ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「遂に……来てしまった」
時、場所、あるいはその両方とも捉えられるセリフ。字面だけ見れば期待に満ち溢れているとも感じられるが、全くの真逆。嘆きから溢れた独り言だった。
「うんうん、遂に来たね!アルテミス!」
「胸が……踊る」
そんなオレとは対照的に、出場権獲得の功労者達は浮かれ切っている。そりゃ、普段から手当たり次第にバトルするようなヤツらがこんなお祭り嫌いなわけがない。
「お、あそこに一中と二中の集まり!」
「挨拶に……行くか」
制止する間もなくユウキとムツキが見覚えしかないヤツらに絡んでいった。
「三中抜きで睨み合いとは感心しないなぁ〜?」
「オマエら、まとめて……轢いてやる」
「桐生……と、いうことは」
「やっぱりテメェもいやがるか、都森!」
真っ先にユウキとムツキに絡まれた郷田と仙道が、二人と距離を置いていたオレを発見してしまう。ただでさえ後ろ向きな気分なのに、喧嘩まで売るのはやめてくれ。
「…………ここまで来てオマエらの面拝むとは思わなかったな」
「そりゃどういう意味だテメェ……!!」
「郷田はともかく、オレまで下に見るとは……その仏頂面、今日こそ歪ませてやるよ」
普通に驚いたと伝えたはずが、オマエらじゃ実力不足だと解釈されたらしい。何故オレがそんな遠回しに表現するようなヤツと思われてるのか。悪評か、悪評のせいなのか。
「お〜や〜、そんな大口叩いていいのかな〜?今回の都森くんは、なんと!!」
「鬼に……金棒……つまり、無敵」
オマエらも煽るなハードル上げるなバカ二人。
「……そういえば、オマエは出場権持ってたな。アングラビシダスで」
ここでふと目について思い出した。例の大会の優勝賞品がまさにこのアルテミスの出場権だった事に。バトルの記憶は鮮明に残っているが、報酬には無頓着だったので今の今まで忘れていた。
ならば、
「都森もアルテミスに出るなら、益々油断できないな……。でも、勝つのはオレだ!」
「大口叩いたな…………リベンジしてやるから首洗っとけ」
言い方は荒っぽいが、らしくなく頬は吊り上がっていただろう。LBXが好きで、バトルも強くて、張り合いのあるヤツ。同じ中学なら、間違いなく後輩として可愛がっただろう。そこまで思って、実際にオレの周りにいるメンツが浮かんできた。現実は非常である。
郷田、仙道、そして山野バンという強敵を前にして、後ろ向きながらも戦闘意欲は湧いてきた。
少し経って、派手な演出と共にアルテミスの開会式が行われる。優勝賞品のCPU『メタナスGX』がLBXでもないアンドロイドに組み込まれ、先程まで参加者の受付登録までしていたというサプライズもありながら、5つのブロックに分けてのトーナメント決めが行われていた。
「各国のチャンピオン級に留まらず、名の売れたLBXプレイヤーばかりと…………そりゃ優勝したら世界最強と言われるよな」
「だったら、その称号は今日から私たちのものだね!」
「オレ達、が……勝つ」
オレがただただ感心している横で双子は闘争心に満ち溢れていた。該当するチームをスポットライトで照らしながら、続々と1回戦のカードが決まっていく。残り半数前後といったところで、とうとうオレたちにスポットライトの光が当てられた。
『
(…………んっ?)
せ、せん……なんだって?仙道のチームならさっき呼ばれたが……あぁ、きっと呼び間違いか。穿影暴破なんてチーム聞いたことも見たこともないが、それはオレのアンテナが低いだけだ。世界規模の大会と言えど、こうした凡ミスはあるのだろう。
「へぇ〜、私たちAブロックかぁ」
「目ぼしい敵は……海道ジンに、レックスと郷田のチーム、か」
「おいウソだろ、オレたちのチームこんな厨二臭い名前だったの!?」
あまりにも予想外なところでショックを受けた。大半がリーダーの名前とチーム呼びで登録されている中、オレのいるチームはそんなもの関係なしのネーミング。不良グループなのは仕方ないとして暴走族じゃねぇんだぞ。
「晴れ舞台だからね!こういうのはカタチまでしっかりしないと!」
「我ながら……力作、だ」
こうして、明らかに場違いな名前がAブロックの端に刻まれたまま、全てのチームの組分けが終わった。試合はブロック単位で進行するようで、アルファベット順に行われる。つまりAブロック、オレ達のいるところからまずファイナルステージに上がる選手が決まるというわけだ。
『Aブロック一回戦もいよいよラスト!二回戦に進むのは果たしてどのチームなのか!?』
そんなわけで、オレ達の出番もそう遠くはなく。ついにアルテミスの舞台に踏み入った。
…………観客の圧が、ヤバい。伊達に世界大会ではないため、大会慣れしていないオレがプレッシャーを感じるのも当然だろう。隣の二人は至って平常運転だが。
「……っしゃ!ジャンケン勝った!!」
「チッ…………都森くんの足、引っ張る、なよ」
アルテミスは全試合ゼネラルレギュレーションという公式ルールで統一される他、メンバーの制限が設けられることがある。例えば一回戦では最大二人までの参加が可能なのだが…………作戦とか何も立てずにジャンケンで出場決めたよコイツら。サラッとオレ出場確定してるし。
「さぁいくよ、オルテガ!!」
「…………出番だ」
コンビナートのDキューブにレイピア二刀流のオルテガが投下され、続くようにオレの新しい機体も降り立った。カラーリングはズールと同じように黒を基調として青の差し色だ。やはり派手すぎず格好の良いこのカラーリングはオレの好みだ。
『ノースステージはサンダーアタックvs穿影暴破!おぉっと!?アレはまだ販売されていないプロメテウス社製LBX、
……なるほど、まだ店に並んでないLBXなのか、このドミニオンとやら。どうりで調べても全然情報がないわけだ。おかげで一気に注目されてしまった。
『それでは……バトルスタート!!』
一度に四試合、合計8チームの準備が整ったため、アルテミスMCからバトル開始の宣言が行われた。
「よーし、早速コイツでっ!」
ユウキがいきなりグレネードの束を取り出した。一方、相手のサンダーアタックの内一機、グラディエーターは牽制射撃を行っていた。
「あっ」
「は?」
両手銃ロデオマシンガンによりばら撒かれた弾が綺麗にオルテガの手元、固まったグレネードに命中し…………そのまま大爆発を起こした。
『おーっと!ノースステージ、早くもブレイクオーバー!!桐生ユウキのオルテガのグレネードが暴発、開始早々なんという不運だ!』
爆心地のオルテガは木っ端微塵になり、オレのドミニオンも爆風をモロに受けてかなりのダメージを負った。ズールなら即死するレベルだったことを考えると、コイツの耐久力が非常に高いことを痛感した。
「いや…………どうしろと?」
こちらのLPは半分ちょっとで、相手は万全の状態で二機もいる。世界レベルの大会でこの惨状は…………もう負けと言っていいだろう。
都森くんの新機体、その正体はドミニオンでした。爆ブーストの機体ですが、時系列的にはギリギリ出せそうだったので選ばせていただきました。使用武器は両手ショットガンのコメットキャノン。
ちなみにトーナメント表はアニメ基準にしております。つまり、ジンとレックスは準決勝で当たるルート。都森くんはその逆側のブロックなので、決勝まで行けばジンとバトルできます。まずは初戦突破できたらの話ですが(超劣勢)。