皆を救ったら二次災害が起きてた件について(最低速度投稿)   作:カツオ節太郎

9 / 9
1年ぶりに書きました。
今年は多めに書ければと思います。

グチャグチャにならないようにしていきたいです。



普遍性

 ベッドの上。

 思い出す。

 

 トラブルの連鎖。

 忘れていた。

 

 学校はどうなっているのか。

 転校生が早々に事故。

 

 笑い話にもならない。

 …………………。

 

 司が来ない。

 ……期待をし過ぎてたかもしれない。

 

 期待するのがお門違いだ。

 

 寧ろ安息した。

 司が来る、ということは……。

 

「失礼します」

 

 叩く音。

 扉は開かれる。

 

「あ、はい」

 

 看護師さん……?

 もしかして退院日が

 

「お見舞いの方いらっしゃいます」

 

 決まったわけじゃないみたい。

 まふゆとの邂逅から2日目。

 

 その夜だ。

 耐えきれない痛み。

 

 脂汗。

 激しい動機。

 

 ナースコールを鳴らした。

 注射を打たれ意識を失う。

 

 気がついたら夕暮れ。

 

 今が、そう。

 

 疑問が頭を苛む。

 あの痛み。

 

 肋の痛みじゃない。

 もっと別の………。

 

 先生の言葉を思い出す。

 記憶にない入院。

 

 なにがどうなって…。

 

 謎が謎に覆われていく。

 

 詳しく調べる必要がある。

 退院してからでも…遅くはない。

 

「お見舞いですか」

 

 誰だろう。

 

「面会スペースでお待ちです。お部屋までお通し致しますか?」

 

 ……大丈夫か。

 ある意味峠は越えた。

 

「お願いします」

 

 ……違和感を覚える。

 なんだろう…。

 

 看護師を見送る。

 数分の沈黙。

 

 再度叩く音。

 

「どうぞ」

 

「ぁ……ああ、失礼する…おい!隠れるな!」

 

 予想通りの来客。

 ……他に誰かいる。

 

 二度。

 扉は開かれた。

 

「……元気そうで安心したぞ」

 

「おかげさまでね」

 

 柔らかい笑みを向けられる。

 ほんとに優しいね。

 

 あー…えっと……。

 

 司の背中。

 桃色の髪がはみ出している。

 

「紹介したい奴がいてな」

 

 …分かっていた。

 必ず誰かは連れてくると。

 

 元気……そうには見えない。

 

 太陽のよう燦々と。

 眩しい笑顔の君は──

 

「……ぅ…司くん…」

 

 いなかった。

 

 怯える背中を押していく。

 地面を叩く。

 

 不規則なリズム。

 

 ピンク色の瞳。

 潤み流れた痕。

 

 目と目が合う。

 

「…ぁ……」

 

 言いかけた言葉は絶たれる。

 開いた口は噤まれた。

 

 沈黙が訪れる。

 ……ことはさせない。

 

「こんにちは」

 

「…こ、こんにちは!」

 

 挨拶を最後に沈黙。

 無理だって……!

 

「何をしてるんだお前たちは」

 

 呆れた様子。

 あはは……。

 

「はじめまして叶音ヨウです」

 

 簡素な自己紹介。

 絞り込んで出せた言葉。

 

「………………」

 

 俯かせた頭。

 前髪で見えない顔。

 

 ……隠れきれない食いしばり。

 擦れる響き。

 

 よく聞こえる。

 

 …不公平だよね。

 そして不平等、だ。

 

 擦り切れた心に。

 しらを切る気力は残っていない。

 

 はは……。

 

 ベッドから地へ。

 降り立ち。

 

「…ヨ、ヨウ……」

 

 司からの制止。

 眼前に小さな体。

 

 震えている。

 やっぱり顔は見えない。

 

 けど──

 足元に落ちていく雨粒。

 

 理解る。

 

 ……顔を彼女の耳元へ。

 小さく……呟いた。

 

 △

 ▽

 

 こうなった、か。

 分かりきっていたことだ。

 

 だが──

 会わせることは決めていた。

 

 空想は現実に。

 確たる証拠も手に入れたのだ。

 

 だとしても、だ。

 はじめまして……。

 

 この言葉はキツい、な。

 

 確かな証拠。

 ……ヨウ=悠は証明された。

 

 突きつけて終わり…なんて簡単な話じゃなかった。

 

 真実を知りつつも。

 ……なにもできないんだ。

 

 えむは黙ったままだ。

 いつも騒がしいお前が……。

 

 懐かしく感じる。

 

 …悠相手には大人しかった。

 

 優しく諭され叱られた子犬のような顔をしていた。

 

 あの中で一番懐いていたのは間違いなくえむだ。

 

 ……実の兄よりも懐いていただろうな。

 オレも言えたことじゃない、か。

 

 静寂の前。

 悠がベットを降りた。

 

 歩み寄る。

 

 ッ!

 

「…ヨ、ヨウ……」

 

 悠と呼べない。

 歯痒さが募る。

 

 止まらない。

 向かい合う二人。

 

 顔を屈める。

 えむの耳元。

 

 ……囁く。

 聞こえない。

 

「ッ!……」

 

 勢いよく顔を上げる。

 

 …えむ?

 どうし……!

 

「……悠くん!」

 

「うわっ!?」

 

 あっという間だ。

 

 突撃するえむ。

 くの字に曲がり倒れる悠。

 

 篭った泣き声。

 決壊。

 

 元通りにする為に奮闘していた。

 悠が居ないだけでダメになるくらいだ。

 

 狂い狂う。

 

 その中で……。

 唯一えむだけが……奔走していたんだ。

 

 ……オレは。

 悠が現れなければ……。

 

 あのままだっただろうな。

 情けなさが肩にのしかかる。

 

 あの時を境に涙を見せなくなった。

 

 えむが──

 いとも容易く流してみせた。

 

 直ぐにでも聞きたい。

 ……ところだが。

 

「…っく……ぇっぐ…あのね…!…悠くんが…っ…いなくなってね」

 

「……うん」

 

 聞ける状態ではない、か。

 えむは今も悠と呼ぶ。

 

 対して否定も肯定もない。

 …苦虫を噛み潰したような。

 

 ただただ困った顔を曝け出すだけ。

 

「…ひっく……みんな…バラバラになっちゃって……寧々ちゃんも類くんも……悠くんのこと大好きだったから……」

 

「……ッ」

 

 黙って聞いている。

 額に脂汗が見えた。

 

 徐々に顔色も悪くなって…!

 

「……あたしは…またみんなと……悠くん?」

 

「…ッ…ハァ…大丈夫……っ」

 

 荒くなる息遣い。

 過呼吸に近く焦点もズレていく。

 

 迷わずナースコールを鳴らした。

 

「悠くん!」

 

「ベッドに寝かせる。手伝ってくれ」

 

「うん!」

 

 返事はない。

 必死に堪えている。

 

 己を抱き。

 瞳を閉じて。

 

 見ていることしかできない。

 それが…とても悔しくてたまらない。

 

「…司くん」

 

 えむの声。

 気づく。

 

 拳から通り抜ける赤。

 

「どうしま……!」

 

 看護師の登場。

 悠を見て顔が強ばらせる。

 

 瞬く間に。

 病室から追い出されてしまう。

 

 医師、看護師の入っていく様を見届けていく。

 

「……帰るぞ」

 

 なにもできない。

 

「…えっ…司くん!待ってよ!」

 

 祈ることしか。

 できないんだ。

 

 △

 ▽

 

「……また」

 

 淀んだ視界。

 鮮明になっていく景色。

 

 代わり映えのしない天井。

 司と……えむちゃんは居ない。

 

 起き上がることは、できる。

 体に異変は見られない。

 

「……ふぅ」

 

 現状手がかりはない。

 …だが、予想はできる。

 

 この予想が──

 

「…!」

 

 足音。

 駆け足に近いハイペース。

 

 扉が強く開かれる。

 

「……はぁ…はぁ……」

 

 肩で息をするみのりちゃん。

 ……なんで…ああ…。

 

 気を利かせてくれたのかな。

 

「大丈夫!?お医者さんから聞いたよ!?」

 

「うん、大丈夫だから」

 

「ダメだよ!ちゃんと横にならないと!」

 

 なすすべもなく天井を見上げる。

 窓を見る。

 

 黄昏は真夜中に。

 ……えっと。

 

「みのりちゃん。夜遅いし家に帰らないと…」

 

「大丈夫だよ。今日は泊まるから」

 

 ……え?

 

「いやいや。ご両親や弟くんが…」

 

「友達の家に泊まるって言ってきたから」

 

「……えぇ」

 

 元はと言えば俺のせい。

 一度目で慣れたといえ無様な姿を見せた。

 

 それよりも、だ。

 予想が正しければ……。

 

 この状況、現状。

 全てにおいて──

 

 不味い方向に向かっている。

 

 まずは退院をしないと。

 

 …………みのりちゃん。

 どこで寝てもらえばいいんだろう。




お見舞い前の司の方の話も合間に書いていきたいとは思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ニーゴ好感度逆転モノ(作者:村岡8bit)(原作:プロジェクトセカイ)

なんか色々と重いサークルに入っちまった!▼しょうがないにゃあ……俺が全員救ったらぁ!▼お、なんか知らんけど全員救えたわ。だけど皆距離感近くない?近いよね。▼アイエエエエエ!?ナンデ!?なんで皆急に無視するの!?なんで近寄るなっていうのおおおお!?なんか嫌われたんだけどおおおお!?←イマココ


総合評価:3921/評価:8.97/連載:8話/更新日時:2023年08月09日(水) 00:14 小説情報

プロセカの世界に転生したので皆を救いたいと思います(制限時間付き)(作者:蛮族さん)(原作:プロジェクトセカイ)

前世では、プロセカが大好きだった俺が間抜けな死に方をして、神様からの哀れみでプロセカに転生した。▼しかし、俺のせいでプロセカに存在している様々な人物が死んでしまう可能性があり、さらには俺自身には制限時間がある...▼「...いや、忙し過ぎるだろ!?」▼これは、一人の少年が、短い人生の中で彼、彼女たちを救っていく話である。▼※最初はコメディ感がありますが、普通…


総合評価:2096/評価:8.61/連載:14話/更新日時:2023年01月04日(水) 18:00 小説情報

顔のいい姉の弟に生まれたので姉を曇らせたい(作者:じゃがありこ)(原作:プロジェクトセカイ)

タイトル通り。性癖が終わってる主人公君が、姉とその他の女の子を曇らせたり、曇らされたりする話。


総合評価:4548/評価:8.45/連載:12話/更新日時:2025年05月26日(月) 23:58 小説情報

ぼくのかんがえたさいきょうのあいどる(作者:モモジャン箱推し)(原作:プロジェクトセカイ)

Q.小さい頃からずっと隣にいて自分のことを支えてくれた人が、自分のせいで死にかけて夢を叶えることすら出来なくなったらどうなる?▼A.壊れる(たぶん)▼花里みのりレベル100(ヤンデレ属性持ち)。圧倒的な強さと輝きで人を惹きつけるタイプ。▼


総合評価:1745/評価:8.8/連載:6話/更新日時:2026年02月06日(金) 16:18 小説情報

一般通過脳焼きクソボケ大魔王(作者:Nemusugi )(原作:崩壊:スターレイル)

人の優しさに脳を焼かれた一般通過大魔王が、周りの脳を焼いていくだけのお話▼尚、脳を焼いた魔王自身は(自責の念とか諸々で)クソボケとする。▼処女作です。誤字や脱字の凡ミス、▼強い独自解釈や設定があります。▼それらを踏まえて閲覧ください。


総合評価:2022/評価:8.65/連載:17話/更新日時:2026年04月09日(木) 13:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>