楽しい時間のその狭間。
ふとした時に、思うこと。
裏も表もあるけれど、でも。
本当のところはまだ、分からない。

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朝読んだ時点では菖蒲ちゃんの話にするつもりだったんですけどね、恋愛観の話はこないだもしたので。


アオのハコ#77 SideB

 赤々と燃えるキャンプファイヤーを囲み、皆思い思いに騒いでいる。明日の今時分はもう学校に着いているだろう、今夜は合宿最後の大きなイベントだ。

 ……とは言え明日も、バスが出る17時までは練習だけど。再来月にはウインターカップもあるし、先輩方を気持ち良く送り出すためにも鍛練は大事大事。

 だけど、でも。こうやって息を抜く事も、やっぱり大事だ。張り詰めていたって、疲れてしまうだけ。休むべき時は休もう。

 そう思えるのは、多少なりとも気持ちに余裕が持てるようになったからか。

 やっぱり、花恋に話して良かったな。

 お陰で胸に抱いているこの感情が、――好意なのだと知ることが出来た。

 

 大喜くんと蝶野さんの距離に、少しだけモヤモヤとし始めたのはいつからだったか。同居が始まったばかりの頃は、むしろ二人を応援するつもりでいた気がするのだけれど。

 少なくとも県大会の前には、私はそうなっていた。なってしまっていた。

「蝶野さんが羨ましいな」

 コンビニ前で大喜くんと蝶野さんがじゃれあっているのを見て、思わずそう言ってしまったのを覚えている。あんな風に笑いたい、近付きたい、……触れてみたい。

 なのに私は、それを恐れてしまった。

 夏風邪で倒れた大喜くんに触れたあの時、胸が高鳴るのと同じくらい私は恐怖したんだ。こんな気持ちは知らない、知りたくない。私を掻き乱す感情なんか、欲しくない。そう思って距離をおこうとしたのに、そうなると逆に寂しく思える。

 二律背反のまま心を削られていき、私はどんどん自分を見失うばかり。そして夢を果たせないまま、インターハイで惨敗を遂げた。その上大喜くんはどんどん蝶野さんとの距離が縮まって、告白まで受けていて。そしてそれについて何も言ってくれないのが、辛かった。自分から離れようとしたくせに、身勝手な理由で傷付き拗ねて追い詰められていく。

 もう――どうして良いか分からないまま、あの日。誕生日を迎えた私は、支えてもらいたくて大喜くんを求めた。弱い自分をさらけ出し、寄り添ってもらって、漸く気が付いた。

 私は大喜くんを、()()()()()()()と。

 

 この気持ちが世に言う恋心なのか、私にはまだ分からない。何て言うか私の場合、そういう事自体がよく分からないんだ。今までそんな甘酸っぱい話に縁がない、ワンパクで逞しい子に育ってきたものだから。

 誰かを好きになって、誰かに好きになられて。デートしたりキスしたり、それ以上の……まあ……そういう事をしたり、とかはどうも考えが及ばない。

 でも花恋には「どこかで好きだと思ったら、躊躇わないで。ちーには、悔いの無い恋をしてほしいから」とか言われたし、漠然としたままではいられないか。

 ――そう言えば、そう言えば。このキャンプファイヤーには、ジンクスがあるんだったか。この炎の前で告白して成功すれば、その後もずっと上手くいくだとかそんな。まあ考えてみたらそれは、ジンクスでなくて現実だけど。人前で告白しても受け入れられる程の間柄なら、放っておいてもそのまま上手い具合に話が進むに決まっている。

 どうでも良い事をそんな風に考えながら、ふと私は気が付いた。賑やかな光景の何処を見ても、大喜くんの姿が無い事に。

「……ん」

 よくよく見れば、蝶野さんもいないな。あと菖蒲ちゃんも見当たらない。

 ……まさか。いや、まさか……そんな。

 でも菖蒲ちゃんは「恋をするのに時間は関係ない」とか言っていたし、蝶野さんも蝶野さんでもう一度告白するかもしれない。

 そうなると、……もしかしたら。これは結構、良くないのではないか。

 私の心を写したように大きく揺れている炎を見ながら、ため息を一つ吐いて願う。

 この心配が、杞憂であるようにと。


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