色々考えながら、夜は更けていく。
悩むのもまた、楽しいもの。
裏側から見た、そんな時間を。
馴れない事は、とても疲れる。そんな当たり前の事を噛み締めながら、私は仮住まいのベッドに横たわっている。
去年も文化祭では喫茶店をやったけど、リーダーではなかったし。と言うかリーダーってなんだ、雑用係じゃないのか。
私はあんまり向かないんだ、人に指示する立場なんて。しかし思えば夏が終わって以来、そんな事ばかりだな。部活では副キャプテンなんて肩書きが付いたし。私は下でのびのび生きていたいんだけど、な。
まあ文化祭は明日だ、それが終わればリーダーなんてのもお役御免。あとはもうそういうのは引き受けない、そうしよう。
「にしても、どうしようかな……」
帰りしなに渡された軽音楽部ライブのフライヤー、それを折り畳みながら私はため息を一つ。
色々と無理を聞いてもらったクラスメイトから「絶対来てね」と渡されたのだけれど、どうにも困ってしまう。
別にそのライブが気に入らない訳じゃない、結構な実力派だし。この間からずっと作業中に演奏が流れてくるけど、なかなかに私好みだ。
ただ問題は、その時間。14:00開始、というのがちょっとだけ微妙なのだ。
だって、だって。――大喜くんのクラスの演劇は、15:40開始だから。
あの夏が敗北に終わって、それでも私がこうして崩れずに立っていられる理由。その中で大喜くんの比率は、決して少なくない。いや、多いかもしれない。
大喜くんが私に憧れてくれている、目標としてくれている。それがどれほど、私を奮い立たせるか。
だから何があっても引き下がらない、幻滅されたくない。格好良い先輩でいたい、いなければならない。
それはきっと、世間で言う――、
「いや、いやいや。いやいやいやいや」
だって大喜くんには、蝶野さんがいるのだから。私がそういう感情を向けるべきではない、……筈だ。
二人が付き合っている、というのは私の勘違いだったらしい。でも蝶野さんが告白したのは事実だし、大喜くんが「キス」という言葉に狼狽えたのもまた事実。
告白したのになかなか付き合うところまでは行けなくて、蝶野さんが強引にキスを迫った……とかそんなんだろうか。あの時私に鞘当てしてきたのも、「邪魔しないで」というアレだろう。上手くいかなくてイライラしてたんだな。
つまりここで私が大喜くんに近付けば、蝶野さんを哀しませる事になる。いや下手をすると血を見る事になりかねない。
それはさすがに、なあ。
私が大喜くんに、
全く、私は頭が悪いんだな。バスケ以外にも色々としておくべきだった。
もし。もし明日大喜くんを誘ったら、どうなるだろうか。
ライブが一時間くらいとして、劇には間に合うだろう。……観るだけなら。大喜くんはリーダーだし、劇のヒロインは蝶野さんだ。色々とやる事も話す事もあるだろう、時間はいくらあっても足りない。
それに、……それに。たかだか私なんかと
そもそも今は同じ家にいるわけでもないし、もう時間も遅い。これから誘うのは、どう考えても難しい。
「あ。……そう、だ」
文化祭当日はいくらスポーツ私立校たる我が栄明と言えど、体育館を部活で使うことは出来ない。当然朝練も出来ない、普通なら。でも大喜くんなら「体育館がダメなら、近場をランニングして朝練の代わりにしよう」くらいは考えるかもしれない。私もそのつもりだし。
明日の朝、もしそうやって会えたなら。その時にでも、誘ってみよう。
大喜くんがどう返事しようとも、「それから」の事は少しだけ変わる。良くも悪くも。
何にせよ、明日だ。
明日はきっと、何か大きな事が起こる。
「楽しみだなー……っと」