夢の旅人は仮想に生きる   作:窓風

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ロスト・ソングのCGを集めきったので、今はホロウ・リアリゼーションをプレイ中です。個人的にはこっちのシステムの方がやりやすい。添い寝も出来るしね!

そしてアスナより先にフィリアが好感度ランク5になりました。


EPISODE37 魔狼再臨

 

 

 

 

 

ウンディーネ領はその多くが湿地帯で、内地へ向かうほど深い森が続いている。その中に、地中に埋められた小瓶があった。中には蒼と白のグラデーションがかかった1本の毛が入っている。

 

そこに、さらに地中深くから蒼い塊が飛んできて小瓶と衝突。瞬間、幾重もの魔法陣が縦に広がり、バチバチと激しく明滅し一際強烈な光を放つと、そこに巨大な狼が顕現した。

 

蒼白い毛並みに鋭い眼光、強靭な躯体。『悪評高き狼(フローズヴィトニル)』の名を持つ蒼銀の魔狼は、遠くに見える世界樹を睨む。

 

遠吠えをしたかと思うと、その足元に2匹の大狼が召喚された。太陽を喰らう運命をもつ炎狼スコルと、月を喰らう運命をもつ氷狼ハティ。その2匹を従え、3匹揃って一際大きな遠吠えをしたところで、ALO全土にアナウンスが響き渡った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

リズのクエストは特定のアイテムを探してNPCに渡すお使いクエストだった。探すアイテムは6つあり、主にアスナとリーファの知識のおかげでここ7日間をかけてすべて探し出した。

 

なぜこんなに苦戦しているのかというと、ヒントの言い回しがまぁ難しく、さらにアイテムはアルヴヘイム各地に散らばっているからだ。「これを1人でやるのはしんど過ぎるわよ!」とはリズベット談。

 

そしてついに6つ目となるアイテムを見つけ、依頼主の元へ来たところだ。依頼主はインプ領にある洞穴に住むドワーフだった。インプ領は高山地帯で街のほとんどは山の中にあるため、ドワーフのNPCもチラホラ見かける。

 

「おぉ、素材を見つけてきてくれたか。ありがとう妖精よ。よぉしお前ら!大急ぎの仕事が入ったぞ!全員取り掛かれ!」

「「「オオ!!」」」

 

カンテラに照らされながら話すドワーフの親方はリズからアイテムを受け取ると、威勢の良い通る声で工房にいる他のドワーフに通達する。それを受けたドワーフが各々の作業の手を止めて一斉に一つのテーブルに集まりだした。

 

「さて妖精。これはほんの気持ちだが、持っていってくれ。なに、ウチには有り余ってるんでな。ガッハッハ!」

「ありがとうございます!」

 

親方がリズにアイテムを渡すと、クエストクリアのファンファーレが鳴り響く。

 

「みんなありがとう!めっちゃいいインゴットもらっちゃったわ!」

「よかったねリズ!」

「1週間かけたからクエストクリアの快感も段違いだわ!くぅ〜!」

「ケットシー領にサラマンダー領、果てはノーム領にまで行ったからな。いやぁ大変だった。」

 

1週間かけてクエストをクリアした爽快感を得られるのはまさにVRMMOの強みだな、としみじみ思っていると、ドワーフ達が集まって何やら作業をしている様子を見るリーファに気がついた。

 

「どうしたリーファ。何か気になることでもあったか?」

「キリト君。うん、ちょっとね。リズさんが渡したアイテム、どこか聞き覚えがあって……」

 

親方に頼まれて探したアイテムは『猫の足音』『女の髭』『山の根』『魚の息』『熊の腱』『鳥の唾液』と聞き馴染みのないものばかりだった。

 

「まぁ意味ありげな名前のアイテムだったよな。俺は全然ピンと来てないから、北欧神話関連のものなのか?」

「その可能性はあると思う。えっとぉ……なんだったっけな〜〜?」

「まぁまぁ、小難しいことはアスナかソーマにでも任せとけばいいのよ!」

「ちょっとリズー!」

 

本人の知らないところで面倒なことに巻き込まれる友に合掌すると、ALO全土に響くアナウンスのチャイムが流れ始めた。その内容は、緊急メンテなのか?と思った俺たちの予想を遥かに越えてきた。

 

『緊急レイドバトルが発生しました。レイドボス:フローズヴィトニル及びスコル、ハティを撃退し、世界樹を守護してください。』

 

「今のは一体……?」

「リーファちゃん、突発のレイドボスって旧ALOであった?」

「いいえ、ありませんでした。ただ運営がユーミルに変わったので、新しいことをしようとしてるのかなとは思うんですけど。」

「パパ、イベントの詳細が告知されました。」

 

愛娘の言葉通り、運営からのメッセージでレイドイベントの詳細が送られてきた。内容はMMOでよくある時間制限があるタイプで、期限は今日の23:59まで。お試しということなのか、今日限定のようだ。期間限定のイベントであれば参加しない手はない。

 

「まさかとは思うけど、ソーマ達が変なクエストを起動させたとかじゃないわよね?」

 

リズの言葉に、別行動をとっている班の動向がふと気になる。あっちは内地でプレイヤーを襲う謎の影を調査することになっている。

 

パーティリーダーであろうソーマに、こちらのクエストが終わったこととレイドイベントに参加するかどうか確認のメッセージを送信する。するとちょうど向こうも手が空いてるのか、すぐに返事が返ってきた。しかしその内容はいつものソーマらしくない短い文章だった。

 

「『クエストクリア了解。レイドについて少し話があるから部屋集合で頼む』……何か急いでるのか?」

「ソーマ君から?」

「あぁ。文面からして無関係じゃなさそうだけど。」

「えっ、アレ冗談だったんだけど本当?」

「言霊ってあるんですねぇ。」

 

リズの冗談が的中した可能性も否めないため、俺たちはひとまずイグドラシル・シティに戻ることにした。

 

工房を出てモンスターの出ない洞窟を10分ほど走って外に出ると、ALO時間では夜中のため陽はすっかり落ちていた。世界樹を目指しながら内地を囲む山脈を越えるために充分な高さまで上昇する。

 

「お、お兄ちゃん、アレ見て!」

「で、でかい……!」

 

自身をアバターネームではなく兄と呼ぶリーファの指さす方を見る。方角はインプ領から北、おそらくウンディーネ領にあたる場所に、巨大な動物の影が浮かんでいた。今は夜かつ場所が遠いためはっきりと視認できないが、巨大なナニカが出現していた。犬……いや、狼にも見えるナニカに嫌な予感を感じつつ、速度を上げるのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

冷や汗が止まらない。先ほどのアナウンスは、普通のプレイヤーからすればただのゲリライベントにしか思わないだろう。しかし俺たち……いや、俺にとっては違う。タイミングがあまりにも良すぎる。

 

「今のアナウンスって……」

「まさか……」

「……かなり、まずいかもしれん。」

 

武器を納めて移動速度上昇の魔法を唱えると、HPの上に黄色い足のマークが付与される。フィリア達にも同様のバフがかかったことを確認し、最後に周囲の様子を伺った。

 

「多分、もうここに用はない。クエストが終わってないのなら、次のステージはおそらく()だ。詳しいことは戻りながら話すから、全速力で走ろう。」

「わ、わかった。」

 

なるべく落ち着いて要点を伝えると、3人とも快く承諾してくれた。

 

一刻を争うため、帰路は可能な限り戦闘は控える方向へシフト。トレインになりそうなら、スタンや暗闇(ブラインド)をかけてモンスターの足を止めて追われないように処理しつつ、最短ルートで来た道を戻る。

 

「さっきロキは、『あとは息子に任せる』って言った。北欧神話では、ロキの子供は3人いるとされる。冥界ヘルヘイムの主『ヘル』、世界蛇『ヨルムンガンド』、そして魔狼『フェンリル』。俺から抜き取った狼の因子とやらを触媒に、そのフェンリルを喚んだ可能性が高い。」

「フェンリルならあたしも名前くらいなら知ってるけど、アナウンスだとフローズ…なんとかだったよね。」

「俺も北欧神話にそこまで詳しいわけじゃないからなんとも言えないけど、多分フェンリルの別の名前だと思う。」

「じゃあ早くしないと、そのフェンリルが世界樹を壊しちゃうってことですか?」

「フェンリル関連の元ネタにその話があったか覚えてないけど、少なくとも今はそういうことになるな。」

「でも、ただのクエストにしては話が壮大というか、大袈裟というか……」

 

フィリアの言う通りだ。SAOでも何層にも渡って展開されるキャンペーンクエストはあったが、アナウンス通りに受け取れば今回のは世界の命運そのものが懸かっている。

 

ここでメッセージが届く。どうやらキリトたちがリズのクエストをクリアしたタイミングで、レイドの告知が来たようだ。生粋のゲーマーであるキリトなら当然参加するだろうが、その前にこちらの状況を説明したい。手短な文章を打って即返信すると、ストレアの表情が暗いことに気付いた。

 

「ストレア?」

「ううん、あたしは大丈夫。ただ気になることがあって。」

「アナウンスのあったレイドイベントのこと?」

「うん。でももう少し自分の中で整理したいかも。」

 

ユイちゃんと同じサーチ力を持つストレアのことだから、もしかしたら何かシステム的なものがあるかもしれない。本人も少し時間が欲しいらしい。

 

「おっけ。キリト達はクエストが終わったらしいから、一旦部屋で説明するタイミングでもよければ一緒に話してくれ。」

「わかった。」

 

それからすぐに階段ダンジョンに着き、後ろの3人の様子を見つつそのままノンストップでダンジョンを駆け上がる。適宜休憩と移動速度上昇バフをかけ直しつつ1時間というハイペースで昇りきると、リアルタイムだと15時を過ぎたくらいだが、アルヴヘイムは夜中になっていた。ヨツンヘイムへ降りるダンジョンは内地にあるため、地上に出てしまえばあとは世界樹に一直線に飛べばいい。

 

「み、みなさん!あれを見てください!」

 

マイルームがあるイグドラシル・シティへ行くために上昇しながらある程度飛んだところで、シリカが何かに気づいた。シリカの指は進行方向から左に向けられていた。飛行をやめずに視線だけその方向を見ると、アルンから見て東-ウンディーネ領方面-の『虹の谷』の谷間から、巨大なシルエットが出現していた。遠くてハッキリと視認できないが、あの形は間違いなく狼のものだった。

 

想像以上の大きさに絶句してしまうが、一旦キリト達と合流して事情を説明するのが最優先だ。唖然とする3人にも声をかけ、再び世界樹に向かって飛行を再開した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

イグドラシル・シティの部屋に戻って装備を元に戻したのと、キリト達が合流したのはほぼ同時だった。そしてキリアスの部屋を借りて、旧ALOでのクエストから今回の影騒動、レイド発生までの流れを説明した。

 

「強制ステータスダウンに、解除と同時にレイド発生か。かなり特殊なクエストだな。」

「ていうか旧ALOにいたとか、色々初耳情報があって困惑しているわ。」

「大丈夫、あたし達もそうだったから。」

 

リズのコメントにすまんと答えると、ユイちゃんと情報を共有して思考の整理ができたのか、ストレアが前に出てきた。

 

「ごめん、まだ100%の確証があるわけじゃないんだけど、ユイと(共有)してある程度まとまったから、少し話していいかな?」

 

頷くと、ストレアは続けた。

 

「このアルヴヘイム・オンラインは、他のザ・シード規格のVRMMOとは大きく違う点があるの。それは、ゲームを動かしているカーディナルシステムが旧ソードアート・オンラインと同じフルスペック版の複製ということ。」

 

そういえば、見舞いに来てくれたキリトがそんなことを言っていた気がする。

 

ストレアに続くように、今度はユイちゃんが説明をしてくれた。

 

「本来のカーディナルシステムには、シュリンク版にない機能が幾つかありました。その一つが『クエスト自動生成機能』です。ネットワークを介して世界各地の伝説や伝承を収集して、その固有名詞やストーリー・パターンを利用・翻案してクエストを無限に作り続ける機能です。」

「……なるほど。かなりの種類のクエストがあると思ったけど、そういうことだったか。」

「じゃあ、今回のレイドもそのシステムが作ったってこと?」

「ロキというNPCの挙動から推察すると、その可能性が高いです。」

 

SAOで散々振り回されたクエスト達が全て自動生成だったと思うと、改めて-厳密には違うのだろうが-茅場に「スゲェ(キモい)なあんた」と言いたくなる。がしかし、そんな話をしている場合ではない。

 

「クエスト自動生成云々はわかった。じゃあなんでわざわざ『世界樹を守れ』なんて言ったんだ?リミットとしては非常にわかりやすいけど。」

 

俺の言葉にアスナとリーファも頷く。あのアナウンスで一番気になったのは、最後の一文だった。

 

「私達がアーカイブしているデータベースによれば、ALOの原形である北欧神話にはいわゆる『最終戦争』も含まれるのです。今回のレイドイベントは直接的な関係はなさそうですが……」

神々の黄昏(ラグナロク)……」

 

北欧神話をよく知らない人でも聞いたことのあるかもしれない大戦争『ラグナロク』。神も巨人もその他生物も、そのほとんどが死に絶える世界の終焉。それは当然大地が荒れ果てることも意味している。

 

「でも、いくらなんでもシステムが自分のマップを崩壊させるようなことなんて、できるはずが……」

「……ううん、オリジナルのカーディナルシステムには、ワールドマップを破壊する権限があった。だって旧カーディナルの最後の任務は、浮遊城アインクラッドを崩壊させることだったんだから。」

 

リーファの言うことも尤もだが、それに答えたストレアの言葉に納得してしまう。茅場と会ったあの時、俺とキリト、アスナはその光景を実際に見ていたから。

 

「…………そんなことさせるか。」

 

元はといえば俺が起動したクエストでここまでの事態になったのだ。だったらその責任を果たすべきだろう。

 

「ストレア。このレイドはラグナロクに直接的な関係はないって言ったよな?」

「う、うん。」

「なら簡単だ。時間までにレイドボスを倒せばいい。ド平日だけど、夜になればクライン達社会人プレイヤーも入ってくるから、人手と火力は申し分ないはずだ。」

 

椅子から立ち上がり、ストレアの隣に立つ。

 

「このレイドは俺が蒔いた種みたいなもんだ。だから俺は最後まで責任を持って向き合う。巻き込んだ形になっちゃったけど、みんなの手を貸してくれないか。」

 

深々と頭を下げる。正直「もう付き合ってられない」と誰かしらは言うかもしれないと覚悟していた。

 

「当たり前だ。」

 

しかし、そんなことはなかった。

 

「今更何言ってるのよ、あたしらの仲じゃない。」

「そうですよ!」

 

キリトを筆頭にみんな快く引き受けてくれた。そうだ。今までの付き合いは、こんなことで簡単に切れるものではなかったのだ。

 

「みんな、ありがとう。」

「よし、じゃあ俺達もレイドボスに挑戦するぞ!」

「「「おお!」」」

 

キリトの号令を皮切りに、各々イベントバナーからレイド参加のボタンをタップする。俺も同様にすると、視界右上部分に、レイドボスのHPが現れた。

 

大ボスの『フローズヴィトニル』はほぼ満タンで、中ボスの『炎狼スコル』と『氷狼ハティ』は残り6割ほどになっていた。平日の夕方でこれだけ減っているのなら、余裕を持って倒せそうだ。

 

「よし、じゃあすぐ準備して俺達も行こう!」

「「「おー!」」」

 

キリトの号令により各々武器を装備し直して部屋を出ていく。よし、と意気込むと、新しいポップウィンドウが出てきた。追加情報か?と思い内容を読んでみる。

 

「…………は?」

「どうしたの?」

「い、いやなんでもない。」

「……そう?じゃあ行こ?」

「おう。」

 

書いてあった文章に絶句すると、それに気づいたフィリアに聞かれてしまう。なんとか平静を保って答えて、そそくさと部屋を出る。

 

(嘘……だよな?)

 

胸の奥に妙なしこりを抱えたまま、俺達はウンディーネ領に向かった。

 

 

「…………嘘つき。」

 

 




そして29巻を読む。挿絵だけチラッと見たけど、どうなることやら……
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