転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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果たして何人元ネタがわかることやらw








第338話 ”Ju86FFZ(Frühwarnflugzeuge)”という電磁波式魔眼(?)搭載機と、そしてハ〇ケンクロイツ……

 

 

 

 唐突ではあるが……ノブゴロド、いやサンクトペテルブルグ市民軍(ミリシャ)航空隊には強烈にして凶悪な”空の目”がある。

 開発コードは”バーバ・ヤーガの魔眼(Глаза Бабы Яги)”。

 何のことはない。前にクルスが言及した”Ju86R”をベースに、『FuG240”ベルリン”』レーダーを搭載した物だ。

 

 ミリシャ航空隊における正式名称は”Ju86FFZ”

 ”FFZ”とはドイツ語の”Frühwarnflugzeuge”、つまり初歩的な”空中早期警戒機”の略だ。

 航空隊の管制まで行えるAWACSではなく、純粋な”空飛ぶレーダーサイト”のAEW(Airborne Early Warning)の方になる。

 イメージ的には最も初期のAEW機、”E-1”だろうか?

 端的に言えば、肉眼にせよ電波の目にしても、高くにあった方が遠くまで”視える”。

 特にこの時代はグランドクラッター(地上からの電波乱反射)を処理する技術が未熟なため、電波的雑音を拾わない高高度を飛行しながらレーダーを用いることはかなり有効だ。

 地表近くを飛ぶ低高度目標の探知は難しいが、中高度~高高度ならこの時代の技術でも気象条件が良ければ十分に探知ができる。

 

 さて、この機体はどこから話すべきか?

 まず、この世界線では転生者が多い首脳陣の影働きで『分割陽極型マグネトロン(いわゆる真空マグネトロン)』や『と八木・宇田アンテナ』を国家機密に指定し、概念だけを特許登録させて根幹技術は公表せずに”電探の基幹部品”として同盟国である英国とだけ情報共有し共同研究を続け、秘密裏にマグネトロンの大量生産体制を戦前に整えていた。

 実はこれこそが『米国がレーダー研究で日英に立ち遅れた根本原因』であった。

 史実では、日本で公表された真空マグネトロンが各国で研究され、1940年代に第二次世界大戦で使うマイクロ波レーダーの共同開発のためイギリスからアメリカ合衆国に技術がもたらされマグネトロンが大量生産される事になる。

 全てのレーダーの原型である”HF/DF”を開発したのは英国であり、史実でもアメリカは当初はレーダー後進国だった。

 そしてドイツは、1935年に”多分割共鳴空洞マグネトロン”という改良型マグネトロンを開発している。

 

 そして今生……『日本がマグネトロンの情報を非公開』にしているにも関わらず、同じく35年に真空マグネトロンの改良型とも言える”多分割共鳴空洞マグネトロン”の開発に成功している。誰がどう動いたか予想できる話ではある。

 

 そして、独力で『パラボラ式アンテナを持つ近代的な航空機搭載型レーダー』である”FuG240ベルリン”、水冷式マグネトロンを使い地上施設ないし4発機のような大型機プラットフォームで運用する”Fug224ベルリンA”を1942~43年にかけて立て続けに成功させていた。

 おそらく動いたのは”テレフケン”の中に紛れ込んでる転生者だと思われる。

 要するにパラボラ型アンテナ/真空マグネトロン/AスコープだけでなくPPIスコープにも対応した現代的なレーダーシステムが”ベルリン”シリーズなのだろう。

 基本、FuG224ベルリンAの地上設置型はヒンメルベッド(カムフーバー・ライン)のニューカマー・レーダーシステムとしてA/B/E/PPI各種スコープとパラメトロンを用いた新”Zuse”型演算機を備えた制御卓に接続され、司令部に隣接設置された”航空/防空管制室”という形でノブゴロドにも配備されていた。

 機載型FuG224は現在、ペイロードと機内容積が大きなFw200に搭載されて”Fw200FFZ”としてドイツ本国でテストされているが、流石にまだサンクトペテルブルグには回ってきていない。

 むしろ、大型トラック/ハーフトラックなどの野戦車両に搭載して移動式レーダーシステムとして使えるくらいコンパクトとはいえ、FuG240レーダーシステムをJu86Rと組み合わせて独自の改造機を作ってしまうサンクトペテルブルグにむしろ呆れるべきだろうか?

 その発案者のクルス大公曰く、

 

『なんかE-2とE-3の関係みたいだな……いっそ、互いの相互補完するようなシステム作ってみるか? 戦時中は難しいかもしれんが。とりあえずは原案作成だな』

 

 なんかまたろくでもない事を考えていた。

 これでドイツ圏全域に史実の戦後米国の”SAGE(Semi-Automatic Ground Environment)システム”めいた『広域半自動防空迎撃システム』が構築されるフラグが立ってしまった。

 まあ、それを言うなら電気・電子技術の先進国の自負がある日英は、官民一体の大規模共同開発で国土防空システムの”BADGE(Base Air Defense Ground Environment)システム”っぽいのや海軍の渡洋作戦に対応可能な初歩的なデータリンクシステムの”NTDS(Naval Tactical Data System)”モドキの研究を既に初めているらしいが……なんか、どれも50年代には花開きそうな気配がある。

 

 

 

 今のところは、”Ju86FFZ”は空飛ぶレーダー以上の機能はなく、索敵で捉えたデータを無線通信で地上の上記の管制室に無線通信の音声で情報を伝えるアナログ的な手段しか使えないが。

 まあ、10年後の未来に思いを馳せるのはこれくらいにして、現状へと話を戻そう。

 機上/地上の電探や先行要撃を敢行したドイツ北方軍集団戦闘機隊からの入電や”ツィタデレ統合航空団(KGZ)”よりの情報を防空管制室でまとめられたデータは、隣接したヴァトゥーチン中将が座る”統合ノブゴロド防衛司令部”へと持ち込まれる。

 

 あえて防空管制室と統合司令部が分かれている理由は、機能分与の問題。防空任務の統括は市民軍(ミリシャ)航空隊の管轄であり、ヴァトゥーチンは直轄である陸上兵力への指示や交えて判断しなければならない。

 なのでこうでもしないと情報量でパンクしてしまう。

 管制室の伝令からの情報を矢継ぎ早に巨大なアクリルボード、ノブゴロド市を中心に幾重にも同心円が描かれた”中央戦況表示板”に書き込んでゆく。

 おそらく人力頼みのアナログ的手法で行う戦術情報処理、その現時点における一つの到達点がそこにはあった。

 

「ミリシャの防空戦闘機隊は既に飛んでるんだね?」

 

「ハッ!」

 

 航空隊の情報大佐(司令部付航空参謀)がそう敬礼すると、

 

「後は彼ら、そして彼女らに期待するしかないな。女性を戦場に出すなど、”敵側”にいた頃から本来は軍人として恥ずべき行為だと思っていたが……」

 

 すると情報大佐は少し同情的な表情で、

 

「司令、残念ながら今は”国家総力戦”の時代なのです。既に古き良き時代の”神聖なゲームのような戦争”は、過去の情景となり果てました」

 

「……そうだったな。寒い時代になったものだ。元々ロシアは極寒だがね。季節は夏とそれ以外のしかない」

 

 そう苦笑気味に笑うヴァトゥーチンだったが、

 

「それに、枢機卿猊下(・・・・・)と御方の治める神聖なる地をお守りしたいと願うのに、男も女もありません」

 

 どうやら大佐は枢機卿派(ソチラ)側”の人間だったらしい。

 ミリシャの中では珍しい訳では無い……というか”大公殿下派”と二大派閥なので特にヴァトゥーチンは思うところはない。

 いや、仮にも国軍が国主(?)を呼ぶのに枢機卿という言葉が出るのに何の疑問を感じないあたり、ヴァトゥーチンも大分毒されてる気がするが……それは今更だろう。

 

 

【挿絵表示】

「なるほどな。全ては”蒼き聖なる花十字(Синий святой цветочный крест)”の為に、か」

 

「御意に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そしてハルトマンたちが討ち損じた(?)、護衛戦闘機が壊滅した赤色爆撃機隊に……

 

 

「ハーケンク〇イツ・ダイビングッ!!」

 

 なんか元気いっぱいに”クリスティアーナ・フォン・ホーエンツォレルンが愛機VG39と共に赤色襲撃機(シュトゥルモヴィーク)に殴りかかっていた。

 ま、まあその掛け声は流石にどうかと思うが、教科書通りの急降下からの迷いのない一連射をコックピットに集中させIl-2をパイロットごと「中から」爆散させた手並みは、新人としては中々に見事と言えた。

 

『……”ハーケンクロ〇ツ”って何?』

 

 そう無線機越しに当然の疑問を投げかけてくるのは、僚機を操るリーリア・リトヴァクだった。

 ちなみに疑問を投げかけている間に咄嗟射撃からの一撃離脱でSB爆撃機を1機仕留めていた。

 

 当然の疑問である。

 この世界線のドイツは……

 

ヒトラー(転生者):『シュリーマンがどうこう言う前に結局、あれは”卍”を反転させただけだろう? 生憎と私はヒンドゥーやチベット密教にも興味ないし、東洋神秘主義にも関心はない。どちらかというと、伝統的ゲルマン様式の方が好みだね』

 

 ということで国旗、国章は末広十字(クロスパティ)の一種であるテンプル騎士団にも連なる伝統ある”鉄十字(Eisernes Kreuz)”一択だ。

 まあ、航空機には国籍マークとして”縁取り棒十字(バルケンクロイツ)”も使うが。

 少なくとも”鈎十字”はこの世界線の欧州ではメジャーでもなければ、一般的に知られているような言葉でもない。

 強いて言うなら、学者が使うくらいか?

 

「えっ? な、なんとなく初陣でテンション上がったノリで……」

 

 なんか困ったように還してくるクリスティアーナに、

 

『貴女のそういうノリと勢いで生きているところ嫌いじゃないけどさ……お仕事は冷静にこなさないと”十字架(クロイツ)が立つ”事になるわよ?』

 

 十字架は欧州では一般的な墓標だ。サンクトペテルブルグの最近のトレンドは、やはり職人の腕が問われる『青い墓石で花十字を模った物』だ。

 

「了解りょーかい!」

 

『ホントしっかりしなさいよね』

 

 とぼやきつつ今度はIl-2を一連射で砕くリーリア。

 

(実戦で使ってみて改めて思うけど……VG39ってやっぱり良い機体ね。一撃離脱だけでなく巴戦も普通にこなせるし……)

 

「それで火力もきっちり有るっ!!」

 

 そう叫びながらクリスティアーナも続けてPe-2爆撃機を仕留める。

 まあ、これは前話に出てきた”薄殻徹甲榴弾”のおかげでもあるのだが。

 当然、サンクトペテルブルグ謹製のこの新型弾、地元のミリシャ航空隊に最優先で回されていた。

 

 ちなみに13㎜薄殻徹甲榴弾の装甲貫通力は8㎜とされており、これはIl-2のエンジン周囲の装甲(4~6㎜)のみならず、コックピット側面(8㎜)もギリ貫ける計算となっていた。

 そして、Il-2は装甲防御こそ硬いが、仕込んだ装甲板の重量が700kgを超え、後期複座型(通称Il-2M)と呼ばれる現行型でも最高速はレコード・コンディションで411㎞/h程度。爆装してれば当然、それよりも遅い。

 エンジンパワーは1700馬力あるが、大きな翼と大重量の為に上昇率やロール率などの運動性は正直悪い。

 つまり、MW50未使用でも250㎞/h以上速く、圧倒的な性能や火力は無くとも軽快な運動性を誇り、扱いやすく小回りが利く上に自らの装甲を貫いてくる火力を備えたVG39は、Il-2にとって『小癪を超えた天敵足りうる空の猟師』に他ならなかったのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「実戦ではどうなるかと思ったが……思いの外、やるじゃないか」

 

 戦闘中にも関わらず、そう小さく微笑むのは二人の教官でもあり、今はミリシャの戦闘機中隊一つを率いているロスマンだった。

 経験上、訓練では優秀でもいざ戦場に出ると「本気で自分を殺しに来る」殺気が充満した空気に覚えて怯み、及び腰になったり上手く敵機に接近できずに無駄弾をばら撒くというのは新人にありがちなのだ。

 自分では突進してるつもりでも、実は射程外から撃ってるだけなんていうのは本当によくある。

 他にも新米パイロットあるあるとしては、トリガーを引きっぱなしにして気がつくと残弾0になってるパターンか?

 新米は、弾が尽きる事の意味を感覚として理解していないし、その感覚を経験として蓄積できないことも多い。

 経験というのは生きていないと活かせない物だ。

 

 だが、撃墜されたとはいえ地獄と称されるスモレンスクで初陣を飾ったリーリアはともかく、お嬢様育ちのクリスティアーナが躊躇なく吶喊し突撃するのは正直、意外だった。

 

(それでいい。照準器からはみ出るほど接近して撃ち込むのが正解だ)

 

 逆にちょっと果敢すぎて敵機と空中衝突しないか心配になるロスマンだったが。

 何しろ、

 

「ソ連機は少々密集が過ぎるな。アレではまともな回避運動もできんだろうし、何より対空射線が確保できないだろう」

 

 そう、”コマンドボックス”編隊というのはただ漠然と密集編隊で飛べば良いというものでは無い。

 機体個々に搭載された防護火器で、互いのどうしてもできる死角を補い、「個ではなく群としての弾幕射撃で敵機を追い払う」事を主眼としなければならない。

 だが、ソ連の爆撃機隊のフォーメーションでは、多くが互いの射線に入ってしまい、敵機に撃ち落とされるより同士討ちで墜ちそうな気配が強い。

 

 まあ、過密編隊なので「爆撃機と爆撃機の間を擦り抜けるような戦闘機動」の難易度は高い(できないと言わないあたりが実にロスマンだった)が、となれば単純に撃墜しやすい端から削っていいだけの話だ。

 

 本来なら爆撃機の編隊は隊長機や先導機から墜としてゆくのがセオリーなのだが……

 

「その必要もないか」

 

 文字通り片っ端から墜とされてゆくにつれ、あっという間に経験の浅いパイロットがパニックでも起こしたのか編隊が乱れて行く。

 機銃での同士討ち(同志撃ち?)だけでなく戦闘機を避けようとしたのか空中衝突を起こす機体もチラホラと増えてきていた。

 

「では私もそろそろ”本業”をこなすとしよう」

 

 ロスマンは新人引率役の教官兼隊長から、一人のエースパイロットとしての獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこの日、クリスティアーナとリーリアは揃って5機を撃墜し、『世界初の女流エース』としてその名を轟かせる事になるのだった。

 ホーエンツォレルン家の復権を目指すクリスティアーナは、戦闘後に行われた記者の取材に鼻高々だったが、リーリアはかなり面倒くさそうにしており、その好対照さが妙に記者たちの印象に残ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、ついにクルス、Ju86Rの高高度性能(地味に燃費性能=滞空時間)に目を付けて、”ベルリン”レーダー乗っけて飛ばしやがりましたよw

クルス:「高高度から敵地奥深くに潜入偵察するんじゃなくて、領空でレーダー抱えて飛ぶんだから、速度遅くても撃墜されることはないだろう」

いや、別にオーパーツって訳でもなくて、史実でも戦時中のドイツでもFw200にベルリンレーダー乗っけて飛ばしてるし、米国でもB-17GベースのPB-1WとかアヴェンジャーベースのTBM-3WとかAEW機の先駆者はもう出てくるのでクルスの独創でもなんでもないのですが……まあ、でも実際に「時代遅れになりつつある機体の有効”再”利用」で実機を作っちゃうあたりがクルスかな?とw

そして、クリスティアーナに関しては……ツッコミ所満載だけど、とりあえず元ネタのシュミット君、当時は存在していた西ドイツの人間(ミュンヘン工科大学の飛び級学生)のはずなのにハーケンクロイツってw
まあ、名前からしてメッサーシュミットが出元だし。

とりあえず、クリスティアーナとリーリア、緊張せずにのびのびと空戦やってるようで何よりですw
まあ、これもロスマン式(ルーデル式?)航空ブートキャンプの賜物か?

さて、次回は空対地攻撃の様子でも……

それでは次回もどうかよろしくお願いいたします。






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