転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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魔王様(ルーデル)絶好調回(後編)です。
ヤベー奴がヤベー武器使うみたいな?




第341話 ”怠惰な犬”って皆様、覚えてらっしゃるでしょうか? まあ、とりあえず……魔王様からは逃・げ・ら・れ・な・い!!

 

 

 

 さて、以前に少しだけクルスと小野寺君が話題に出した”レイジードッグ”という単語を覚えている方はいるだろうか?

 ”レイジードッグ”自体は、長さ44mm、直径13mm、重量は20gの鋼鉄のダーツで史実では朝鮮戦争やベトナム戦争で使われ、ルーツは第一次世界大戦でフランス軍が航空機から投下した”投箭(Air Dropped Flechettes)”の仲間だ。

 だが、四半世紀近い時間は航空機のペイロードを爆発的に引き上げ、このサイズのメタルダーツを集束爆弾型のキャニスターを用いることにより、大量投下が可能になっていた。

 

 そう、薄殻榴弾の技術的応用で作られた薄殻投弾キャニスターの中に適度な範囲でダーツを散布する拡散装置共々、このメタルダーツが約10000本も収納されていたのだ。

 Ju187には1機辺り5発の250kgレイジードッグ・キャニスターが搭載されたので……その散布量は、今回の攻撃だけで約80万本!

 急降下で最大加速にて投下されたダーツの威力は、最良の状態ならドイツ軍の13㎜機銃の普通弾に匹敵する。

 

 この”鋼鉄の暴風雨”が、上面からの攻撃にはほぼ無防備な重砲群に降り注いだのだ……

 その結果はおして知るべし。

 1㎡あたり平均8発が投下されたメタルダーツは、当たる者全てを損傷させた。

 無機物、有機物関わらずにだ。

 

 そして、ルーデルが「せっかくだし、無傷っぽいのにもう一連射浴びせるか」などと考えてた最中……

 

『”カノンフォーゲル01”、敵戦闘機と思わしき編隊が接近中。至急退避されたし』

 

 とオペレーターからの入電。

 すると、

 

「ふむ。”特訓”の成果を見せるのに丁度良いか……ガーデルマン、久しぶりに空中戦を楽しむとしよう」

 

 そう笑うルーデル。きっと似合うBGMは”ダースベ〇ダーのテーマ”に違いない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて古今東西、どこの世界にも運の悪い者というのは存在する。

 大編隊を送り込んで壊滅的な打撃ではなく、文字通りに壊滅させられたソ連空軍は、後方から機体とパイロットを引っ張って来るだけではなく、今度は小中規模編隊を多方向から突入させる時間差波状分撃でノブゴロドの防空能力を飽和させようとした訳だが……

 AEW機なんてものが日の出てる間、場合によっては夜間も常時飛んでるような状況で、それがどこまで有効かは甚だ疑問だ。

 そしてその時、手酷い損害を受けているソ連重砲隊の上空に差し掛かったのは、アメリカ製のP-39Q×12機に守られた36機のIl-2襲撃機の編隊だった。

 

 そして、レイジードッグを投下し再降下で地上掃射をかまそうとしていた”脚のついていないJu87らしき”編隊をP-39Q戦闘機隊は見逃さなかった。

 米ソの発表によれば、P-39は東部戦線において対地攻撃のみならず37㎜砲の火力に物を言わせ、対航空機戦でも猛威を振るったらしい。

 

 であるならば黒い十字架を描いた戦闘機が見えない以上、護衛も満足についていない爆撃機を狙うのは当然だった。

 しかし……

 

「ほう? 殴りかかって来るか……その心意気やよしっ!!」

 

 ルーデルは上機嫌で、

 

「全機反転上昇っ! オリジナル(※Ju187の37㎜モーターカノンの出元は鹵獲されたP-39のソレ)と37㎜砲同士の撃ち比べと洒落こもうではないかっ!!」

 

 さて、Ju187のJumo213Eは低~中高度仕様とはいえ2段無段変速のスーパーチャージャー付だ。おまけにインタークーラーには水-メタノール噴射式の出力増強装置MW50までくっついている。

 ハイトルクセッティングなのは伊達ではなく、高度10000m以上ではガクンと性能が落ちるが高度8000mくらいまでならグングン上昇していく。

 しかも現在、16機のJu187は重い対地兵装を投下し終え、燃料と弾薬が半減したライトウエイト・コンディションだ。この状態なら水平最高速度は軽く600㎞/h以上出るだろう。

 

 おまけにJu187、スロテッド・ファウラーフラップ&前縁スラットなんて高揚力装置をダイブブレーキ兼用で採用している。

 これ、本来はその名の通り大きなペイロードを抱えて離陸できるように大きな揚力を発生させる動翼部分なのだが……ところがぎっちょん!

 それだけの揚力あるいはダイブブレーキに使えるほど空気抵抗を生み出す装置なら、「パイロットの腕さえあれば」運動性を引き上げる”高機動デバイス”として使える。

 基本、このような複雑な後縁フラップや前縁スラットの操作は後部座席の人員がサブパイとして行うのだが、このような高度な使い方はパイロットとの阿吽の呼吸がいる。

 つまり前席/後席共に高度な技量が要求されるのだが……だがしかし!

 今回の16機の先行量産型Ju187のパイロットと後部乗員、『最新鋭機の限界性能を見極める為』にルーデルとガーデルマンが、修羅場鉄火場スモレンスクから選びに選んだ”スツーカ乗り”の32名だ。

 はっきり言って、『Ju187で戦闘機相手の空中戦』など鼻歌交じりにできる連中(バケモノ)ばかりときていた。

 そりゃあクリスティアーナたリーリアをはじめとするミリシャ航空隊のVG39が返り討ちのフルボッコにされる訳である。

 

 対してP-39はターボチャージャーの外された悲しきレンドリース仕様……高高度性能なんてあるわけはない。ついでにこの時代の米国戦闘機のご多分に漏れず、低高度での舵が重い。

 故に上昇勝負で先に息を突いたのは追うように上昇してきたP-39の方だった。

 上昇率の落ちた瞬間を見逃さない者達もいて、

 

「遅いっ……!!」

 

 ガーデルマンをはじめとする後部座席の猛者衆は、上昇中に13㎜薄殻徹甲榴弾の弾幕を浴びせて先ずは3機を仕留めてみせた。

 そして、

 

「全機反転! 一気呵成に仕留めよっ!!」

 

 ルーデルの号令でJu187の十八番、急降下からの高速一撃離脱!

 あれ? Ju187ってBf109だっけ?

 そして、比喩でなく瞬く間に吹き飛ぶ残る9機のP-39……

 だが、乗りに乗った魔王は止まらない!

 

「全機、残弾は十分かっ!」

 

 帰ってきた返事にルーデルは実に満足そうに、

 

「では後輩たちに”シュトゥルモヴィーク狩り”の手本というものを教育してやろうではないかっ!!」

 

 いくらIl-2が頑丈と言っても対戦車弾、37㎜APCBC-HEと30㎜薄殻徹甲榴弾のアンサンブルの前には、プロペラ単発機に搭載できる程度の装甲ではどうすることもできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わずかな時間差で慌てて救援に飛んできた(そりゃあいくらルーデル隊でも急降下爆撃機が倍以上の敵に遭遇したら普通はエマージェンシーだ)サンクトペテルブルグ市民軍(ミリシャ)航空隊所属のVG39たちが見たのは……

 

「ほとんど残ってないじゃない……」

 

 Ju187に追い掛け回され、散り散りになり各個撃破。既に半減以下となったIl-2隊のなれの果てだった。

 この日、ルーデルはいともあっさりエース・パイロット(本日4機撃墜で通算撃墜数8)となり、ガーデルマンは後部機銃手にも関わらず、エースまで残り撃墜数1機となったという……

 そしてセリフからどう考えてもVG39隊の接近を”見えていた”ルーデルはニカッと笑うと、

 

「小娘ども、後始末は任せたぞ」

 

 そう言い残し被撃墜どころか損傷機0で悠々とサンクトペテルブルグに飛び去るJu187と、

 

「……”クリス”、()ろっか?」

 

 スロットルを開けて増速するリーリアに、

 

()ってやらいっ!!」

 

 殺気を籠めて操縦桿を引くクリスティアーナ。

 烈火の気合で墜とすクリスティアーナに黙々と淡々と墜としてゆくリーリア……なんか八つ当たり気味に残敵掃討を行う16機のVG39がやけに凄味があったという。

 

 

 

 無論、ソ連の”虎の子自動車化牽引重砲隊”に対する攻撃がこれで終わるわけはない。

 何しろ、装甲防御など無きに等しい事がわかっているのだ。

 最近、ドイツ/フィンランド空軍で急速に配備が広がっている”対人/対軽装甲榴散弾”を搭載した独芬の爆撃機隊が殺到したのは、クリスティアーナ達が逃げ惑う残存Il-2を喰い終える頃だった。

 

 入れ替わるように重砲隊を守るべくソ連戦闘機隊も飛んできたが、まだ燃料にも残弾にも余裕があった……というか、むしろ何か変な鬱憤が溜まっていたクリスティアーナ達は、

 

「叩き落とすっ!」

 

「了解だわ」

 

 そして、ドイツ・フィンランド爆撃機隊の護衛に付いていた味方戦闘機隊と挟撃する形で瞬く間に蹴散らした。

 ここでようやく満足したのかVG39隊は帰投。

 この日、クリスティアーナ、リーリア共に撃墜スコアが二桁、10機に届きはれて”ダブルエース”の称号を得たのだった。

 ちなみにその情景を目撃した某ドイツのパイロット(エース)曰く、

 

『なんかおっかねぇ娘っこ達だな~。末恐ろしいというか……くわばらくわばら』

 

 元々、技量も数も性能も違ったが、何よりレーダー管制を受けた迎撃態勢は効率が違った。

 何しろ、ドイツ人とスオミ人の爆撃機隊を叩き潰そうと飛んできたソ連戦闘機隊の直上、太陽を背にして……太陽の中から出現するように敵機が”降ってくる”のだ。

 有視界戦でこれがどれほど優位かわかるだろう。

 

 そしてこれは、ノブゴロド周辺空域の随所で見られた戦闘風景だった。

 

 少しだけフォローしておこう。

 リーリアは元々民間飛行士学校の教官で、ソ連『女性戦闘飛行連隊(Женский ИАП)』の戦闘機乗りとう出自であり、クリスティアーナも実戦経験こそ無かったが機銃を搭載した軽戦闘仕様の飛行艇やら水上機やらを毎日のように乗り回していたのだ。

 つまり2人そろって機種を問わなければ、そのトータル飛行時間は新人なんて物ではなく、むしろベテランの領域だった。

 足りないのは操縦経験や飛行時間ではなく、戦場での立ち回りや空中戦機動スキルだったのだ。

 そして、その不足部分を徹底的に叩き込んだのがロスマンたちドイツ空軍からの出向教官たちで、更に磨きをかけたのがルーデル達だったという訳だ。

 既にパイロットとしての下地はできてた故に、これだけのスコアを稼げた……要は種も仕掛けも理由もあったのだ。

 もっともそうでなければ、あの慎重なロスマンが初戦からそう日にちも経って無い状況で、彼女達だけで出撃させる事はしないだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ガーデルマンよ、今日ほどあと1.5倍ほど装弾数が多ければと思った日はないな」

 

「ですね。まさか久々に残弾0になるとは思わなかった」

 

 本日も魔王とその主治医は絶好調であった。

 そして帰投したルーデルとガーデルマン&愉快な仲間達だったが、燃料と武器弾薬を補充したら直ぐに再出撃と相成った。

 

 だがこの日、珍しくルーデル一家の出撃は、”たった2回”で終わってしまったのだ。

 何故なら、吹き飛ばすべき優先攻撃目標であるソ連重砲隊が”消えて亡くなって”しまったから。

 

 翌日、航空阻止攻撃は他の部隊が担当しているせいもあり、ルーデル隊は装備を対装甲ロケット弾と同じく成形炸薬型の集束爆弾に変更して対戦車/装甲車両攻撃に勤しむのだった。

 

 その間、ルーデルは敵機撃墜2桁のダブルエースとなり、ガーデルマンは後部機銃手としておそらく史上初めて5機撃墜のエースとなった。

 

 つまり魔王様とその主治医は絶好調というか平常運転というか……とりあえずノブゴロドを巡る一連の戦いが一端の終了を見るまでJu187は損傷機は流石に出たが、被撃墜は0のままだったという。

 

 そして作戦終了までの間……ソ連の機種不問のトータル喪失機は、2000機を優に超えていた。

 最終的なキルレシオは、上記のように機種を問わなければついに1:20……ドイツ・フィンランド機が1機落ちる間に20機以上のソ連機が落とされるところまで悪化していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、ディスペンサーケースに収納されていたのは、13㎜機銃弾と同等の威力のメタルダーツ、その集中豪雨でした(挨拶

でも、爆発物では無かったので肉片は多く製造されましたが、思ったよりもD-1榴弾砲は回収できた模様w

いや、それにしてもルーデル……書いててなんだけど、いくら新型機が具合良いからってはしゃぎ過ぎでしょうw
それを言うなら後部機銃手なのに事もなげにエースになったガーデルマンも大概だけど。
加えてルーデル一味16機、全員が”地獄のスモレンスク”の選抜組、「人間の範疇につま先立ちしてるような猛者」の集まりでしたw
いや、確かに高性能だけどJu187で戦闘機フルボッコ大会とか。

そして地味にとばっちり(?)のクリスティアーナ&リーリアでした。

さて、次回は今回の……というか、赤衛国際革命旅団大損害の元凶であるクルスの出番かな~と。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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