思いの形は、人それぞれ。
あなたの常識私の非常識、なんてのはよくあること。
それこそ裏も表もあるものだから。
傍から見たら、色々と複雑で難しい。

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菖蒲ちゃんはまだ出たばかりなので、ほぼオリキャラみたいな仕上がりですけどね。
フルネームが出たらタグ直すかもしれません。


アオのハコ#64 SideB

 どうしてあんな、重たくするのかな。不幸なお姫様が格好いい王子様に助けられて幸せになりました、で良いのにな。

 ぽっと出の男と結ばれるのが気に入らないとかもっと運命的にしようとか、めんどくさいじゃない。一目で好きになって結ばれて、それで御仕舞いハッピーエンド。菖蒲はそういうのが好きだな。

 まあ、良いんだけどさ。あんまり言うと()()()()()嫌われちゃうし、それは困るから菖蒲はとりあえず黙っておく。クラスのみんなが頑張ってるのは知ってるし、雛ちゃんは大喜くんが王子様やってくれて嬉しそうだし。みんな盛り上がってるのに、あんまり貶したら悪いよね。

 ――ああ、でも。みんなどうして、こうも真面目なんだろう。もっと軽く恋愛すれば良いのに。

 

 中学までの菖蒲は男の子みんなに好かれて、女の子みんなに嫌われてた。もっと女の子たちとも仲良くしたいけど、みんな菖蒲を悪く言うの。手当たり次第に男漁るビッチとか彼女持ちでも遠慮しない泥棒猫とか、そんな風に。小学生の頃から色んな男の子に好きって言われて、それで色んな男の子とお付き合い。それでなんか違うなーってなったら、そこでバイバイ。ずっとそうしてきたから、そういうものだと思ってた。

 菖蒲が自分で引っかけに行ったわけでもないのに、女の子たちはみんなすぐ怒るの。私が先に好きになったのに、とかずっと片想いしてたのに、とかワケわかんない。好きなら自分からいけば良いし、それでダメなら次に行くのが()()でしょ。好きだけど何もしないなんて、それは多分好きじゃないんだよ。そう言ったらみんな物凄い怒って、殴られたり蹴られたりした上先生にまで告げ口されたっけ。

 それで地元にいづらくて、高校はわざわざ遠くの栄明高等部を選んだ。ここには菖蒲の知り合いは一人もいないから、誰からも悪く言われたりしない。みんな優しくて良い人たちだし、できる限り波風立てないようにしてるから。たまに「菖蒲は奔放だから……」なんて言われるくらいで、前みたいに荒れ放題になったりはしないんだ。

 猫被って栄明で過ごすなか気付いたのは、みんなと菖蒲では「恋愛観」みたいなのが全然違うんだなーって事。好きになってお付き合いして、キスしてえっちして。そういうのがスゴく――()()なことだってみんな思ってる。誰々が好きだけどどうしよう、なんてモジモジしてる子ばっかり。菖蒲にはわかんないなー、実際。

 

 雛ちゃんは大喜くんが好きなんだろうけど、でもそれだけなんだよね。にいなちゃんたちは応援しなきゃ、みたいに大騒ぎしてるけど、それって必要かな。自分からなにもできないで周りが助けてくれるのを期待している、それじゃまるで本物のお姫様だ。何でそこまでするんだろう、みんな。二人が勝手にくっつくのを見守りたい、なら分かるけど。

 大喜くんは可愛いけど男の子なんだから、雛ちゃんが本気で迫ればすぐ落ちる。そうしないのはどうしてかな、やっぱり考え方が大袈裟だからだろうか。演技でキスのふりってだけで、倒れそうだったもん。

 まあよそ様の事だから、菖蒲がどうこういう筋合いでもないけど、さ。でももっと気軽に行かないと疲れちゃいそうで、ちょっと心配。

 ああ、菖蒲って優しいー。

「……ん?」

 団扇を振りつつ上から観ていた舞台の向かい側、客席のど真ん中。結構美人な、多分二年か三年の先輩であろう人が複雑な顔をしているのが目に入った。視線を辿ると、そこにいるのは大喜くん。

 はて、はてさて。あんな表情で王子様役を見詰めるものだろうか、なんだか違う気がする。芝居はいよいよクライマックス、これから王子様のキスで白雪姫が目を醒ます。

「……んん?」

 あの先輩さんは、もしかして。雛ちゃんと大喜くんがキスシーンをするのが、気に入らないんだろうか。つまりどっちかに、()()()()気持ちがあるとかかな。それで悔しいとか嫌だとか思っている……?いやまあ、菖蒲には分からないけど。

 でもああやってど真ん中で観てる辺り、席を立つ気もないようだ。せっかくの文化祭であんな顔してたら、つまんないだろうに。まあどうせもうじき幕も降りるし、終わるまで大人しくしててくれれば何でも良いや。

 このまま恙無くエンディングまで行けば、今日の御仕事は全部完了だ。さて帰りどうしようかな、と何気無く見上げた菖蒲。そこにあるくす玉は、何故か風もないのに大きく揺れて見えた。

 ……あれ、ヤバくない?いや、ヤバいよね?

 なんか、スゴい嫌な予感するんですけど――!?

 




片思いなんて意味わからない、人生有限なんだしダメならすぐ次行かないと無駄、は扇町さんの母親が常々言っていた事でありんす。
ユルユル蛸足配線の人でしたけえ、どんだけ浮き名を流してたやら。

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