やっぱり霊長は難しい。
でもどうにか格好を取り繕って、歩んでいく。
裏側からなんとか支えてもらって、ようやくだけれど。
言葉にしてみて、ようやく形が定まり出した気がする。我ながらなんて呑気なんだろうな、まったく。
隣で寝ている花恋に聞こえないように、私はベッドの中で小さく嘆息する。
私は大喜くんを――どう思っているんだろうか、それさえまだわからない。ああ、どうしてこうも頭が悪いんだろうな。こんなフワフワした話を聞かされて、よくもまあ笑わないでくれたもんだ。
でも誰かに話せて良かった、とも思う。無い頭を捻って悩んでも、気持ちが重くなるだけだから。こういう時は
にしても、今日こうして打ち明けられたのは良いことだ。
明後日からはまた、猪股家での生活が始まるんだから。
大喜くんを好きなのか、と聞かれれば好きだと思う。でもそれはまだ恋愛とかそういうんじゃない、……と思う。いつも頑張って挑んでいる、その真っ直ぐな姿は好感が持てる。笠原くんが言うには私の影響らしいけど、そんな事はないだろう。あれは本人の意思、そして内にある信念の賜物だ。私なんかがそれを動かせるわけがない。
同じ家に寝起きするようになって半年、部活以外にも大喜くんの色々な面を知った。
それは必ずしも良いことばかりではないけれど、でもそれを引っ括めてもなお私は大喜くんが――
同居が始まったばかりの頃は、大喜くんと蝶野さんの仲に遠慮して猪股家を出ることを考えた。でも少しして蝶野さんの気持ちに気付いた時、それでも私は「申し訳ないけどバスケの為だから」と居座る決意をしていた。そして蝶野さんが大喜くんに告白したと知った時、私は……少しだけホッとしたのだ。
ああ、この二人はまだ付き合っていないんだ。そう確信できたから。
とは言えこのまま行けば、そうなるかもしれない。花恋も言っていたけど、迷っている間に取られてしまってもおかしくはないんだ。
でも、だ。こんな半端な気持ちのままで、蝶野さんを押し退けるような事が出来るのだろうか。
「特別なカンケイ」になれるのは、一人だけ。私が大喜くんをこのまま「恋愛的に好き」な状態になって、それを彼が受け入れたとして。そうなれば蝶野さんの気持ちはどうなってしまうのか、そう考えると……。
ああ、どうしようかな。
こんな風に悩んでしまうのは、私が――
気になって付き合って、でもなんだか違ったからバイバイ。さて次は誰を好きになろうかな、みたいな。ああなりたいとまでは思わないけど、前向きに誰かを好きになれるというのは悪いことじゃない。……多分そうなんだろう、うん。きっと……いやー……、えっと……どう……かな。
でも私が花を咲かすまで待っているのとは違って、種を蒔いた時点でもう「好き」と言ってしまえる。勇気があって行動力もある、恋愛と真っ直ぐ向かい合う子。……もし菖蒲ちゃんみたいな子が大喜くんの側にいたら、気が気じゃないだろうな。下手をしたら一気に押し切られかねない、スピードが違いすぎる。
そう言えばあの子花恋と違って栄明生なんだっけ、ちょっとしくじったかも。学校で余計な気を効かせてきたりしたら不味いな、さすがに。まあ針生くんもいるから妙な事はしないだろうけど、うーん。
あれこれ考えながら、ただ時間は過ぎていく。
明後日の夜はまた、大喜くんの隣で眠るんだな。間に壁があるけどさ、うん。
でもこれまで通り、いつものように居られるんだろうか。一度気がついてしまった想いを、抑え込んでおけるかな。気まずいかもしれない、大丈夫かなこれから。
そして大喜くんも大喜くんで、蝶野さんと色々あったわけだ。いまだその本心が見えないまま、それでも話は動き続けている。
私も大喜くんも、少しずつ変わっていく。時間は止まらないし、戻りもしないから。
前途多難にして波高し、か。まったく、困ったものだ。
何度目かの息を吐いて、私は目を閉じる。どうにかなるさ、と胸の中で嘯きながら。