タイトルそのまんまのことをやらかした英雄、
というか犯人へのインタビューを独占掲載。
こんな方法でSAOクリアしちゃっていいんですか。


※転売をネタにしている作品ですが現実での転売行為は推奨しません。ご遠慮ください。

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本日SAO発売日と聞いて転売しました。
お値段はSAO同梱版ナーブギア価格128000円に
転売価格を載せて20万円でいかがでしょうか?


……冗談です!冗談ですから石を投げないで!
ああっ、ナーブギアも飛んできた!売っちゃおう!
おふざけはこの辺にします、すみません。


本作は作者が某プラモデルがテンバイヤーのせいで買えない怒りを
創作にぶつけた結果誕生したコメディ作品となっております。
細かい設定が原作とは食い違いますがゆるーい気持ちでご覧いただけると幸いです。

2022/11/01
SAOを転売した金で取る短編日間2位と(加点式)1位は美味いか――
その指摘に転売屋は爆発四散したとか散体したとか。
皆さんありがとうございます。
後、転売をネタにしている本作ですが
現実での転売はマジでご遠慮ください。

202211/06
ソードアート・オンライン正式サービス開始日に
週間1位を取っていいのかテンバイヤー……
改めて、皆さんありがとうございます。人生初です。
繰り返し。転売をネタにしている本作ですが、
現実での転売は本当にご遠慮ください。


没タイトル:テンバイヤーVSカヤバーン ~勝手に戦え~

 Sword Art Online、略称SAO。そう呼ばれるゲームをあなたはご存じだろうか。

 近年流行しているフルダイブ型のVRマシンの民生用第一号でありながらもソフトに恵まれず、先代VRマシンのニードレスと比較すると、ゲーム機としてはややパッとしない印象であったナーヴギアをたった一本のソフトで超人気ハードの地位まで押し上げたビッグタイトルである。

 

 本誌の読者にもSAOプレイヤーは多いだろうが、念のために説明させてほしい。SAOはこれまでのVRマシンでは不可能だった仮想世界へのフルダイブを実現するナーヴギアの性能を活かした世界初のVRMMORPGである。

 仮想世界の中で自らの体を動かして剣や槍といった様々な武器を使いこなしてモンスターと戦い、空に浮かぶ浮遊城アインクラッドの最上階を目指すというどちらかといえばコンシューマーハードに向いた設計でありながらも、作り込まれた浮遊城が探索の高難易度化とプレイヤーを没入させる体験を産み出しており現在も最上階へはたどり着いたプレイヤーはいない伝説的なMMORPGとしてMMOニュースサイトMMOトゥデイでも連日特集記事が組まれている程だ。

 

 そんなSAOだが、サービス開始時にとある悲劇、いや、喜劇があったことはご存じだろうか。

 今回本誌はその事件の英雄――いや、真犯人と呼べる人物に接触することができた。あの事件の裏で何が起きていたのか、そして何故茅場晶彦の早期逮捕が実現したのか。

 

 その謎を彼とのインタビューで明らかにしよう。

 

 


 

1:ナーヴギアから転売してました。ついでに吹っ飛ばした

 

 

「名前は……隠してもらえるんですよね?」

 

 ――はい。個人的には明らかにして多少は叩かれてほしいんですけどね(苦笑)

 

「ストレートだなぁ!当時さんっざん叩かれてもう足洗ってるんだから許してほしいんだけど」

 

 ――1ゲームプレイヤー、そしてSAOのプレイヤーとしてはあまり許せないといいますか……その裏で起きてたことを考えると感謝はしてるんですけども。

 

「だろうね。あんなことになるとは誰も想定してなかったし……実際あれが原因でこっちの業界での有名人も亡くなってるからなぁ」

 

 ――というと?

 

「噂によるとブランド品やら宝石やらでどでかく転売やっててマンションまで建てた大物がやられたらしいよ」

 

 ――それは……どう反応していいのか困りますね(遠い目)

 

「笑ってやりなよ。それがあいつへの手向けになる」

 

 ――えっと……わかりました。それでは改めてお名前、というより、仮名の方をお願いします。

 

「お名前は……テンバイヤーで。はい、名前の通り元転売屋です。本日はよろしくお願いしますね」

 

 

 ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 ――では、テンバイヤーさんにお聞きします。SAOの存在を知ったのはいつ頃ですか?

 

「うーん……ナーヴギア発表当時からあるだろうな、と思ってました」

 

 ――な、あっ?う、嘘だろ、そんな頃から……!?あ、すみません!つい驚いてしまいました。

 

「その反応が当然ですよ。というか、正確に言いますとSAOに近いものがあることを予想していた感じになります。インタビュアーさんも相当なゲーム好きだと思うんですが、ナーヴギア発売時何か違和感を感じませんでした?」

 

 ――それは……確かに。ナーヴギアって今でこそフルダイブVRマシンとして有名ですし、スペックはアミュスフィアと同等のマシン。それなのにソフトが寂しかったのを覚えてます。

 

「その通りです。ナーヴギアは現代の最新モデルであるアミュスフィアに並ぶハイスペックを誇るマシン。なのに目玉タイトルと呼べるソフトがなかったんですよ。ゲームハードとしてはおかしい」

 

 ――当時ってナーヴギア専用のソフトはいくらかありましたけど、どれもこれも微妙でしたね。

 

「具体的な名前は出せませんけど、某ゲームメーカーがこれまでに出してたVRゲームと大差なかったですよね。ソフトはどれもこれもありきたりすぎた」

 

「なのでナーヴギアを30台くらい買っちゃった仲間なんて悲劇ものですよ。「俺は大金をかけてVR機能がおまけのただのかっこいいヘルメットを買ったのか」って」

 

 ――あははは。ナーヴギアって結構高かったですよね。

 

「200万 棒に振ったよ ナーヴギア コスプレ素材に おひとついかが?」

 

「って感じで外装だけ外して少しずつ売ってなんとか損を取り戻そうとする彼の姿は笑い者でした」

 

 ――外装だけ(笑)。確かにナーヴギアはVRマシンでは結構かっこいい外見ですけども!

 

「ゲーム用だから軽いし堅いしで外骨格みたいな感じで使えるらしい。鎧やらロボットやらのコスプレしてる人に売れたり……後、いわゆる外装商法で売れてました」

 

 ――箱や写真だけを相手に送りつける、あれですか。

 

「あれです。あんな感じで外装だけ売ってた」

 

 ――あれ、面白い話を聞きましたよ。ナーヴギアをフリマアプリで買ったのに起動しなくて、アーガスに送ったら中身が入って帰ってきたとか。京都のゲームメーカーみたいないい話として有名ですよ。

 

「有名ですねぇ。あれでナーヴギアの中身を追加で4台程確保したそうですよ、例の奴は」

 

 ――アーガスの良心を利用する外道ですか!!

 

「夢が広がるゲーム機売っといてまともなソフト出さないあいつらも外道だろ!?」

 

 ――そ、それは……同意です。否定はできませんね。

 

「だよなぁ!そもそもアーガスの連中は――」

 

 

 ※編集部注:テンバイヤー氏とインタビュアーのアーガス批判が続いたためカットします。

 

 

「とまあ。アーガスの悪口はこの辺にして。そんな訳で私とその仲間の何人かが言い出したんですよ。これは明らかに茅場の罠である、と」

 

 ――罠、と?茅場晶彦の?

 

「だっておかしいでしょう?キラータイトルと呼べるソフトはSAOが発表されるまで全然出てこなかったんです」

 

「様々な技術とゲームを発信してゲーム業界に革新を起こしたあの茅場が。ソフトを欠いた欠陥品のゲームハードを売り出すことに違和感があったんです」

 

 ――なるほど。SAO以前に彼が発表したゲームソフトはどれも名作でしたからね。

 

「だから裏では何かキラータイトルを準備しているに違いない。それは現在のナーヴギアの立場を一変させるものである」

 

「それが発表された時、既存のゲーム業界を大きく変わることになるだろう、と」

 

「当時のゲーム専門雑誌やサイトも似たような予測してたと思うんですが、転売屋側も同じでした」

 

 ――実際、大きく変わりましたしね。

 

「はい。今でもゲーム転売で稼いでる連中はVRソフトばっかり取り扱ってて、ハードもアミュスフィアのソフト同梱限定仕様なんかが売れ筋だそうで」

 

 ――だ、台無しだ……。

 

「ちなみにそいつらで一番稼いでるのは当時ナーヴギアをひそかに買い貯めてた連中ですよ」

 

 ――(頭を抱えるインタビュアー)

 

「(苦笑)。まあ、そうなりますよね。これからβテスト時の話になるんです、が。その前に面白い話がひとつあるんですよ」

 

 ――お聞かせください。

 

「今回のインタビュー用に特別にお見せしますが、当時の仲間内でのチャットで「これで何もなかったらナーヴギアの設計ミスを応用して爆発させてやる」とか例の外装バイヤーは言ってたんです。ほら、これ」

 

(スマホを操作してチャットアプリの履歴を見せるテンバイヤー氏)

 

 ――本当だ。事件発生前の頃に殺人ギミック……電磁パルス発生装置の設計に触れてますね。

 

「当時の彼曰く、特殊な信号をナーヴギアに送信すれば電磁パルス発生装置を暴走させて爆発させることができたそうです。映像もあります」

 

 ――……うわっ、本当に爆発した!もしかすると、彼はその時点でナーヴギアの殺人ギミックに気づいていた?

 

「ナーヴギアの不良在庫を抱え込んでた頃に外装を取り外してたらバッテリーデカ過ぎるとか出力が無駄に大きいとかぶつくさ言ってたので、その前から気づいてたかもしれない。もしもあいつがそれを使って犯罪に出てたと考えると……」

 

 ――怖い話ですね。

 

「妻も子供もいるから流石にやらない、と彼は笑ってますけどね」

 

 

 

 

「転売で結婚して、転売で子供の生活費稼いでるあいつがやるはずない、って」

 

 ――その人の家庭環境どうなってるんですか。

 

「表向きは専業主夫。妻が荒稼ぎしてるように見えるけど家も車も全部メイドインテンバイだそうで」

 

 ――実態が残念すぎる。

 

「なので茅場逮捕された時は「ふざけるな!おまえのナーヴギア転売で俺は新車を買えたんだぞ!?まだまだ稼がせてくれるんじゃなかったのか!!」って中々に外道な発言してますよ」

 

 ――さ、最悪だー!!

 

 

 ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

2:βテストでも転売してました。~そしてブチギレへ~

 

 

「それから半年くらい……でしたっけ。βテストがあったのって」

 

 ――SAO発表とβテスト参加者募集がそれくらいですね。自分は応募したので覚えています。

 

「お!結果はどうだったんです?私はハズレでした」

 

 ――合格しましたね。βテストもみっちり参加してましたよ。

 

「いいなぁー。うちらの業界でもそれなりの人数が応募してまして、確か20、いや、最終的に30人くらいはやってたかな」

 

 ――転売屋でもβテストやるんですね。

 

「やるどころかβテスト参加権転売してるやついましたよ。しかもそれも本当のβテスト用カートリッジとラベル貼り変えただけの偽カートリッジが入り混じるSAO転売大戦です」

 

 ――(苦笑)転売大戦ってそんなに酷かったんですか(笑)

 

「酷かったですよー(遠い目)。その辺は後で語りましょう」

 

「SAOは前評判と事前公開情報でかなりの大作であることが期待されていました。世間一般の評判と私たち転売屋の認識はほぼ一致していましたが、危惧していたことがあったんです」

 

 ――と言いますと?

 

「純粋なゲームの出来です。ナーヴギア発表より半年遅れでの発表というのはいささか時間がかかりすぎるように私たちには思えまして。もしかするとSAOは開発に何か問題を抱えているクソゲーなのではないか、という声も少なくなかったんですよ」

 

 ――なるほど。当時の雑誌にもそう言った文章があったのを覚えています。

 

「もしそうだとしたらナーヴギア同様に不良在庫を抱えることになるのではないか。転売屋の中でも危惧した意見が多く、有志を集ってβテストへの参加とゲーム内容についての確認をすることになりました。で、その過程で参加権を取得したのが26人だったはずですね」

 

 ――30人じゃないんですか?残りの4人はどうしたんです?

 

「その辺は後で説明します。で、プレイした感想といいますと……最高の異世界だ!究極のアドベンチャー!さすがかやひこ俺は信じてたぞ!とか絶賛ばかりでしたね。インタビュアーさんはどうでした?」

 

 ――同意ですね。βテストと製品版の違いはいくらかありましたが、主なものは村人等のNPCに使われてるAIの挙動中心でしたし。

 

 ――裏を返せばこの時点でSAOの魅力といえる現実に限りなく近く、現実にはあり得ないモンスターやダンジョンを揃えた幻想的な世界。重厚な武器を手に大迫力のソードスキルをぶちかます爽快感等はこの時点で完成していたように思えます。

 

「そこは本当に茅場の実力の賜物でしょうね。そんな感じでβテスト経験者から好評を聞いた我々転売屋組はSAOの買い占めを検討、準備段階に入りました。が……ここで、おかしなことがあったんです」

 

 ――おかしなことですか?

 

「ええ。βテストでゲームの出来を確認したら後はもう興味がないのでβテスト用ソフトを転売する連中がいたんです」

 

 ――うっわぁ……売れるものなんでも売るんですね……

 

「それで転売したソフトは同じ転売屋でテストに当選しなかった奴らに売れて、普通にプレイしてたんですよ。こいつらが例の4人です」

 

 ――ふむふむ。……ん?それっていつ頃です?もしかして、セキュリティアップデートの前ですか?

 

「察しがいいですね。転売に成功した後でアップデートが入りまして、最初にプレイした人以外ではβテストがプレイできなくなったんです」

 

「βテストソフトの転売を避ける手段としては、脳波スキャンを用いた生体認証が出来るナーヴギアらしい手段ですよね」

 

 ――SAO事件の後はフルダイブマシンに法的な制限がついた関係で使えなくなった手段ですね。 

 

「まあアーガス側、というか茅場もキレてたんでしょうね。私たち転売屋が暴れまわってる現状に……彼の夢を注ぎ込んだゲームをプレイすることなく弄んでたんです、無理もない」

 

 

 

 

「そのせいで我々転売屋もキレましたけどね!「これは我々転売屋への挑戦だ。これは転売を守る聖戦だ!!」といった感じに」

 

 ――聖戦の意味を辞書で引き直した方がよいのでは?神聖さのかけらもない……

 

「くっ、否定できない!」

 

 

 

◆      ◆      ◆      ◆

 

 

3:ソードアート・オンライン発売前夜から転売計画してました

 

 

「こうしてブチキレた我々は茅場晶彦への復讐を考えることになりました」

 

 ――復讐……。

 

「とはいえ我々にも一定の良識はありました。彼やアーガスへクレームを入れたところでダメージはまるでないでしょう。というか、ただ迷惑なだけなので復讐手段としては除外しました」

 

「流石に犯罪者にはなりたくない。でも、どうすれば彼へ嫌がらせが出来るのか?悩みに悩んだ我々の元へとある情報が入りました」

 

「家電量販店で働きながら転売屋にも手を貸してる、という……まあ、ちょっとアングラな人からの密告でSAOの初期ロットは10000本という情報が入りました」  

 

 ――う、噂には聞いてましたけどそういう情報流す人いるんですね……。

 

「それを聞いた私は転売屋ネットワークでこんなことを呟きました」

 

「初期ロット、転売屋で買い占めれば最高の復讐になるのでは?」

 

「……この時点ではただの思い付きでした。聞いた連中も何をバカな、と笑ってましたよ」

 

 ――今でもそれを聞くと耳を疑いますね。引き続きその復讐についてお聞かせください。

 

「はい。馬鹿話として笑っていましたが、話し合っていると「意外と出来るのではないか?」という結論が出てきたのです」

 

「SAO初期ロットの内1000本はベータテスターに送られるので、店舗販売数は9000本。数としてはやや少ない」

 

「その上でナーヴギアが元々高価であったことと我々が転売しまくってたこともあってフルダイブ市場はあまり大きいとはいえない。購入人口もさほど多くないでしょう」

 

「極めつけに、SAOは国内限定発売。海外ユーザー向けには発売しない。このため日本国内で活動している私たちでもなんとかなるかも、という結論になりました」

 

 ――なるほど……確かに当時のフルダイブ市場規模とSAO自体の情報は文章や映像媒体のみで体験できる機会が少なかった、と考えると確かに購入人口も少ないでしょうね。

   

「様々な業種、様々なツテを生かして我々は初期ロットの販売経路や各店舗の販売本数を推定していきました」

 

「そんな我々を面白がって協力する、あるいは乗っかってSAOを手に入れようとする転売屋はどんどん増えましてね」

 

「大きく増えた協力者数と広がり続ける情報網を元に算出した購入目標は初期ロットの半数、5000本でした」

 

 ――準備段階でそんなに買い占められる予定だったんですか!?

 

「理論上は、ですけどね。初期ロットのうち店舗や各種通販サイトの予約販売本数は3000本。まずはこの内2000本を抑える目処が立ちました」

 

 ――いきなり桁がおかしい……!

 

「購入できる店舗が分かれば現地の転売屋だけでなく、事前に仕事を休んで遠方の転売屋も応援に向かえます。通販サイトの方はその筋に強い転売屋が抑えられます。これで抑えられる最大数は2000本と推測しました」

 

「実際は抽選式だったりするので抑えられる本数はもっと少ないだろう、とは見てましたが結果は後程。」

 

 ――わ、わかりました。これで残りは3000本ですね。そちらは店舗の当日販売でしょうか?

 

「ですね。通常の店舗販売形式となれば我々の得意分野です。元々のノウハウをいかしつつ駆けつけた人員を動員すれば、最大で3500本くらい行けるんじゃないかなーって」

 

 ――げ、ゲーマーにとっては悪夢だ……。

 

「私も当日用に各種店舗の開店にあわせて店を駆け回る順路を考えたりしたっけなぁ。後、先着順店舗用に動ける人のリスト作ったりとか」

 

「色々な方法で我々の計画に関わる人の数は総勢で7271人。今思い出してもこれだけの人間を動かせたのは奇跡ですよ」

 

「……そして、それから起こることも、ね。」

 

 

 

◆      ◆      ◆      ◆

 

 

4:ソードアート・オンライン発売当日から転売したかった ~くたばれ茅場晶彦~

 

「そして、決戦の日を迎えることになりました。この時点で我々のキルスコアは1673本です」

 

 ――キルスコアって(笑)。予約で購入できた本数、ということでしょうか?

 

「はい。店舗予約分は大分抑えられたのですが、通販サイトの予約分を抑えることに失敗して数が振るわなかった」

 

「このため、目的達成のために店舗販売数で抑える数は3500本。当日抽選販売も全て勝利した上での予測でしたから厳しい戦いになるか、と思われたその時です」

 

「驚愕の情報が飛び込んできました。βテスター組から約400本の仮押さえに成功した、と。」

 

 ――はっ?

 

「詳しい話は後程しますが、転売屋かつβテスト参加者が他のβテスターに事情を話して400本程のソフトを確保してくれました。これで目標本数は3000本。希望が見えてきました」

 

「そして、我々は事前の計画通りに行動を開始。事前に作成した購入報告カウンターのアプリによれば発売開始5分で1547本も買えました」

 

 ――そんなアプリまで作っちゃったんですか!?

 

「作っちゃったんですよねー。計画を提案して主導もしましたが動き出せば暇でしたから。空き時間にパパっと」

 

 ――犯人あなたでしたか……。それで、この時点で抑えられたのはおよそ3500本ですね。残りはどうしたんですか?

 

「時間経過と共にカウンターは伸び悩み、昼からの各店舗の営業開始ならびに販売開始を控えた状態で1985本でした」

 

「この段階で2500本はいってると思ったのですが、この数字には我々も予想していない自体が起きていたんですよ」

 

「……黒船が日本に来ていたことが判明しました」

 

 ――黒船?1853年にやってきたマシュー・ペリーの?

 

「例えですけどね。各店舗で外国人が目撃されました。話を聞くと中国を始めとしたアジア系からアメリカ系、ヨーロッパ系の目撃情報が相次ぎました」

 

「そいつらはなんと、海外の同業者だったんですよ」

 

 ――同業者!?転売屋の!?

 

「ええ。ソードアート・オンラインは国内限定販売でした。ですが、茅場は世界中で人気のゲームクリエイターです。どうしてもプレイしたいと考える海外の人もいるわけで」

 

「同時に大きなビッグチャンスでもある、と考えたようで多くの海外転売屋が日本になだれ込んでいたのです」

 

 ――よ、世も末だ……!!

 

「その全体数は不明でしたが、戦力数としてはこちらが負けていました。流石に勝ち目がない、と思ったその時――私に天啓が走りました」

 

「海外転売屋を味方に付ければいい。無理に彼らと争う必要はないのだから、ってね」

 

 ――そ、そうきましたか!いったいどんな手を使ったので!?

 

「こういうことしてると、不良在庫ってものは抱えがちなのが転売屋じゃないですか」

 

「でもそれは日本国内なら不良在庫でも、海外なら売れるケースもある。ならその在庫とSAOをトレードしないか、ってね」

 

「それぞれの海外転売屋に欲しい商品を聞いて、我々の中で在庫を抱えてる転売屋を斡旋する。それで格安交渉してもらったりと……おかげで多くのSAOをこちらが入手することができました」

 

 ――その。この時点でのキルスコア……購入数はいくらで?

 

「6231本です。昼の販売を控えてこれは衝撃でした」

 

 ――目標数思いっきり越えてるじゃないですか!衝撃過ぎる……!

 

「ですが、これで終わらなかったから奇跡が起きたんですよ。海外転売屋に気のいい人たちがいて、我々の買い占めに協力する人たちを確保できました」

 

「これなら昼からの販売分も大きく抑えることが出来る……!そう確信した私は計画を大きく練り直し、人員を再配置。昼からの買い占めに向けて大きく動き始めました――」

 

 

 

 

「そんな転売屋の司令塔だった私のことを海外転売屋はキャプテン・ジャパンと呼んでましたね」

 

 ――キャプテン・ジャパン。

 

「だって我々の通称がアベンジャーズだったんですもん。茅場に復讐するためにゲーム買い占めるクレイジー集団」

 

 ――市場最悪のアベンジャーズじゃないですかそれ。

 

「一部店舗前での集合の合言葉はアベンジャーズアッセンブルだったとか」

 

 

 

 ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 

5:転売でくたばってほしかっただけでくたばるとは思わなかった

 

 

 

「こうして日中米欧アベンジャーズの戦いが始まりますが特に語る場面もないので省略します」

 

 ――酷いアベンジャーズだ……

 

「「こんなに面白いゲームをうちの国で販売しない茅場は許さん!」って感じで復讐心抱いてる人多かったですしね、アッセンブルせざるを得ない」

 

 ――醜いアベンジャーズだ……

 

「で、最終的なキルスコアですが――こちらが把握してる数で8229本です」

 

 ――8割越えてる……うそでしょ……

 

「事実です。押さえられなかった事前予約組にも海外転売屋が関わってたりしたので、そっちも押さえてこの数字ですね。実際は計画参加者含めるともっと多いかもしれない」

 

 ――計画?

 

「ええ。話題を戻しますけど、いくらなんでも転売屋がゲームを楽しむβテスターのソフトを抑えられたのはおかしいと思いませんか?」

 

 ――確かに。あんな面白い世界を知ってプレイしないどころか転売するのは不思議です。

 

「あれには裏がありましてそもそもの話、我々は「転売」を目的としていなかったんです」

 

「転売するよりも茅場に確実にダメージを与える方法、それは「プレイしないこと」。これでした」

 

 ――な、なるほど!確かにそれはキツい!精魂込めて作ったゲームを遊んでもらえないのはクリエイターにとってもっとも厳しい!!

 

「これならお手軽でしたし、ソフトを売ってくれない海外転売屋の方でも茅場に上述の恨みはありましたから協力を要請できました」

 

「転売自体は後でも出来る。プレイしないだけなら誰でも出来る。お手軽な嫌がらせですよ」

 

「βテスターにもソフトを買えなくてもプレイしないでくれ、と頼むくらいのことはできますからね。もっとも断られる可能性もありましたが……こちらにも切り札がありました」

 

 ――と、いいますと?

 

「例の外装バイヤーの分解報告です。電磁パルス暴走でナーヴギアを破壊できる、ということは人体に影響を与えることも可能じゃないですか」

 

「そこに話を盛りました。事前に販売店から横流ししてもらったSAOのROMにこの信号を発生させる恐れがあるプログラムがあった、って」

 

「……ようするに。殺人を起こしかねないバグがあった、という話をしたんですよねー」

 

 ――そ、その。どこまでがデマ……ですか?

 

「横流しからデマですね。そっちは結構塞がれてて入手経路にならなかった。ROMの解析もプロテクトキツくて出来なかった。でも、分解バイヤーがナーヴギア吹っ飛ばしたのは事実です」

 

「その写真なり映像なりを見せてβテスターにプレイを思いとどまらせることに成功。その数がおよそ400人だったんですよ」 

 

 ――はぁー。そういうことだったのか……

 

「こうして作戦を成功させた我々はサービス開始日である11月6日にはプレイしないつもりでした」

 

「なんなら集めたSAOのソフトのうち約5000本くらいを私の部屋に並べて皆で祝杯上げてましたよ、当日。後で写真撮って茅場を煽るつもりだった」

 

「アクティブユーザー10000人想定のゲームで1800人くらいしかログインしてない。茅場は今ごろ悪夢を見てる気分だろうなー、っと思っていた夕方頃です」

 

「……事件が発覚しました。」

 

 ――例の臨時ニュースですね。17:00頃に流れた奴でしたか。

 

「はい。SAOにログインした人がログアウトできておらず、ナーヴギアを無理やり外すと死亡することが世間に知れ渡りました」

 

「我々も騒然としましたよ。せっかく買い占めたSAOがとんでもない欠陥を抱えていたことが分かったんですからね」

 

 ――私もゾッとしました。所用でログインしてなかったんですが、いざログインしようとしたタイミングでこのニュースですよ。

 

「同時に、茅場晶彦が行方不明になっていることも明らかになった。この事件は茅場の仕業なのか、はたまた誰かが茅場を誘拐して引き起こしてるのか……」

 

「色々な議論がテレビでもSNSでも行われてましたし、私たちの中では……あ、意外と起きてなかったかも」

 

 ――はい?議論してないので?

 

「だって私たち、茅場憎しで集まってる集団ですよ?絶対茅場犯人説で固まりますよそりゃ。なんかよくわからんが茅場が悪い!」

 

 ――(苦笑)

 

「なので主に議論されてたのは動機ですね。自分のミスで事件が発生して慌てて逃げたとか、身代金目的のフルダイブ誘拐だとか」

 

「中には茅場主催デスゲーム説もありましたしなんならそれが事実でしたけど、結論は出ませんでした」

 

 ――……で、どうなったんですか?

 

「いくら議論しても茅場の真意は分かりませんが、我々の行動は決まりました」

 

「SAOを用いた殺人方法があるのなら、手元にあるこのソフトは危険物だ。それを抱えているのはよろしくない」

 

「なにより、私たちは例の外装バイヤーの映像でナーヴギアがヤバイことを知ってましたからね」

 

 ――そして……例のキセキが起きる、と。

 

「……はい。仲間たちで連絡を取りあってとある映像の生収録と生配信を決意しました」

 

「私がその辺の河原で山積みにしたSAOのソフトに火をつけようとする動画ですね」

 

「で、火をつける前に私たちがSAOを買い占めまくったことと、事件に関わってないことを述べた上で例の外装バイヤー提供のナーヴギア爆発映像流してナーヴギアが危険であることの注意喚起」

 

「そして、茅場を死ぬほど煽りまくりましたね!何がしたいのかは知らないけどSAO買い占めまくったからプレイヤー数少ないよ!なんならこの状況で新規プレイヤーは増えないね!とか煽りに煽る」

 

「最後にこのソフトはこれから灰になるけどどんな気持ち?どんな気持ち?とか煽ってたら茅場本人から電話きて文句言われましたね」

 

 ――来てましたねぇ。それまでのイメージからは想像できない怒声と罵声を浴びせてましたねぇ。

 

「それを聴いてた私ですが、ぶっちゃけ茅場の言い分なんてどうでもよかったのでそのままSAOを燃やしました。茅場の悲鳴聴きながら笑ってたっけ?」

 

 ――笑ってましたねぇ。こいつやベーな、と思ってました、はい。

 

「正直ですね(笑)。で、茅場の悲鳴にいつの間にか物音が混じり始めたんです。最後らへんの聞こえたのは「確保ォ!!」って声だったかと」

 

 ――で、その数分後にあなたも逮捕されて配信終了、と。

 

「……届け出出さずに河原で焚き火してましたからねぇ。そりゃ違法ですよ。それで懲役くらいましてしばらく監獄暮らしでした」

 

 

 

 

 

「そういや、何の因果か留置場で茅場が隣の部屋だったので煽ったのを思い出した」

 

 ――どんだけ茅場のことを苛めてるんですかあなた……

 

 

 

 ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 

6:事件の終幕、そしてこれからは転売しない

 

 

 

 ――あれ、結局どういうことだったんです?

 

「どうやら配信して数分のうちに警察が私の身元を特定したみたいで。それで連絡入れようとしたら茅場から連絡が入ったので、茅場の身元を逆探知して以下略。」

 

 ――そ、そんな方法で……

 

「ちなみに私は付近の住民に不審者が焚き火してるとの通報を受けて逮捕されました」

 

 ――事件に詳しい先輩から話を聞いたら絶対お前真相知ったら笑うぞ、と言われましたがまさかこんな話だったとは思いませんよ。

 

「こっちもそうですよ。面白がって転売しようとしてたら大量殺人犯の殺人防いじゃうとか誰が思うよ」

 

 ――茅場自身も想像してないでしょうね。

 

「してなかったなー。こっちの手口聞いたら最終的には笑ってましたよ。「次にゲームを作るとしたら、AIには君のような悪意を教え込む」とか言ってたね。酷くない?」 

 

 ――あー……その、ノーコメントで。

 

「えー?何ゆえに?」

 

 ――その、やっぱり転売屋って悪ですし……

 

「(爆笑)。まあ、そうだね!その通りだよ!私もすっかり顔が知れちゃったから転売業界では生きづらいしね。足も洗ってるしこれからはまともに生きるつもりだよ」

 

「後、そのうちお金が貯まったらSAOもやってみようかな……その時は一緒にやらない?」

 

――前向きに検討して善処いたします。

 

「あっ、はい(笑)」

 

――本日は長いお話ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

「……ところで、後日送られる予定のこのインタビューが載ってる雑誌サンプル、転売しちゃだめ?」

 

 ――本当に足を洗ったんですか、あなた?




・テンバイヤー
 SAO始めたら記者にデュエル申し込まれてスターバーストストリーム決められた。
 是非もないしなんなら上位版のジ・エクリプスぶちこまれて、どうぞ。

・外装テンバイヤー
 ナーヴギアを怒りのままに爆破したら結果的に茅場捕まった。
 もっと茅場には金の卵を生んでほしかったと供述。

・記者
 最近茅場逮捕前のソードアート・オンラインにログインしてた被害者に取材申し込んだ。
 なんかいい雰囲気になって交際始まりそうだとか。

・ソードアート・オンライン
 茅場捕まったけど早期逮捕で原作よりも犠牲者も少なかったので
 運営継続されて今も絶賛アップデート中の大人気VRMMO。
 浮遊城アインクラッドは高難易度すぎてまだ制覇されてない。
 リリースされた頃は中2だった人が記者になるくらいには長寿。

・カヤバーン
 計画を転売に潰されるとかフザケルナー!な悲鳴をあげた被害者。
 逮捕後にSAOのアップグレードが繰り返された結果、
 妖精の国の上にアインクラッドを浮かべられたりと
 魂を込めて作ったゲームも魔改造されてるので踏んだり蹴ったり。
 
 ちなみに妖精の国を提案したスタッフは
 茅場の前例があるので身元調査された結果
 婚約者の体臭データ見つかったので現在訴訟中。

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