んだまま、思わず声を張り上げてしまう。普段表情が少ない千夏も、さすがに驚いた顔をしているけれど、こっちはもっと驚いた。

 まさか千夏が、一つ下の男子がいる家で生活しているなんて。

 そんなの――そんなの、どう考えたっておかしい。そりゃ日本に残ってくれたのは嬉しいけど、でも。まさか、まさかだ。そんな大事(おおごと)になるくらいなら、違う道を考えてほしかった。

 その結果千夏が栄明を去ったとしても、身の安全には換えられないんだから。

 

 居候先が親戚じゃなく、母親の親友の家だった。そしてそこには息子さんがいて、一緒に生活している。

 一応あらましは聞いたけど、いやでも色々おかしくないか。いくら親同士が仲良くて空き部屋もあったから、って高校生の男女を同じ家に住まわせるか普通。私が親だったら絶対に嫌だ、気持ち悪い。

 そもそも私に何も言ってくれなかった、というのが寂しい。もし今しがた「千夏の誕生日の日、あの子と一緒にいた? もしや付き合ってるとかぁ?」と聞かなかったら、このまま卒業まで黙っていたのかもしれないかと思うと、ちょっとへこむ。そりゃ口は軽く見えるかもしれないけど、私にだって仁義はある。千夏にとって不利になるようならば、全力で口をつぐむさ。

 ……まあ、私に気を遣って何も言えなかったのかもしれないけど。千夏は気配り屋ではあるけど不器用だから、時々妙な気遣いをするんだ。言ったら心配するから黙ってた、は分からなくもない。

 だって、男子が同居してるなんて。男子なんて、そんなのは――ケモノなんだから。同い年でも男子はバカなんだし、年下となったらそれこそ野良犬みたいなもんだ。あの子……猪股くんはガワこそ可愛いけど、中身はどうだかわかったもんじゃない。うちの弟だって夜中にコソコソ()()()してたりして、スゴく不愉快だし。居候先という逃げ場の無い場所で、千夏が辛い思いをするなんて考えたくもない。もしそんなことになっているなら、殴り飛ばしてでも千夏を奪い返さなければ。

 でも、とは言え。中一からずっと一緒にいる私がみた限り、千夏におかしな様子はない。()()()()()()は全く以てゼロ、ワンパクにたくましく育っている。むしろ逆に心配だ、もうちょっと女子っぽくなって欲しい。それこそ私が言えた義理じゃないけどね、その辺はお互い様だから。

 しかしそうなると今はまだ心配する必要もないのか、或いは向こうが壮絶にヘタレなのか。あの無害そうな顔だと、後者かな。

 

 二年になって以降、千夏は少しずつ変わりつつある。重責に押し潰されながらも自分を削ってひたすらもがいていた千夏は、もういない。時に沈むことはあっても、それを静かに乗り越えて歩き続ける。タフになりつつあるというか、弱さを認められるようになった。強がるのを止めて、周りを頼れるようになったんだろう。

 それこそ千夏の誕生日、先輩方が引退して副キャプテンになった時もそうだった。学校にいる間は追い詰められた顔だったけど、電話していた声は悩みを解決したようにスッキリしていたっけ。その切っ掛けになったのがあのじゃがいもみたいな後輩だとしたら、なかなかどうして悪くないな。

 千夏は出し方が下手なだけで、感情が薄い訳じゃない。実の家族から離れている今の千夏には、寄り添ってあげられる()()が必要なんだ。それが彼氏だとか、そういうモノである必要はないんだけど。

 ただなあ、向こうはどう思ってるのやら。その辺次第で、話は大きく変わってくるんだけど。しかし今年の花火大会に彼女連れで来てた男子にも似てるんだよね、あの子。

 でもまあ千夏を預けるにはまだまだ足りなさそうだし、どんな子か見定めさせては貰おうか。千夏の友人として、色々思うところはあるし。

 なんにせよ、これが終わってからだな。熱心に猪股大喜くんの試合を見守る千夏の顔は、彼氏を見守る女子のようにとても幸せそうだ。今は邪魔するべきじゃない。焚き付けるにせよ鎮火するにせよ、あとで良い。

「……ん?」

 ふと向かい側に目をやると、ぺたんと匍匐前進のポーズをしている子がいるのに気付いた。なにやらこっちを見て複雑な顔をしている、……ような。はて、誰だろう。千夏に用があるんだろうか。

 ま、良いか。何かあるなら自分で来るでしょ、別に大した距離でなし。

 試合は目下進行中、その他もあれこれ進行中。結果がどうなるかは、終わってみるまで分からない。

 まあ面白いのは確かだな、それは大事なことだ。

 私の友達が、明日も明後日も笑顔と共にいられるように。私もちょっとばかり、お節介を焼くとしますか。


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