さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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かくあれかしと。



その隣

かわいい後輩であったルドルフから想いを告げられたのは長い道のりを走り終え、トゥインクルシリーズを勇退する時だった。

 

「私と、共にあってはくれませんか」

 

茶化そうにも真剣な眼差しで見つめられ、逃げ場などあってないようなものであった。

そもそも、そうなる前から二人きりになるたびに口説かれていたのだから、そうなる日は遠くないのだろうと頭の片隅では考えていた。

ただ、僕には少し腑に落ちないところがあったのだ。

ルドルフが自分を好く理由がないな、と。

彼女には幸せな人生を歩んでほしいから、他の誰かを選んだ方がいい。

彼女はたくさんの人間に好かれているだし……。

だからだろうか。

僕は一つの逃げ道を作っていた。

僕が本当にルドルフのことを好いていて、付き合いたいと想っていたらその想いに答えていただろうが……。

それを言葉に出そうとした時、違和感を覚えて。

 

「…いまさら、逃げられるとお思いで?」

 

ドン、と壁に追い詰められる。

その目に宿るのは、今まで見たことないくらい暗くて、重い。

……あぁ、これは逃げられない。

そう悟った。

彼女は本気だと。

本気で僕に想いをぶつけているのだと。

……でも、それは本当に僕でいいのか?

僕は彼女の隣に立つにはふさわしくない。

そう考えていたのに。

彼女はそれすらも見透かしたように言葉を紡いだのだ。

 

「あなたのことだ、本当に嫌なら私の言葉をそのたびに遮るだろうに」

「遠には二人きりになっても逃げやしなくなった」

「…気のせい」

「今も、二人きりだろう?」

 

息を飲む。

言われてみれば、そうだ。

ここは人通りが少ない中でも一番人通りのない廊下。

もはや忘れ去られていると言ってもいいくらいの。

 

「なぁ、バレット」

 

私の想いは知っているでしょう?と、問いかけられている。

答えを急かされている。

いつもの笑みはどこへ行ったのか。

少し悲しげに見える顔で彼女は続けるのだ。

お前は本当にそれでいいのか、と問うように。

そんなのずるいじゃないか……。

そんな顔をされて、拒絶できる人なんかいるのだろうか?

いや、いるのかもしれないが少なくとも僕にはできなかった。

 

・

・

・

 

その人を手に入れるためには労を惜しまないことが重要だった。

時間がある時に、では足りない。

それだけだとあの人は素知らぬ振りをしてしまう。

故に、私は何度も何度もあの人と二人きりになれる時間を作って、行動を尽くした。

はじめはひどく警戒されたが日常のように繰り返していくと。

 

「…好きだね、ルドルフも」





そう、望まれたので。
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