ふとした時に、思うこと。
裏も表もあるけれど、でも。
本当のところはまだ、分からない。
赤々と燃えるキャンプファイヤーを囲み、皆思い思いに騒いでいる。明日の今時分はもう学校に着いているだろう、今夜は合宿最後の大きなイベントだ。
……とは言え明日も、バスが出る17時までは練習だけど。再来月にはウインターカップもあるし、先輩方を気持ち良く送り出すためにも鍛練は大事大事。
だけど、でも。こうやって息を抜く事も、やっぱり大事だ。張り詰めていたって、疲れてしまうだけ。休むべき時は休もう。
そう思えるのは、多少なりとも気持ちに余裕が持てるようになったからか。
やっぱり、花恋に話して良かったな。
お陰で胸に抱いているこの感情が、――好意なのだと知ることが出来た。
大喜くんと蝶野さんの距離に、少しだけモヤモヤとし始めたのはいつからだったか。同居が始まったばかりの頃は、むしろ二人を応援するつもりでいた気がするのだけれど。
少なくとも県大会の前には、私はそうなっていた。なってしまっていた。
「蝶野さんが羨ましいな」
コンビニ前で大喜くんと蝶野さんがじゃれあっているのを見て、思わずそう言ってしまったのを覚えている。あんな風に笑いたい、近付きたい、……触れてみたい。
なのに私は、それを恐れてしまった。
夏風邪で倒れた大喜くんに触れたあの時、胸が高鳴るのと同じくらい私は恐怖したんだ。こんな気持ちは知らない、知りたくない。私を掻き乱す感情なんか、欲しくない。そう思って距離をおこうとしたのに、そうなると逆に寂しく思える。
二律背反のまま心を削られていき、私はどんどん自分を見失うばかり。そして夢を果たせないまま、インターハイで惨敗を遂げた。その上大喜くんはどんどん蝶野さんとの距離が縮まって、告白まで受けていて。そしてそれについて何も言ってくれないのが、辛かった。自分から離れようとしたくせに、身勝手な理由で傷付き拗ねて追い詰められていく。
もう――どうして良いか分からないまま、あの日。誕生日を迎えた私は、支えてもらいたくて大喜くんを求めた。弱い自分をさらけ出し、寄り添ってもらって、漸く気が付いた。
私は大喜くんを、
この気持ちが世に言う恋心なのか、私にはまだ分からない。何て言うか私の場合、そういう事自体がよく分からないんだ。今までそんな甘酸っぱい話に縁がない、ワンパクで逞しい子に育ってきたものだから。
誰かを好きになって、誰かに好きになられて。デートしたりキスしたり、それ以上の……まあ……そういう事をしたり、とかはどうも考えが及ばない。
でも花恋には「どこかで好きだと思ったら、躊躇わないで。ちーには、悔いの無い恋をしてほしいから」とか言われたし、漠然としたままではいられないか。
――そう言えば、そう言えば。このキャンプファイヤーには、ジンクスがあるんだったか。この炎の前で告白して成功すれば、その後もずっと上手くいくだとかそんな。まあ考えてみたらそれは、ジンクスでなくて現実だけど。人前で告白しても受け入れられる程の間柄なら、放っておいてもそのまま上手い具合に話が進むに決まっている。
どうでも良い事をそんな風に考えながら、ふと私は気が付いた。賑やかな光景の何処を見ても、大喜くんの姿が無い事に。
「……ん」
よくよく見れば、蝶野さんもいないな。あと菖蒲ちゃんも見当たらない。
……まさか。いや、まさか……そんな。
でも菖蒲ちゃんは「恋をするのに時間は関係ない」とか言っていたし、蝶野さんも蝶野さんでもう一度告白するかもしれない。
そうなると、……もしかしたら。これは結構、良くないのではないか。
私の心を写したように大きく揺れている炎を見ながら、ため息を一つ吐いて願う。
この心配が、杞憂であるようにと。