綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
「──うん。ありがとう千秋ちゃん。また明日」
机の上に電話を切り端末を置く。
私は自分の部屋で1人静かに深い溜息を吐いた。
次の試験に向けて作戦会議を終えた後、平田くんと櫛田さんの2人から今Dクラスで出回っている噂を聞かせて貰った。
──堀北鈴音は兄である堀北学から、テストの過去問や傾向を教えてもらっており、大量のPPを譲渡されている
この噂を流したのは清にぃでまず間違いない。
私はもちろんのこと、普段クラスにいる千秋ちゃんすらも今日知った噂……清にぃが恵ちゃんを使ってDクラス内で私に届かないように立ち回ったのだろう。
そして帆波ちゃんに聞いてみた所、他クラスでも鈴音ちゃんの噂は出回っていることが確認できた。
帆波ちゃんは私が知っていると思っていたみたいで、早く教えてあげれなくてごめんね、と謝罪してきた。
謝ることじゃないけれど、帆波ちゃんの善人性は今に始まった事じゃない。
「正直なところそこまで問題じゃ無いかな」
この噂、冷静に考えればなんてことはない。
正直このままほっといていいまである。
ただ問題は──
「──自分のせいで兄に迷惑をかけてしまった、と考えて落ち込む鈴音ちゃんだよね」
幾ら成長しているとは言え、まだ兄関連では脆い部分がある鈴音ちゃんだ。
本格的にこれから変わって行こう、という所でこの
「清にぃが事前に私に何も言ってないってことは、私の好きにしていいってことかな」
清にぃは今の鈴音ちゃんを試しているのだろう。
ならそこに私の意思が関与して、鈴音ちゃんの意思が左右されてはならない。
鈴音ちゃんから私を頼ってきた時は別として、私から何か助言したりすることはやめておこう。
それにそんなことより、清にぃと佐藤さんの2人が密会していたことの方が私にとっては重要だ。
「はぁぁぁ……清にぃに女の顔見せてる佐藤さん見たかったなぁぁぁぁぁ」
私の無駄にでかい独り言は虚しく部屋に響き渡った。
するとスマホから通知音が鳴る。
「……! やっと今月の分が入って来た」
例の私の『アイドル』活動による毎月振り込まれるPPがたった今振り込まれた。
毎月初めに振り込まれる筈なのだが、登録者が急増したこともあり振り込みが遅れていた。
現在会員登録者は計45万人。500円プラン30万人、1000円プラン15万人、合計3億でその1%が振り込まれるから、10月分は300万PPとなる。
龍園くんがAクラスと結んだ毎月貰うPPが80万……その約3.8倍。
「いい感じだね。手持ち合わせて約350万PP」
かなり順調だ。2年に上がるまでに2000万も現実的になって来た。
後は明日の撮影でしっかり結果を残せば、学校側から50万PPを報酬として頂ける。
もちろんこれは堀北先輩や南雲先輩も同様だ。
「……明日私は学校に居ないから鈴音ちゃんがどうなったか知るのが遅れちゃうなぁ」
本当は静観するつもりだったけれど、少しだけ助力してあげよう。
あくまでも私の行動で鈴音ちゃんの意思が左右されない範囲、彼女の知らない、見えない部分でね。
早速佐枝ちゃん先生に電話をかける。数コールで出てくれて、確認したいことを聞く。
「──なるほど、やっぱりそうでしたか」
『それで……他にも用事があるのだろう? 早くしろ』
「でしたら先生、PPで買いたいものがあります」
『ほう? 何を買うつもりだ? 言ってみろ』
その後、佐枝ちゃん先生に私が望む物を買えると返事を頂き早速PPを支払った。
要件も済んだのでおやすみの挨拶をして通話を切る。
夜遅い時間なのにも関わらず出てくれて助かった。
それにしても出費はたったの10万PPだったので安いものね。
「いいえ違うわ、金銭感覚がおかしくなってる……10万PPは十分高額なのにね」
自嘲しながら自分に言い聞かせるようにそう呟き私は明日の準備を始めた。
早く準備して寝よう。
オレは今日、いつもよりも早く朝を起き支度を整えて学校へと向かった。
10月中旬のそれも早朝も相まって外は冷えていた。
愛歌は新旧生徒会長の2人と3年Aクラスの担任他、教師数名と共に学外へと出ている。
全国の学生を集めて知力を競い合う番組に出るそうだ。
先月聞いていた予定通りだ。今日は愛歌の邪魔が入る心配もない。
今回の堀北の噂の騒動、それはオレが南雲に2年から1年、特に櫛田の下へ真っ先に届くように根回しを頼んでいた。
その際に、軽井沢にも協力して貰い松下にはギリギリまで噂が伝わらないように立ち回るよう指示した。
愛歌にも知られないように立ち回るのが困難に思えたが、生徒会にいる時間や、『アイドル』活動のために動画配信をするなど、あいつも忙しかったため思ったより簡単だった。
松下の情報網に頼りすぎだ……とも言えるが、今回は少々イレギュラーなため、本来なら松下とオレが軽井沢から得る情報だけでクラスに関しては十分だ。
今日、堀北がどう出るかで今のアイツがオレの考えるラインまで成長しているのか、それともまだ届いてないのか分かる。
愛歌に事前に話しておけば邪魔はしてこないだろうが、万が一のことを考え愛歌が居ないタイミングを狙わせて貰った。
そんなことを考えながら歩いていると、自分のクラスである1-Dに入る。
案の定生徒は誰も居なかった。
「おはようございます茶柱先生」
「綾小路か。今日は随分と早いな」
「朝早くに目が覚めてしまって。おかげさまで一番乗りです」
「一番乗り? ……そんなこともあるのか」
茶柱は少し笑ったあと1人納得していた。
オレは理解できずに居た。
そんなオレの様子がおかしかったのか、茶柱が心なしか少し嬉しそうに頬を緩ませる。
「残念だったな綾小路。おまえは2番目だ」
「ああ、そいういことですか。愛歌が先に来てもう向かったんですね」
「いいや、違う。確かにおまえの妹は既に登校し高育を出発しているがあいつじゃない」
「ならオレ以外にDクラスの生徒が先に来てるってことですか?」
「ふふ、さぁな?」
「こんな些細なことも教えてくれないんですね」
「そう気にするな綾小路。HLの時に分かる」
茶柱はそう言い残し背中越しに手を振って教室から出て行った。
正直、誰が先に来ても些細なことのためどうでもいい。
その後は席に着いてCクラスの生徒におすすめして貰った本を読みながら時間を潰した。
徐々に登校して来た生徒が増える。
すると1人の生徒がオレの下へとやって来た。
「綾小路くんおはよ。愛歌もう行ったんだって?」
「松下か。おはよう。どうやら朝早くから出たみたいだな」
「なるほどね。今日のお弁当の担当愛歌じゃなかったけ?」
「よく知ってるな。愛歌は作る気みたいだったが、申し訳ないから断った。たまには学食も食べたい気持ちもある」
「うわぁ。世界一の美女、現役高校生のアイドルが作るお弁当よりも学食が美味しいだなんて……男子に刺されちゃうよ?」
「いや、別に愛歌のお弁当より学食の方が美味しいとは言ってないだろ。それに世界一の美女は流石に言い過ぎなんじゃないか?」
「これ見てみなよ綾小路くん」
松下があるサイトを開いて見せて来た。
海外のとあるサイトでSNSのアンケートを基に作られた美女ランキングなる物だった。
その1位に愛歌がの名前と写真が写っている。
「オレ英語苦手なんだけどな……察するに美女のランキングみたいな感じか?」
「……まぁ今はいっか。うん、そうだよ。世界美女ランキングの第1位が綾小路愛歌。記事のコメントとか見てると、もう既に大手アパレルブランドからこの高育に連絡して、愛歌と正式に契約を結びたいって言ってるらしいよ」
「……まじか」
「まじまじ。その内、ケヤキモールに高級アパレルブランドなんかも出店するかもね」
「外にいる国民が知ったら何考えてるんだって怒りそうだけどな」
「そこまぁ、上の方々に何とかして貰うってことで。私としては是非是非、出店して頂いて貰いたいなぁー? なんて」
松下千秋。オレや愛歌同様に実力を隠している生徒。
恐らく、愛歌の実力を知るために国内は勿論、海外のサイトを使って過去に綾小路愛歌のなんらかの実績が取り上げられた記事等が無いのか調べていたのだろう。
そして偶然例のランキングのサイトを見つけたとオレは考えている。
それに敢えて翻訳機能を使わずに、原文のままオレに見せたのはこちらの実力を調べるためと言ったところか。
「席に着け。出席の確認を取る」
「おっと時間だ。またね綾小路くん……堀北さんはこなかった、かぁ」
朝のHLの時間となり松下は席に戻る。
戻り際にオレの隣、堀北の席を見てそう呟いた。
松下の言う通り、結局堀北が朝登校してくることは無かった。
やはりまだ兄貴の存在を克服するのは無理だったか。
「──出席は以上。今日も
茶柱のその発言にクラス内の空気がざわめく。
現状1-Dに空席は2席。愛歌と堀北の2人の席だ。
誰も理解できない状況の中、池が手を挙げ茶柱に質問した。
「先生、綾小路さんと堀北ちゃんの席が空いてるんスけど……」
「ああ。綾小路妹は生徒会の課外活動に参加してるため帰ってくる頃には授業は終えているだろう」
「えっと、じゃあ堀北ちゃんは?」
「堀北は
「え? 堀北ちゃんも生徒会関連ってことですか?」
「ん? いいや。堀北はちゃんと出席している。私から言えることはそれだけだ。時間も押しているな。早速今日の連絡事項を教えていく」
茶柱の説明は誰も理解できなかっただろう。
隣の堀北の席をもう一度見る。
そこに堀北の姿は無く、当然堀北の荷物らしき物も無い。明らかに学校へ来ていないことは明白。
しかし茶柱は堀北は出席していると言った。ならば愛歌と同じで生徒会関連かと思いきや、それも違うとのこと。
今分かることは、堀北はクラスには居ないが出席しており、学校には来ている……ということ。
(朝の一の茶柱との会話は、堀北のことだったのだろう。しかもかなり早い時間に出席していることになっている)
この段階で答えを出すことは出来ないため、ひとまず保留にしておくことにしよう。
軽井沢はオレが何かしたと思っているようだが、残念ながら今回ばかりはオレも分からない。
その後HLは終了し、いつも通り授業も始まる。
堀北が姿を見せたのは4時間目の日本史の授業が始まってすぐだった。
「遅れてすみません」
教室に入って来た堀北を見て──堀北の変化を見て全員が目を見開く。
腰辺りまで伸ばしていた長い髪が綺麗に切られ、短髪に纏められていた。
そんな堀北を見て茶柱は笑みを浮かべ、すぐに表情を戻し席に座るように促す。
「問題はない。が、早く席に戻れ」
「……? わかりました」
一度堀北は訝しむと直ぐに返事を返し自分の席へと向かう。
その最中、わずかに騒つくクラスメイトを注意した。
「全くあなたたち……静かにしなさい。授業中よ」
その注意する姿は今までの堀北と違った。
「……なに」
「いいや。髪切ったんだな」
「ああ、そういうこと。ええ。後で話すわ」
堀北はそう言い残すと前を向いた。
どこかソワソワした空気の中、無事授業が終わると堀北がクラス全体に声をかけ黒板の前へ立った。
「私の噂について話をさせてちょうだい」
堀北の落ち着いた様子、どこか余裕すら感じるその姿にクラスメイトたちは大人しく話を聞くことを決めた。
あの高円寺ですら席に座って堀北の言葉を待っている。
「まず結論から言わせて貰うと、噂で言われていることは全て嘘。先にPPの噂の方から解決させて貰うわ」
ポケットから端末を取り出すと操作して、全員に画面が見えるように向けてくる。
「この学校はPPに関してトラブルが起きることを危惧して、PPのやり取りは全て記録が残る上、履歴を削除できないことは知っているわね? その絞り込みで、私がPPを買い物では無く、生徒間で行った記録が残ってるわ。確認してちょうだい」
気になった生徒たちが堀北の元へ向かう。
すると全員とある履歴に注目が行った。
それは1学期に愛歌から堀北へと振り込まれた10万PP、そして茶柱へと振り込まれた10万PPの履歴だ。
これに関して説明を求める視線が堀北に向けられる。
「誰でもいいわ。この日が何の日か覚えている人はいるかしら?」
「それ、中間テストの解答用紙が返された日じゃないかな?」
「そうよ松下さん。みんな学校の時間表を見て遡ってみて確認してちょうだい」
堀北に言われた通り確認する生徒が多くいた。
その日が2人が言った通り中間テスト結果発表の日だと言うことが分かり全員頷く。
そしてクラス全員がその日が何の日か分かったことを確認し、今度はクラスに残って成り行きを見守っていた茶柱先生へと質問を投げかけた。
「茶柱先生。1学期中間テストで英語の1点をPPで買う場合、幾らだったか答えて頂けますか?」
「10万PP。あの日、あの場限りで私は須藤の英語の1点をおまえに10万PPで売った」
「ま、まさか鈴音……俺が英語で赤点だったから1点を買うために」
須藤の呟きでクラス全員が理解する。
あの時、須藤の退学が取り消されたのは堀北の説得でも学校の不手際でもない。
誰も知らない所で堀北が暗躍し、須藤のために行動していたと。
すると櫛田がどこか焦ったような様子で質問する。
「ま、待って。どうして綾小路さんが堀北さんに10万PPも支払う必要があったの?」
「あの時、私たちは5月に入ってPPが振り込まれなかったわ。だから10万PPも用意することができなかった。そこで私は綾小路くんに頼んだのよ」
全員の視線がオレへと集まる。
「須藤くんの友人なら5万PPぐらい出せるわよね? って。私と綾小路くん2人で10万PPを払うつもりだった」
「で、でもならどうして綾小路さんが?」
「もう同じクラスのあなたたち分かるんじゃないかしら? 清にぃと鈴音ちゃんが払うぐらいなら私が払うよ! って嬉々として申し出る彼女の姿が」
クラスから「確かに」と声が上がるがそんな事実一切無い。
あれは愛歌が堀北の兄から10万PP脅しとった物をそのまま堀北に渡しただけだ。
だが、普段から愛歌がオレや堀北に懐いているのは周知の事実のため、全員疑うことなく納得している。
「だから勘違いしないで須藤くん。あなたの1点を買ったのは愛歌さんよ。私がしたのはあくまで茶柱先生から言質を取っただけ。これに関しては感謝されることは何も無いわ」
「綾小路が……ありがとうな鈴音」
感謝の必要が無いと堀北は言ったが、それでも自分を想い行動してくれたことに対して須藤は感謝を述べた。
さて次は実の兄から過去問や対策問題を横流しして貰っていることについてか。
どう処理する?
「残る1つの噂だけれどこれはCクラス、龍園くんが私を貶めるための嘘よ。平田くん覚えているわよね? 1学期の時、龍園くんが須藤くんにしたことを」
「……! ああ、勿論だよ。あの時もCクラスは学校側へと嘘をついて須藤くんを貶めようとした。けれどみんなそれを解決したのも堀北さんなんだ」
「龍園くんが私を狙っている証拠もあるわ」
堀北そう言うと端末を操作しある録音を再生した。
そこから聞こえるのは龍園の声だった。
『俺が直接あいつに怪我を負わせてやったのさ。こうやってな
──ダァン──
50万分け前をやるって言ったら承諾したぜ? 金の力ってのは恐ろしいなぁ』
内容はこの間の体育祭での出来事。
堀北を呼び出してPPを払わせ土下座を要求させようとしたものだ。
「この録音を彼にバレない様に撮っておいたおかげで最悪の事態を回避できた」
「つまり堀北さんのあの時の怪我ってCクラスから意図的に負わされた物だったってこと?」
「ええ、そうよ松下さん」
衝撃の事実にクラスメイトたちが三度驚き、須藤や一部の生徒はCクラスへ怒り、また他の生徒は堀北へ同情、尊敬、など様々な感情を見せていた。
決まりだな。堀北はオレが求めるラインを上回って成長していた。
仲間である平田や須藤の存在を頼り、松下のサポートをしっかりと理解し息を合わせ、流れを上手くコントロールしている。
軽井沢にこの噂の騒動の終止符を打つため、一通のメールを送った。
「てかさ? あんな噂話信じてた人居たんだー?」
軽井沢の発言に何名かの生徒たちがビクッと肩を震わせる。
「無人島の時も熱を出してまで1人でクラスのみんなために頑張ったのもう忘れたわけ? 噂で聞いた堀北さんのイメージと全然違うじゃん。自己犠牲してクラスのために頑張ってる堀北さんを信じられなかったの?」
「ま、まあ軽井沢さんそこまで言わなくても」
「洋介くんは優しすぎるよ。だって堀北さんこんなに頑張ってるのに、なんの確証もない噂でクラスのために頑張る堀北さんを悪く思ってたんでしょ? 酷い話だよ。櫛田さんはどう思う?」
「え、う、うん。軽井沢さんの言う通りだね。噂だけでクラスの仲間を疑ったり悪く言うのはいけないと思うな」
内心櫛田は腹が立っているだろう。
しかし、みんなの前で仮面を被るしか無い。
それが櫛田桔梗の選んだ道なのだから。
「最後にみんな聞いてちょうだい。私はこのDクラスがAクラスへ上がるだけのポテンシャルを秘めてると思っているわ。だから力を貸してちょうだい。私もDクラスのために頑張ることを改めてここに誓うわ。まずは期末試験よ」
こうして堀北の一連の騒動は幕を閉じた。
またDクラスは前に一歩進んだ。
収録を終えた私たちは高育へと帰ってきた。
時刻は既に17時過ぎ。
今日はこれで解散との事で、私は清にぃの部屋へ向かうことにした。
帰りの道中、今日学校で起きたことを軽く纏めて教えて貰い、恵ちゃん、千秋ちゃん、鈴音ちゃん、4人と一緒に部屋にいるらしいとのことだった。
「ただいま……って、鈴音ちゃん髪切ってる!?」
「おかえり愛歌〜。お疲れ様だよ」
「おかえりなさい愛歌さん」
「おかえり〜」
「千秋ちゃん、鈴音ちゃん、恵ちゃんありがと! 早速だけど話聞いてもいい? あ、ご飯食べながらでもいいかな?」
3人が頷いたので私は鍋を温めて、清にぃが作ったトムヤムクンをよそった。
ご飯を食べながら今日一日何があったか教えて貰う。
どうやら騒動は無事解決したそうだ。
「原点回帰、初心に戻ると言うべきかしらね。髪を切ってから登校しようと決めたのよ。気合いを入れ直す意味も込めて」
「そういうこと……今の鈴音ちゃんならきっと認めてくれるよ」
「……そうだと嬉しいわ。でも先に期末試験、ペーパーシャッフルからよ」
私たちはそれに頷いた。
それにしてもまさか髪を切ってくるなんて。思いもしなかった。
てっきり私は今日一日塞ぎ込み、明日立ち上がる物だと思ったのだけれど……私が思っていた以上に鈴音ちゃんは成長していたようだ。
「ただいま。愛歌帰ってたか」
するとコンビニにスイーツを買いに行ってた清にぃが帰ってきた。
早速女性陣の私たちはそのスイーツを開封して食べ始める。この甘さがいい具合に身に染みて幸福だ。
「それにしても清にぃ、美女4人を部屋に招き上げるなんて……流石だね」
「節操がないのね綾小路くんは」
「ひょっとして内心ニヤニヤしてる? うわ、キモ」
「あはは! 綾小路くんモテモテだ?」
「……勘弁してくれ」
私たちに弄られながらも楽しい時間を過ごし、20時を回った所で解散となった。
部屋に残ったのは私と清にぃの2人。部屋の片付けを始めながら会話をする。
「黙ってて悪かったな」
「謝ることじゃないでしょ? それに私も清にぃがじっとしていて欲しいの分かってた上で行動しちゃったからね。お互い様だよ」
「別にあれぐらい何の問題もない。堀北に決断には何の影響を及ぼしてないからな」
「さすが。やっぱり気づいたんだ」
「ああ。おまえだろ愛歌。堀北の出席をPPで買ったのは」
私は頷く。
昨日、佐枝ちゃん先生から鈴音ちゃんの出席を私は買った。
1日の出席を買うのに10万PP。それが佐枝ちゃん先生から提示された値段だった。
「10万か。何故だかよく聞く数字だな」
「だね。最初に貰ったPP、堀北先輩から貰ったPP、赤点を回避するために1点を買ったPP、全部10万だものね〜」
「堀北には事前に話してなかったんだろう? 知っていた素振りはなかった。まだ気づいていないと思うぞ。きっと本人の中じゃ遅刻扱いになっていると思っている筈だ」
「別に教えることでもないしこのままでいいよ。いつか気づく日が来たら、それを理由に何か見返りでも求めようかな」
「いつも流れか」
「そうそう。トムヤムクン美味しくなってきたね?」
「及第点は貰えそうか?」
「だめ〜」
「……やっぱ怒ってるだろ」
「あは。怒ってないってば。もっともっと美味しいトムヤムクン作ってね? 清にぃ」
私の返事に清にぃは深いため息を吐き、机の椅子へと深く座り込んだ。
掃除が終わり清にぃに今日あった収録の内容を話して行く。
結果に関わることに関しては、今度テレビで放映される時に一緒に見て確認しようと答えた。
その時は清にぃと私、鈴音ちゃんと堀北先輩の4人で見るのも悪くない。
きっと今の鈴音ちゃんなら堀北先輩も認めてくれるだろうからね。