問おう、どんな女が好みだ   作:でかすぎ史郎

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最終話

 ある戦士(アキレウス)がいた。彼は自らの師匠を打倒し師匠の今際の際の頼み(宝具の貸与)も達成した。

 今あるのは只の戦士としての自分だ。

 俊足の英雄と謳われたアキレウスはかける。

 

 そして玉座がある部屋まで来た。そこには黒くて丸い謎の物体(領域展開)が鎮座していた。戦士としての勘だろうか。そこに自分の敵がいると察していた。

 

 領域展開は内から外へ逃げることは難しいが外から内へ入ることは簡単だ。アキレウスは東堂の領域内に侵入した。領域内にはアサシンとセイバーそしてそのマスターがいた。あいにく彼らはアキレウスの存在に気づいてない。奇襲し放題だ。

 

 チャンスは一回。誰を狙うのかと言うと、それは東(・)堂(・)葵(・)。

 

 ◆

 

「アブねぇぞ!」

 

 モードレッドが直感スキルから奇襲を察知し東堂を蹴飛ばす。だが相手は俊足の英雄アキレウス、ただ攻撃を躱されるわけがない。東堂の左腕が空を舞う。つまり東堂の手が切り落とされたのだ。不幸中幸いか令呪がある手が切り落とされたわけではなかった。

 

「つう!」

 

 東堂が思わず声をあげる。

 

「お前はライダー、アキレウスだな!」

 

「ああ、そうとも」

 

 アキレウスはそう言うとモードレッドと打ち合う。

 一番相手にするのが面倒くさい東堂の術式は既に無効化(腕を切断)した。ならば次に狙うのは2番目に相手にするのが面倒なモードレッドだ。

 

「拍手ができなければ入れ替えできないとでも!」

 

 東堂は領域の必中効果を発動する。切り落とされた自らの手とアキレウスの左足を交換する。つまりアキレウスの片足は欠損した状態ということだ。

 だがそこは稀代の大英雄、アキレウス。判断を誤ることなく冷静に対処をする。

 

「そういうことか!ならば!『宙駆け(ディアトレコーン)る星の(・アステール・)穂先(ロンケーイ)』」

 

 アキレウスの宝具だ。これは固有結界とは似て非なる大魔術にして領域展開と同じく必中効果(一騎打ちの強制)がある。つまり領域展開と同質の存在、領域展開の必中効果を中和することができるのだ。

 

「なるほど、まさか領域の効果を無効化するとは。ブラザー、頼んだ!」

 

「解体するよ」

 

 ジャックが『暗黒霧都(ザ・ミスト)』を発動しアキレウスの敏捷を下げる。そしてナイフを投げて攻撃する。しかし攻撃は全て弾かれてしまった。

 

「チッ、コイツが男だからか打つ手がないな」

 

 東堂が弱音を吐いた、その瞬間。突如として庭園中央部から爆発音がした、そしてアキレウスの体が綻び始めた。

 

「な、これは」

 

「…マスターの野郎負けやがったな」

 

 サーヴァントの弱点は千差万別であるが、サーヴァント共通且つ最大の弱点はマスターであろう。マスターという要石がいなければ存続することは難しい。今回、アキレウスが消えようとしている原因はそれだ。天草はジークに敗北した。

 

「あーあ、姐さんの仇を討とうと思ってたのによ」

 

 そう言い残してアキレウスは消滅した。そして東堂の領域も時間切れなのか消滅する。

 こうして何とも煮え切らない形で勝負の決着はついた。

 

「おかあさん、大丈夫!」

 

 勝負が終わったのでジャックは東堂の切り落とされた手と腕を接合しようとする。だがそれは上手くいかなかった。

 

「おっと、それはさせねぇぜ」

 

 モードレッドが東堂とジャックに剣を構える。獅子劫はモードレッドに意図を察し後方へと遁走した。

 

「…そうか、同盟はそういう条件だったな。そして天草は死んだ。ほぼ確実に」

 

「そうだな。確かに言ったよな「俺らは天草たちを倒すまでの間、お前らと同盟を組む」って」

 

「つまり俺らは敵か」

 

「敵に治癒させる時間を与えるバカはいねぇからな」

 

 セミラミス、アキレウスに続いてモードレッドが襲い掛かってきた。

 既に領域は解かれている。そして東堂は片腕を欠損しているので拍手、つまり術式(不義遊戯)がまともに使えない状態なのだ。

 

「令呪を持って命ずる。セイバー、選定の剣を抜け。重ねて令呪を持って命ずる。セイバー、王となれ!」

 

「ありがとよマスター」

 

 モードレッドのマスター、獅子劫は残った令呪を全てを使ってモードレッドを強化する。

 それを見た東堂は対抗する。

 

「令呪を持って命ずる。ブラザー、勝て。重ねて令呪を持って命ずる。ブラザー、勝て」

 

「解体するよ『暗黒霧都(ザ・ミスト)』」

 

「しゃらくせぇ」

 

「いたっ!」

 

『暗黒霧都(ザ・ミスト)』の霧がモードレッドを包み込もうとするが彼女は全身から魔力を放出する。霧は魔力に押し出され霧は晴れていく。そしてモードレッドはジャックを切り付ける。ジャックの宝具、『解体(マリア・ザ)聖母(・リッパー)』の即死条件(女・夜・霧)が満たされない。

 サーヴァントとしての格はジャックよりもモードレッドの方が上なのは明らかだった。このままではジャックは負けてしまうだろう。それを東堂は黙って見ていなかった。

 

「腕なんて飾りさ。拍手とは!魂の喝采!」

 

 モードレッドは動きを止める。

 東堂の術式(不義遊戯)は露見しても何も問題はない、逆に露見すれば敵側が常に気を張る必要すらある。今回はまさにそれの典型だ。

 腕と手がぶつかりあい「バシンッ」という音がする。これはフェイントだ。本当は不義遊戯を使えないのだが敢えて使える風を装って相手を混乱させる意図があるのだ。

 

「だから、しゃらくせぇんだよ!」

 

 東堂が元居た世界(呪術廻戦)では真人をハメた不義遊戯フェイント。しかし真人と違ってモードレッドは直感スキルを持っている。戦闘時に常に自身にとって最適な展開を感じ取る能力。ゆえにフェイントは通用しない。

 モードレッドは切り込んできたジャックの両足を切り落とす、そしてトドメとして彼女の霊核(頭)を狙う。しかし東堂も負けてはいなかった。

 

「令呪を持って命ずる。こっちへ来い!」

 

 ジャックはギリギリで東堂の下に馳せ参じる。

 だが状況は何も好転していない。むしろ令呪を全て失った。

 

「…同じ場所にいるってことは、同時に死にたいってことだよな東堂。お前は生かしてやろうと思ったがお望みなら仕方ねぇな」

 

 モードレッドは剣を構える。

 

「ブラザー、言いたいことがある」

 

「なあにおかあさん。…うんわかった『暗黒霧都(ザ・ミスト)』!」

 

 東堂とジャックは霧に包まれた。

 

「隠れようが無駄だぜ。お前のとこのジャックは足を失ってる。もう動けないだろ。喰らいな『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!」

 

 モードレッドの推測通り、彼らは動くことができない。そのまま宝具の奔流に巻き込まれた。霧はまだ晴れてない。

 

「ふう、やっと倒せた。あとはジークか。」

 

「ああ、そうだな。念のためにアバウトな令呪の命令にしておいてよかった」

 

 獅子劫は先の戦いを見通して令呪の命令を工夫していた。選定の剣を抜けと、王となれという命令はそういうことだったのだ。

 モードレッドは力が抜けたのかその場で座り込む。

 次の瞬間、「パァン」という音がした。モードレッドがいた場所には東堂がいた。そして東堂がいた場所、つまりジャックがいた場所にはモードレッドがいる。

 

「なっ、どういうことだ?」

 

「『解体(マリア・ザ)聖母(・リッパー)』!」

 

 ジャックの宝具がモードレッドに炸裂する。

 今の時間は夜、モードレッドは女、ジャックと東堂がいた場所には霧が展開されている。つまりこの一撃は即死の一撃なのだ。モードレッドは死の概念を押し付けられ消滅した。

 

「なぜ生きている?確かに死んだはずでは?」

 

 獅子劫は突然のことに困惑している。

 それを見た東堂は口を開いた。

 

「領域展延を使用した上に全呪力を前方に凝縮させてガードした」

 

 領域展延、それは領域展開の派生技術である。術式を付与できるほどの容量の空きを作り出し、そこに相手の術式(宝具)を流し込ませて中和する技術である。本来なら領域展延は土壇場で習得できるほど簡単な技術ではない。しかし呪術師の成長曲線は必ずしも緩やかではない。東堂は土壇場で領域展延を習得したのだ。

 

 なにが起きたのかを詳しく解説するとこうだ。

 領域展延で『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』の一部を中和、中和しきれなかった分は自らの呪力でガードして対応、東堂の片手とジャックの手で拍手をして不義遊戯を発動し東堂とモードレッドを入れ替え、ジャックが『解体(マリア・ザ)聖母(・リッパー)』を発動しモードレッドに宝具が命中といった具合である。

 

「そうか…そうか」

 

 獅子劫は無念そうに座り込み、現実を誤魔化すかのようにタバコをふかす。

 モードレッド&獅子劫vsジャック&東堂の戦いは東堂達の勝利で終わった。

 

「いくぞブラザー」

 

「そこの人は解体しなくていいの?」

 

「いやいい」

 

 こうして東堂達は大聖杯の下へと向かった。

 大聖杯が鎮座する部屋にはジークとアストルフォがいた。

 

「勝ったのだな。ジーク、Miss.アストルフォ」

 

「勝ったが…トウドウ、既に第三魔法を全世界の人類全てに適用するという願いは叶えられてしまった。時間はかかるがいずれはそうなってしまうらしい」

 

「なに?」

 

「もはやここまでのようだ」

 

「なるほど天草め、最後まで抜け目のない奴め」

 

 天草は保険をかけていた。自分が負ける未来を予想しあらかじめ第三魔法の全人類の適用を既に大聖杯に願っていたのだ。

 

「仕方あるまい。せめてブラザーの願いを叶えるか。おいジーク、Miss.アストルフォ、お前たちに願いはあるか」

 

「俺にはない」

 

「僕にもないね」

 

「ああそうか。じゃあブラザー、願いを言う前に1ついいか」

 

「なぁに?おかあさん」

 

「ブラザーにはまだ早いと思っていたが俺には好きな人がいるんだ。高田ちゃんっていうな」

 

 東堂がそう言ってペンダントを開ける。そこには高田ちゃんとジャックの写真があった。

 

「わあ綺麗な人!」

 

「俺が今から頑張って聖杯の力なしで高田ちゃんと結婚する。だから、少し待っててくれないか?その人がおかあさんになるから」

 

「ダメ!おかあさんはおかあさんなの!その高田ちゃんって人じゃない!」

 

「そうか」

 

 東堂は涙を流した。ブラザーの愛情の深さゆえに。この世界の彼は妄想の高田ちゃんから振られ、強さしかも求められなかった修羅そのものであった。だからこそ、その愛は特に効いた。東堂は意を決してこういった。

 

「わかった。覚悟はできた。さあブラザー願いを言ってくれ」

 

「お母さんの中に戻りたい!」

 

 ジャックがそういうと東堂の見た目が変わり女になった。そしてジャックの見た目が魔力の塵とになり塵は東堂の腹の中に入っていた。ジャックの母胎回帰という願いを実現するために東堂は女(出産できる体)へと変化したのだった。

 

「こ、これは…いやブラザーの願いがこれならば受け入れるか。それにモードレッドやアストルフォが女だったりするんだ。これくらい、この世界(fate)なら日常か」

 

「いや僕は男だよ」

 

「なんと!」

 

 東堂は衝撃を受ける。

 そんな東堂を尻目に他の2人は感慨深く会話をする。

 

「ジャックの願いは叶ったけど…人類の第三魔法の適用は止まらないねマスター」

 

「…そうだな」

 

 ジークは悔しそうに肯定する。試合に勝って勝負に負けたのだ。それは悔しいに決まっている。

 その瞬間、東堂の脳内に黒閃が走った!

 

「東堂くん、もしかして貴方までも、どうしようもないと思ってる気?」

 

「たっ!高田ちゃん」

 

 東堂の脳内に高田ちゃんが現れたのだ。

 

「ジークくんの令呪があった方の手、見た?」

 

「見たとも。Mr.ジークフリートの影響か半分ほどドラゴン化していた」

 

「半分ドラゴンのジークくんはドラゴンになりたいと聖杯に願えば簡単に変身できるよね」

 

「高田ちゃん、それに何の意味が…まさか!ドラゴンになって大聖杯を世界に裏側に連れて行けばいい!」

 

 ドラゴン、それは現代に存在できない幻想種だ。召喚者のいないドラゴンは存在するだけで世界の裏側に送られてしまう。

 そのドラゴンが大聖杯を抱えて世界の裏側に行けば大聖杯も世界の裏側、つまりは大聖杯の願いが履行できない場所に行くことになる。

 東堂は最適解を弾き出した。こうして高田ちゃんは去っていった。

 東堂は高田ちゃんとの議論の内容をジークとアストルフォに話した。

 

 もちろんアストルフォはそれを認めるわけがなかった。

 

「それはダメだよ。そんなことをする為に彼を助けたんじゃないよ!トウドウ。マスターは人間として生きられなくなるじゃないか!」

 

「…ライダー、東堂の提案、確かにそれはアリだ」

 

「そんなマスター…」

 

「死ぬわけじゃない」

 

「死ぬより辛いだろう、だって、だって、」

 

 アストルフォは嗚咽する。

 それをジークは抱きしめる。

 

「ライダー、君は現代で生きるんだ。誰かを助けたり、誰かと楽しんだり、それだけで僕は嬉しい。」

 

「…参ったなぁ。マスターの命令なら従わなきゃね」

 

 

 アストルフォは涙をぬぐい笑顔を作る。そして別れは始まる。

 ジークは聖杯に願い黒いドラゴンと化した。そして大聖杯を抱えて世界の裏側へと旅立った。

 アストルフォ以外のサーヴァントは全て消えた。第三魔法の魔法の全人類への適用も不可能になった。そしてアストルフォはマスターの言う通り旅立つことにした。

 こうして聖杯大戦は終わったのであった。

 

 ◆

 

「まさかお前が女になるなんてな」

 

 カウレスが少し引きながら東堂に話しかける。

 彼らは無事に空中庭園から脱出しミレニア城塞近くに戻ってきた。

 

「ああ、俺としても驚きだ。おそらくブラザーの認識では母親しかいないからこうなったのだろうな」

 

 東堂は女になった。そして妊娠もした。中にいるのはジャックである。

 

「ええ、まあそれは置いといてですね。貴方を守り切れずに申し訳ありません。東堂」

 

 東堂は不義遊戯とサーヴァントと戦える呪力に加えて固有結界に似て非なる大呪術を習得した。よって魔術協会から封印指定を受けてしまった。

 東堂の味方のユグドミレニアは魔術協会に降参を表明した。つまりユグドミレニアは魔術協会の言うことに逆らえなくなり東堂を庇うことが出来なくなったのである。

 東堂はユグドミレニアを辞める以外に選択肢がなくなったのだ。

 

「いいんだフィオレ、Mr.ダーニックに雇われる前と同じになっただけさ。じゃあな」

 

 東堂はユグドミレニアの地、ルーマニアを発った。

 そして数年後、そこには女と化した東堂がいた。彼は亜種聖杯戦争に参加していた。出産を無事に終えた彼の夢はただ1つ。男に戻ることだ。高田ちゃんはノーマルなので高田ちゃんを振り向かせるにはやはり男である必要があるのだ。

 東堂はサーヴァントを召喚した。そして出てきたサーヴァントは

 

「バーサーカー、ジャック・ザ・リッパーだ」

 

「問おう、どんな女が好みだ?」

 

「はい?」




これで終わりです
色々と粗があったでしょうが今まで見てくれて本当にありがとうございました。
皆様の応援のおかげでここまで来れました。
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