メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
「何だったんだアレ」
『あれはねぇ、アランカル!』
突如現れた敵、アランカル。黒崎一護や平子達と同じ仮面を被った特別な虚。
「……ハク様、虚の仮面を剥がしたら破面になるんだよな?」
『え、うん』
「俺は?平子は?一体どういう事だ?」
『スー……ッ、ちょっとお伺いを立てるので少々お待ちください』
隠れてブツブツ唱えだすハク様、どうやら重要なワードを隠される事を前提に伝えやすいように手直しを入れているようだ。
『はい、どうやら許可が出たのでお伝えします。崩玉を使って虚と死神の境界を壊したようですね』
「そもそも境界ってなんだよ、別物じゃねぇのか」
『人間だって虚になったり、死神になったりするでしょ?方向性の違いだよ』
「俺は?」
『例外です』
「――――ハク様、結局本当の事って何なんだ」
『皆が隠したいって事を暴く事に躊躇いがないなら教えてやるよ』
「俺は、迷わずに戦いたい。俺は、自分に目を背けたままでこの先やっていけるような人間じゃねぇんだ」
『本当に後悔しないか?』
「例えどんな事実であっても、引きずっていく」
『カッコイイー!!じゃあ話を整理しやすくする為のヒントをあげちゃう!!』
『それはね――――』
平子真子らが潜む廃工場にて黒崎一護はいつも通りに叫んでいた。
「俺に要らない事を吹き込んでくる連中がさぁ!言ってることがさぁ!全部違うんだけどぉ!!!!」
「知らんわボケ!こっちは何も知らされるに巻き込まれとるんやぞ!?」
「うるせえ!俺の憂さ晴らしに付き合え!!!」
「なんやこの業突く張り!?」
その地下に密かに作られた秘密の特訓所にて黒崎一護は平子真子と特訓中。
ただし―――ハク様及び穿月は壁に寂しく立掛けたまま置いたままだった。
「天鎖斬月が―――体が重い!」
「ガス欠が早すぎるんじゃボケ!そんなんで何回続くかも分からん戦場でお守なんぞ御免や!」
黒崎一護はハク様と共にずっと戦ってきた、しかしそれは常にハク様と仲間たちに助けられてきたという事だ。
黒崎一護が手に入れた強力な力、卍解――卍解ではない――は白鞘穿月とのセットで漸く運用が叶ったと言う体たらく。
「疲れるのはなぁ!余計な力みが多すぎるんや!ぶっちゃけお前の一撃受けたら大抵の敵は消し飛ぶわ!」
「当たらなきゃ―――「意味もないんじゃド阿呆が!!」
飛び蹴りが黒崎一護の体に突き刺さる、衝撃が背中を飛び出しながら一護を地面に叩きつけた。
駄目だ、黒崎一護は強いのに勝てない。黒崎一護は速いのに届かない。
意識が微かに遠のき、空いた隙間から己の内の声が響いて来る。
『ハイハイハイ!次俺やる!俺が全員ぶっ殺す!!!』
何か自分の世界の中でも大乱闘が行われているようだが、こんな奴に自分の体を貸すわけにはいかない。
「……何で力んどるのか、分かってへんのか?」
「分かる、俺の中の力を抑える為だ」
「だったら解放すればええやろ、お前がどんだけ暴れようとハッチがなんとかするわ!!」
「私がやるんデスネ…」
「……俺の力で勝ちてぇんだ」
「はぁ!?やっぱりお前アホやろ!女にモテよう思って突然髪をオレンジ色に染めて来る奴くらいアホや!!」
「これは地毛だ馬鹿が!!!」
追撃の振り下ろしを腕力で振られた斬魄刀で弾いて飛びぬける、息を抜いても体のリズムが狂ったままだ。
「癖は殺すもんじゃない、癖は活かすもんや。車のブレーキ踏んだままアクセル踏むんか?アホやろそれは」
「ええか?お前の力は、卍解は虚の性質に近い力。故にその状態を続けていると虚を呼び覚ましやすくする」
「それを抑えながら戦うのは無理や、それとも何か?ハク様おらんと何も出来へんのかオノレは!」
「……そんなわけねぇだろ」
黒崎一護の天鎖斬月から黒い霊圧が漏れ出していく、破壊の衝動を伴うかのような暴の力。
「俺と虚との序列はとっくにケリがついてるんだよ、だけど俺が本気出すには時間がかかるってだけだ。大体、これは刀剣解放、俺の卍解はまだ見せてねぇよ」
「……あ?」
天鎖斬月の力は姿と性質を変え、アランカルの真の力を解放する刀剣解放。
一方で斬月そのものの真なる姿は未だに見せていない。
「何でここに来たのか言ってなかったか?――――憂さ晴らしに来たんだよ!!」
立掛けていた穿月が一人でに飛んで天鎖斬月をその身に収める。
ハク様は黒崎一護の一部、その力を束ねて己の真価を発揮する。
黒崎一護は特異な存在だ、そもそも仮面の軍勢が卍解を使わずとも破面の力を引き出せるのに一護は卍解を介して性質を虚に近づけなければ破面の力を引き出せない。
そして刀剣解放と共通の性質を持つ卍解も己の性質に引っ張られて全力を出すためには抑えとなっている滅却師の性質を抑えなければならない。
噛み合っているようで噛み合わず、故にバランスを乱す事はない歪んだ三竦みのバランス。
身体の力みが抜けないのも、卍解としての全力が遅いのも己の中でのバランス調整が上手くいっていない為。
そもそも自身に滅却師の血が流れているとは知らないのだから当然のことだ。
「虚の力が何だとガタガタ言ってたが、俺には―――」
黒崎一護が盈月を肩に掛け、その左手を顔に被せる。
「虚以上に怖い人が棲んでんだよ」
黒崎一護の仮面に、紅が流れる。眼窩から溢れる様に、頭蓋から零れるかのように。
「……孝行な息子を持って、母は幸せ」
「……急に何、女言葉になっとんねんキショイわ」
「平子五番隊長」
「あ?」
自分達が尸魂界の元隊長格だったとは言っていない、察せられたとして元々所属していた隊まで知らされている筈もない。
何故、知っている。何故、突然突き付けて来た。
「アナタとは、終ぞ刃を交わす事もありませんでした」
「さっきまでやってたやろ!?」
「いえ、コレが初めて―――何時もは治してばかりでしたから」
「は?」
「斬って見たかったのです、一度くらいは」
「は?」
自分の所属を知っていて回復の鬼道を使える者、幾つか候補に挙がるもここまで命を狙われる覚えはない。
しかし放たれる殺気は黒崎一護ではありえないもの、それに晒されて己の生命が斬魄刀を解放する。
「成程、感覚操作ですか」
「ああ、クラクラするやろ?」
「……?見ないで全方位攻撃すればいいのでは?」
「アカン!こいつ嫌い!!?」
「
「ぎゃあああああああああああ!!!!?」
卍解に加えて虚化、その有り余る霊圧から放たれる花火が平子を吹き飛ばした。
「……あれ?平子もアランカルの十刃?も倒せたし案外いけるんじゃね?」
『一護鬼つええ!このまま逆らうやつら全員ブッ殺していこうぜ!!!』
「一護、久しぶりね」
「……ああ、久しぶり」
「私が知っていた時より、大きくなってるなんて。ビックリしたわ」
「……そう、だよな」
黒崎真咲と黒崎一護の邂逅、親子の再会、予想だにしていない展開。
「……聞きたい事があるのね」
「……一個だけ、聞きたいんだ」
「あんたは、一体誰なんだ?」
誤字報告、とても感謝しております。
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