バイオハザードRTA 新B.O.W.ルート『グレーテルの怪物』END   作:血袋

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(これが最後の)初投稿です。


おま〇け^~(気さくな最終回)

「皆と合流して、政府の元に向かわなくちゃね。でもイザベラ、その腕は本当に大丈夫なの?」

 

「ご心配なく、焦げてるだけですから。流石に全力2連発は堪えましたが、半日もすれば治りますよ。……急ぎましょう、あのニコライという男が最後に邪魔してこないとも限りません」

 

 ジルさんと共に、エレベーターで屋上まで移動。施設からの脱出を目指す。

 お互いにネメシスとの因縁にも終止符を打つことができ、後顧の憂いも無い。残る指定(オーダー)は、入手したワクチンを合衆国政府に届けて街の爆破を防ぐことだけだ。

 

 ……しかし、口は禍の元ということわざが日本にあることを忘れていた。

 最上階に到着したエレベーターから降り、最後の階段を駆け上がって屋上への扉を越えた私たちは……衝撃を受けることになる。

 

「──グレーテル!?」

 

「──お姉ちゃん!!」

 

「遅かったじゃないか。レディは支度に時間が掛かると言うが、既にパーティはお開きだぞ」

 

 屋上に停められているヘリコプターの前で私たちを待ち構えていたのは、そのニコライに捕まえられているグレーテルの姿だった。

 

 今にも沸騰しそうになる頭の中をどうにか冷静に保ち、兵器らしく状況判断。

 すぐ側にはカルロスとタイレルさんが倒れている。三人とも助けに入りたいが、ニコライが銃を構えている内は近づけない。……2人よりも強いのだろうと睨んではいたが、ここまでとは。

 

「イザベラ……すまない、不意を打たれた……!」

 

「こいつ、こんなに強いとは……今まで隠していやがったのか……!」

 

 そして、地面に倒れているのはカルロスとタイレルさんだけじゃない。

 無残な姿で放り捨てられていたソレを見つけたのは、他ならぬジルさんだった。

 

「ワクチンが──ニコライ!! 自分が何をしたか、分かってるの!?」

 

「知らん。俺は雇い主の、アンブレラを潰せとの命に従ったまでだ。それに、そんな金にならない物を悔やむ必要は無い……そら、もうじき聞こえるぞ?」

 

『──ミサイル着弾まで、あと10分』

 

 ニコライの言葉に続いて響き渡ったのは、間もなくラクーンシティが消滅することを告げる無情なアナウンス。仮に、このニコライやネメシス共の邪魔が入らなかったとしても……合衆国政府へワクチンを届けるのは、どうやったって間に合わない。この街の滅菌は……運命だった。

 

「おっと! ミサイルが発射されたか、そろそろ行かねば……だが、せっかく金のなる木が目の前にあるんだ。俺のボーナスのためにも持ち帰らない手は無い。言っている意味は分かるだろう、ティシポネー?」

 

「……それが、貴方の雇い主からの指定(オーダー)ですか。天下のアンブレラに喧嘩を売ったばかりか、私のようなオモチャまで欲しがるなんて。随分と派手なパーティを開こうとしているみたいですね」

 

「理解が速くて助かるな、そちらのミス・バレンタインとは大違いだ。それなら現状も把握できているだろう? 大切な妹を守るのが存在意義なら……ここは俺に従うべきだ」 

 

 (はらわた)が煮えくり返る程の屈辱だが、現状その通りだ。私のどんな攻撃も、グレーテルに突き付けられた拳銃よりは遅い。ジルさんやカルロス達も、ニコライの不意を打てる位置には居ない。

 どうする。どうにかして、奴に一瞬でも隙が生まれれば。

 

「さあ、こっちに来い。妹と交換だ。兵器に選択権など無いことは弁えているだろう? 自分の生み出された価値を全うしようじゃないか、人の命を金に換えるビジネスで──」

 

 

「──お姉ちゃんに酷いこと言わないで!!」

 

 

 ……何が起きたか、ニコライには分からなかったことだろう。私たちも一瞬分からなかったし、多分グレーテル自身も分からなかったと思う。

 齢9歳の少女に、大の軍人が華麗な一本背負いを決められるなんて。

 

「皆さん!!」

 

「……グ、アァ!」

 

 とは言え、次に何をするべきかは明白だった。

 私が右腕、ジルさんが左腕、カルロスが右足、タイレルさんが左足。

 四つ分の銃声は寸分違わず重なり、再起不能となったニコライ・ジノビエフが出来上がった。

 

「お姉ちゃん!」

 

「グレーテル! ……よかった、無事でよかった!」

 

「とーぜん! アタシ、お姉ちゃんの妹だもん!」

 

 抱擁を交わす。お互いに、強く、強く。

 ラクーンシティを守ることはできなかった。だけど──大切な、私の一番だけは、守れた。

 

 

 ……あまり感傷に浸っている時間は無い。もう間もなくミサイルがやって来る。

 カルロスとタイレルさんがヘリコプターのチェックを済ませた。問題なく動くようだ。

 そうなると、残るはこの男、ニコライだが。

 

「──なぜ、こんなことを?」

 

「……世の中、何にでも値段が付いてる。世界を燃やすことにもな、ハハッ」

 

「誰に雇われてるの?」

 

「教えてやる……逃がしてくれたらな。カネはいくらでも払う」

 

 そこまで訊いて、ジルさんはこちらへ踵を返してくる。私も同意見だ。

 ここで私たちが人殺しになる必要も無い。だって、これから行われるのは()()作戦なのだから。

 

「──お前たちは馬鹿だ、後悔するぞ! 俺が死んだら……真相は闇に葬られるんだぞ!」

 

「──それくらい、明らかにしてみせるわ」

 

 ニコライの命乞いに、ジルさんは凛として返す。

 彼を残した皆がヘリに乗り込み……このラクーンシティから、足を離した。

 

 

 

 

「──来たわ」

 

 私たちを乗せるヘリと一瞬ですれ違った、ミサイル。

 それはやがて、大きく広がる白い閃光を生み、冷たい虚しさを伴った熱い爆風を放つ。

 強風に煽られるヘリの中で妹を抱きしめながら、私はジルさんと共に、見届けた。

 

「……やっと終わった」

 

「さよなら……ラクーンシティ」

 

 達成感とは呼べない、純粋に口を衝いて出た、単なる感想のような。そんなカルロスの言葉に、ジルさんが続いた。

 ……みんな分かっている。これは終わりじゃない。始まりだ。

 ラクーンシティが消えたところで、アンブレラは消えていない。生物兵器も消えていない。

 きっと、これから世界は変わるだろう。1人の命が助かる間に、100人の命が失われるような、そんな世界に。……まさしく、このラクーンシティのように。

 

「……お姉ちゃん」

 

「大丈夫、心配いらないよグレーテル。……きっと、私はそのためにいるんだ」

 

 ラクーンシティ自体に、名残惜しむ情は無い。それでも、そこで失われた命については、そうは考えられない。

 幸せな家族があっただろう。仲睦まじい兄弟があっただろう。明日も遊びたいと願う幼い子供があっただろう。それを想わずにはいられない。

 

 そういうものが、どれだけ大切か分からないって奴は──アンブレラは許せない。

 代償を払わせてやろう。その首を必ず圧し折ってやろう。

 

 誰も、私たちを止めることはできない。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ──2009年3月。場所は()()()()()()。私は人を待っている。

 誤解の無いように情報を付け加えておくと、ここで言うアンブレラ社というのは、かの製薬企業ではない。民間軍事会社のことだ。

 

 生物兵器の開発に手を染めた非道の軍事産業会社、アンブレラ・コーポレーションは潰れた。

 もっとも、それを成し遂げたのは私でもジルでもない。あのラクーンシティを脱出した者の証言や数々の証拠は、アンブレラの非合法活動を世間に露呈させるきっかけとなったものの……悔しいが、止めを刺したのは他でもない、奴らの内側に潜んでいた獅子身中の虫だった。

 2004年に廃業へ追い込まれ、2006年には創業者であるオズウェル・E・スペンサーも殺され。あの憎きアンブレラは、意外なほど呆気なく倒産してしまった。

 

 しかしアンブレラ社が滅んでも、奴らが擁していた負の遺産──生物兵器とその製造技術は未だ世界各地のテロや紛争などで乱用され、滅ぶ兆しなど見えやしない。

 そこで今から2年前……2007年に、会社更正法の適用により対バイオテロ専門の民間軍事企業として再建されたのが、まさかの“新生”アンブレラ社だ。旧アンブレラの元社員たちが中心となって創設された新アンブレラは、負の遺産の回収とバイオテロの根絶が責務として課せられている。

 

 とは言えど、旧アンブレラの関係者が興した組織を易々とは信じられないのが、私やジルたちの正直なところだ。贖罪の意識を強調すべく敢えて残された“アンブレラ”の名前も、「赤と白の傘」から変更された「青と白の傘」の社章も、やっぱり意識せざるを得ない。

 

 じゃあ、どうして私、イザベラ・シュミットはこの会社へ足を運んだのか。

 決まっている、そこに愛しの戦友たちが居るからだ。

 

「──すまない、待たせた! 久しぶりだなイザベラ!」

 

「カルロス! 元気そうで何よりですよ。タイレルは?」

 

「もう少し掛かるそうだ。先に行って雑談でもしていろと言われた」

 

「あらら。……気を遣われてますかね?」

 

 戦友、カルロス・オリヴェイラ。こうして顔を合わせられたのは、およそ1年半ぶりか。

 ラクーンシティを生き残った仲間であるタイレル・パトリックと共に、彼は2つの理由から新生アンブレラ社に在籍している。

 1つ目の理由は、もちろんバイオテロ根絶を目指すため。

 

「2年が経ちましたけど、外面はしっかりしてきましたね、この会社も。中身はどうです?」

 

「やるべきことをやってるよ、今のところはな。福利厚生もしっかりしてる。U.B.C.S.に居た頃とあんまり変わらないってのが正直な所感だ。なんだか皮肉にも思えるが」

 

「あはは、それは複雑ですね。面倒を掛けますけど、引き続きお願いします。それに、赤と白よりは青と白の方がカルロスにも似合ってる気がします」

 

「それは何よりだ。イザベラこそ、病人服に防弾コートだった10年前のファッションよりは、そのBSAAの隊服が似合っているよ。妹さんの調子はどうだ?」

 

「元気ですよ。成長度合いで言えば、私以上にグレーテルですね。今じゃオペレーター業務が板に付いてきてますから」

 

 2つ目の理由は、もし新アンブレラが旧組織同様に悪事の兆しを見せた時、すぐにBSAA所属の私やジルへ伝えられるよう、自主的に監視するためだ。

 

 ラクーンシティ事件に端を発し、世界中に拡散してしまった生物兵器がテロに悪用されるという事態に、製薬会社の組合である製薬企業連盟が批判逃れ目的で資金を拠出し結成されたのが、BSAAという元NGO団体、現国連傘下組織である。

 この創設メンバー「オリジナル・イレブン」となったジルは、それ故に与えられてる高い権限をフルに活用し──この私とグレーテルもまた、BSAAとしてバイオテロに介入しているワケだ。

 

「カルロスもタイレルも、十分に気を付けてくださいね。今は大丈夫そうでも……FBCのように、いつ豹変してしまうかは分かりませんから」

 

「FBC──そうか、あの事件では君も当事者だったんだな」

 

「ラクーンシティ事件に続き、テラグリジア・パニック……二度あることは三度あると言いますが、三度目なんて御免こうむりますよ」

 

 そう、悲劇なんて御免だ。もっと希望が欲しい。希望が見えたなら掴みたい。

 だからこそ、私は今日ここに来ている。

 

 

「……なぁイザベラ。もしかして、今日ここに来たのは──ジルのことか?」

 

「……タイレルが来てから話そうかと思ってましたが、バレちゃいましたか。まぁ、私の方からこっちに出向くとなると、そうですよね」

 

 ──現在、ジルは殉職の扱いとなっている。

 2006年、オズウェル・E・スペンサーの逮捕のためスペンサー邸に突入したジルとクリスさん。しかし、そこで例の男……アルバート・ウェスカーとの交戦になったジルは、殺されそうになったクリスさんを庇い、最後にはウェスカーと共に崖へ転落したという。

 必死の捜索も空しく、遺体は見つからなかった。生存の可能性は無いと思われていた……が。

 

「結論から言いましょう。ジルが生きてるという情報をアフリカで掴みました。ちょうど生物兵器の密売がされるという話なので、撲滅ついでに探しに行きます」

 

「わかった、すぐに行こう。タイレルを引っ張って来る、会社に話を付けるのは任せるぞ」

 

「わぁ即決。分かってましたけどね」

 

「当たり前だ! だって──」

 

 ──そう、悲劇なんて御免だ。もっと希望が欲しい。希望が見えたなら掴みたい。

 私も、カルロスも、グレーテルもタイレルも、想いは同じ。

 

 

「「ジルのいない世界なんて、寂しすぎるから()!」」

 




本当に、本当にありがとうございました。
感想やここすきを残して頂けると幸いです。皆さんが気に入ってくれた文章表現を知りたいです。
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