銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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お待たせしました。

同盟のクーデターの話です。


叛乱

宇宙暦797年 ハイネセン 統合作戦本部 ユーリ・クーロ

 

 

明日で4月という時に、同時多発的に駐留軍の叛乱が地方で起こった。予想していたとはいえゲンナリする。

帝国でブラウンシュヴァイク、リッテンハイム両家が主犯として叛乱の決起集会のようなものを行なったのが3月。

そこから帝都オーディンでは混乱が続いているようで、情報が錯綜している。ミリィや他の情報源からも正確な情報と尾ひれがついた情報が入り混じっている。

ローエングラム伯麾下の正規艦隊は帝都を掌握しているが、門閥貴族派閥は広い範囲で勢力圏を築いており、艦船の総数はローエングラム伯を上回ると推測されている。

だが名将ローエングラム伯が相手ではな………潰し合いを期待するのは虫が良すぎるか。

さて………此方の懸案事項を片付けよう。辺境の惑星ネプティス、カッファー、パルメレンド、シャンプールで武力反乱が起きた。これに対処しなければならない。

私直轄の部隊に出動命令をだした。明日には出撃できるだろう。半分はヤンに対応してもらおう。後10日もすればビュコック提督の艦隊がイゼルローンに到着するだろう。

さて、これでハイネセン並びに首都近郊には第11艦隊とクブルスリーの5000隻しかいなくなる。ここで彼らがどう動くか楽しみだ。

 

 

 

 

 

宇宙暦797年 旗艦アトラス ユーリ・クーロ

 

 

ハイネセンを発って5日、ハイネセンより緊急通信が入った。

『統合作戦本部長代理クブルスリー元帥重症。意識不明』

艦橋に緊張が走った。クブルスリーの負傷よりも私の怒りで緊張が走っている。カリンが渡してくれたコーヒー入りの紙コップを力の限り握り潰している。火傷しようがお構いなしに。

「あれほど言ったのにっ!………つくづくクブルスリーは期待を裏切る。当人も副官も護衛も………クソったれがっ!」

手摺をガンッと叩いて、息を大きく吐き出す。

“閣下っ!”とカリンが私の手の心配をしてくれるが、それすらも煩わしく感じる。上に立つと不便な事ばかりだ。ハンカチで私の手を拭くカリンを見て、小さく長く息を吐き出す。ゆっくりと息を吸う。よし、落ち着いた。これからを考えなければ。

ウィルコックが代理の代理として首都を抑える………不安だな。軍政、補給などの後方勤務を主に務めた。軍事の力量は悪くはないが、如何せん実績がない。士官、下士官、兵卒の統制は取れるだろうが、率いて戦う統率は無理だ。私達が戻るか?辺境の鎮圧はヤンに任せて。

いや………そうなったら潜在し続ける不平不満分子が獅子身中の虫として居続けることになる。ここは予定通り動くしかないか。

 

 

 

 

 

宇宙暦797年 イゼルローン要塞 ヤン・ウェンリー

 

 

ビュコック提督が明日到着予定の今日、昼過ぎに教官とビュコック提督、両艦隊の司令部要員と通信で細かい調整をしているとハイネセンから緊急通信が入った。

「首都で非常事態発生!!」

通信士が大きな声で伝えてくれた。

「詳しく報告せよ!」

ムライ参謀長が詳細を教えよと言う。

「はいっ。首都ハイネセンにおいて、非常事態発生。クッ、クーデターです!」

私、ビュコック提督、教官は起こると分かっていたから驚きはなかったが、それぞれの司令部要員は驚きの声を漏らしている。

そこから先の情報が錯綜し、断片的にしか入ってこないので皆がヤキモキしている。そこへ1時間程したら、クーデターを起こした者達から同盟領全域に通信が入った。それを聞くことになった。

『宇宙暦797年4月13日。我々はここに、救国軍事会議臨時政府の樹立を宣言する!現時点より戒厳令を発動し、首都ハイネセンを我が軍の実行支配の下におく。』

「救国軍事会議………。」

チラリとスクリーンに映っている人物を見た。沈黙を貫く教官が怖い。この事態を予測していた彼にとっては既定事項で驚きに値しないのだろう。クーデターの予測は出来たが、私には予測出来ない首謀者も分かっているか見当がついているのだろう。

『同盟憲章は停止され、それに代わる救国軍事会議の布告をここに宣言する。一つ、銀河帝国打倒という崇高な目的に向かっての挙国一致体制の確立。一つ、国益に反する政治活動、および言論の秩序ある統制。一つ、軍人の司法警察権付与。一つ、必要を越えた弱者救済を廃止し、社会の弱体化を防ぐ。一つ、良心的兵役拒否を刑罰の対象とする。一つ、政治家及び公務員の汚職に対する刑罰の強化。………』

次々と挙げられる規則に失笑が溢れた。これじゃあ………。

「こいつは傑作だ。500年前にルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが主張したことと何も変わらないじゃないか。」

私の独り言に確かにと賛意を示す言葉も聞こえる。

『それでは、市民及び同盟軍の諸君に救国軍事会議の議長を紹介する。』

エベンス大佐が壇上より引き、新たな男が画面に映った。私を含め全員が息を飲み、言葉を失い、目を見開いた。

『ドワイト・グリーンヒル大将』

まさかの人物に私も驚き、そして彼女に思い至り、振り向いた。彼女は手を口にやり、驚愕の表情を浮かべていた。

私はグリーンヒル少将は先の帝国領侵攻作戦での失態で降格処分が下った。それによって彼の芽はなくなったと思っていた。それがまさか………。

『市民、そして同盟軍の諸君。我々の行動を恐れないでほしい。我々の目的は人々が正しく生活し、正しく評価され、正しく人生を全う出来る。ごく当たり前の世の中を作ることである。歴史を紐解けば、政治が腐敗し、世の中が公正でなくなった時、その体制を正すため、立ち上がる者がしばしば現れる事はお分かりだろう。我々がそれであり、今がその時なのだ。本日この日を境に、自由惑星同盟の歴史は変わる。』

そこからしばらく話が続き、終わるとズズズッと教官がわざと音を立ててコーヒーを啜った。その音に皆が我に返る。

『ヤン大将。』

呼び掛けられた声はどこまでも冷徹で峻厳なものだった。静まり返っていた場が更に凍りついたように、しわぶき一つ上がらない。私も緊張し、日頃では返さない軍人然とした返事と敬礼を行なった。

「ハッ!」

そんな私の様子を見てとった教官は、ハァーーーと大きな溜め息を吐いて憂鬱そうな表情で命を下した。

『グリーンヒル少佐をお前の自室にて尋問しろ。父親であり、救国軍事会議の議長であるグリーンヒル少将と連絡を取っていたか通信機器を取り上げ、確認するように。』

「教官っ!!」

彼女はそんな事に与するような事はしないと、抗議しようとするもお構いなしに命令を下す。

『ビュコック提督が到着するまでチェックし、ヤン大将は彼女の潔白の確認が取れ次第、自由意志で処分を下すように。』

そしてまたハァーーーと大きな溜め息を吐いて、矢継ぎ早に指示を出す。

『キャゼルヌ少将、ユリアン兵長待遇を彼女の処遇が決まるまで預かってくれ。』

「ハッ!承知しました。」

『ユリアン兵長待遇、彼女が寝起き出来るよう至急準備を頼む。』

「ハッ!承知しました。」

ユリアンが急いで走り去っていった。

『女性兵士に彼女の監視をさせ、衣服などの準備させるように。ヤン大将はその監視を。』

グリーンヒル少佐に何人かの女性兵士が付き添って、イゼルローン要塞司令部を出ていった。それを見送っていると。

『ん?何をしている。ヤン、お前も行くんだよ。』

「私もですか?」

『そうだ。さっさと行け。』

命令され、何か納得いかないが命令は命令だ。従うしかない。

 

 

 

 

 

宇宙暦797年 旗艦アトラス ユーリ・クーロ

 

 

「行ったか?」

『ええ。行きました。………閣下は彼女がクーデターに与しているとお思いで?』

ムライ参謀長が半信半疑で、いや九信一疑の感じで聞いてきた。

「バカを言うな。彼女は無関係だよ。」

『なら何故あのような措置を?』

パトリチェフ副参謀長も不思議そうにしている。

「そろそろあいつにも身を固める覚悟を持ってもらおうと思ってな。こんな状況だ。一時の過ちでも起きないか期待してるんだがな。ヤンに期待しすぎかな?」

頭を捻り、考え込むとラップ参謀長は失笑し、イゼルローン要塞司令部要員は爆笑している。

『酷い話ですな。親のクーデターをそんな事に使うとは。』

『ええ。いかがなものかと……。』

シェーンコップにフィッシャーまで私を責める。

「あいつはケツを叩くだけじゃどうにもならんだろう?彼女も奥手で胸に秘めているつもりだ。気づいてないのはあのバカだけだ。」

『貴方が古今無双の名将と褒めそやされていますが、性格の悪さも古今無双のようだ。』

シェーンコップの言葉に、私は失笑して誤魔化した。ここにいる奴らも、向こうの司令部も笑いに包まれた。カリン、お前もか。

私やコイツらに似て性格が悪くなるぞ。

 

 

 

 

宇宙暦797年 イゼルローン要塞 ヤン・ウェンリー

 

 

「落ち着いたかい?」

一晩経ち、ユリアンが朝、私達の朝食と紅茶を持ってきてくれた。起きてきた彼女の様子を見るに、落ち込んではいるが、幾分か気持ちの整理ができたようだ。

「はい。父が何故あのような行動に踏み切ったのか分かりませんが、私は第13艦隊司令官である閣下の副官です。貴方と共にありたいと思っています。」

「そう………か。助かるよ。今日の夜にはビュコック提督が来られる。諸々の引き継ぎをして、明日の昼には艦を出す。出られるかい?」

「私………、副官を続けても……いいのですか?任を…解かれるとばかり………思っておりました。」

「私には君が必要だ。私は怠惰な人間でね。傍には有能で信頼出来る副官が必要なんだ。君しかいない。」

私の気持ちを伝えると、彼女を俯いてハラハラと涙を流された。

「…、はい……はい。精一杯務めさせていただきます。」

「よろしく頼むよ。」

明日の朝に自室に戻ってもらい、準備諸々をしてもらうことを告げ、私は仕事の為に部屋を出た。するとどうやらシェーンコップ准将が私に話があるらしく待っていた。

「グリーンヒル少佐を解任なさらないのですな?」

「当然だろう?彼女以上に優秀な副官はいない。」

「左様ですな。もし解任なさっていたら私は貴方を見損ない、見放していたでしょうな。」

「そうか。」

私情も挟んだ話にもなるというので会議室に行くことにした。

「さて、本題に入りましょうか。今回のクーデター、如何します?」

「教官が作戦を立てている。それに粛々と従うさ。」

「………貴方は今の自由惑星同盟の権力体制がどれほどダメなものか、それを貴方は骨身に染みている。それなのに、その体制を全力で守ろうとしている。その矛盾を解消するチャンスだと私には思いますがね?」

シェーンコップ准将が私を強く見てきた。

「如何です?救国軍事会議のピエロたちに、今の権力者たちを一掃させるんです。完全に、徹底的にね。どうせ奴らはその後、ボロを出して事態を収拾できなくなる。そこへ貴方が颯爽と乗り込んで、馬鹿たちを掃き清める。そして民主主義の回復者として権力を握る。中々に良い選択肢ですよ。」

「………。」

「どうしても貴方がその立場が嫌なら、もっと適任がいる。軍事、軍政に明るく、頭脳も同盟屈指で、人望もある。貴方が彼をその地位に押し上げるんです。彼は嫌だ嫌だと言いながらも、いざとなればやってくれますよ。独裁者ユーリ・クーロを誕生させるべきです。過去数多の独裁者やルドルフなどよりも優秀で有能な独裁者をね。」

「そして私は独裁者ユーリ・クーロの有能な軍人か………。柄じゃないし、趣味じゃない。」

肩を竦めながら笑うと彼も失笑した。

「ですな。彼は本気で嫌がる。そもそもその道をその才覚で潰してきそうだ。」

「シェーンコップ准将。その考え、誰かに言ったことは?」

「無論ありません。貴方のことも、彼のこともね。」

「それは結構。」

全くシェーンコップ准将はろくでもない事ばかり考える。まあ心の内に秘めることができるからいいが………。

 

 

 

 

宇宙暦797年 旗艦アトラス カーテローゼ・フォン・クロイツェル

 

 

イゼルローン要塞との中間地点にあるネプティス、カッファーの鎮圧を終えると、返す刀でハイネセン攻略に取り掛かる。

その前に、ハイネセンから脱出してきたという男と閣下が会うことになった。

「ご無沙汰しております、閣下。」

「息災で何よりだ。」

「万年佐官をしております。」

「情報部では有能と評判だ。」

「素敵な噂ですな。他にもあるのでしょうか?」

閣下が不敵な笑みを浮かべ、煙に巻く。

「お前さん、自分がそんなに多くの良い噂が流れる男と思っているのか?」

自身の自己評価を考えたのか失笑し、閣下の返しに言葉を窮したバグダッシュ中佐が話題を変える提案をする。

「ハイネセンから第11艦隊13000隻が第1艦隊の迎撃に向かって来ております。そこには閣下のご両親が搭乗しております。恐らくは人質でしょう。」

「………そうか。」

艦橋が、そして分艦隊司令官とその司令部要員も押し黙った。何を言えばいいのか分かず、見守るしかないのだろう。しかし私は閣下の、そしてご家族の覚悟を知っている。

「苦情も文句も、恨み辛みもあの世で後日聞こう。全艦に通達、間もなく戦闘になる。戦闘準備を怠りなく進めるように。」

私は涙を堪え、敬礼する。全員が周りの様子を窺って、私の様子を見てから敬礼をした。

「グリーンヒルもルグランジュも甘いな。俺の親を人質にするくらいなら司令部要員、艦隊乗組員の家族も人質にするくらいの残虐さがあってもいい所を、情や常識、理性など自分が極力悪人になりたくない心理が働いている。私はその甘さに付け込ませてもらう。バグダッシュ、例の仕込みは上手く行っているだろうな?」

人質の件で艦橋の全てが凍りついた。そうか、ここにいる人達にも大切な人がいる。それが人質として盾にされる恐れもあるのか。そしてそれを行わなかった敵の甘さを嗤う閣下に心身の深部まで冷やされた。

「勿論です。閣下の深謀遠慮に皆が恐れ慄くでしょう。」

「なら結構。自身の思慮のなさを自身の命で清算するといい。」

自分の作戦が恙無く進行しているのを笑う彼を怖いと思った。自分の両親の死も冷たい机上の計算に入れている軍人としてのクーロ大元帥を。

 

 

 

 

 

宇宙暦797年 旗艦アトラス ユーリ・クーロ

 

 

第11艦隊が眼前に陣形を敷いて待機している。あちらは13000隻、此方は15000隻。潰し合いなら問題なく勝てる。

だがそんな事をしたら、ただでさえ少ない戦力を減らす事になる。そんな馬鹿な事をする気もサラサラない。戦闘速度で前進している艦隊。もうすぐイエローゾーンに入る。

そろそろ始めるか。

「全周波放送を。」

「ハッ!」

すぐに準備が整えられる。立ち上がり語気を荒く話始めた。

「今私は身体が震えている。怒りからだ!私が軍のトップに立って以来、軍、政府、民間問わず、不正、不義を正し、改革を行なってきた。帝国領侵攻作戦の失敗によって実戦戦力は実に3分の1になり、これを立て直すのは困難を極めた。いつ帝国軍がイゼルローン要塞を攻略し、同盟領に攻め入るか時間の勝負であった。再編や組織のスリム化を行い、捻出した費用、部隊を振り分け、再構築し、これからという時に馬鹿な事をする馬鹿がいる。しかもその主犯があのバカげた被害を齎した遠征の総参謀長というではないか!自身の行いに反省もなく、罪の意識もない犯罪者まがいの輩が私の道を妨害するなど、はらわたが煮えくり返る思いだ!これは最初で最後の勧告だ。降伏し、軍に帰参せよ。今降伏するなら寛大な処置を約束しよう。正道を征く私に従え!」

長い演説を終え、指揮官席にドサリと勢いよく座る。すると敵艦隊の中央の副司令官、両翼の分艦隊司令官から通信が入った。

『小官、並びに麾下の艦隊は降伏し、軍に帰参する。どうか部下には寛大な処分をお願いする。』

そう返信があり、艦隊が移動し、戦線を離れていく。するとルグランジュの直卒艦隊からも離脱艦が出始めた。

残ったのは3000隻程もいない。2000隻を越えるぐらいか。そんな敵艦隊の様子を呆然と見ているカリンに答えを教える。

「あの副司令官、分艦隊司令官は私の調略を前々から受けていた私のシンパだよ。」

内情を教えると驚いた顔をする。そんな所にまで手を伸ばしていたのに驚いたのだろう。

「っ!?ではあの結果になるのは必然と?」

「そうだ。そもそもあの艦隊の編成は途中まで私が担当していた。艦隊司令官がルグランジュに決まってから細かい事は彼がやったのだろうが司令官を代えなかったようだな。遠征後に私から今回のクーデターの時の決め事まで相談してあったのに気付かず、クーデター計画を相談したのだろう馬鹿な奴だ。」

「……………。最初からこの結果を作り出していらっしゃったのですか?」

「そのとおりだ。私は最初から“圧倒的に勝つ”、その算段をつけてからハイネセンを第11艦隊とクブルスリーの艦隊だけにした。離反組とクブルスリーの艦隊で第11艦隊並びにルグランジュを制圧し、返す刀で電撃的に地上部隊を制圧。数日でハイネセンを救国軍事会議から解放する手筈だったが、誰とは言わんが、あの間抜けのせいで最短の計画から狂ったよ。」

「「「「「……………。」」」」」

どこまでも行っても私の計画から外れることはない。

私の計算を上回る知者がいないのは参加するであろうバカを予想した時に分かっていた。情報部長ブロンズ大将、元総参謀長で大将だったグリーンヒル少将、前宇宙艦隊司令長官ロボス、ルグランジュ中将、他の将官、佐官。ハイネセンでの大捕物で逮捕、軍籍剥奪をされた何人かの将官、佐官。どれも取るに足らない小物だ。

もう間もなくイエローゾーンからレッドゾーンに入る。そうなったら残存している小勢を蹴散らして、一気にハイネセン攻略だ。グリーンヒルや救国軍事会議が動揺している間に、一気呵成に鎮圧する。その時、通信が入ったと報告があった。

「閣下!ルグランジュ中将より通信です!」

「スクリーンに映せ。」

命じると直ぐに大画面スクリーンに映った。目が赤く充血し、顔を怒りと畏怖で強張らせ、青くなっている。そして画面の端に両親が映っている。父は覚悟が定まっているのか平静な表情をしているが、母は顔が青くなっているし、身体が震えている。

「なんの用かな、ルグランジュ中将?」

「この勝負、私の負けのようだ。あの者たちは貴官の意を受けていたのだろう。それに気付かなかった私の不明だ。」

「そうだな。で、どうする?降伏するか?貴様は首謀者の一味だ。軍籍の剥奪だけで済ましてやろう。敗者は潔くするんだな。」

「艦隊司令官として降伏勧告を受諾する。しかし私達は崇高な目的で立ったのだ!それを貴方にも理解し、共に立って欲しかった。それが叶わなくなった今、自身の幕は自身で引くことにする。」

「そうか。なら好きにするがいい。私はお前の行動を止める気ない。で、そこにいる私の両親はどうなる?」

「古今無双の名将に挑み、笑われるような結末を迎えた愚将として歴史に名を残すなら、ここでさらなる悪虐なる誹りを歴史に刻もう。」

スッと後ろを振り向くと、胸から取り出した銃で母、父と順に撃ち殺した。艦橋から悲鳴と“止めろ!”という制止の声、崩れ落ちた2人を見た事による悲鳴と怒声、罵声が飛ぶ。

「救国軍事会議、万歳!!」

銃をこめかみに押し当て、そう叫びながら引き金を引いた。鮮血が風穴から噴き出しながら、崩れ落ちて画面から消えた。

そして数秒後に旗艦が大爆発を起こし、沈没した。

皆が私を気遣うような視線を向けてくるのが分かっていても煩わしい。父は死ぬ覚悟をしていた。母も死にたくないと思っていたが息子の立場、そしてハイネセンに残るという選択は万が一の事も伝えていた。なのに残った結果によるものだ。

「これよりバーラト星域首都星ハイネセンへ向かう!恐らくは数日中に11艦隊が敗れたことを知るだろう。敵の動揺冷めやらぬ中、電撃戦で一挙にハイネセンを攻略する。全艦に通達、全艦全速!」

「「「「「ハッ!!」」」」」

私が命令を出すと直ぐに動き出した。訓練の賜物だな。

「参謀長、30分席を外す。少し任せていいか?」

「承知しました。指揮をお預かりします!」

「頼んだ。」

艦橋を出て自室に戻る。部屋に入り、冷凍庫から氷を取り出し、3つのグラスに氷を入れ、2つのグラスにワンフィンガー分のウィスキーを入れる。

残りのグラスには半分程入れた。席に座り、大きく深く息を吐いた。分かっていたが心にズンと来るものがあるな。カラリと氷とグラスが当たり、音を立てた。ウィスキーを口に含み、味わう。父と初めてサシで飲みに行った時に飲んで以来、愛飲している酒なのに、今は全く美味く感じない。

両親との様々な思い出や最後の会話、今振り返ると忙しかったはずなのに色々としてくれていたんだと思う。カリンが時間を過ぎても戻ってこない私を心配して呼びに来るまで思い返していた。




次の話は帝国の叛乱にしようかな?どうなるか、どうしようか考え中です。

更新予定はアオのハコを2話程書いてから、SEEDの予定です。

銀英伝を読んでくれている方に申し訳ないのですが暫くお待ちください。
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