9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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学生らしい日々、始めました。




第13話:そろそろ誰かと恋愛的進展があったりしないのですか……?

 

 

「全然素材集まりませんね、これ……」

 

「だよな……」

 

「これが物欲センサーってやつですかね。次行きましょう、次」

 

平日のある日、新海先輩のお部屋でゲーム機を睨みながらお互いにため息を吐いていた。

 

学校が終わり、天ちゃんと一緒に校門へ向かっている途中で新海先輩を見つけたので一緒に帰る流れとなった。そこで結城先輩と狩りに行った事を聞かれた。

 

色々と手伝って貰ったけど、やっぱりもっと武器や防具を強化する必要があると実感した。そこで先輩から『この後俺の部屋で素材集めやるか?』と言われた。申し訳ないから遠慮しようかと思ったけど、隣を歩く天ちゃんから行きたそうなオーラを感じ取ったので喜んで了承致しました。

 

……が、結果は惨敗。超レア素材らしいけど、ぜっんぜん手に入らない!!かれこれ10回は目的のデーモンを狩っているのに未だに一つも出てこない!他の素材だけが余っていく……!

 

「この素材を防具の三部位に使うって、鬼畜過ぎじゃないですか……?」

 

「……武器も作るなら更に一つ要るぞ」

 

「まじですかい……」

 

先輩のベッドで寝転がっている天ちゃんは時たま私や先輩の画面を覗いては自分のスマホへ戻っている。

 

「そえばそろそろ梅雨入りですねー……」

 

この空気と気分を少しでも和らげる為に話しかける。

 

「あー……だな、ジメジメするから好きじゃないんだよ、あれ」

 

「洗濯物も室内になりますし、通学とかも大変ですよねー」

 

「ほんとそれ」

 

「梅雨が明ければ夏が来て、夏休みですねー。お二人は今年の夏のご予定は何かあるのですか?」

 

「いーや、特に考えてないな」

 

「だねー、てか考えるのにはまだ早くね?」

 

「そうかな?そうなると旅行とかは行かない感じ?」

 

あ、デーモンがダウンした。攻め時だね。

 

「じゃね?にぃには何か聞いてる?」

 

「特には。そもそも俺よりそっちに先言うだろ」

 

「それもそうか」

 

「もし特に予定が無ければなのですが、海に行きませんか?」

 

「海ぃ……?」

 

「おぉーいいね!海っ」

 

先輩の反応は微妙で、天ちゃんは良い感じ。

 

「はい、夏と言えば海じゃないですか?」

 

「まぁ、そうだが」

 

「こう、何か皆で集まって遊びたいんですよねー」

 

「いいねいいね!他の皆も誘っていこっ!」

 

「ここの三人と、九條先輩と香坂先輩と結城先輩でどうでしょうか?」

 

「一番近い海ってどこだろ……」

 

天ちゃんがスマホで調べ始める。

 

「あ、えっとね?まだ確定とは言えないけど、私が知ってる良い場所があってね?そこはどうかなー?って考えてるの」

 

あ、デーモンが逃げた。

 

「お?良い場所知ってるの?」

 

「うんっ、人が多い場所だと全力で楽しめないからね!そこだとその心配は無いと思うよ」

 

「最高じゃん!そこにしよ!」

 

「まだ行けるか決まって無いけどねー、ちょっと調べて確認してみるね」

 

「任せた!」

 

「任されました!」

 

「よっし、そんじゃ他の皆にも聞いてみる」

 

「お願いしまーす」

 

あ、足引きずった。そろそろやれそう。

 

逃げる直前に閃光を出して足止めをする。

 

「ナイス」

 

続けて足元に十字架を置いて縛り付ける。

 

「そのまま押し切りましょう」

 

その場で動けないデーモンを2人でフルボッコにして狩りは終わった。

 

「流石にこんだけやると慣れて来るな」

 

「流石にですね。何となく移動しようだなーとか瀕死かなー?って分かってきました」

 

デーモンの死体から素材を回収していると、先輩の方からレアドロップの音がする。

 

「お、俺の方が取れたわ」

 

「私の方は……、ハズレ、……はずれ。……ダメでした」

 

うん、任務の報酬に期待しよ……。

 

「……報酬はどうだ?」

 

「えーっと、……ない、ですね。今回も……」

 

「……どんまい」

 

「いえ、レアなので当たり前ですよ。はい……」

 

今日で多少は進むだろうと思っていたけど、まさか一つも手に入れられないなんて……。

 

「飲み物淹れるわ。そっちも飲むか?」

 

「あ、お願いします」

 

先輩が立ちあがって飲み物を淹れに行ったのでゲーム機を置いて一息つく。

 

「さっき舞夜ちゃんが言ってた海ってどこら辺?」

 

「んー?ちょっと南の方になるんだけどね」

 

「南?離島?」

 

「あー、一応離島に入るのかな?無人島、的なやつ?」

 

「無人島っ!?なにそれヤバそう……」

 

「えっとね、私の実家が所有している島があって、そこなら誰の邪魔も入らないし自由に遊べるかなぁって」

 

「島を……所有……?はい?なんじゃそれ……」

 

「それって別荘島の完全プライベートビーチの事か?」

 

飲み物を淹れた先輩が私の前にコップを置いて会話に参加する。

 

「おや、先輩はご存じの様で」

 

「まぁな。他の枝で九重から聞いてる。南の小島を実家が持っているって」

 

「なら話は早いですね!そこになります!」

 

「なんか手続きとかが必要って聞いたが?」

 

「そうですね、ですが大丈夫でしょう。おじいちゃんにお願いすれば通ると思います」

 

「あー……そうなのか」

 

何かを思い返してるのか視線を逸らしてゲーム機を取る。お喋り途中だし軽めのフィールドワークでいっか。息抜き息抜き。

 

「え、マジなの?どんだけ金持ちなんさ……」

 

「まぁ、私の実家がね?」

 

「お前って確かまだ九重の実家に行った事無いんだっけ?」

 

「ありませんが?」

 

「なら当然か。見たらそりゃそうかって思うから」

 

「なにそれ、超気になるんだが……?」

 

「めっちゃ広い。和風で庭とか池もある」

 

「やば……え、行きたい。見たい」

 

キラキラとした表情で天ちゃんが私を見る。

 

「あー……別に行くのは大丈夫だけど、そんな面白い場所じゃないよ?少し離れてるから車必要だし」

 

「だから一人暮らししてんの?」

 

「そんなとこ」

 

「テレビに出てくるような屋敷を想像してみろ。長い廊下や畳の部屋があって、庭には池や鯉が泳いでるのを」

 

「うむ」

 

「大体そのまんま」

 

「超絶金持ちじゃん……豪邸じゃん」

 

「だからー、私自身は普通だよ?」

 

「いや、ちょっと納得した!たまに舞夜ちゃん値段とか気にしないで買い物してたじゃん?この前も私が勧めた服そのまま買ってたし!」

 

「天ちゃんがオススメしたのだし」

 

「確かに可愛かったけど!あれめちゃ高かったやつだから!アタシ何回か止めたでしょ?」

 

「確かに他のより値段は上だったけど……」

 

でも、私が普段来ている服って澪姉と行く場所だからもっと値段するのが普通だったし……。

 

「リッチじゃんセレブじゃんブルジョワじゃん!!」

 

「あはは、そんな事無いって。あ、でも今度焼肉奢ろっか?」

 

天ちゃんが九條先輩がコロナグループと知って言っていた事を思い出す。

 

「行きたい!超お高い場所!勿論舞夜ちゃんの奢りで!」

 

「ふふ、いいよいいよー」

 

「やめとけ、そいつ本気で連れて行くぞ」

 

「へ?」

 

「他の枝で滅茶苦茶高級店に連れて行かれた事が実際あるからな」

 

「ありゃ、行っていたのですね。何食べたんですか?」

 

「鰻とか懐石料理っていうのか?和食のお店にだな」

 

「ほえー……名前だけでもう高そう」

 

どうやら他の枝で一緒に外食に行っているご様子。

 

「それで?問題のお値段は?」

 

当然気になる質問が出る。

 

天ちゃんの問いかけに新海先輩は無言で指を四本立てた。……四万の場所かぁ、気合入れてるねその枝の私は。

 

「四千?」

 

無言で首を横に振る。

 

「は?まさか四万……?」

 

「しかも一人だ。44,000、一人でだぞ」

 

「………」

 

それを聞いた天ちゃんが口を開けたまま固まる。可愛い顔だなぁ。

 

「その枝の私は、随分と奮発と無茶をしたんですねー」

 

「無理やり軌道修正しようとすんな。俺は知ってるからな?九重からしたら大した金額じゃ無いってこと」

 

「もー、私にそんな成金属性は要りませんって!ほんとに私自身は普通なんですから」

 

「みゃーこ先輩に続いて、舞夜ちゃんまでも……いや、これからは舞夜様かもしれない……」

 

「ほらー!先輩のせいで天ちゃんがおかしくなったではありませんか!」

 

「毎月の小遣いに一喜一憂しているのが虚しくなってきた……。これが世の中の格差社会……!」

 

「変な思想に目覚めそうになってますよ!!先輩っ、責任取って治して下さいっ」

 

「あー?いつも通りだろ」

 

「なにをー!このくそアニキめ!!」

 

侮辱された天ちゃんが先輩にヘッドロックを掛けに行く。が、それをゲーム機を見ながらさらりと避けられる。

 

「このっ!避けるなー!逃げるなー!」

 

「分かってて受けるやつがいるかあほ」

 

「あー!!アホって言った!今こいつアホって言ったー!」

 

「事実を言って何が悪い」

 

「きぃー―!むかつくっ!ゆるせねぇ……舞夜ちゃん!!やっておしまい!!」

 

ご指名が入る。天ちゃんを見ると顎でクイクイと先輩の方を指していた。

 

「お前は何様だ……」

 

「あはは、でも天ちゃんからのご指名なら無視できないですねー」

 

操作中のゲーム機をテーブルの上に置く。

 

「……は?冗談だろ?」

 

私の行動を見て先輩が顔を上げる。

 

「ふふふ、頑張って逃げて下さいね……?」

 

手をワキワキと動かして横に回る。丁度天ちゃんと挟む様な形をとる。

 

「まてまて、こいつの冗談に付き合うなって」

 

「ごめんなさい先輩、私……天ちゃんの味方ですので」

 

にっこりと笑って返事をする。若干先輩の表情が引きつる。

 

完全に意識が私に向いた事で天ちゃんにアイコンタクトを送る。私の視線に気づいた天ちゃんが背後から先輩の首へ腕を回す。

 

「どわぁっ!??」

 

「へへー、捕まえたぁ」

 

「ナイス天ちゃん!!完璧な作戦っ!」

 

「おい放せ馬鹿!」

 

「先の発言を取り消すのなら考えてもやらんぞ?ふはははは」

 

「変な囮させやがって……!」

 

天ちゃんの腕の内側に自分の手を差し込んで無理矢理抜け出す。

 

「ちぇー、もう少し遊んでもいいじゃん」

 

「ざけんな、こんな遊びがあるか」

 

「それがぁ……あるんです、よ!」

 

天ちゃんの方を向いて文句を言っている先輩に今度は私が背後から仕掛ける。しかも手が動かせないように身動きを封じた。

 

「ちょ、まっ!!今度はお前かっ!?」

 

「天ちゃん!今なら先輩に何でもし放題だよ!!動けないからっ!」

 

「ナイス舞夜ちゃんっ!おやおや?このあたしを馬鹿にしたくせにまんまと嵌められて……」

 

「くっ、この……!」

 

手が動かせないと分かると直ぐに足で対応しようと動かす。が、それも私が同じく足でガードする。

 

「九重っ!?お前!!」

 

「今度こそ先輩はミノムシ状態!!言葉通り手も足も出せませんよ!」

 

「くそださですぜぇ?あにきぃ~?」

 

「うっせ、あほ」

 

「お?自分の状況が分かってんのか?ほれ?ほれほれ」

 

何もやり返せない先輩を天ちゃんがつつく。

 

「てめぇ……後で覚えてろ?てかマジでピクリとも動かせん……」

 

「先輩、こんなか弱い乙女に力で負けるだなんて……おやおやおや」

 

「どこが……!か弱い乙女……だよ!このっ……」

 

「無駄です無駄です。一般人の先輩が抜け出せる程軟じゃ無いですよ」

 

「すげぇ……にぃにが完全に技極められてる……。写真とっとこ」

 

「あ!おいっ!やめろっ!!」

 

「やだねー、おお、良い感じ。もう1枚……っと」

 

「まじで覚えてろ……」

 

「あーそう言えばそろそろご飯だから帰らないとー。あたし先に帰るねー」

 

わざとらしい声で天ちゃんが立ち上がる。

 

「待て!お前!写真消せ!」

 

「おほほほ、それでは失礼しますわ」

 

「九重も放してくれ!あいつを止めさせろ!!」

 

「ここで放したらそれはそれで面白そうですよね、あはは」

 

「駄目!あたしが帰るまで縛り付けといて!」

 

「ですって、先輩」

 

「こ、の……!」

 

「んじゃバイバーイ、また明日ー!」

 

「おい待てっ!」

 

そのまま帰って行くのを見守る。

 

「っと、天ちゃんが帰ったのでもう充分ですね」

 

するっと離れて元の位置へ戻る。

 

「……覚悟は出来てるんだろうな?」

 

「はて?覚悟とは?わたくしにはさっぱりで」

 

「落とし前つけてもらから……な!」

 

私の頭をアイアンクローしようと伸ばして来た手をさらりと避ける。

 

「この……!」

 

再び掴もうと伸ばす手を避ける。

 

「この距離で避けられるとか……はぁ」

 

「おや、もう諦めるのですか?」

 

「そもそも掴まえれるとは思って無いからな。試してみたけど……」

 

「まぁまぁ。それで、夏休みのご予定なのですが」

 

「おい、さらっと話題変えようとすんな」

 

「先ほど海へ行くと提案した際の先輩のリアクションが少し薄かったのが気になりまして」

 

「あぁ……別に海が嫌とかじゃ無いから安心してくれ」

 

「そうですか?泳げないとか海洋生物が怖いとかあるのかと……」

 

「ちげぇって」

 

「……あれですか?男が自分一人だけとか?」

 

「確かにそれは思った」

 

「もしかして……!水着姿を披露するのが恥ずかしいとかっ!!」

 

「それは誰だってそうだろ。逆にそっちは気にしないのか?」

 

「んー……まぁ?見せても恥ずかしくない身体を維持していますし」

 

「参考にならない相手だったわそえば……」

 

「まぁ、鍛えてますのでっ」

 

「そう考えると人前に晒すのはちょっと抵抗あるな……」

 

「先輩高身長ですし、見た感じ年齢相応な肉体に見えますが……?」

 

筋肉質でも無いけど太ってる訳でもない。そのままで充分と思いますが。

 

「男としてな?少しでも良く見られたいんだよ。さっき九重に抵抗出来なかったのが、分かっていたけど体感して少し効いてる」

 

「あー……私は外れ値なので気にしない方が良いですよ?あはは……」

 

「いいや、分かってる。けどな?男子が女子に力負けしたって絵面がこう……地味にダメージ残るんだよ……」

 

「プライド的な何かが傷付いたと?」

 

「だな。……俺も今から鍛えようかなぁ」

 

「筋トレですか?」

 

「ああ、前からしておいた方が良いかもとは考えてはいた」

 

「ほうほう、どの様な心境があったのですか?」

 

知っている範囲では先輩が筋肉を付けたいと言い出した記憶は無いのですが……。

 

「他の枝で色々と体験してさ、あった方が便利だと思った」

 

「なるほどです。ですが……」

 

「分かってる。この枝ではアーティファクトとかは無いから戦う事も無い、だろ?」

 

「その通りです!それに何かあっても私が居ますよ?」

 

「それはあるけど、何かある度に九重に頼りっきりなのは違うだろ?あとモテそう」

 

「もしかして最後のが本音ですか?」

 

「あるのは否定しない」

 

ふむふむ……まぁ、確かに身体能力が高い方が魅力的に映るのはその通りなのですが、皆さんは別に先輩の外見的要因に惚れたわけでは無いと思うので……。

 

「別に先輩はそのままでも充分にかっこいいと思いますけどねー」

 

「お、おう……そうか?」

 

「はい!それに重要なのは内面です!どんなに外見が良くても長くお付き合いするなら内面が大事です!先輩はその点問題無いとおもいますよ?」

 

「……どうも。なんか正面切って言われると恥ずかしいな」

 

「事実ですので!」

 

「……で、だ!何か良い筋トレとかって知ってたりしないか?」

 

恥ずかしいのか、少し顔を赤らめて強引に話題を戻す。

 

「んんー……目的次第ですが、あとどこの部位を鍛えるのかにも寄りますし」

 

「それもそうだな」

 

「どこを鍛えたいとかあります?」

 

「あー……なんかこう全体的に?」

 

「また曖昧ですねぇ……海に見せる為に腹筋を鍛えたい!とか、泳ぐときの為に体力が欲しい!とかご希望などは?」

 

「そういうなら確かに腹筋とか?因みに九重はどうやって鍛えたんだ?」

 

「へ?私ですか?」

 

「俺も九重と同じ感じで鍛えたら少しはましになったり……」

 

「先輩、自殺行為は止めときましょう?」

 

目を閉じてゆっくりと首を振る。

 

「そんなにか……」

 

そんなにですよ。四六時中の鍛錬と適応させる為に肉体を改造するかのようなあれを鍛えるなどと生易しい呼び名では表せないです。

 

「普通に室内で出来る筋トレでも良いと思いますけどね。1日何セットって決めてやってみてはどうでしょうか?」

 

「やっぱそうなるよな」

 

「無難ですけどね!あとは軽く歩いたり走ったり」

 

「走り込みかぁ……きついし続かなそう」

 

「あはは、鍛えるのなんて全部そんなんですよ。気合と根性で続けるしか無いです。あとモチベーションですね!」

 

「頑張ってみるかぁ……」

 

「……もし先輩が本気で鍛えたいとお考えなのなら、私が手伝いましょうか?」

 

「……良いのか?」

 

「はい勿論。てっきりそのために私に話しているかと思っていたのですが……?」

 

「あー……その思惑があったと言えばあった」

 

「ですよね!全然良いですよ!」

 

これで先輩が魅力的になって更に皆さんをメロメロにすればいいのです!

 

「すまん、助かる」

 

「お気になさらず!それでは海の件も含めて実家の方に聞いてみますね!良い感じの鍛え方があると思いますので!」

 

「お願いします」

 

「承りました。……ところで新海先輩、ちょーっとお聞きしたい事があるのですが、良いですか?」

 

「どうした?改まって」

 

「先輩って好きな人とかって居ますか?」

 

「……なんだ急に」

 

「あ、いえ、馬鹿にするとかそういった意図はありませんよ?もし意中のお相手が居るのでしたら折角の夏ですし、こう、イベント?的な何かがあった方が良いのかと思いまして……」

 

「別に居ないから安心しろ」

 

「……本気で言ってます?」

 

呆れるような表情の先輩からは嘘を言ってる様には見えない。

 

「本気だよ。仮に居てもなんで言わないといけないんだよ」

 

「それはほら、お手伝いしようかなぁって。余計なお世話かもしれませんが……」

 

「要らん心配をどうも。逆に聞くが九重は好きな人とか居ないのか?」

 

「私ですか?あははご冗談を。もし居たとしても私と付き合えると思いますか?」

 

「……確かに」

 

「そこで納得してくれる先輩に安心しました」

 

もし好きな人が出来たとか言い出した日にはおじいちゃんと澪姉が突っかかって来そうだし。それに必要無いのでは?恋人って。

 

以前澪姉に恋愛は人の精神を良くも悪くも成長させると聞いた事があったなぁ……。それについては一理あると深く頷いた。けど当の本人は恋愛をしたことが無いって言われた時は首を傾げたっけ?

 

「九重に何か一つでも勝てるって難易度高いだろ」

 

「あはは、まぁ、断る体のいい言い訳に使えますし」

 

「九條みたいに良いとこだし、付き合うってなると大変そうだよな」

 

「私以外は大変なのは認めますが……」

 

あなたがそれを言うのですか……?九條先輩と付き合ったのに。

 

「と、話を戻しますが!先輩の筋トレのお手伝いとして私もお付き合いします!私自身も最近あまり運動していないので丁度良いですし!」

 

最近は鍛錬もしていない。イーリスを倒して私の役目も終わったから鍛える必要も無い。……けど、一応維持しておいた方が良いかも?実家に戻った時におじいちゃんに話してみよっと。

 

「先生、よろしくお願いします」

 

「ふむ、任せたまえ!私が責任を持って先輩を世界最強にして見せようではないか」

 

「いや、そこまでは要らん」

 

「ありゃ、それは残念です」

 

フラれてしまったのでテーブルに置いてあったゲーム機を取る。

 

「ではでは、地獄の周回を再開します?」

 

「おう、俺も九重を最強のデーモンハンターにしてやるよ」

 

「よろしくお願いします!師匠っ」

 

結局、必要な素材が集まったのはそれから数時間後だった。お礼として先輩にナインボールを奢らせて頂きました。が、残念ながら九條先輩はシフトに入って無かったのか見掛けなかった……。

 

……ゲームって大変だなぁ。

 

 





ゲームの物欲センサーってどうしてああも発動するんですかねぇ……?

これで翔はまた一つ都合のよい体裁を得れた……はず。

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