位高ければ徳高きを要す   作:CATARINA

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3話更新の3話目。
1話を読んでない方は二つお戻り下さい。














この部分はプロットさえない完全な後付け、作者なりにちょっと救いを与えたかった。
ひよったとも言える。


泡沫の夢

友人との訣別と別れの後、スレッタは再び宇宙に出ていた。

再び放たれる送電システムを停止させる為に。

エアリアル、そしてキャリバーン、二機の力を最大限に引き出す必要があった。

 

この戦いで傷付いた人を想う。

そして失われた命を想う。

 

「ニカさん……神威さん……」

死ななければならない命なんてあるはずが無いのだ。

ニカはスレッタを庇って命を落とした。

そして神威は引鉄を引かなかった。

 

 

 

「……もしかしたら、神威さん、貴方は。」

本当は、止めて欲しかったのではないだろうか。

自分ではもう止まれなくなってしまったから、ああするしかなかった。

スレッタにはそう思えた。

 

自分がもし、ニカが死ぬ前に神威を止められていたなら。

二人が死ぬ事はなかったのではないか。

スレッタはその思いを振り払う事が出来なかった。

 

『何だ、随分とセンチな気分に浸ってるようだな。らしくもない。』

「!?」

 

通信越しに聞こえるのは、死んだハズの友人の声。

辺りを見回し、背後を振り返ったところで視界に入る。

それは崩れかけの機体。

コクピットは大破して炎上し、左腕は失われている。

スラスターには火が入っていない、にも関わらずMSは宇宙空間で静止していた。

 

『あ、あ、ああ。』

『何だお前、幽霊でも見たような反応をして……傷付くぜ。』

『神威さん、どうして……』

『分からん!いや、冗談じゃなくな、本当に俺にもよく分からねぇんだが。』

 

そう言って神威は残った右腕で壊れた胸部をカンカンと叩く。

 

『まぁ、多分俺は死んだんだろうな。それは間違いない。

流石のこの俺でもこの状態じゃ生き残れはしないからな。』

『じゃ、じゃあでもどうやって今喋ってるんですか!?』

『……まぁ、意志ってところか。荒坂神威って男の強い意志が、最期の最期に機体に焼き付いて今の俺に至ってる……んだと思う、結局分からねぇ。分からんが……』

 

そう言って神威はヒートサーベルを構える。

 

『何となく、意志は分かるぜ。荒坂神威の最期の願い。それはお前と決着を付ける事だ。

荒坂重工の長としてでなく、破壊を齎す王としてでもなく。ただ純粋に決着を。

一人の戦士としてもう一度戦いたい、そう思ったんだろう。』

 

スレッタは面食らったように暫く硬直したが、神威の意志が固い事を理解するとサーベルを引き抜き、腰だめに構えた。

 

『俺が言えた義理じゃないが、良いのか?時間もないだろうに。』

『……それが貴方の望みなら。』

『そうかい……やっぱりお前は馬鹿だな、愛してるよ。感謝する、最高の気分だ。』

 

大仰に腕を開き、カラカラと笑う様に振るう。

 

()の意識が持つのはいつまでだ?一時間か、一分か、一秒か。

或いは次の瞬間にも機体が吹き飛んで何もかもなかった事になるかもしれん。

だが、それで良い。王として生きる退屈な無限よりも、ずっと良い。

何のしがらみもなく生きる人としてのこの刹那の時が、俺にはあまりに尊い。』

 

お互いに加速し、鍔迫り合い。

隻腕のカグツチは力比べを避け、刀身で一度受け流す。

僅かに出来た隙で確実に仕留めんと、キャリバーンの頭部に刺突。

装甲の表面を焦がされながらギリギリのところで回避したキャリバーンはその勢いのまま、遠心力で更に加速し、カグツチの身体を袈裟懸けに切りつけた。

 

時間にして、ほんの数秒。

それだけの決着だった。

 

『ハハ、強いな。全く、嫌になる……勝つ為に何もかもの手を尽くして、人の姿さえ捨てたと言うのに……全く、これだから……これだから、人の生というのは……』

 

今度こそ本当の敗北を得た神威は笑う。

 

『……邪魔をしたな。さぁ、行け、お前の成すべき事を成せ。あと少し、見届けてやるよ。』

『はい……ありがとうございました、神威さん。』

『おう。』

 

 

 

そうしてスレッタ・マーキュリーは奇跡を起こし、皆を救った。

消滅したキャリバーンから投げ出されたスレッタの身体を残った腕でそっと抱える。

『何をするかと思えば、本当に奇跡を起こしたな……スケールでも負けた気分だ、だが。』

神威はコクピット跡を器用にまさぐり、目的のモノを引っ張り出す。

 

『おお、救難ビーコンが壊れてないのも奇跡的だな。全く……

お前が死んじゃ意味がないだろうが、本当に馬鹿だなお前は。

俺に勝ったんだ、生き延びろよ。お前にはその権利と義務がある。』

 

意識のないスレッタにビーコンを抱えさせると、傷付けないようそっと放る。

これからすることを考えたら、なるべく離れた方が良い。

お前の覚悟は確かに見届けた、俺は俺の義務を果たそう。

 

『さて、送電砲は使用不能、このままだと議会連合は壊滅、となれば来るよなぁ。』

 

そう言って神威が見やった方向には、残存する全ての戦力を動かした議会連合の艦隊。

議会連合にも後がない、どうにかして全ての証人を口封じする必要があった。

尤もその数は全盛の数割未満、彼らの未来を表すかのような衰退である。

 

『往生際が悪いんだよ、敗者は敗者らしく、勝者に道を譲るのが筋だろ。

負けたんだよ、俺もお前たちも。だったら黙って消えれば良い。

……機体が万全なら何の問題もなかったが、あとは持つ事を祈るのみか。』

 

一言呟き、神威は加速する。目標は連合の艦隊。

限界を超えた速度に、崩れかけの機体が砕けていく。

接近する謎の飛翔体に、対空防御が反応し更に機体を削っていく。

機体が欠ける度、0と1で構成された何かが崩れていくように感じた。

 

自らを慕う社員たちを想う。

俺はただ、お前たちを肯定してやりたかった。

生まれながらの悪、そうだとしても生きていて良いのだ。

そう認めてやりたかった。

 

最後まで迷惑をかけた学友たちを想う。

悪いな、俺にはこれしか選べなかった。お前たちは未来を選べるよう祈る。

進んでも、逃げても良い。だが、止まることないように。

俺のようになるな。

 

地球に残した妻たちを想う。

……悲しませたくなかったんだがな。

何もかもに絶望したお前たちに、与えてやりたかった。

温かい食事、安全な寝床、家族。何もかも。

また失わせてしまう事を、申し訳なく思う。

 

自らが殺めた友を想う。

気付くのが遅過ぎた。

幸せにしてやりたかった、そう思えた時には遅い。

もし次があるなら……そんな奇跡があるハズもないが。

その時には、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最早MSのカタチさえ留めぬ程に擦り切れて、目的地に辿り着く。

この機体のオーバーロードすりゃ、残った全部巻き込むくらいは何とかなるだろ。

俺の意図を勘づいたのか、焦る乗員の思念が流れ込む。

『今更ジタバタしても遅えって……』

皆の未来の為に一緒に死んでくれ。

 

まぁ、悪くなかったよな?

王として生きる覚悟を決めた割に、それは叶わず。

それでも次に繋げる事が出来る。

最期には、人として死ねる。

悪くない。

俺には勿体ないくらいだ。

 

 

思い残す事も、後悔ももうない。

 

内側から全てを破壊する爆発を感じ、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファンネルミサイルの使い方は間違ってた気がするな。

それとシールドビットは二つで十分だ、リソースの配分は見直したい。

決まり手の誘爆、初めてスレッタに負けた時と同じだ、学習しないな……

ハハ……後悔も、未練も幾らでもあるな。

ああ、悔しい。

 

 

 

 

 

…………勝ちたかったな。

 

 

 

 

 


 

目を覚ます。

涙で濡れた顔を擦り、時刻を確認する。

深夜二時。

私はどうしようもない不安感に襲われ、部屋から抜け出した。

 

補助灯以外は真っ暗な道を壁伝いに歩き、目的の部屋に到着する。

扉の隙間から漏れる光と音が主の存在を証明するようだった。

 

「ん、どうしたスレッタ、随分な顔だが……悪い夢でも見たか?」

「…………」

 

スレッタは何も言わず、座ったままの神威を抱き締める。

 

「ふむ、悪い夢を見たのは合ってるようだな。話くらいは聞くから離してくれないか。」

「…………」

「……分かった、このままで良いから話せ。似たパターンの経験はある。」

 

ギチギチと頭蓋が軋む程の力で締め付けられながら、神威は諦めたように呟いた。

 

 

その後ぐずるスレッタから話を聞き、どうにか落ち着かせ、寝室に運べば朝の五時。

 

「結局徹夜になってしまった。なるべくちゃんと寝ないとニカが怒るんだよな……」

 

ボヤきながら少し仮眠を取るべく目を閉じる。

スレッタから聞いた話は荒唐無稽……という訳でもなく、寧ろ興味深いとさえ思えるモノだった。

 

「……そうなってたかもしれないからな。」

 

あくまで王として、自らの務めを全うしようとした荒坂神威の末路か。

……皮肉なモンだな。

人として死ぬ覚悟を決めた俺は王として生き続ける事になった。

王として生きる覚悟を決めた荒坂神威は人としての死を得た。

望むモノこそ手に入らなかったが、得難いモノを得た。

 

どちらの選択にも理があり、誤りはそこにない。

ニカを俺が手にかけたというなら、それは嫌だが。

自らの選択に後悔はない。

今の自分が荒坂神威という人間にとって最高のアガりを迎えた事は疑いようもない。

だが……得ることが出来なくなったモノがあるのも事実。

俺の望みの一つである、『戦いの中で戦士として死ぬ』そして『スレッタ・マーキュリーとしがらみなく、正々堂々の殺し合いで決着をつける』は最早叶いそうにない。

易々と死ねる身ではないし、後者もスレッタが死ぬくらいなら叶わなくて良い。

心からそう思っている。

 

「だがまぁ、羨ましいよ。」

 

どんな気持ちだったのか、どんな想いだったのか。

それを考察する事は難しくなく、きっと心躍る事だろう。

それでも俺はそこで思考を閉ざした。

 

「その想いも、その記憶も、その感情も、お前だけのモノだ。そうだろ?」

 

荒坂神威という男は自らの所有物を奪われる事を何より嫌うのだ。

だから詮索はしない。

大事にしろよ、そう考えて意識は微睡みの中に落ちていった。

 

 




社長(if)……最期にほんの一瞬だけ救われた男。
尚、この後の世界は荒坂神威の死で混沌とするがお互いに手を出せなくなる為宇宙と地球の両方で数年ほどの空白期間が生まれた模様。
自分が死んでそうなる事もプランの一つとして考えていた。



お労し三連投稿。長文失礼しました。
個人的にはこっちの方が好きだけど元々の終わりの方が綺麗だよな……とも思う。
心が二つある。
一応タグとしては『完結』にさせて頂きます。
といっても影武者くんの下りとか設定だけのお話が幾つもあるのでその辺もお出し出来れば……と思っております。その際には再度お付き合い下さい。
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