忘れてしまった輝きを、そこに見つける事もある。
裏側にある思い、見たくない思い。
目を背けても、消えはしない。
――まったく、仲が宜しいことで。
ひなっちといのたを見ていると、本当にそう思う。相性は最高で、周りからも応援されていて。ああ、羨ましいなあ。
これでどうして、付き合っていないんだろう。いのたも何考えてるんだか、あんな風に好かれて告白までされてるのに、返事をしないなんて。菖蒲が思うより、いのたって優柔不断なのかな。割と猪突猛進というか、考えなしに突っ込みそうなんだけど。
暫くマネージャーとして側にいた限りでは、いのたは彼女いないっぽいし女子の友達もそんなにいない。……ちーちゃんとたまに仲良さそうにしてるけど、それは外して良いか。まさかあの二人が付き合うとか、そんなのはまず有り得ない。
お姉が言ってたもん、ちーちゃんが好きなのはイケメンで留学してたバスケ部の男子だって。多分あのグラデ先輩だろうけど、まだ確定はしてない。まあいのたが勝手に片想いするくらいはあるだろうけど、それはそれで大変だよなぁ。もしそうなら早めに諦めさせた方がいいな、絶対無理だから。それよりせっかくの縁なんだから、ひなっちとくっついて貰いたいな。
好きになってもらう幸せを、いのたはまだ知らないんだろう。だから返事が出来ないんだ、きっと。男子ってそもそもがバカだし、その辺鈍いもんなぁ。
菖蒲はいろんな人から「好き」を貰って、それでとっても幸せ。だって菖蒲が可愛いとか綺麗とか、そう思うからみんな好きになってくれるんだもん。
だけど、でも。好きになるのって、面倒なんだよね。
告白されて付き合いだしたら、菖蒲だって毎回頑張るけどさ。頑張るけど、なんかうまくいかない。好きになる前に飽きちゃって、彼氏彼女から友達になってしまう。良いんだけどね、ちゃんと別れれば修羅場になったりしないし。友達は友達で大事だし、ね。たまに遊び行ったりもするもん。
あの二人は、どうなるんだろうな。ひなっちはずっといのたを好きで居続けるだろうし、いのたはいのたで真面目だしうまくいきそうなんだよね。
お互いがお互いを好きな所から始めれば、そりゃ続くに決まってるんだけど、さ。
菖蒲はそれが出来ないんだよねぇ、告白された時点では名前くらいしか知らない事が殆ど。逆に親しい友達の中から告白される事って無いなあ、どうしてだろう。ある程度仲が良いと、
じゃれあっているような二人を見ながら、ふと思う。
菖蒲が最初に感じた「好き」って、いつ何処で誰にだっただろうか。いろんな人と付き合っている間に、記憶はどんどん薄れてきてしまった。仲良しの男子がいて、でも別の子から好きって言われて――どうしたんだっけ。ああ、曖昧だな。
きっとひなっちは今、菖蒲が忘れてしまった――ドキドキする気持ちに満ち溢れているんだ。そう考えると、少しだけ自分が嫌になる。
好きだと言ってくれるから、特に興味がないけど付き合って。そして飽きたら別れて、その繰り返し。この生き方は、もしかしたら……。
「ん、いや。……そんなこと、ないない」
菖蒲は間違ってなんかいない、そうに決まってる。
みんなに好かれるのが、幸せでない筈がない。
たった一人じゃ足りない、もっともっと「好き」が欲しい。
そうだ、だから菖蒲は告白されたら基本断らない。菖蒲の歩みは、正しいと信じているから。
胸の内側で膨らむモヤモヤを、菖蒲は強引に奥へと押し込める。こんなのは、いらない。好きはキラキラ輝いてて、恋は楽しい。それ以外の感じ方なんか無い、あってはいけない。
もっと明るく考えよう、だって――新しい好きな人も出来たしね。遊佐くんが栄明だったらなあ、すぐにでも告るのに。あっちは菖蒲を知らないけど、菖蒲可愛いしきっとイケるよね。その時のために、もっと輝かないと。
さぁさぁ、悩むのは止めよう。明日で合宿も終わり、楽しもう。
そう言えばキャンプファイアーのジンクスなんてのもあるし、色々考えてる事もある。菖蒲は忙しいんだ、立ち止まっていられない。
菖蒲は絶対、幸せで居続ける。そうでなければ、生きてる甲斐がないもの。