転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で空爆開始です。
まずは装甲勢力の前に一番数が多いのを削らんと。





第339話 航空阻止攻撃、始まる(なおソ連式戦車跨乗兵対策の兵器を投入するものとする)

 

 

 

 さて、それは赤農空軍の第一次ノブゴロド空襲隊が壊滅した頃の事だ。

 前にも触れたが、ノブゴロドにもドイツ国防空軍(ルフトバッフェ)から出向してきているBf109G×16+Ju87E×24からなる小規模ながら直掩航空隊は存在していたし、またラドガ湖南岸に設営されたフィンランド空軍の同じくBf109G&Ju87D&E急降下爆撃機隊、ドイツ北方軍集団のロンメル上級大将麾下となっていた航空部隊のBf109GやJu87Eに加えて、Ju188やDo217などの双発機による低高度爆撃機隊、そしてMk103/30㎜機関砲を搭載したHs129B-2などの双発対地攻撃機までも投入して航空阻止攻撃を図る。

 

 ドイツ人が驚き呆れたのは、クレスツィから西北西へ向かう”集団”の密集度と行軍能力の低さだ。

 まず、先導する一部のまともな装甲部隊を除けば、歩兵主体となるであろう先陣は、まともな歩兵輸送車が存在していなかったのだ。

 そう、何やら旧式化したBTシリーズの快速戦車やそれより小さな軽戦車にドーザーブレードを取り付けたような珍妙な車両に鈴なりに戦車跨乗して移動していたのだ。

 まあ、赤軍お馴染みのエクストリーム・ロシアン・タンクデサントのтанковый десант(タンコーヴィーデサーント)といえばそれまでだが、ここまで大規模な物は誰も見たことが無かった。

 それでもデサント兵はまだマシと言えるかもしれない。

 何しろ、時代遅れとはいえ戦車は戦車だ。

 その戦車に後ろに連なる雑多な……とにかくエンジンがついてて走れば何でもいいと言うようなほとんど非装甲の車両群にも同じくデサント要員が鈴なりにぶら下がっていた。

 何やら東南アジアの発展途上国に関する資料映像に出てきそうな情景であるが、ここは生憎とユーラシア大陸北西部で戦場だ。

 だが、200万人を超える行軍というのは普通出来ることではなく、やはり車両が足りずあぶれた者達が出ており、それが長い列として動いていた。

 

 赤軍と彼ら彼女ら栄光ある”赤衛国際革命旅団(Красная гвардия Интернациональной революционной бригады)”がノブゴロド攻撃の最前線基地としていたのは、ノブゴロドより東南東70㎞程にある都市”クレスツィ”。

 そこより先に拠点が作れないのは、適度な場所が無いのと、もし万が一クルスクの時のようにクルップK5”レオポルド”がノブゴロドに持ち込まれていたら、一方的な戦略”列車砲”砲撃を恐れての処置だった。

 実際、サンクトペテルブルグに”レオポルド”が持ち込まれたという情報もあるので、その射程内に攻略拠点を置くことなどできなかったのだ。(※なお、これは意図的に漏洩された欺瞞情報であり、サンクトペテルブルグにこの時期、”レオポルド”は無かった)

 

 つまり”赤衛国際革命旅団”約230万人の内、かなりの面々が徒歩で決死行軍をしなければならないのが現状だった。

 

 そして、その後ろから猟犬が羊の群れを追い立てるように進軍するのは赤軍正規兵力70万。

 アメリカよりレンドリースで戦車だけでなく待望のハーフトラック、軍用トラック、四輪駆動車(ジープ)などの野戦車両が届いたため、ようやくまともな自動車化ができたようだ。

 そして、軍用牽引車(トラクター)に牽引され多くの重砲が持ち込まれようとしており、またソ連の代名詞とも言える車載型”カチューシャ”多連装ロケット弾発射機もその活躍の時を待っていた。

 

 

 

 だが、とても残念な部分がある。

 総勢約300万の確かに巨大な軍勢だが、その内訳は前述の通り”赤衛国際革命旅団”230万人に赤軍正規旅団70万。

 明らかに装備劣悪な低練度の230万の満足に言葉が通じない雑兵を、こちらも決して高練度とは言えない正規兵70万で統率し敵地まで引率して戦わせようというのだ。

 そのミッションの難易度は高く、故に苛烈な手段を用いなければ達成は困難だった。

 そうであるが故の督戦(・・)”権

 70万の部隊員は、密かに全員が督戦権を持っていた。

 督戦とは『士気や戦意の低い味方を、背中から火力で鼓舞すること(ソフト表現)』であり、『殺されるなら敵と味方のどちらが良いか選ばせる行動(直接表現)』である。

 故に道案内として先導している部隊を除けば、正規軍は”背中”に陣取り移動しなければならないのだが……それが結果として、せっかく自動車化したというのに、その持ち味である機動力を殺してしまっているのだ。

 

 これは致し方無い部分もある。

 ”赤衛国際革命旅団”として集められた紳士淑女は、少々ソ連式モラルに馴染めなかったのか、訓練途中で反革命思想にとりつかれて故郷の土ではなく悠久なるロシアの国土に還ったのだから、”安全装置”は組み込むべきと考えたのだろう。

 遅いか早いか、あるいは多少場所がずれるかだけの問題のような気もするが……ちなみにその人数は二桁万人に届く程度。ソ連ならば誤差の範囲だ。

 集まった300万人のうち3%が、反革命的になった程度ならむしろ”優秀な赤衛”と言えるだろう。

 実際、たかが3%を粛清しただけで残りの97%がより革命に邁進するようになるのなら、十分に意義深い行動だったと言える。

 

 実際、目に見えるダメージも少ない。例えば、ノブゴロド遠征に参加する”赤衛国際革命旅団”が正真正銘の230万人から約230万人とか230万人弱という表記に変わる程度だ。

 だからこそ、赤軍正規旅団は機動力を減じられているのは何とも皮肉だ。

 

 そして現状、事態は『ソ連の、厳密には”ベリヤの思惑(・・・・・・)”通り』に動いていた。

 ドイツ軍の航空隊は”大地を覆うように進軍する230万人”の『幻惑効果』により、それらを阻止するための空爆を集中させ、赤軍本隊にはこれといったダメージは無かった。

 これこそが、本当の”ベリヤの狙い”であった。

 

 正直に言えば、革命家気取りの”赤衛国際革命旅団(がいこくじん)”などいくら死んでも構わないのだ。

 ドイツ軍を疲弊させる為の”囮”(デコイ)となればそれは十分であり、それでも200万人を超える人間は簡単に殺しきれるものではなく、それらの死体でノブゴロドの防衛線が”舗装”され、赤軍本隊の進撃路が確保されれば採算がとれるとさえ考えていた。

 事実、集められた銃器は精々作戦参加人数の半分。優先配備されるのは当然、ノブゴロド攻略の本命たる赤軍である。

 この状況で赤衛国際革命旅団を真っ当な戦力として計算するほどベリヤはめでたくはできていない。

 

 無論、全てが計算通りという訳では無い。

 流石に投入した600機のうち、成果が上げられないまま500機以上が未帰還になるとは考えていなかった。

 おまけに帰還できた機体もその多くが損傷機であるか、パイロットが負傷していたりで燃料と弾薬を補給し即時再出撃できる機体は、参加機の5%程度だったという。

 これはドイツ北方軍集団航空隊、フィンランド空軍、サンクトペテルブルグ市民軍(ミリシャ)航空隊のレーダー地上管制を受けた濃密な戦闘機防空網が効果的に機能したこともさることながら、ベルリン・シリーズのレーダー新”Zuse”型演算機、日英だけでなくドイツでも実用化し量産体制に入っていた電磁波式近接信管などが導入された”発展型カムフーバー・防空システム”が効果的に作用したせいでもある。

 鉾となったのは戦闘機だけでなく対空砲火、特にレーダー・アナログ弾道計算機統制85㎜高射砲群と近接信管の組み合わせは、鈍重な爆撃機にとっては少々ではないほどに凶悪だったようだ。

 

 勿論、モスクワとその周辺基地から一度にノブゴロドに投入できる機体が基地の収容限界などで上限600機というだけであり、レンドリースを含めたソ連の保有航空機の数から考えれば、機体が枯渇するということは無い。

 特にこの時代、北海ルートは壊滅したがペルシャ湾→ヴァルガ川ルートや渤海→シベリア鉄道ルートで運ばれるレンドリース品の巨大集積地がありそれ自体が工業都市でもあるモスクワに近いニジニ・ノヴゴロド、カザン、ウリヤノフスクなどから新たな機体とパイロットを持ち込めば、即座に戦力補充が可能だった。

 

 だが、ここでも計算違い起きたのだ。

 ・ウリヤノフスク→ノブゴロド:約1100㎞

 ・カザン→ノブゴロド:1100㎞弱

 ・ニジニ・ノヴゴロド→ノブゴロド:800㎞弱

 

 つまりこの距離を作戦行動半径に治める航空機は、上記の三都市の基地から飛び立ち、大損害を受けた。

 そして、航続距離の短い戦闘機を一度、前線に再配置するには当然のように移動時間がかかる。

 そして、モスクワ防空の任務に就いている赤色防空戦闘機隊は迂闊に外せない……万が一にもそれをドイツに勘づかれたら、十中八九再び爆撃機が全方位から飛んでくるだろう。(そして、その予想はあながち的外れではない)

 

 こうして戦場の空に一時的な空白が生まれた。

 そして、それがドイツ・フィンランドの爆撃機隊の張梁を許し、想定以上に赤衛国際革命旅団の損害を拡大させていた。

 

 もっとも、これは戦場の空白を見逃さなかった(何しろ防空レーダーに敵機の反応が無いので好き放題ができる)ドイツ・フィンランドの爆撃機隊が反復爆撃も含めて思う存分に猛威を振るえた……というだけでは無い。

 搭載兵器のチョイスも良かったのだ。

 

 主に使われたのは、お馴染みの250kgないし500kg爆弾とパンツァーブリッツないしR4Mロケット弾なのだが……

 問題なのはその弾頭で、高性能炸薬と直径2㎝ほどの鉛球、鋼鉄球、焼夷(テルミット)球がしこたま仕込まれた、”対人/対軽装甲榴散弾”。しかも、信管は直撃/時限併用式。つまり何かに接触せず不発でも時間(ロケット燃料が燃え尽きる発射後30秒設定)が経てば勝手に爆発する。

 まさにタンクデサント兵特効の”デサント・キラー”だった。

 無論、薄い装甲なら食い破れるかもしれないし、非装甲車両なら直撃どころか至近爆発に巻き込まれてもどうなるか火を見るよりも明らかだ。

 

 密集していたせいもあるが……執拗に繰り返された波状空襲だけで、その戦死者・行方不明者と負傷者は東京大空襲に匹敵するかそれ以上と戦後の調査で明らかになった。

 参考までに書いておくと、東京大空襲の死者は遺体が回収できた人数だけで約10万5400人、負傷者は15万人以上とされている。

 大型爆撃機も使わず、入れ代わり立ち代わりの航空攻撃で、ここまで削ったドイツ・フィンランド軍が凄いのか、それともソ連正規軍を加えるとこれだけやっても多く見積もっても全体の1割にも被害が届いてないことに驚愕すればいいのか……

 ただ、赤衛国際革命旅団の面々は作戦中はケガをしても治療の為に後方に戻されるケースは希少で、基本的には放置していくか文字通りの”音声機能付き肉壁追加装甲”に使われるので、上記の負傷者と戦死者の比率はすぐに逆転するだろう。

 いずれにせよ、

 

 ”航空戦での決着にはならない”

 

 これはそういう類の戦いであることは確かなのだろう。

 しかし、だからといって航空優勢ををとった方が有利なのは変わらないので、独ソは鎬を削る。

 

 いや、一方的な消耗戦になっているような気もするが……ソ連が無限の航空機を繰り出せば、ドイツもフィンランドもサンクトペテルブルグ市民軍も疲弊し、いつかは破綻するかもしれない。

 

 もっともそれは『不死身になる妄想』に近い願望だろう。

 事実、1:20のキルレシオでスコアが進めば、確実にソ連側が先に枯渇する。

 そしてドイツ軍は、数の差をものともしない圧倒的な優位の中で空爆を続けながら、”ある部隊”の動向を窺っていた。

 

 そう、これは純粋な航空阻止攻撃に見えて、その実は低空偵察爆撃の任務を潜ませていたのだ。

 そして……

 

「見つけたな」

 

 ”ツィタデレ統合航空団”司令官のコラーはニヤリと笑う。

 

「ルーデルに伝えろ。”探していた大物(・・)発見”だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、初日の航空攻撃だけで”赤衛国際革命旅団”の被害は25万以上……
いや、確かに『装甲兵力潰すより、圧倒的多数の非装甲肉壁削るのが最優先』と対人/対軽装甲特化の集束爆弾まで大量に用意して手薬煉引いて待ってたけど、どれだけ密集して緩慢に移動していたんだか。
まあ、ソ連側が想定以上の損害でエアカバーできない状態だったので、仕方ないとはいえ……この損害を多いと考えるか少ないと考えるかで戦況判断が変わってくる模様w

ただし、ロシアの大地に還った人員の武器と食料は友軍(と言ってよいのか?コレは)に強制回収されるので、赤衛国際革命旅団の全体火力自体は人員程には減ってないようですよ?
元々どっちも定数に足りてないとかモスクワで言ったら、スリル満点のシベリア旅行が待ってますw

とはいえ、どうやらいよいよ”真打ち(ルーデル)”が飛びそうなので、ますます被害が拡大するでしょう。
というか、一体何を見つけた事やら。

次回もどうかよろしくお願いいたします。

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