超人転生   作:塩ようかん

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26話 デラシオンとの対合

 

「えっ……!? はっ………で、デラシオンっっ!?」

 

 その名前を聞いた瞬間、私は盛大に狼狽える。

 

 エースを始めとした昭和ウルトラシリーズは大好きだが、平成、令和のウルトラマン達も好きであり、時間の許す限りそれらの作品を見ていた私にとっては当然、その名前を知らない筈もなかった。

 

 初登場はウルトラマンコスモスの劇場版第3作目であり、作中ではロボット軍団のグローカー達やギガエンドラを率いてコスモスと対峙したものの、実体そのものは宇宙正義の名の元に宇宙の平和維持を担う存在であり、事実後年の作品では宇宙警備隊に協力した事もある。つまり結論を言えば決してヤプール人やエンペラ星人のような悪では無く善の存在ではある。

 

「でも……何故あなたが私を……?」

 

 しかし、だからこそ私は訳が分からなかった。自慢するような話では無いが生前の私を評価してみれば特に他と比べて優れた力も頭脳も無く、会社からも勤務年数と年齢から考えれば馬鹿にはされない程度の役職に就いていたただの特撮マニアの三十代独身男性に過ぎない。そんな私にデラシオン等と言う宇宙規模の存在が干渉してくる等、瓢箪から駒では済まないくらいの異常な出来事だ。

 

『じゃあ始めに言っておこう。我らがお前を発見したのは意図的じゃあない。あくまで偶発的な出来事だった』

 

 そんな私の疑問に目の前にいる……と、言うべきか分からぬ光のエネルギーに包まれ輪郭すら上手く観測出来ないデラシオンが答える。

 

『宇宙の平和を乱す可能性がある存在を探している最中、今まで観測した事が無い……そうだ、我々の存在が人間の手によって作られた創作上の出来事とされる平行世界を見つけた。……あまりにも信じがたい出来事だった。故にお前が暮らしていた世界そのもの調査は慎重を極めるべきと判断して今は保留としている』

 

 そう答えるデラシオンの声は先程までと比べ、少しばかり震えている気がした。それも当然だろう、ウルトラシリーズの作品でも有名どころでは超時空の大決戦や超ウルトラ8兄弟でも自分の世界が創作の世界だと知ってしまうシーンはあったが、むしろ我夢やミライがあの程度の動揺で済んだのは精神的に途轍もない強度を持っているとしか思えない。

 

『だから直ぐに対策を検討する為に引き返そうとしたその瞬間に見えたのだ。自らより小さな命を救い代わりに死にゆく者をな……それが我々にとってのお前だ』

 

『そして我々は同時に願いを聞いた。ウルトラマンのようなヒーローになりたい……。そうお前は願っただろう?』

 

「それは……確かにそうなのですが……」

 

 迷いなく語るデラシオンの言葉に私は思わず口ごもる。

 

 転生した直後から、私を転生させた存在は何故、ウルトラ戦士では無く態々エースロボットに私を転生させたのかと考えてはいた。が、相手がデラシオンと言う事に加えてこの口振り、私に悪意があってやった訳では無い事だけは伝わって来たのだ。

 

『ウルトラマンになりたいと言うのならまだ同じ願いをした奴を我々も観測していた。だがお前はウルトラマンのようなヒーローになりたいと心の底から願っていた。これは我々にとっては初めての観測例だった』

 

『そこで我々はこれを機会として世界そのものでは無く一人の個人ならば影響は小さいと判断して、改めて地球人をテストしてみる事にした。その対象は星川北斗、勿論お前だ』

 

 その言葉と共に改めて視線とはまた別物の、デラシオンからの注目を受けた事を本能的に感じ取り私に緊張が走る。久方ぶりの人間の身体には鳥肌すら立っているのを感じていた。

 

「て、テストですか……それは一体何の……?」

 

 しかし、ここで臆しているばかりでは舞いおりた機会をドブに捨てるような物だ。そう考えた私はなけなしの勇気を振り絞りデラシオンに尋ねてみた。

 

『うん? お前の記憶を読み取った際に、お前が我らとジャスティス、そしてコスモスが描かれた作品も見ていた記憶があったぞ? そこから分からないか?』

 

 私の問いかけにデラシオンは若干、不思議そうなイントネーションを交えつそう返事をする。

 

「い、いえ……内容の予想は出来るんですが……」

 

 そう、私には大体の予想は出来ていた。出来てはいたが当たっていて欲しくは無かった。何故なら仮にそうだとしたならば私が背負う責任はあまりにも大きすぎる。それこそ下手をすれば個人的な感覚とすればウルトラ兄弟に就任すると言う事に並ぶくらいだ。

 

「ならば間違いが無いようはっきりと教えてやろう。我々がお前を対象として行ったテスト。それは───」

 

 そんな私の緊張を読み取っているのかいないのかデラシオンは何処までも落ち着いた口調で告げる。口調こそ私の知っている物とは違えどこのデラシオンはやはり何処か人間の想像の外にあるような精神構造を感じられた。

 

『人類は本当に2000年の猶予を与える程の可能性を持ち得る生命体なのか。だ』

 

「─────!」

 

 瞬間、実に久しぶりに私は唾を飲み込んだ。予想が見事に的中してしまっていたのだ。だってそれはつまり……

 

「(だ、だとしたら………映画の通りだとしたら………私一人の行動に全人類の命運が託されていたのですか!?)」

 

 自覚した瞬間、一気に身体中に鳥肌が立つのを感じた。どう言う訳かは分からないが今のデラシオンは私に対してさながらライトノベルの主人公を思わせるような砕けた口調で語りかけてくれており、こちらへの友好の意思を感じる。だがしかし、相手はそれでもデラシオン。相手が宇宙の平和を乱すとすれば星一つをも滅ぼす事も行う存在。そんな存在が私を試していたのだ。もし、転生してからの私の行動がデラシオンによって『危険』と判断されてしまっていたら………

 

「(ま、まずい………転生してから私はひたすらに自分の衝動に従ってしか行動していません……!)」

 

 改めて自分の行動を振り返り一瞬で顔が青ざめていくのを感じる。訳も分からず冷静に考える余裕が無かったと言う言い訳自体は出来るが、それでも私の行動は振り返ってみるとあまりにも自分本位過ぎる気がしてならない。

 

『あぁ、このテストについては既に結論が出ている。今、気にする必要は無いぞ』

 

「(不味い………不味い………不味い………どうすれば………!)」

 

 デラシオンの言葉を聞き、私の脳内は更に激しく動揺する。今直ぐに何かをするべきだと思うがまるでその手段が思い浮かばずぐるぐると要らぬ空回りしか脳もしてくれない。

 何故なら相手はあのデラシオン。私が今まで戦ったエースキラーやヒッポリト星人も紛れなく強豪であったがそれとは文字通りスケールが違う。身体は勿論だが知能でも僅かでも私が優位に立てるビジョンが浮かばない。つまり私には打つ手が何一つ無いと言う事である。しかし何かをしなければ───

 

 そうしてまた思考がループしようとしてた時だった。

 

『───結果は見事に合格だ。全ての人間がそうだとは言わないが、それでもだ』

 

『お前の一連の行動からはあの時、光の戦士達が……そしてあの世界の人間達が我らに送ったメッセージである【希望】を感じた。お前のような人間がいれば地球は宇宙に害を齎す存在にはなり得ないと思えた』

 

『見事だ星川北斗。お前の行動は人類の可能性を証明してみせた』

 

「え─────?」

 

 突然、デラシオンから投げかけられた言葉に私は思考を強制中断させられ困惑の声をあげた。

 

『今回、お前を呼び込んだのはそれを伝える為だ。……出来るならこれからもあの世界で宇宙の平和の為にその力を駆使するといい』

 

 その言葉が終わった瞬間、夢の中だと言うのに突如として私の意識が霞み始め、瞼が重くなるの感じた。直感ではあるがこのまま意識を手放せば次に目覚めるのは光の国でエースロボットとなった私がスリープ状態に入っている部屋だと確信を持っていた。

 

『あぁ、そうそう我らの存在は聞かれない限りは光の戦士達には告げないでおいてくれ。彼らにいらない混乱はもたらしたくは無いからな……その時は我らから説明しよう』

 

「ま、待ってくださいっ! その……最後に聞きたいことが……!!」

 

 意識が薄れ、デラシオンの声も何処か遠くに聞こえる中、私は思うように動いてくれなくなっていく頭を精一杯に動かし何とかデラシオンに質問をしようと試みる。何せ私を転生させた相手との始めての会話なのだ聞きたいことは山のようにあったが

 

「その……っ! 私の記憶にあるあなたとは大分、口調が違うのですが……何故そのような口調になっているのですか!?」

 

 当然、眠りかけているような頭脳では咄嗟に良い質問は思い浮かばず私の口から出たのはそんなはっきり言えばどうでもいい問いかけに過ぎなかった。

 

『───? 以前のような喋り方じゃあ警戒心を持たせると思ってお前の記憶から読み取った……ライトノベルと言う書籍から参考にしてみたのだが何かおかしかったか?』

 

「え」

 

 結果、最後の最後で何処か困惑したようなデラシオンの声と小っ恥ずかしい感覚を感じながら私の意識は完全に落ちていくのであった。

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