*注*少々()エチチな話です。
時間は舞踏会が終わった夜遅くに変わり、場もアッシュフォード学園の寮へと移る。
普段、『学園』の『寮』と言えば『出入り禁止』の『門限』でその通りなのだがアッシュフォード学園はその特殊な立ち位置からか、寮内でも軽い軽食や風呂に洗濯が可能な施設が各寮についている。
そして女子寮のテルマエもつい先ほどまでは舞踏会後にごった返していたが、流石に慣れていないダンスや格式張った作法にドレスコードなどで心身ともに疲れたのか長風呂が好きな者でも早々に上がり、この時間帯としては珍しく人気が無くなっていた。
チャプ。
その夜の出会いや思い出に浸りながらきゃぴきゃぴとした女性の黄色い声が反響することも無いその空間に、一人の女性────シャーリーが未だに夢を見ている様な状態でテルマエに浸っていた。
「……ハッ?!」
ザバァ!
「今思えばチャンスだったんじゃ?!」
悶々と考えて数分後にシャーリーが上記に思い当たり、両手で頭を抱えながら飛び出るかのような勢いのまま立ち上がった。
「うわ勿体ないことをした────いやでも勝負下着じゃなかったしあのままだとあの
────ガラガラガラ。
「あ。」
「あれ?」
「先客のようね。」
「あ、ホントだ。」
「珍しいこともあるのね~。」
「おー! 先~輩~! 先ほどぶりです~!」
「あれ? 皆?」
頬が紅潮し、目をグルグルさせながらどんどんと早口で危ない妄想を膨らませつつあったシャーリーの考えをテルマエに入ってきたアリスの後にミレイ、マーヤ、ニーナ、アンジュ、そしてライラ達が中断させるかのように次々と声をかけてくる。
「でも『珍しい』と言えば……」
「……お、お邪魔しま~す。」
シャーリーは最後に人見知りっぽく、おずおずと皆の後に入ってきたカレンを見る。
「いつもは家に帰ったりするのに、今日はどうしたの皆?」
「ほら、なんだかんだ言って舞踏会じゃまともにこうやって皆でワイワイできなかったじゃん?」
「「(あれで?)」」
普段から色々と
「それにほら、この頃色々とあったし……あとはまぁ……色々ね。」
「教科書の見直しとかのことです?」
「ま、それもあるけれど、実はカレンちゃんにも知って欲しくて。」
「私に?」
「今日はマ────お母さんも来ていたの。」
「アッシュフォード夫人が、ですか?」
「そそ。」
「???????????」
ミレイの言葉にカレンはただ頭上に無数のハテナマークを量産した。
「珍しいですね……というか今考えたけれど、
「あー……うん、そうなるよね~。」
ふとしたマーヤが出した疑問にアッシュフォード家の事情をある程度知っていたアンジュが微妙な表情を浮かべる。
「あはははは……ほら、
「それで、アッシュフォード夫人が来た理由ってやっぱりミレイちゃんの将来について?」
「あ、ニーナにもよろしくって言っていたわよ。 それでこの間、指輪が来たじゃん────?」
「────あ。 そっか。 それにスヴェン君ってこの間当主になったから────」
「────ピンポーン♪ その時からもうお母さんってば猛プッシュしていてさぁ?」
「猛プッシュって────」
「────ぶっちゃけ『正妻を目指せ』、って感じ?」
「「「「……………………」」」」
「(あれ? 急にテルマエの温度が下がった様な気が……)」
無言になったその場の静寂を壊すことなく、上記をシャーリーは思い浮かべながらとある疑問を浮かばせた。
「あれ? でも噂だとスヴェンってヴィレッタ先生に指輪を送ったんじゃ────?」
「────まぁねぇ~────」
「────って大丈夫なんですかそれ?!」
「大丈夫も何も没落したとはいえまだ貴族だし私の歳で婚約ならともかく、婚約解消して相手もいない方が問題よ。 むしろ年上や物好きな人の後妻とかあり得るし。」
「さっきのはそういう意味じゃないんですけ?!」
「それともシャーリーって意中の相手を独占したいタイプ? 『お互い特定の一人』派?」
「茶化さないでください!」
「シャーリーって初心で可愛いわ~♡ でもね、貴族って怖いのよ? どれだけ言葉で言っても理解しない分からず屋なんてごまんといるし。 良い機会だったからお母さんに見せつけたわけ。」
「何を?」
「「「「「あ。」」」」」
「ミレイちゃん、引かれているよ。」
「だってニーナも知っているでしょ、ママがどんな人か? 直接スヴェンとカレンの仲を見せないと改めないわよ?」
ここでようやく察しの悪い者たちでもミレイのやったことを考え付き、諦め気味なニーナにミレイは反論する。
「(ミレイ先生って『ママパパ呼び派』なのね~/なんですね~。)」
アリスとライラ二人は慣れからか、あるいはテルマエを堪能しながら他の皆の会話を聞き流していた。
『諦めw』?
ソウカモシレナイネ。
「これでようやくママも相手がここ最近2,3年で実績を積み重ね続けている名門貴族のシュタットフェルト家が相手だと分かって考え直しているみたい。」
「諦めるんじゃなくって?」
「諦めるんじゃなくって。 これで当分は『その我儘ボディて誘惑しちゃいなさい!』とか言われずに済みわ~。 カレンも『バイ~ン』で『ドカ~ン!』な訳だし────」
「────ってどこ見ているんですか────?!」
「────それに病弱だった割に健康的な肌色もあって────」
「────訴えますよ────?!」
「────まぁ、肌色で言えばシャーリーがダントツで色白だけれどねぇ~♪ プロポーションも負けず劣らずだし────」
「────ちょ?! じろじろ見ないでくださいよ────?!」
「────減る物じゃないし、いいじゃんいいじゃん♡」
「減るんですよ! 精神が!」
「…………………………」
「えっと……さっきから私をジッと見て何、アンジュちゃん?」
「い……いや~!『本当にニーナなんだなぁ~』って! 眼鏡外して髪を下ろすとすっっっっっっっっっっっっっっっごく印象が変わるから! もうね! 『別人かよ?!』ってレベルぐらいに!」
「「「「(ぶっちゃけすぎぃぃぃぃぃぃ?!)」」」」
「や、やっぱりアンジュちゃんもそう思うの?」
「ほらぁぁぁぁ! アンジュちゃんもそう思うってことは皆もそう思っているってことよ────!」
「────さりげなく私のことディスらなかった────?」
「────私も昔からコンタクトに変えておさげも下ろした方が良いって言っていたの────!」
「────だから人の話を聞けや────」
「────まぁ、ようやく変えたのは
「ミ、ミレイちゃんってば!」
「「(……『誰かさん』ねぇ……)」」
「ニーナも初心ねぇ~♡ 恋愛方面は奥手で身体も────」
「────ミ・レ・イ・ちゃ・ん!!!」
「……てか、ミレイさんはいいんですか?」
「ん? 何が、カレン?」
「えっと、その……一人に対して多人数との婚約とかに関して。」
「「「「(カレンもぶっちゃけたぁぁぁぁぁぁぁぁ?!)」」」」
「え? ああ、それね。 う~ん……これでも私って貴族令嬢だしちょっとの間だけ皇妃候補だったからさ、その辺はまぁ……独占はNGかな? あ、あと浮気とかもね。 それ以外なら割とオーケーかな? あ! 勿論、皆とお互い全員を大切にするのが前提でね!」
「つまりミレイ先生は『納得した上での共有はセーフ』と?」
「
「それはまぁ……
「照れちゃうわね☆」
「(『貴方じゃないけど』って言ったら話がこじれちゃうわよね……ここは愛想笑いで済ませばいいかしら? でもこれなら
「それはそれとして……」
ミレイはぐるりと周りを見て、最後にアンジュをじっと見る。
「な、何?」
「いやぁ~、昔の貴女と今を比べて思い出すとこう……グッとくるものがね~。」
「ミレイって他の人の黒歴史をどうしてもこうも掘り起こすの────?」
「────それに最初は不慣れな様子だったけれどちゃんと自分ひとりで自分の周りの事も出来るようになって────」
「────だから無視すんな────」
「────それで今では自分磨きもできるようになって……苦労したわねぇ~。」
「……と、とととととととと当然じゃない!」
「「「「(ちょろ。)」」」」
ホロリとするミレイの言葉に流されたアンジュの様子に周りの者たちは上記を思い浮かべる中で、アリスはアンジュのアホ毛を見て呆れていた。
「(アレってどうやったら音符マークにできるの? もはや『魔法』を通り越して『奇跡』なんだけれど?)」
深く考えたらだめだ。
感じるんだ。
「でも……」
「「「「「??? (何か歯切れが悪い?)」」」」」
いつもゴーイングマイウェイな勢いでズバズバと物を言うミレイが躊躇う姿を見ては誰もがそう思い、彼女が言葉を続けるのを待った。
「……大変じゃない?」
「??? 何が?」
「今度一緒にサロンにでも行く? いいところを紹介するわよ?」
「??? 髪の毛は整えにこの間行ったばかりだけど?」
「いや~……その……
────バシャ────!
「────何でよ?! てか見んな────!」
「────単純に『大変そうだな~』って────」
「────余計なお世話よ────!」
「────上の髪の毛と同じで綺麗だけれど流石に────」
「────それ以上言ったら出るとこ出て全力で訴えます。」
「他の皆も────あれ?」
頭部全体を赤くさせながら下腹部を両手で覆い、威嚇する猫虎の様なアンジュから目を離したミレイはニーナ以外の皆が自分から距離を取っていたことにキョトンとする。
ちなみに訳が分からないと言った様子のライラはアリスに引きずられて距離を取られていたと追記する。
「ちょっと、どうしたの皆?」
「どうしたも何も、
「だって真剣な話、ちゃんと整えないと不格好だし? あと不衛生だし? EUだと専門の脱毛サロンまであるって聞くし────」
「────だったら先にそれを言わないと────」
「────でも確かにアンジュ先輩ってボワボワしているですー!」
「ぬがッ?!」
ライラの他意のない、d20クリティカルな言葉にアンジュのSAN値精神はマイナス値に入った。
「でもでも~、
「……五本???」
「???? シャーリー先輩のことですよ?」
「ぎゃ?!」
シャーリーの精神もマイナス値に入った。
「あ。 あー……本人によるんじゃないかしら────?」
「────でも
「────グハァァァァァ?!」
「???? 皆どうしてお湯にダイブしているです? のぼせちゃうですよ?」
「……(なるほど、『両成敗』ね。)」
見ちゃいけませんマーヤさん。
というか絶対に真似しないでください。
お願いします。
「……」
「どうしたです、ニーナ先輩?」
「ライラちゃんって、大きいよね……」
「『大きい』? ……ああ! お胸の事です? でもでも~、何も良いことはないですよ? 可愛くて合うブラは見つからないですし、肩が凝るですし、周りの人たちが過保護になりがちですし?」
むぎゅ、むぎゅ。
「……………………………………グスン……」
……
…
チャプ。
「はふぁぁぁぁ……」
同時刻、蓬莱島ではその日の業務を終えたレイラがため息を吐き出しながらテルマエに浸かっていた。
アッシュフォード学園より一回り小さいそこは大勢ではなく少数の人数を前提な為彼女の声と僅かな動きだけでもチャプチャプとした音と共にが反響し、耳に大きく届く。
「…………………………………………」
ガラッ。
「ん、レイラか。」
「サエコですか。」
「少し良いだろうか?」
「ええ、どうぞ。」
慣れつつあるも少し前までは全く予想だにしていなかった蓬莱島共和政府の自治領主代理としての責務などの
チャプ。
「はぁぁぁぁ……もう少し深ければ文句はないのだが……」
「日本の『オンセン』、でしたっけ? 肩まで浸かるのですよね?」
「ああ。」
「それにしても、サエコがこの時間帯でここに来るのは珍しいですね。」
「そうだな。 アッシュフォード学園での
「いつもの朝の鍛錬を変えたのですか?」
「スバルに示されて、少しな……私でも、まだまだ出来ることがあると気付かされたよ。」
「……サエコは、狙ってこの時間帯に来たのですよね?」
腕を伸ばして体の凝りをほぐす毒島に、レイラがそう問うと毒島はニヤリと笑みを浮かべた。
「わざとらし過ぎたか?」
「いえ。」
「謙虚なのは、彼を見習っているからか?」
「???」
「……いや、素か。 神楽耶様にも見習わせたいものだ……」
「はい?」
「コホン! まぁいい。 実はこうして君と二人きりで話すタイミングを探していた。」
「どのような話でしょうか?」
「スバルの事だ。 単刀直入に聞くが、君からして彼が
「………………………………それは……菓子を作ったり、新技術の話などの話をしている時とかでしょうか? ですが、果たしてそれ等を『くつろぐ』と呼ぶには少々……その……
「うん、なるほど。 君もそう言うのだな。 私から見ても彼はあまりくつろげていない。 強いて言えば君が言ったように料理をしたり、他の者への教授などをしている時ぐらいだ……残念ながらな。」
「シュバールさんはその……他人に対する気遣いが
「まぁ……それが彼の良いところでもあるが、今の私たちが彼一人に支えられているのが大きいな。 スバルはあの通りに自分の事を顧みない、気遣いの塊のような性分だからな。」
「……どうにかして、彼が心安らかに休める場所と……人が居ればいいのですが────」
「────厳しいところだな。 私や君だと、アマルガムや蓬莱島などの事で気を抜きにくいかもしれん。 彼の気性を考えれば、まずは周りに居る我々がくつろいでみせる必要がある。 君もそこに気が付いて、その為に君は彼の周囲にいる人間がいがみ合う事を陰ながら防いでいる。」
「それはサエコも大きく活躍しているしょう? 口頭だけだと限界がありますし。」
「確かに時には私も話しを付けているな。 だが実際、スバルもある程度傍に寄せる相手を厳選していることも大きい。 実際、私は何度も警告する覚悟をしていたからな。 ほとんどが理解ある者たちで助かっている。」
「人間関係で何らかの騒動が起きることが前提ですからね。 『円満な一夫多妻』なんて、小説の中でしか語られませんでしたし、たいていの場合はその……」
「まぁ……その『円満な一夫多妻』も『表では』といった前提だろう。 実際に見たことではないが
「とどのつまり、『油断が出来ない』ということですね。」
「そうだな。 何せ────」
「────あの子が正にその例に当てはまりますから。」
「だな。」
レイラと毒島が頭上に浮かべたのはニコニコとした愛想笑いを浮かべて穏やかかつ愛らしい外見と物腰のまま、一部の人間からはあの『ブリタニアの魔女』以上に苛烈な指揮手法を以て相手を追い込む『英雄皇女』だった。
ちなみに上記はストッパー役が傍にいた今までの事であり、そのストッパー役も近いうちに退役する予定なのでブリタニア側だけでなくアマルガム側にとっても更に頭が痛くなる案件である。
「私の見立てではスバルは積極的過ぎる上にあまり接したことのない相手に対してやや苦手意識を持っているように感じるから、彼女の様な人物は接し方があまり得意ではないだろうな。」
「現に、シュバールさんが拒絶しない事で彼女は他の者たちと比べて新参という割に……その、ガツガツとした
「『新参』、か────」
「────あ。 これは勿論私自身も含まれていますよサエコ? それでもシュバールさんが何に対して好意を抱いてくださってのか、そしてどのような態度を好まれるのある程度は理解しているつもりです。」
「『ただしそのような配慮をやろうと思えばできるのにマリーベルはしようともしていない』、だろう?」
「ええ。 客観的な意見で言えば、彼女の意気込みは買いますし、彼女なりの誠意は理解できます……が、シュバールさんの負担になりかねないかと。」
「そうだな。 皆は忘れがちだが……超合集国連合とブリタニアはあくまで
「アプローチをかけ、アマルガムの技術や内部情報を抜き取って虎視眈々と機会を窺っていると仮定すれば……」
「う~む……君にそこまで言わせるとは、深刻かもしれんな。」
「え?」
パチクリとしながらハテナマークを浮かべるレイラに毒島は咳払いをして話を強引に進めた。
「コホン! いや、今のは忘れてくれ。 それよりも、君は何を懸念すべきだと思う?」
「マリーベルさんが、シュバールさんの事を真に理解しようとしていないところですね。 彼の特殊性……特に類稀な価値観や着眼点などについて、彼女は分かっていて彼を利用しようとしている節があります。」
「そうだな。 よく言えば『素直』。 悪く言えば『野心家』。」
「オルドリンさんから聞いたマリーベルさんの境遇を考えれば理解はしますが、彼女はシュバールさんとの『繋がり』を強く望んでいながら『愛情』を欲していません。」
「『彼女の目的は他にあるから』、か。」
「ええ。 そしてその『目的』にさえ触れなければ、彼女は
「別の意味でも『都合が良い』、か。 ここまで打算的過ぎるといっそ清々しいな。」
「誠実に対応すれば済むことなのに、彼女は何故……」
「いや、それは違うと思うぞレイラ。 マリーベルが私たちと同じになった方が厄介な気がする。」
「え?」
「想像してみてくれ、マリーベルがスバルを『目的を達するための道具』から『愛しむ対象』となったところを。 果たして、彼女は周りの者たちと波風を立てずに振る舞うことができると思うか?」
レイラが想像した次の瞬間、彼女は心地よい湯に浸かりながらも思わず身震いをしてしまう。
「……むしろ他の皆を蹴落としかねませんね。 特に
「自覚が無いようだから言うがレイラ……君や元wZERO部隊に元イレギュラーズたちのような人間は比較的に珍しいのだぞ? 通常、一人の異性に複数の者たちが恋心を抱けば人間関係はドロドロとする。 それこそ底なし沼のように。」
「……そう……なのですか?」
「『自分が愛しているのだから相手も自分を同レベルに愛していなければならない』という、自分の基準で感情を満たされることを『正当な要求で世の道理』としか考えられない人間がほとんどだ。」
「……………………苦労しそうですね。」
「そうだ。 通常はな。 だがこの苦労は間違ってもスバルが背負うべきではない。 何せ彼はただ私たち全員に応えようとしてくれただけだからな。 でなければ
「同感です。」
「フ、スバルが直接赴く理由がしみじみと理解させられるよ。 君の様な者がこの組織に来てくれて本当に助かる。」
「サエコが居たからこそ、ここまで来られたのですよ?」
二人は腰までテルマエに浸かったまま、お互いを見る。
「「……フフフ♪」」
「それはそれとして、次こそちゃんとした
「────きゅ、きゅ、急に何ですかサエコ?!」
「いや何、君が領主代理を滞りなく務めているからこそ私含めて皆が自ら自重したり頑張っている。 前回は全く予想だにしていなかった邪魔が────」
「────じゃ、邪魔だなんて私は────」
「────ハァ……私も人の子とは言えんが、『先に我々がくつろがねば』とさっき言ったばかりだというのに────」
「────あ。」
トン、トン。
「「ん?」」
『あの……いま良いですか、レイラさん?』
テルマエへと続くドアにノックがされ、レイラと毒島がドア越しに来る声にお互いを見る。
「客の予定だったか、レイラ?」
「あ! そう言えば────」
『────ブスジマさん? えっと、日を改めた方が良いですか?』
「この声は……ナナリーか?」
「え、ええ。実は話があると聞いて────あ、入って良いですよね?」
「無論だ、私に断る理由が無い。」
「えっと……し、失礼しま~す。」
「失礼する。」
テルマエに入ってきたのはナナリーと、彼女をエスコートするかのようなライカの二人だった。
「ライカも一緒か。」
「出て欲しいのならば出ていくが。」
「いや、別にいいがここでの話は他言無用で頼む。 スバルにもだ。」
「兄さんにも?」
「そうだ。」
「分かった。」
「「……」」
「どうした二人とも? 豆鉄砲に討たれた鳩みたいだぞ?」
「いえ、ただ……」
「『ライカさんって、見た目だけでなく口調もスヴェンさんとそっくりだな~』って。」
「『学園での兄さん』風が良いか?」
「「いえ! 是非このままで!」」
「分かった。」
「ふ、ふふふふ……」
「わ、笑わないでくださいサエコ!」
「……そ、それで? ナナリーはどうしてここに来たのだ?」
「えっと……その……なるべくスヴェンさんと親しい方たちに言わなければいけないと思いまして……」
「「???」」
「わ、私……その……えっと……」
「「「「……………………………………」」」」
モジモジとするナナリーが黙り込んでしまって数秒後、ライカが言葉の続きを口にした。
「ナナリーが
「「………………………………………………………………………………は?」」
「ラララララララララララララララライカさん?!」
「どうしたナナリー?」
「も、もう! もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 私が言うべきだったのに────!」
「────伝わればいいだけなのでは────?」
「────違いますぅぅぅぅぅぅ!」
「何故だ? 伝えるだけではないのか?」
「アンジュさんと言う前例がいても! こういうことを私自身が言わなければ他の人に『フェア』じゃないからです!」
「……解せぬ。」
「ライカさんは良いですよね! 恋愛をしたことないんでしょうから!」
「あの……ナナリー? さん? ヤケになっていません?」
「はい! ヤケです!」
「そ、そうですか……」
「……」
「ナナリーさん?」
先ほどまでいつも穏やかなナナリーから出たとは思えない気迫にライラは思わず内心でビックリしながらも、どうやって彼女を落ち着かせるか考えていたが急にナナリーが俯いたことでレイラは声をかけた。
「………………………………グス……ふぇ────」
「────え?! あ、あの! 泣かないでください────!」
「────ふぇぇぇぇぇぇぇぇ────」
「────ど、ど、ど、どうしたら……」
「(う~ん……ライカにはもう少し────)」
「────恋愛……」
「・ ・ ・ ・ ・ (いや、まさかな。)」
涙目のままやるせない気持ちで泣きそうなナナリーをレイラは複雑な表情のまま慰める傍で、ライカのボソリとした独り言に毒島は脳内を過ぎった考えを切り捨てた。
「それとさっき、『デート』って聞こえて来たんですけど────」
「「────あ。」」
???:計画通り。
後書き:
皇族はバケモノです。
リアルでのゴタゴタはまだ残っていますがゴールデンウイークあってほんっっっっっっっっっっとうに助かった。 (泣