警視庁刑事部捜査第一課呪術対策係、それは呪術が関与した殺人事件の捜査を専門で担当する組織

これは呪術対策係に所属する5人の警察官のくっそ忙しい日常の物語

pixivにも同作品を投稿しています

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名探偵と呪術のクロスオーバー

男主五人が出張るぞ

パラレルワールドなのでそれぞれの原作とは辻褄が合わないことがあるかもしれない

捏造とネタバレのバーゲンセール

救済あり

作者は法律とか警察組織に詳しいわけではない

何でも許せる方向け


あいうえお組は警察官!

警視庁刑事部捜査第一課呪術対策係、それは呪術が関与した殺人事件の捜査を専門で担当する組織。呪術師ではなく呪詛師でもない、呪力と術式をちょいと持った警察官五人が事件解決のため日夜働いている。

 

 

(あずま)ぁぁぁぁぁ!もうやだ!あの御三家ってやつ潰していい⁈」

 

「証拠は残さないで下さいね」

 

「じゃぁあの死神探偵君派遣する?」

 

「お、それ名案!立派な屋敷に招待されれば大体の確率で当主死ぬからワンチャン潰せるんでない?」

 

「巻き込まれる綾小路警部可哀想だな」

 

上から順に江本(えのもと)、東、井上、上田、大木(おおき)。彼らは同じ警察学校に通った同期であり、一度は別れたものの再集結した野郎たちだ。才能はピカイチ、しかし問題児、降谷世代の再来かとまで言われたこの五人は先輩たちとは別ベクトルで普通じゃなかった。

 

「まぁもう手は打ってありますけどね」

 

パソコン画面から顔を上げずに東が言う。

 

「ちぇいい案だと思ったのに」

 

床に散乱した段ボールを足で退けた井上はブスくれながら上田の持っていた資料を取り上げ紙飛行機を作りだした。

 

「あの名探偵巻き込んだら上が煩いんですよ」

 

「何?こっちに取られるとか思ってんの?」

 

「いえ、”呪術無関係でも死体だらけなのに呪術関係の事件に首突っ込んだらどうなると思ってる⁈“だそうです」

 

「負の食物連鎖しか起きないやつやな」

 

事件が起きて負の感情爆発、そこから呪霊が生まれて、その呪霊に誰かが喰われて、その遺族達の類い稀なる妄想力が犯人像を作り上げて、また殺人が起きて、無限ループのはい完成。井上から紙飛行機、もとい捜査資料を奪い返した上田はそれをホワイトボードに貼り付けながら一連の流れを想像し、強行犯係とは縁を切った方がいいかもしれないと思った。だが残念、あの少年は強行犯係だけでなく捜査二課、交通部、警備部、公安部、他県警、それだけにとどまらずFBI、CIAとかにまでパイプを持っている上に一度だけ呪術対策係から少年にお願い事をしてしまっているためもう手遅れだ。こっちから接触してるやん。

 

「で?江本はどうした?生まれて初めて事件現場見た一般人みたいに叫んで」

 

資料についたシワを伸ばしながら大木が問いかけると、やっとこさ話を聞いてもらえる雰囲気になったことで江本はパソコンの電源を切ろうとしていた手を止めた。

 

「みんなが静かになるのあと三秒遅かったら報告書のデータ飛ばして東に殺されるとこだった」

 

「私もあと三秒で江本殺そうかと思ってました」

 

「同期を殺人容疑で逮捕したくないんだが」

 

「ってことは黙った俺たちって江本の命の恩人ってことじゃね?」

 

「なー江本〜、今度お礼に何か奢って〜」

 

「うわあつかましっ!お前ら寝ないならカフェイン飲んで俺の話聞けよ!」

 

しっしっと井上田コンビを払い除けた江本は今朝コンビニで購入したドリンクをエコバッグから四本取り出し、顔面目掛けて思いっきり投げつけた。容赦など無用。これが高木だったら緩く放物線を描いて投げるし、佐藤だったら手渡しするし、目暮だったら机の上に置いておくし、千葉だったら家に送りつける。白鳥?格付けチェックで佐藤刑事と小林先生を永遠と見比べてればいいんじゃないかな。

 

「はいはい、どうせクソでこっちの仕事を増やすことしか出来ないクソジジイ共がまたなんかクソなことやらかしたんだろ?」

 

「うぅぅ、大木、お前いい刑事(デカ)になるよ」

 

「もうなってるよ」

 

「そういうのは伊達さんを超えてから言うんだな」

 

江本は瓶詰めドリンクの蓋を開けると中身を一気に煽った。江本が眠気覚ましを人数分買ってきたのは思いやりとかそんなんでは一ミリもなく、ただ単に今日が買い出し当番の日だったからだ。呪術対策係は呪術師よりも人手不足。万年寝不足野郎共の巣窟とか交通部に噂されているのを彼らは知らない。

 

 

呪術対策係の仕事は大きく二つに分けられる。

一つは呪霊及び呪詛師による殺人が発生した際、速やかに現場へ急行し状況を確認すること。ただ呪術対策係は警視庁にしか設置されていない為、現状多くの場合で呪術高専に遅れをとってしまう。それに加え呪術対策係と高専上層部との仲は最悪と言ってもいい。高専上層部に法を守ろうなんて精神はない。自分たちの力の及ばない場所で好き勝手やられるのは非常に気に食わないと何度も捜査妨害を受けた。

 

「あれ普通に威力業務妨害!」

 

「くそっ逮捕権さえ迷子じゃなければ」

 

基本的に呪術対策係含めた警察に呪術師を逮捕する権限はない。というのも呪術師は万年人手不足、逮捕により人員減少を引き起こしては一般市民への呪霊被害拡大に繋がってしまう。生活安全部の少年事件課と刑事部の捜査一課は仲良く手を握って涙を飲んだ。

 

 

「この前さ、俺と東で呪術高専行ったじゃん。今忙しいから来んなって言われてたけど無視して約束取り付けたやつ」

 

「時効が迫ってた呪詛師の安否確認ですね」

 

「死んでたけどな」

 

「いつものことでしょう」

 

呪術対策係の二つ目の仕事。それは過去の未解決事件の調査だ。呪術対策係は創設されてから日が浅い。呪術のじの字も知らなかった刑事たちはしかし、存在を否定することはしなかった。否定するにはあまりに不可解な事件が多すぎた。呪術対策係は溜まりに溜まった未解決事件の段ボールをちゃぶ台よろしくひっくり返し、未解決の60パーセントが呪霊被害、20パーセントが呪詛師被害、10パーセントは呪術師による呪詛師殺害及び秘匿死刑だということを突き止めた。実に全体の90パーセントが呪術被害。残りの10パーセントは普通の殺人。普通って何だっけ?誰か辞書を持ってこい。

 

しかし犯人が分かったところで逮捕しなきゃ意味がない。呪霊被害の犯人は祓われた後だから、被疑者死亡のまま書類送検。呪詛師も逮捕に漕ぎ着けたのはほんの少数。殆どが被疑者死亡のまま書類送検。この呪詛師の安否確認が骨が折れるのだ。所在確認じゃない、安否確認。呪詛師討伐は高専絡みが殆どなので毎回令状片手に家宅捜索していたら、いつしか諦めと共にもう普通にアポ取って来いと言われるようになった。法律が勝った!とその日は祝い酒よろしく祝いカフェインを決め、様子を見に来た松田に沈められたのはいい思い出だ。

 

「高専着いたら少年少女瀕死の事件現場でさ」

 

「珍しいね」

 

「未成年が被害者の事件って少ないもんな」

 

「あの時は流石に寿命が縮みましたよ。全員命に別条がなくてよかったですが」

 

「ほんと東いなかったらヤバかったわ。そんで『現行犯逮捕』した男の取り調べを今日やって来たんだけど、」

 

「酷かったんだな」

 

「ウン」

 

御三家が人権焼却しているのは知っていたが、実体験を聞かされるとそれはもう胸糞悪かった。逮捕された男は禪院出身だった。江本は泣いた。

 

「…東、もう手は打ってあるって言ったよな。あの無法地帯何とかなるんだよな」

 

「もちろんです。私を誰だと思ってるんですか」

 

「元ゼロの東警部だろ」

 

「ま、今じゃこんな辺鄙なとこで眼精疲労抱えてる捜一の東警部やけどな!」

 

「そのとおり。ってことでちょっと前のノリで彼を協力者として登録してきました」

 

「さっすがぁ」

 

「古巣にだけは迷惑かけるなよ」

 

異動しても元部署の権限を残しておけるのが呪術対策係。この会話を通りすがりにうっかり聞いた萩原は、ついでとばかりに井上に新種の爆弾回収したけど見にくる?と尋ねてから消えていった。同期二人が公安だとスルースキルも磨かれる。

 

「少しお手洗い行ってきます」

 

「おー」

 

東の突飛な行動は今に始まったことじゃない。警察学校時代は夜の学校で肝試ししたり化け物退治したり超能力磨きしたりの企画は東がやっていた。それにノったのがあとの四人。それが図らずも今に繋がっているのだからたまらなく面白いのだが。

 

「おい東!東いるか⁈」

 

「あ、諸伏さん。東なら便所行ったぞ」

 

「くそっまた逃げられた!!」

 

たまにこうして公安が怒鳴り込んでくるのも捜査一課の風物詩となりつつあった。

 

 

 

 

 

 

さて、東考案「ドキドキ♡御三家マイナス禪院は御二家―御三家お片付け企画第一弾!―」の説明をしていこう。作戦はこうだ。

 

「禪院もとい伏黒甚爾とその息子、恵を禪院家にスパイとして投入する。以上」

 

これが東クオリティ。実にシンプル。降谷からの差し入れを持って来た風見は聞かなかったことにしようとして失敗し胃を押さえた。

 

「禪院に投入って、大丈夫なのか?」

 

「えぇ、土台は作ってあるので問題ないです」

 

息子が売られるならオプションで父親も付けて里帰りさせてしまおう。その為には禪院家が父親を受け入れざるを得ない環境を作らなければならない。もうこの時点で呪術師はクソ、と聞き耳を立てていた警察官の心は一つになった。名探偵は死神、爆発は春の季語、の次に一致した。

 

「はい、てなわけで、チキチキ!潜入捜査は事前準備が大事!禪院家編、説明していきます。必要なものは伏黒甚爾、恵、それから爆弾、以上の三つです。簡単に用意できますね」

 

どこからか取り出した写真三枚がベンベンッとホワイトボードに貼り付けられる。

 

「その爆弾って」

 

「井上が作ったやつですね」

 

「この前ちょっとうっかり呪い込めまくって作った、爆発三秒前に【犯人は猿】ってメッセージ流れる水銀レバー付き爆弾、東に納品した気がするんだが」

 

「それですね」

 

使用目的も聞かずに作った井上も井上だが、それを真顔で親指縦に立てながら作戦に使用するぞ宣言している東も東で普通ではない。ここに呪術師がいたら口を揃えてお前らイカれてると言うだろうが五人のイカれてる基準はポエマー詩ジンなのであいつと一緒にするなと否定する。最もイカれているのは死体を見ても悲鳴を上げるだけになった小学高校生だとは誰も気付かない。携帯の発信履歴で一番多いのが110番の高校生とか今すぐ履歴を彼氏で埋めろ。

 

閑話休題。

 

「で、次に手順です。

 

1. 禪院家の蔵に気配を消せる術者(協力者)が侵入し爆弾を設置

 

2. 相伝術式を持った人間を殺害するぞ的な脅迫状を送る

 

3. 爆破

 

4. 次は十種影法術の子供を狙うと脅迫状を送る→肉壁が必要になる

 

5. スパイ投入

 

6. 内部の情報をこっちに流してもらいつつ証拠を集める

 

7. 逮捕

 

までがざっくりとした流れです。現段階で4の工程まで完了。家庭環境が教育に悪いのでなるはやで終わらせたいと考えています」

 

「たった一回の爆破でそんな警戒してくれるか?」

 

「私も一回じゃダメかと思っていたのですが井上が込めた呪いが思った以上に強力だったみたく、予定よりスムーズに進みました」

 

「恵くんは是が非でも欲しい、でも爆破は怖い、せや役立たずを役立ててやろう!みたいな思考にもっていかせたのか」

 

「そういうことです。踏み込みは普通に捜査一課に任せようと思っているのでこちらからは上田だけが同行すると上には伝えてあります」

 

「おー任せとけ。ま、呪術師(禪院)非術師(警察)に攻撃してきた時点で大分アウトだからそんな呪詛師だと間違われるような行動、理性的な方々ならしないと思うけどな」

 

「当たり前でしょう。でも一応の」

 

保険ですよ、と笑った東の顔は曲がりなりにも警察官だとは全く言えない表情だったと、後に四人は語る。

 

 

 

 

 

 

前述で言った通り、呪術対策係は今のところ警視庁にしか設置されていない。つまりどういうことかというと。

 

「協力するならここがいい!県警ランキグ〜!はやる第一位は〜!」

 

「長野」

 

「長野かな」

 

「長野でしょう」

 

「長野だな」

 

東都以外へも頻繁に足を運ばなければならないということだ。切実に瞬間移動がしたい。

 

「長野は先輩の幼馴染のお兄さんとその幼馴染がいるので安心感すごいんですよね」

 

「大阪も悪くはないんだけど巻き込んではいけないリスト入りしてる西の高校生探偵がいて動きにくいんだよな」

 

「京都はまぁ、どちらかと言うと動きやすい。ただクセが強い」

 

「群馬は?」

 

「暴走止めるの面倒い」

 

今回もそんな捜査協力要請に応えて五人揃ってとある村にやって来た。ちなみに禪院家お掃除計画は一年たった今でも絶賛進行中だ。かなりハイペースで進んでいるので作戦完了までそう時間はかからないだろう。

 

「呪術界はクソ、ハッキリ分かんだね」

 

「そしてやっぱり人間は愚か!」

 

五人の目の前には虐待を受けたと思われる女の子二人。そして今にも人を殺しそうな青年一人。Hey リシ、今どんな状況?

 

『声が怪しいね』

 

お前もな。

 

「オーケー青年。ちょい落ち着こうか」

 

「猿め」

 

「駄目だこりゃ。俺たちのこと眼中にないぞ」

 

「そもそも何でブッキングしてんだよ。高専と警察連携取れて無さすぎでしょ。あっちに俺らがここ担当するって連絡入れたよな」

 

「大方無視されたんでしょうね」

 

はぁ、と肩をすくめた東に呆れ顔の四人。ちなみに目の前には呪霊が出現しているが上田がそれを防いでいる。

 

「どけ」

 

青年の呪力が膨れ上がるのが分かる。しかしどれだけ青年が強かろうと上田には関係がない。残りの四人は携帯片手に県警に連絡、高専にクレーム、本庁に連絡、村人に警察手帳を提示していた。結構余裕である。

 

「それは君の仕事じゃない」

 

「そーそ、俺らの仕事取るなよ。いっつもいっつもこっちの邪魔しおって」

 

井上が青年の目の前に警察手帳を突きつけると、そこで初めて青年の表情が揺れた。

 

「警察…、呪術対策係…?」

 

「おっとこれは生徒に話がいってないパティーン?」

 

江本の携帯が粉々になって御臨終した。米神には青筋が浮かび目は笑っているのに笑っていない。報連相が出来ない奴らにはアク抜き無しのほうれん草食って結石ができる呪いをかけた。即席で。

 

「あはは、青年は下がってて。ちゃっちゃと仕事終わらせて殴り込みに行くわ。呪うだけじゃ足りん」

 

「大木止めろ。江本が本気だしたら捕まんのは江本だぞ!」

 

「もちつけ江本!高木が泣くぞ!」

 

「はーーーーい!殺人未遂容疑112名様ごあんなーーーーい!」

 

カオスだった。江本を押さえ込む大木に、ヤケクソの井上と上田。完全に余談だが青年は特級である。特級を軽くあしらった警察官が焦って警察官を止めている。流石の青年も落ち着いた。青年の方が落ち着いた。

 

「応援の到着、まだですかね」

 

女の子二人を抱え遠い目をした東に、青年は別の意味で希望を見出せなくなった。主にこの空間からの脱出的な意味で。

猿の喚き声と人間の怒号、サイレンの音が混ざり合って騒々しい。そこに加わる着信音。

 

「はい東です。はい?ノックリストが狙われた?それ呪対に関係あります?あーー、分かりました。承知しました。すぐそちらに向かいます」

 

青年が東の顔を見ると頭痛が痛いというような表情をしていた。別に東的に行くのが嫌なんじゃない。最終的にやらなければならない後始末を想像して嫌になっているだけだ。

 

「四人とも、お上からのご指名です。君、ちょっと社会科見学がてら手伝ってください」

 

青年は空飛ぶ呪霊に自分含めて六人も乗せることになろうとは思わず親友の領域展開を背負った。仕方ない、東は降谷(公安の姫)を見て育ってしまったので降谷同様人使いが荒いのだ。

 

 

 

 

 

 

ところ変わって東都水族館。青年、夏油は周りに溢れかえる猿を殺したい衝動に駆られつつもそれが出来ずに呪術対策係と共に観覧車へと歩を進めていた。照明は落とされ、上空ではローター音が響いている。そして呪霊の気配は彼方此方に。

 

「高専より先回り出来たな」

 

「こんな現場に巻き込む方がまずいっしょ」

 

しかし現在進行形で巻き込まれている夏油は含まないものとする。東たちは彼の精神状態が危ういのをわかった上で巻き込んでいる。呪術師の悩みはよく分からないが荒療治でも彼の悩みを解決出来ないかな、という思いやり半分、そのまま呪術対策係に将来入ってくれないかな、という思惑半分。せめて高専と警察の掛橋になって欲しい。だから闇堕ちするなよ。

 

「対象は観覧車の中、奴らは必ず仕掛けてきま、……と言っている間にやらかしてくれましたね!」

 

「ここが日本なのか偶に疑いたくなるよな」

 

突如観覧車から煙が上がり、銃撃音と爆発音と人の悲鳴と呪霊の声が空間を支配する。

 

「上田はキュラソーの確保、江本は観覧車内部の安全確保、大木と井上は呪霊の対応、配置に付いて!」

 

「「「「了解」」」」

 

「夏油くんは私の側から離れないで下さい。非術師のやり方というものを見せてあげます」

 

そういって東は夏油を連れて非術師()の群れへ突っ込んで行く。それは夏油がこの場で暴れても確実に抑え込めるという自信の現れの様で気分が悪くなった。嫌悪に浸っていると掴んでいる手を離さずに東が話しかけてくる。

 

「君は非術師が嫌いですか?」

 

「嫌いだ」

 

「それはこれを見ても?」

 

下を向いていた顔を上げると視界に広がるのは一般人を守ろうとする人間たちの姿。気持ち悪い笑みを浮かべているわけでもなく、罵るような声をあげているわけでもない。守るための覚悟の顔に、守るための力強い声。呪術界に染まっていた夏油にとって久しぶりに感じる真っ直ぐな大人という存在感。

 

「目暮警部!」

 

「おぉ東くん。君もこっちに来ていたのか」

 

「えぇ、他の四人も対応に当たっています」

 

「それは頼もしいな」

 

確固たる信頼関係。

では、と言って目暮に手を振った東はまた移動していく。今度は手を繋がずとも夏油は後を付いて行く。途中で遭遇した呪霊は東が全て祓っていった。

 

「君はあのヘリに乗った人たちをどう思いますか?」

 

上空を見上げながら東は問いかける。

 

「猿だと思う」

 

「同感です」

 

「は?」

 

「さっさと駆除したいですね。法的に」

 

空に爆発音が響き、花火が上がると共に照らし出された機体はバランスを崩す。それでも尚止まない銃撃にさすがの東も舌打ちをもらした。支えを失ったホイールが一般人の集まる水族館に向かって回転を始める。その瓦礫の間に夏油は人影を見つけた。ホイールとホイールの間にベルトのような物を巻き付け止めようとするのは子供だ。それを大人二人が補助している。

 

「あれは」

 

「ん?あれ?」

 

「観覧車と観覧車の間を飛び越えて行っている」

 

同期を探していた東は捜索の対象を切り替え目を凝らす。

 

「んーあー、あれは名探偵と降谷さんとFBIですね」

 

「すごい」

 

「ちなみに彼らは全員非術師ですよ」

 

「ウソだろ」

 

あんな人外じみた動きをしておいて?と夏油は今までの常識がガラガラと崩れて去っていく気配を感じた。東はいつか夏油に、あの小学生、実は高校生なんだよ、と教えてやろうと思った。守秘義務はきっと浜辺でバカンスしている。

 

騒音と共に回転するホイールはあと少しの力が足りず未だ停止していない。

 

「あれでも止まらないのか」

 

「止めますよ」

 

東の顔には確証に満ちた笑みが浮かんでいた。その視線の先に映るのは子供四人とキュラソーを守る上田と、術式を発動させた江本の姿。江本の背後から出現した鎖が転がるホイールを捕らえ固定する。その瞬間、あたりに蔓延っていた呪霊が消散した。背後の気配に振り向くと、そこにはやりきった表情の井上と大木がハイタッチしていた。

 

「呪術師は呪術師の間で完結させてしまうからいけないんですよ。非術師(警察)とが情報共有しつつ役割分担しているように、呪術師も我々警察と協力し合えばもっと楽になると思うんですよね」

 

「まさか呪術の存在を知っているのは上層部だけ、とか思ってないよな」

 

「昔はそうだったけど今は全警察官が存在を周知してるぞ。なんかあればすぐ呪対に連絡が来るようになってる」

 

「呪術師は非術師を守るが、呪対は呪術師を守るのも仕事の一つだ」

 

「警察官舐めるなよ」

 

東、井上、上田、江本、大木の目が夏油を捉らえる。それは大人が子供を見るような眼差しであったが、不思議と嫌な気はしなかった。

 

 

呪術界に革新が起きるまであと少し。




☆設定


警視庁刑事部捜査第一課呪術対策係
略して呪対。とある高専出身者が呪術師はクソと飛び出し警察に入って設立した部署。今のところメンバーは五人しかいない。サポート二人、タンク一人、アタッカー二人構成。各県警と連携を取っており顔が非常に広い。機密情報も共有している。

東(27)
元警察庁警備局警備企画課所属
術式は『情報開示』
相手の素性を看破する。生年月日、犯罪歴、病歴などを明らかにし、その上でそれらを弄ることが出来る。証拠隠滅や対象保護に活用。死者を蘇らせることも可能。その際は対価として自分の寿命を100として一人蘇らせるたびに1ずつ減少していく。現段階で98。

呪術対策係のまとめ役。敬語は降谷の安室バージョンに慣れるために自分も使い始めた結果、標準装備になってしまった。降谷のことは尊敬も信頼もしているが同時にゴリラだとも思っている。戦闘向けの術式ではないので普段は呪具で殴っている。



井上(27)
元爆発物処理班所属
術式は『起爆装置』
一度解体したことのある爆弾を召喚することが出来る。その爆弾に対しての恨みが大きいほど威力が上がる。

上田と共に井上田コンビと呼ばれている。おふざけ担当。爆処のエースと仲が良く、頻繁に新種の爆弾が見つかれば流してもらっている。



上田(27)
元爆発物処理班所属
術式は『防爆防護』
無敵シールドを発動出来る。その強度は相手の強さに比例しないが発動範囲は自分の周囲半径二メートルに限られる。

井上と共に井上田コンビと呼ばれている。悪ノリ担当。関西生まれ、関東育ちのため、エセ関西弁がよく混じる。爆処のエースと仲が良く、頻繁に萩原を叱っては松田に殴りかかっている。



江本(27)
元捜査一課強行犯所属
術式は『現行犯逮捕』
絶対に対象を捕縛出来る鎖を召喚する。その強度は相手の強さに比例しない。

何かと仕事の多い強行犯にいた事もありストレスフル。唯一の癒しは警視庁内の恋愛事情を見守ること。高木にかまっている姿がよく見られる。



大木(27)
元捜査一課強行犯所属
術式は『捜査開始』
身体強化をすることが出来る。その強さは某フィジカルギフテッドや公安の姫をも上回る。

常識人という名の傍観者。何でも物理で解決しようとする節がある。多分降谷と馬が合う。ワタルブラザーズの過激ファン。突っ込んで来た車を殴り飛ばした過去がある。



御三家
多分近いうちにホワイト企業になるよ。

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