さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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何度やってもナシのつぶて。



一転攻勢

「……」

 

正直、面食いの自覚はある。

親兄弟みな美形の一族であるため自ずと目が肥えたのもあるが。

それにしても我ながら筋金入りである。

 

「どうした?」

「別に」

 

ずっと眺めていると流石に気になったらしい、困惑した声色で問われたので微笑んで誤魔化した。

相手の名前はカツラギエース。

快活で誰からも慕われるムードメーカーだ。

そんな相手に僕は、少なからず。

 

(なんて、無理だろうけど)

 

*

 

カツラギエースに惹かれるようになったのはいつからだろう。

入学当初から出席番号が近かったのもあってすぐに仲良くなっていたが。

 

「シルバー!」

 

いつも。

カツラギエースは人混みに紛れる僕を見つけては手を取る。

初めてそうされた時は、ただただ驚いた。

当たり前だ。

今まで誰からも気付かれなかったのに。

意図せず硬直してしまっていたのを気にしたのかカツラギエースは苦笑して頬を掻いた。

 

ある日のことだった。

休日に偶然、彼女と会った。

どうやら入り用の買い物に出かけていたらしく、彼女は僕に気付くと笑顔で手を振ったのだ。

僕はどうも気恥ずかしくて軽く会釈だけして通り過ぎようとしたのだが、彼女は何を思ったのか僕を追いかけてきた。

そうして僕の手を取り、言ったのだ。

 

「昼まだだろう?一緒に食べに行こうぜ!」

 

その満面の笑みを向けられると断るわけにもいかず、連れられるままにカフェに入った。

それから少しばかり軽食をつまんで、その後もふたりで買い物することになり。

そういったことが、何度も続いて。

 

(今日も、きっと)

「シルバー!」

(…ほらね)

 

・

・

・

 

魂にまで刻まれた相手は、自分に向けられる感情の機微に疎いくせして、勝手に諦める悪癖があった。

どれだけこちらがふたりきりで露骨にアピールしてもただの友人関係のものとしてしか見られず、挙句の果てには率直に想いを告げた。

告げたのに、だ。

変わらず友人として接してきて、挙げ句にはこの気持ちを気のせいでしょう、などと。

 

(……ああ、もう!)

 

だから、決めたのだ。

もう遠慮はしない。

 

*

 

最近、カツラギエースが変だ。

距離が近いし、休みのたびに僕の部屋に泊まりに来る。

どうして?と聞けば「お前の食生活が心配だから」なんて、ぐうの音も出ない正論を繰り出され。

それでも、と食い下がれば。

カツラギエースは、僕の手を取り。

その甲を自分の頬に寄せたのだった。

その頬の熱に僕は思わず固まってしまったが、彼女はそんな僕に構わず言ったのだ。

この気持ちに、応えてくれないか、と。

 

(……ああ)

「…逃がしては」

「はは、」

 

そりゃあ。

 

「…そう」

 





仕方ないよね。
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