転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
今回も長め、挿絵多め(一部微エロ注意)でお送りします。
さて数日後……
ローマの治安は比較的安定していた。
加えて秋のローマというのは過ごしやすい気温で、穏やかな天気も続く観光にはもってこいのシーズンだ。
「安全も確保されてるし、天気もいい。だから早速、”ローマの休日計画”内、”デート・ア・ライブ作戦”を始めましょう♪」
「いや、別に良いけどさ」
☆☆☆
「という訳で、”ローマの休日”と言えばやっぱり”これ”よね♪ あっ、カズヒトの分も用意してあるから」
マリアンナも流石にこのサイズのヴェスパで二人乗りを試す気はないらしい。
ちなみにマリアンナ、ヴェスパのスクーターが酷く気に入ったらしく、この先何台も乗り継いで行くことになるらしい。
「……わかるが。個人的にはもう少しでかいバイクの方が好みだ。”
「ぶらふ・しゅーぺりあ? とらいあんふ? あれ? どこかで聞いたことあるような……」
「ああ。ブラフ・シューペリアは某『旅物のおしゃべりバイク』のモデルで、トライアンフは某『ソロキャン少女のおじいちゃんが最初に乗ってて後に譲り受けたバイク』だな」
リアルではブラフ・シューペリアは作中にも名前が出てきた”アラビアのロレンス”ことトーマス・エドワード・ロレンスはブラフ・シューペリアをたいそう気に入っており7台所有し、そのうちの1台にライディング中に事故死している。
ノーヘル状態で頭を強打したらしい。
トライアンフのタイガ-100は有名シンガーのボブ・ディランの愛車で、彼も事故って数年間ツアーを中止する羽目になっている。
蛇足ながら当時としては極めてハイパワーな75馬力を発生するJAP製のOHVエンジンとノートン製の4速ギアボックスを組み合わせた39年式の”Brough Superior SS100 Alpine Grand Sport”と40年式の”Triumph Tiger100”は、どちらも和仁の(本国)の愛車だった。
(まあ、今のイタリアで英国バイクが手に入る訳はないか)
ちょっと本国から運んでもらおうかなぁ~とか考える和仁であった。
蛇足ながら史実では1940年11月14日にドイツの爆撃でタイガー100を生産していた工場が破壊され、生産が止まってしまったが、この世界では英独の早期停戦で難を逃れて生産は継続されているようだ。和仁の愛車の製造年月日が40年11月18日なので間違いないだろう。
「せめてモト・グッツィくらいは入手すべきか?」
「えー。ヴェスパでいいじゃん! スクーターって乗りやすいよ?」
明らかに前世で乗ってた経験がありそうなマリアンナ。
ただ、このヴェスパも気になる点はある。
ヴェスパの製造拠点があるのはフィレンツェの西にあるポンテデーラという街であり、確かに”北イタリア社会主義共和国”の勢力圏には入っていないが、ヴェスパの製造が始まったのは戦後の1946年。
おまけに設計したのは”
どうも”転生者”、それもイタリア本土に残留していた(潜伏していた)、”
たかがデートの一幕、たかがバイクの話題だが……少しだけ、『史実と異なる今生イタリアの現状』が垣間見えるのが興味深い。
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さて、和仁とマリアンナが順調にデート・イベントをこなしているその頃、イタリア駐留日本皇国は片時も戦争を忘れてはいなかった。
いや、厳密には既にイタリアで行われているのは、『戦争とは別の闘争』にシフトしていたが、「敵を討つ」という一点については何ら変わることはなかった。
「そう。敵を撃つ簡単なお仕事ってのは変わらんのだよなぁ。正規軍人だろうが、それ以外だろうが敵は敵。的は的だ」
ああ、久しぶりだな。
ある種の真理に辿り着いたシモヘイ。いやいや、ヘイシロー・シモサだ。
一応、皇国陸軍ではまだ下総兵四郎になっている。
まあ、戦争終わって皇国軍の軍籍抜けたら、即座に漢字表記とはおさらばだろうが。
いや、だってさ……
↑あっ、最近送られてきた写真な。
前の休暇、いや腹の膨れ方からしてその前か?にどうやらまたしても”命中弾”を出しちまってな。いや、そりゃ確かにたっぷり出したが……
だってよ、”ナーディア”も妹分たちも避妊しようとすると本気で怒るからなぁ……いや、そもそもイスラム圏に避妊の文化ってあんま無いし。
ともかく”
おまけに……
こう『兄様との赤ちゃん、順調に育ってるよぉ♡』なんて嬉しそうなメッセージ付きの経過(結果? 戦果?)報告入りのラブレターが同封されたら、そりゃあ”砂漠から伸びたピンク色の鎖に雁字搦め”ってなもんよ。
誰だよ? 今、『
それにこの娘たちも割と重めな色々な事情があるからなぁ。
「おや? 相変わらずの”命中率”っすね~。ところで大尉殿、ロリニティ軍団の写真見ながら、一体何の想いにふけってるんですかい?」
ロリニティって……小鳥遊君、やっぱり君、転生者じゃねーの?
「あー、大したことじゃないさ。ただ、さっさと”北伐”
「そういや”種付け待ち”の娘っこが列なしてるんでしたっけ?」
「言い方ァッ! せめて”待望の
「どっちにしても、リビアに戻ればスることは一緒でしょうに」
いや、そうだけどさぁ……実際、『ようやくブルーグを迎えられました! 兄様、もう準備は万端です♡』って
嬉々として写真送ってくる娘もいるけども。
おかげで毎度リビアからの手紙は、かなり重くなっとります。
あっ、精神的でなく(増えていく写真の重量で)物理的な意味で。
(これも”ニコンF”とか贈ったせいでもあるのか?)
そうそう。
あの一眼レフのマスターピース、日本光学が誇る名機”ニコンF”が先行発売されたんだよ。それもモータードライブやストロボ(スピードライト)なんかのオプション一式込みで。
史実よりも15年以上早くだぜ?
(いや、正確には15年どころじゃねぇか……)
確かに商品的(デザイン的)には間違いなく”ニコンF”なんだが、時代的には画期的すぎる『露出計を内蔵した一眼レフカメラ』なんだよ。
しかも露出計は”TTL露出計”だぜ?
前世じゃ、『TTL露出計内蔵の一眼レフカメラ』が試作されたのは1960年だ。
そして、前世のニコンFにTTL露出計を内蔵した”フォトミックT”が追加されたのは、更に5年後の1965年……つまり今生のニコンFは少なくともフォトミックT相当で、それを加味すると20年以上登場が前倒しになっている。
よくよく考えてみりゃあ、
(前世を基準にすりゃちょっとしたオーパーツだよなぁ)
今更と言えば今更なんだが。
えっ? なんでカメラに妙に詳しいのかって?
いや、カメラ……特にフィルムを使ったいわゆる”銀塩カメラ”ってのは前世の趣味の一つだったんだよ。正確には望遠レンズつけたカメラで野生動物の撮影とかな。
意外に聞こえるかもしれないが、特に望遠レンズつけた一眼レフってのは、割と狙撃と共通項があるんだ。
物理的な弾丸撃ち込むのと、光の弾丸をレンズで受け止めるって違いはあるが、遠くの目標を狙うのは同じだろ?
それに銃のスコープもカメラのレンズも基本的な構造も同じだしな。
(野生動物は、人間以上に敏感で勘が鋭い。禁猟期のいい訓練になったもんだ)
仕事で鉄砲を使っていたが、狩猟免許も持ってたんだよ。ちなみに前世で猟銃で使ってた1丁も”豊和M1500”のショートアクションだぜ?
出動もそう多いわけじゃなかったし、訓練だけだと「命を奪うために撃つ」って感覚がどうにも鈍って仕方がない。
それはともかく……今生のニコンFは前世の同名モデルより
それでもニコンFも同時期に出てきた”ニコンSP(国産レンジファインダーカメラの最高峰の一つ)”も、軍や警察なんかの公共機関や報道各社が挙って買い占めるから、民間市場では常に品薄って感じらしいんだが……
幸い”豊和銃器”の人間が日本光学にコネ持ってる(なんでも日本光学はスコープやスポッター用の単眼鏡も作って軍に納品してるから、そのあたりの関係らしい)ようで、とりあえず本体数台と交換レンズ一通り、モータードライブやストロボなんかのオプション一式をまとめて購入して、そんままナーディア宛てに送ったんだが……
(さっそく活用してくれてる事を喜ぶべきか?)
「そういやキレナイカ王宮から届く大尉殿充ての手紙、特例として検閲免除になってるの知ってますかい?」
「えっ? 初耳だが……外交文書扱いになってるとかか?」
私信とはいえ、相手は王女様だからとか?
「いえ。写真が同封されるようになってから、検閲官のメンタルに大ダメージ入るようになったみたいで」
……検閲官、正直スマン。
☆☆☆
というような暢気な会話をしているが、実際にはもう少しシビアでシリアスだ。
というかシモヘイが、何と言うか……変人なのだ(なお小鳥遊君含む)
現状、皇国軍は待機状態ではなく、急速に部隊再編を進めていた。
現在の編成は、あくまで『イタリア正規軍に対応する正規戦向けの編成』だったからだ。
だが、現状のイタリア北部は『対共産ゲリコマ相手の不正規戦・非対称戦』段階に入っていた。
幸いなことに日本皇国軍は転生者が多く関係しており、『将来的な可能性の一つ』という名目で、小規模ながら選抜部隊にCQC、CQB訓練から始まり、都市戦・密林戦などの研究を重ねてきた。
そしてその真価が問われる瞬間が、刻一刻と迫っていたのだった……
最後に少し余談をしよう。
前話と今回、ある共通項があるのに気づかれただろうか?
そう、史実より20年以上早く、第一次世界大戦直後から発祥の地アメリカだけでなく先進国を中心に世界各国に広まり、一部では大流行して今や定番として定着しつつあるジーンズを中心とするデニムファッション・アイテム。
どうやら既にイタリア本土では簡単に入手できる程度には普及しているスクーターの代名詞といえる”ヴェスパ”。
そして、20年以上先の技術を先取りして取り込んだ”ニコンF”。
これらは全て、『
そしてその背景、特に敗戦国である日独伊三国は戦後に兵器開発・製造を禁じられていた時期があり、そうであるが故に産業リソースを民生分野に転換して戦後復興と国内産業の再編と拡大を成し遂げた。
そしてこの世界線……日本皇国は第二次世界大戦に敗戦国になる気配はない。
日英同盟が継続してるだけでなく、何と言うか……本気で戦争をやってる様子がない気がする。
国家の存亡をかけた死に物狂いで戦った大日本帝国と異なり、余力で戦争を遂行している雰囲気があるのだ。
ドイツも史実よりは遥かに優位に独ソ戦を戦い、イタリアは北部を中心に内戦状態だ。
だが、にも関わらず『
無論、各国の”転生者”の影響は大きいだろう。
だが、それだけでは説明のつかない潮流が、もしかしたら”この世界”の根底にあるのかもしれない……
バイクの趣味が英国贔屓で割とストロングスタイルな和仁殿下でしたw
でも個人的にマリアンナには、キャラ的にヴェスパが映えると思ってます。
そして久々のシモヘイ&小鳥遊君コンビの登場です。
『ピンクの血鉄鎖○団』のくだりでつい思いついたシーン……
【挿絵表示】
「我々の一人一人が鎖の輪となり、連なる幾重もの連鎖に変じて我らが英雄ヘイシロー様を、この地に繋ぎとめるのですっ!!」
「「「「「はいっ! 姉様っ!!」」」」」
ある意味、束縛系?
ちなみに、『
そして意外と情報ぶっこみなのが、サブタイに直接繋がるアイテムとそれにまつわるエピソードだったり。
『日独伊三国が史実のような敗戦国にもなっていない(=軍需リソースを民需に強制転換していない)状態で、史実より前倒しする形で民生品が生産されている』というのが存外、この世界線の特異性を象徴していたり?
勿論、転生者要素が最大なのですが……何やらバタフライエフェクトが起きてるような?
次回は、「都市戦ステージ寸前の風景」がメインになるか~と。
次回もどうかよろしくお願いします。
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