最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
前回はニーナが支部長のせいでソーマに捕まったところでしたね。
ヨハンさんにウキウキで会いに行ったら、ソーマがまさかの昨日時点じゃなくて一日遅れで会いに行っていたとは、このニーナの眼をもってしても見抜けなかった……って! 私既にほとんど盲目やないかーい!
冗談はさておき支部長室まで来た時にソーマが居るのは分かったから反転して彼が帰るの待とうかと思ったのに、ヨハンさんが廊下のカメラでも確認してるのか入れなんて言うからこういうことになるんですよ。
自分の息子とのバッドコミュニケーションの尻ぬぐいを他人に押し付けちゃダメじゃない? そういうとこですよヨハンさん。
……という冗談はさておきとして、何ならソーマに話していいかな。適当に誤魔化してもいいんだけど、嫌われたり愛想尽かされるのは避けたいところだよね。
まだソーマが把握してないところってなんだ? リンドウさんのことでしょ、アーク計画にシオの使い方と後は私の適合率に失明しかけの目のこと……くらいかな。今ソーマが気になってるのは私に関する部分だから適合率とか失明のこと話すと起きる問題は……無理やり引退させられそうな事くらいかな。大問題だけど。
リンドウさんにしれっと会いに生きづらくなるしね。この辺はフェンリルの慈善事業部の担当者脅せば代用可能かな。榊博士もこの辺はどうにかしないといけない問題だっていう自覚はあるだろうし、私がこっそり行くか、他の人間を行かせるかは今度協議がいるね。
適合率の上昇位は話してもいいかな。原因が感応現象ってことも話していいでしょ。でも失明はいったんいいかな。ユーバーセンスがある以上視えるし誤差みたいなもんだし。
考えがまとまったところでちょうど私の執務室に着いた。
ソーマは私の後ろを黙ってついてきてる。ちょっと怒ってそうな雰囲気があるのが年相応の男の子って感じで可愛いところかもしれない。言ったら怒られるから絶対言わないけど。
「珈琲でいい?」
「……お前と同じのでいい」
「じゃあ紅茶ね。貰いものだけど美味しいの入れてあげるからそっちで待ってて」
以前エリック君もといフォーゲルヴァイデ閥から親交の証、昔でいうところのお歳暮みたいな感じでもらった高級茶葉をソーマにも分けてあげよう。
香りが良いんだよね。落ち着く感じで気が抜けるけど。
お茶請けに消費期限が近いクラッカーをお皿に開けて紅茶と一緒に出してあげる。
にしても神機使いになる前は不景気で食卓からおかずが一品減ってひもじい思いをしていたのに、随分とこの世界基準では富裕層な暮らしが出来るようになったもんだよね。こんだけ働けば当然ではあるのかもしれないけど。
机を挟んでソーマの向かいになる形で席に着く。
「で、なんだっけ? 私の体調のことだっけ」
「ああ、お前が安静にする期間を設けるほどだ。何処に不調が出た」
不調が出たのはしいて言うなら目なわけだけど、コレは言えないしな……
「不調は出てないよ。どっちかっていうと過剰な成長っていう表現が正しいんじゃないかな」
「……少なくとも見てくれは何も変わってねぇように思うが」
「簡単に言うと神機と相性良すぎて適合率爆上げ的な感じ? ああでも定義上ではアラガミ化はしてないから安心していいよ。まだアリアも放って逝けるほど大きくなってないしね」
「……適合率は、どんだけ上がったんだ」
「歴代トップだって。あのリンドウさんより高いんだから相当じゃない? でも個人的にはラッキーとも思っててさ」
「ラッキーだ? あの人類の限界値とされていたリンドウを超えた適合率なんてのは正気の沙汰じゃねえ。何もイイことなんざねぇだろうが!」
ガンと、置かれた茶器が跳ねるような勢いで机をたたくソーマをどうどうとなだめる。頑丈とはいえ神機使いが本気で殴ったら壊れるんだから落ち着いてよね。
「ほら、ソーマとこれまでオソロイのモノとかなかったでしょ?
でも、コレで私も傍から見たら”ソッチ側”だから。ソーマと経緯は違っても同じ土俵に立てたからね。これからキミを一人の立場にしなくて済むなら、私からしたらラッキーなんだよ」
これはある意味でホント。もし私がアーク計画後も生きてるなら、私とソーマが生きる未来が許されるなら、おそらく現行人類の中で最も身体能力の高い化け物扱いされる可能性があるし、彼を一人には出来ないからね。
とはいえ、体内で偏食因子を生成できる機能があるソーマと違って、私はただの自己ルールに縛られた挙動をするオラクル細胞の塊みたいなものだから厳密には全然別物だけど……こうしてみるとソーマ以外私を筆頭とした神機使い全員のが化け物染みてるな?
アーク計画成功したら各ロケット内で神機使いの腕輪の封印措置徹底しないとマズイなこれ。支部長のことだから流石にそこはケア済みだと思うけど要確認だね。
私のそんな話を聞いたソーマが重々しく絞り出すように口を開いた。
「お前と俺じゃあ生まれが違うだろ」
「そうだねぇ。ある意味でソーマは新人類だね」
「お前のその気遣いは……嬉しくは思うが」
「重かった?」
眉尻を下げてそう言って見せれば、苦悩の表情を見せるソーマ。彼からすれば私には健やかに生きていてくれさえすればよかったのに、ってところかな。私がアリアを想うように、ソーマも私をそう想ってくれいるのなら上々……というか嬉しいけど。
「重いっていうかだな、俺がお前に付き合うのは好きでやってる。だが、お前が俺に付き合う必要はない。と、俺は思ってる」
「私を心配してくれるのは嬉しいよ?
けどまあ来るところまで来ちゃったワケだし。ここまで来たくて無理してたわけでもないから。
あくまでここまで来たことに反省はあっても後悔はないってだけだよ。だからあんまりこのことは気にしないでほしいかな」
「……なら、せめて現場にはもう出るなよ」
縋るような声色に思わず頭を撫でたくなるけど、机挟んでるおかげで踏みとどまれた。キュートアグレッション? ってやつがソーマにも適用されてるのかな。私に何かあると面白いくらい振り回されて、少しばかりの罪悪感と、それ以上の可愛さがある。
「榊博士も同じ意見らしくてさ、緊急時を除いて私が外に出ることは多分もうないよ。
いきなり引退は混乱を招くからまずは有給消化からだって。
私としては検査を超しっかりやって安全かなって分かったら現場復帰したいけどね。
……ほら、みんな私より弱いし?」
「ぬかせ。自分のオラクル細胞制御が怪しい奴よりはマシだ。俺は勿論、他の奴らもな」
「アハハ! 面白いこと言うねソーマ。じゃあ約束ね? 私が復帰するまで、第一部隊とエリック君位は全員死なないでよね。
この調子じゃディアウス・ピター討伐の時には現地待機も許可されないだろうから」
「当たり前だ。俺は死なねぇし他の奴も全員生きて帰す。だから、大人しく待ってろ」
「……はーい。その時はシオの調教でもして時間潰してるよ」
これ以上誰も死なせないとでも言いそうな、熱のある目でそう語るソーマに思わず拍手を送りそうになった。流石始まりのゴッドイーター。主人公は神薙ユウ君だとしても、やっぱりこの世界のタイトルロールはキミだね。
不器用で、口下手で研究職としてはまだまだだし、リーダーシップやカリスマも今は無いけど、それでも強靭で強烈な個としての強さがソーマにはある。
まあディアウス・ピターが翼刃を出してきたのは予想外だったけど、みんなに事前に伝えられてるしよほどのことが無ければ死ぬことは無いかな。ユウ君、ソーマ、コウタ君にサクヤさん、アリサちゃんのあんまりないけど5人編成すれば不意にも対応できるだろうしね。
エリック君には辺りの雑魚の掃討をしてもらうようにすれば事故率はさらに下がる。
エリック君は天才だから連携もそつなくとれるけど、私が個人として強くしすぎたのか単独である程度自由にやらせた方が性能が高そうだしね。
にしても、ソーマが本当に急にすごい成長しちゃった。出会った当初とはもう別人だね。私とエリック君以外とも積極的では無くても会話もちゃんとするし、何より1人になろうとしなくなった。ここまでくればシオに同族意識から傾倒することもないかな。
「ニーナ」
「ん~? まだ何か気になることがあった?」
「今はお前の心配をしていただけだから一旦は、いい。聞いてもどうせ他のことははぐらかされるだろうからな」
凄い信頼だな。正解だけども。ソーマの私に対する理解度が高すぎるでしょ。確かに絶対意地でも誤魔化すけどさ。
「だから、他のことを追求しない代わりに、ディアウス・ピター討伐して帰ってきたら、なんか作ってくれ。お前の作る飯は美味い」
「そんなことで良ければ、いくらでもやってあげるよ。食べたいものはある?」
「そうだな、肉がイイ」
「みんなと食べる?」
「お前がいるならどっちでもいい。材料の金がかかるようだったら俺が出すから後で額だけ教えてくれ」
「ひゅ~。太っ腹だね。わかった、じゃあその時居るみんなでパーティだね。前日位から食堂借りて用意しとくよ」
「楽しみにしてる」
ヨハンさんはたしかドイツ出身だったっけ。
てことは奥さんが亡くなられてから、フェンリル本部で今の地位まで成り上がるまではソーマもドイツとかヨーロッパ方面にいただろうから、向こう側の料理がイイよね。なんだっけ、なんか日曜日のご馳走みたいな意味の豚の酒煮? 酒焼き? みたいなのがあった気がする。あとでターミナルで調べてみるかな。
あれなら時間がかかって私としても都合がいいしね。
「にしてもソーマ。大分素直になったね? エリック君の影響かな。前までは楽しみしてるとか心配とか、思ってても言ってくれなかったのに」
「うるせぇ。……病み上がりに付き合わせて悪かったな。さっさと休めよ。アリアだって心配してたらしいからな」
ソーマを軽く揶揄おうとすれば逆にアリアの札で刺されちゃった。アリア出してくるのはずるいけど、実際問題絶対怒ってるんだよね……。どうやって機嫌取ろうかな。
「そうなんだよねぇ~、アリア帰ってきたら怒られちゃう。助けてくれない?」
「身から出た錆だ。甘んじて受け入れろ」
「あ、私のこと見捨てるんだ。遊びだったんだ。ひどーい」
「なワケなぇだろ。勝手に言ってろバカ女」
軽口と分かるように、棒読みでそんなことを言ってみれば一蹴されてしまった。まったくもってソーマのふてぶてしさに磨きがかかってお姉さんは嬉しいよ。
ソーマはひとしきり聞きたいことは聞いて満足したのか、立ち上がって部屋を出ていく。多分今日の任務の報告書とか書くのかな。
私の方でも食材の購入とか連絡とかやることは盛りだくさんだし、アリアが帰ってくるまでにメッセージだけでも投げとくかな。
「ええっと、医療班にお礼、慈悲供給の部署に物資選定の介入命令と榊博士との調整、支部長に面談願い、あとは各支部の神機使い達とのパイプ連絡に、エリック君から今持ってる業務の洗い出しさせて巻き取り……かな。取り急ぎは」
指折り数えてやることを振り返って、執務室ではなくアリアと暮らしてる部屋に帰る。
怒られるのは確定だけど、アリアの顔を見れると考えれば、無限に元気が出てきた。
アリア、早く学園から帰ってこないかな。
ソーマ君はニーナから聞き出すのをやめたみたい
みんなはハッピーエンド好きですか?
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ハピエン厨ですけど
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どっちでも美味しく食べれます
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いや、バッドエンドの曇り顔が輝くね